Who reached Infinite-Stratos ?   作:卯月ゆう

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参加者名簿

Host
天草櫻、ラウラ・ボーデヴィッヒ
天草紫苑、篠ノ之束、クロエ・クロニクル


Guest 
織斑千冬、織斑一夏
リリウム・ウォルコット、シャルロット・D・ウォルコット、セシリア・オルコット
更識楯無、更識簪、布仏虚、布仏本音
ルイーゼ・ヴァイツゼッカー


思い出話とISいじり

待っていた櫻に案内され、食堂に入ると大人たちがそれぞれ会話に花を咲かせているところだった。

千冬に気づいた楯無が苦い顔をする。客人に気づいた紫苑が声を掛けるまで4人は入り口に立っていた。

 

 

「あら、いらっしゃい。今日は楽しんでいってね」

 

「お、お世話になります。IS学園2年の更識楯無といいます」

 

「同じく1年の更識簪です。櫻さんにはお世話になっています」

 

「3年の布仏虚ともうします。本日はお招きいただきありがとうございます」

 

「あっ、え~っと。1年の布仏本音です、よろしくお願いします」

 

4人をニヤニヤしながら見つめる櫻を楯無と簪がひと睨みし、笑いをこらえるシャルロットと一夏を見た本音は頬をふくらませていた

 

 

「あんまり堅苦しくしないでいいわよ、普通にお友達の家でみんなでご飯を食べるだけだから。まぁ、座って、何か飲み物を出すわね」

 

千冬までもが少しニヤけていたが、さすがに鬼に触れる気もなく、諦めて4人は席についた

 

 

「早くもお疲れのようだな、更識。まぁ、ゆっく――「あ-っ! 君は合宿の時の着ぐるみの子だね~! 強烈なインパクトだったからよく覚えてるよ!」

 

「えっ、えっ。そ、その、篠ノ之博士?」

 

「そんなよそよそしくしなくてもいいよ、のほほんちゃんだっけ? こっちおいで! 一緒に飲みながらお話しようよ!」

 

かっ飛ばす束にさすがの本音もついていけずに櫻に目線で助けを求めるが、にっこりと笑い返されるだけ。愕然とする本音を束が捉え、「おっぱい大きいね、着痩せするタイプ?」などと聞きながら千冬との間に座らせた

 

ちょうどメイドが楯無達の分のジュースを持って現れ、櫻の隣の簪に、反対に座る一夏の隣の楯無と虚にコースターとオレンジジュースで満たされたグラスを配ると本音の前にも置いた。これでしばらくは逃げられない

 

 

「いやぁ、君とは話が合いそうだなぁって思ってたんだ。ちーちゃん、この娘どんな娘なの?」

 

「ほら、束、ペースを落とせ、布仏も困ってるだろ」

 

「せ、せんせ~助けて~」

 

「すまんな、しばらくそいつのおもちゃ……話し相手になってくれ」

 

「おもちゃって言った! 今おもちゃって言った!」

 

「ごめんねぇのほほんちゃん。困らせるつもりはなかったんだよ?」

 

「えっと、その。困ってるっていうか緊張するっていうか……」

 

「そんな緊張することないよ~。束さんだって人間だから意思の疎通もできるしさ」

 

「そ、そうですけど。目の前に居るのは博士と織斑先生だし……」

 

「今はオフだぞ? そんなに気を使わなくてもいいだろう。それにそいつの扱いは大体櫻と同じだ」

 

「ふぇ? 博士とさくさくって似てるんですか?」

 

「もう10年か? 束と櫻は一緒に居るからな。束のいいとこ悪いとこ……悪いところのほうが多いか。そっくり写ってしまってな」

 

紫苑と千冬が目配せして櫻に温かい目線を向けたが、本人は目を泳がせていた

 

 

「もう10年も経つの? 早いなぁ」

 

「さくさくのちっちゃい頃の話聞きたい、かな~?」

 

「は、話しちゃ駄目だからね! ムッティも!」

 

部屋中が束に注目している中、「うわぁあぁぁああ!」と叫ぶ櫻を他所に束が語りだした

 

 

「いやぁ、初めて会った時は何だこのクソ生意気なガキンチョは、って思ったよ。でも上手く言いくるめられちゃってね。気がついたら一緒にISを作ってたなぁ」

 

「おい、ソレはこの場で言ったら……」

 

「櫻さんもISの開発に携わっていましたの?」

 

「もう遅いね。そうだよ。さくちんとちーちゃんと、ママさんもかな? 4人でISを作ってたんだ」

 

「私は時々差し入れしたり、普通に娘達の面倒を見ていただけなんだけどね」

 

「でもママさんにもいっぱいお世話になってるしね。そうだ、ソレで、ISを4人で作ってたんだよ。始めてのISが完成した時は時間も忘れて真っ先にちーちゃんに電話してさ、ちーちゃんもその頃は高校生だったから、ちょうどお昼だっけ? 学校にいた時にかけちゃって、その後さくちんとお説教されたなぁ」

 

「千冬姉が帰り遅くなってたのはこのせいだったのか。いまさら納得だな」

 

「あの頃は楽しかったんだ。始めて飛んだ時の感覚はまだ忘れられないな」

 

「千冬さんはあっという間に感覚を掴みましたからね。本当に昔から人が――人並み外れてましたから」

 

「櫻、後で覚えておけ」

 

「それっていつのことなんですか?」

 

「秋頃だったか?」

 

「そうだね。そこから2号機も完成させていろんな実験を重ねて、やっと白騎士が完璧になったんだ。多分あの時のちーちゃんはコアの能力を6割は使ってたね」

 

「博士、稼働率が60%っていうのとは違いますよね?」

 

「お、目の付け所がいいね。確か君はさくちんと一緒にISを作った娘かな? 聞いてるよ」

 

手元のアイスティーを一口飲むと一つ息を吐いて「ちょっとむずかしい話だけど」と前置きして始めた

 

 

「稼働率って言うのは、自分たちが組み上げたシステムがどれだけ動いてるかを示す値だよね? でも実際のコアの使用率って言うのはあんまり高くないんだよ。多分君たちの持ってる第3世代って呼ばれてるのでも良くて20だね。コアの使用率が上がればそれだけ大量の情報やエネルギーを扱えるようになるんだけど、それと同時に操縦者に掛かる負担も大きくなる。今はまだ技術が追いつかないから20%しか使えてないんだろうけど、知らないうちに上げていくと操縦者が発狂したりしちゃうかもね」

 

「博士は今どれだけの能力を開放させることに成功しているんでしょうか?」

 

「う~ん。ちーちゃん、言っちゃっていい?」

 

「はぁ、どうせ喋るんだろう?」

 

「まぁね。今扱いきれるのは大体6割くらいかな。さくちんのISでやってるから感想とかはさくちんに聞いてね。それで、コアに操縦者が耐え切れずのおかしくなっちゃったらどうなるか。じゃ、そこのお姉さんっぽいメガネの娘、どうなると思う?」

 

「暴走、でしょうか?」

 

「まぁ、そうだね。もっと言うと操縦者がISに飲み込まれるんだ。もうこうなったら手のつけようが無い」

 

開発者が語るISの知られざる面にその場の誰もが息を呑んだ

いくら意思を持つと言われるISコアでもまさか操縦者を飲み込むなどとは思っても見なかっただろう

 

 

「まぁ、小難しい話はこのへんにして、どこまで話したっけ? 白騎士のデモは話した?」

 

「デモ?」

 

「うん、デモンストレーション。ミサイルいっぱい落としたでしょ?」

 

「「「「「「「「白騎士事件か!」」」」」」」」

 

「世間はそう呼んでるみたいだね。アレもコアの能力をギリギリまで上げて莫大なエネルギーを使って飛び回ったからあんな真似ができたんだよ? まぁ、さくちんにも少し手伝ってもらったけど」

 

「10年前から櫻はISに乗ってるってことですか?」

 

「そだよ~。ぽっと出の代表なんかよりずっと乗ってるね~」

 

「櫻、こんど俺にISの操縦を教えてく――「一夏さん?」

 

一夏に突き刺さる視線の先にはもちろんセシリア。その目は「私では不満でも?」と語っていた。

これ以上大事にするのも面倒、それを察したのかただ単に面倒なのか、櫻はあっさりと「嫌」で片付けた

 

 

「しかしまぁ、なんだ。櫻が自分の教え子になるとは思ってもいなかったな。本当、お前は何しに学園に来たんだ?」

 

「だから前にも言いましたよね。趣味ですよ、趣味。あとは世界の第3世代機をフルボッコにしてやろうかと思ってましたが、やっぱりノブレスオブリージュだけだと辛いですね」

 

趣味で世界唯一のIS操縦者及び技術者育成機関に入る櫻に前に聞いていたセシリアもまた呆れた顔を向けた。

 

 

「そうだ、千冬ちゃん、櫻に先生でもやらせたらどうかしら? 私が言うと親バカっぽいけど、櫻はもうISに関しては束ちゃんに次ぐレベルだと思うのよ」

 

親バカなんてとんでもない。ここまでの話を聞いてしまえば頷かざるを得ないだろう。

とテーブルを囲む面々は思っても口には出さない

 

「ん~、そうですけど、簡単にハイとは言えませんね。まぁ、私が事情で空ける時くらいは頼もうかと思いますけど」

 

「まぁ、仕方ないわね。半分冗談だし…………束ちゃんが講師として行ったりしたら面白くなりそうね」

 

「やめてくださいよ、紫苑さん。私の胃が持ちません」

 

「ちーちゃん酷いよ! 束さんは真面目なときは真面目だもん!」

 

「不真面目な時間が多いんだろうが……」

 

「なんか織斑先生と篠ノ之博士って――」

 

「――夫婦みたいですね」

 

思わず楯無と簪が思ったことを口に出すと千冬がジロりと視線を向けて「貴様ら、ソレ以上言ったらどうなるか解るな」と目で語った

 

 

「まぁ、そろそろお話も飽きてきたし、IS見せてよ! みんな専用機もってるんでしょ?」

 

「ですが、幾ら博士といえどそう簡単には……」

 

「んじゃぁ、メンテナンスノートに束さんのサインをつけちゃう!」

 

コレが意味するのはもちろん、束印のISになる、ということ。束の技術を少しでも盗みたい世界各国は諸手を上げて喜ぶだろう

 

 

「それなら出すしか無いわね。簪ちゃんもお姉ちゃんに自慢の打鉄、見せてよ」

 

「もちろん。博士、お願いできますか?」

 

「もちのロンだよ~。じゃ、裏庭に出ようか。ちょっと準備があるから先に行ってて。さくちん」

 

私達は待ってるわね~と言う紫苑とリリウムを残し、ぞろぞろと裏庭に出て行くと美しい庭園が広がる。

 

 

「きれいなお庭だね」

 

「洋風庭園もやっぱりいいわね」

 

「らうらう~、あの的はなに?」

 

「アレは射撃用の的だな。この前櫻が作ったんだ」

 

片隅に置かれたテーブルにはセシリアと千冬が着き、ワイワイとした風景を眺めていた

数分もすると何かの駆動音が響き始める

 

 

「なんだ? 機械の音がするけど」

 

ガンっ、と一つ、何かがぶつかったような音とともに花壇が割れた。

突然庭に大穴が空き、空調の音を響かせ続ける

 

 

「エレベーターシャフト、みたいだね」

 

「なにか来るよ!」

 

モーターの音を響かせて下から籠が登ってくる。

また大きな音を立てて地上に現れたソレは合宿の時に見た移動式のラボに似た設備だった

 

 

「さぁさぁ、束さんとさくちんのメンテナンス講座のはじまりはじまり~」

 

「これは講義でしたの……」

 

 

まずは簪。打鉄弐式をISスーツごと展開すると櫻が手早くコード類をつなげていく

画面を流れる数値を見ているのが見ていないのか、束は微動だにしない

 

 

「ふむぅ、全体的にいい出来だね。ところどころさくちんの書き方でソースコードが書かれてるけど、ほとんどは君が一人でやったみたいだね、すごいよ。ん? 武装制御のコードはまた書き方が違うね。誰だい?」

 

「は~い、私で~す」

 

手を挙げてぴょんぴょんと跳ぶ本音。束が手招きをすると真横に着いた

 

 

「基本的にはいいけど、コレって実際は1/3くらいしか当ててないよね? 多分さくちんの入れ知恵だろうけど、全部当てたくない?」

 

「え? 出来るの?」

 

「もちろん。さくちんがこうしたのには理由がありそうだけど、コードだけなら書いたんじゃないの? ここを直すだけだし」

 

「あぁ、そこは前に全弾ターゲット追尾の設定で書いてたんですけど~、そうするとFCSが落ちちゃうんですよ~」

 

「なるほどねぇ、なら仕方ないなぁ。FCSは~。コイツか。あぁ、確かにちょっとスペック不足だね」

 

在庫あったかなぁ、と端末をにらみ始めた束がFCSの在庫を見つけ、無事に山嵐の改良を行ってメンテナンスノートに電子署名を残すと簪は楯無のもとに向かった

 

 

「はい、次の方~」

 

「は、はい。お願いしますわ」

 

「お、イギリスの娘だね。合宿の時は見れなかったからね~」

 

再び櫻がコードを繋いで束が画面を睨む。時々にやけているように見えるがどういう意味かはわからない

 

 

「さて、この機体はBT兵器の実証機みたいだね。ソースコードはグッチャグチャだしメインのBT系の回路も酷い。ちょっと数十分じゃ終わりそうに無いからコレはお預かりの上入院だね、それでもいいかい?」

 

「そ、そうですか。お願いします……」

 

ブルーティアーズを量子化せずに機体から降りると落胆がありありと見えるままホールに消えた

 

 

その後も楯無が続き、

シャルロットとその膝枕で寝ているラウラを飛ばして、次は一夏だ

 

 

「いっく~ん、次~」

 

「はいはい!」

 

「よっし、白式の中身、拝見~」

 

画面を睨む束は首をかしげたり「む~」と唸ったりして時々キーボードを叩いていた

 

 

「結論から言いましょう。私には基本的整備しか出来ませんでした」

 

「えっ、束さんですらそれだけかよ……」

 

「う~ん、やっぱりいっくんが男の子だからだと思うんだけど、マップがわけわかんなくなっててね、それで下手にいじると拗そうだから束さんは触りません。燃費やらいろいろあると思うけど、頑張ってね!」

 

「それだけっ!?」

 

「うん! はい、次!」

 

その後もシャルロット、ラウラと続いてそのままお昼ごはんと相成った。

食卓にはいつの間にかクロエとルイーゼも加わり、クロエが一夏やセシリアの視線を独り占めしつつもワイワイと食事は進んだ。

 

 

昼食が終わるとブルーティアーズの大手術がある束と櫻はラボに向かい、その他は思い思いの時間を過ごしていた。

 

芝生に寝そべる銀髪の2人も、温かい日差しの下"姉妹"でゆっくりと話しているようだ

 

 

「ラウラ」

 

「なんだ、姉さま」

 

「やっぱり私の目は恐いか?」

 

「う~ん、私はわかっているから恐怖は無いが、慣れていないと恐いと感じるかもな」

 

「そうかぁ。悲しいなぁ」

 

「私には姉さまの感じることは分からないが、今やるべきことがあるならば、それの支障とならない限りはどうでもいいことなんじゃないのか?」

 

「かなぁ? でも、織斑一夏やセシリアの目を見るとね、やっぱり傷つくと言うか……」

 

「でも、それが姉さまだから。胸を張って生きるしかないだろう? 私はそうすると決めたぞ?」

 

「そっかぁ、私も千冬さまに教えを請うかなぁ……」

 

「やっぱり2人きりだと姉さまは変わるな」

 

「気が楽だもん。いいでしょ?」

 

「まぁ、私はキリッとした姉さまも、今みたいな姉さまも好きだがな」

 

「は、恥ずかしいね」

 

「何を恥ずかしがっている。私は思った事を言っただけだぞ?」

 

「はぁ……お姉ちゃんは妹の行く末が心配だなぁ」

 

そう、クロエとラウラ。同じ施設で"作られ"全く別の人生を歩んだ2人が今この場で姉と妹として過ごしている。初めは若干の拒絶があったものの、今となってはこの有り様だ。

 

 

「ラウラ~、あっ、いたいた。クロエさんも。これからお母さんがお茶しようって言ってたからさ、よかったらどうかな?」

 

そして、シャルロットもすでにリリウムを母と呼ぶことにも慣れ、彼女の産みの母の元へも挨拶を済ませていた。それぞれが新しい道を進んでいく。それは彼女らだけではなく、地下でいそいそと作業を続ける天災達にも言えることだった。

 

 

 

「イギリス人ってなにか発想はいいけど手段がズレてるっていうか……」

 

「だね……。アンビエントはBFFが作った機体だけど、企業連の統合情報使ってるからこんなにひどいコードじゃなかったよ」

 

「ま、今はこの機体に専念だね。これを全部書き換えられるかな? How hard can it be?」

 

「Don't say that!」




最後のやりとりの元ネタは某島国の自動車番組

セシリア「Poweeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeerrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!!!!!!!!!!!」

リリウム L`・ω・)<Hello

シャルロット「Power is anything, more is better. だよ?」

櫻「英国面自重しろ」

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