Who reached Infinite-Stratos ? 作:卯月ゆう
チューリッヒで飛行機を乗り継ぎ、ヒースロー空港に降り立ったシャルロットは入国審査を終えてゲートを出た
さすがに10数時間のフライトは堪えたようで、顔には疲労の色が見え隠れしている
「シャーロット!」
声がした方を見ればリリウムの姿があった。
迎えに来てくれたようでシャルロットはどこか安心した
「ただいま。お母さん」
「ええ、おかえり。さ、ひとまず家に行きましょうか。それから家具を揃えないと」
「ふぇぇ、やっと休めると思ったのに」
「まだロロットの部屋の家具を買ってないのよ、適当に揃えて気に入らなかったら嫌だし」
「お母さんのチョイスで良かったのに」
「そうだった? ごめんね」
久しぶりに直接言葉を交わすシャルロットとリリウムは言葉と裏腹にとても楽しそうだった
止めていた車に乗り、30分ほど進んでハイド・パークの横を抜け、テムズ川を渡るとガラス張りの三角の建物が見えてくる
「シャード・ロンドン・ブリッジ、あれの65階よ」
「高いねぇ」
「ヨーロッパで一番高いビルよ。綺麗でしょ?」
「スゴイね、
「ええ、いいでしょ?」
駐車場に車を入れ、エレベーターで一気に登るとフラット(マンションフロア)の最上階、65階にたどり着く
エレベーターホールを右に進み、黒い扉とインターホンが見える。日本と違い、表札は付けない。
艶のある重そうな扉を開けると長い廊下と数々の扉。
「ホールを曲がって突き当りの右の部屋がロロットの部屋よ。突き当たりは私の寝室ね。正面の大きい扉はリビングダイニング、入ればわかるけど、キッチンや何かも全部そっちからいけるから。あとは自分で探検してみて」
「う、うん」
「圧倒されるのはわかるけど、ここがイギリスでの住まいだから、慣れてね」
じゃ、部屋を見てから家具を買いに行きましょう。と言うリリウムに従い、ホールを抜け自室に入るとまずは一面のパノラマが広がる。東向きで眼下にはロンドンブリッジ駅やシティホール。遠くに目を向ければカナリーワーフのビル群が目に入る。
「すごい景色……」
「でしょ? リビングも東向きだからこの景色ね。夜景を見ながらご飯を食べるなんて素敵じゃない?」
「だね。素敵な部屋だよ。家具はシンプルにまとめたいなぁ」
「そこはシャーロットのセンス次第ね。じゃ、買いに行きましょうか」
「そうだね。お店にあてはあるの?」
「まぁね、車でちょっと行ったところにあるから行きましょう」
そういったリリウムに連れて来られた家具店でシャルロットは白いダブルベッドに白いガラス天板のローテーブル、黒い円形のラグ、スチールパイプのテーブルなど、白と黒を基調に大量に買い込んだ。
他にも小物やリリウムの使う家具を買って車に押し込むと行きつけのお茶と茶菓子の店に向かう。
ロンドン橋を渡り、シティを抜け、キングス・クロス駅のそばにある小さな店の前に車を止めた。
シャルロットが始めてリリウムと顔を会わせた帰りに寄った店だった
「やっぱりここなんだ」
「そうよ、この前のスコーン美味しかったでしょ?」
「スゴイ美味しかったよ、櫻もラウラも気に入ったみたいだし、日本に戻るときは買って帰ろうかな」
「そうするといいわ。日本にいても言ってくれれば送るから」
「にひひっ、やったね。今日も買っていくの?」
「もちろん、毎月茶葉とスコーンを買っていくの。帰ったら夕飯だから、明日のおやつね」
「コンフィチュールもあるんだ、美味しそう」
「コンフィチュール?」
リリウムが謎の言葉に首を傾げるとシャルロットが慌てて解説した
「あ、えっと、フランス語でジャムの事をコンフィチュールって言うんだよ。ドイツではコンフィテューレって言うんだって」
「そうなの、知らなかったわ。ずっとイギリスに住んでるからおとなりの国とは言えあまり良くわからないのよね」
「まぁ、他言語の国だから仕方ないよ。特にフランス語とドイツ語は独特だから」
「紫苑のドイツと日本の混じった中途半端な英語は時々わからなくなるわ」
「櫻のお母さん?」
「ええ。まだ会ったことなかった?」
「多分ないね。どんな人なの?」
「う~ん、櫻ちゃんを知っているなら彼女をもっと濃くした感じ、というのかしら。彼女の色んな所を強化したというか……上手く言葉に出来ないわね。見た目は普通の日本人よ」
「そうなんだ。明々後日会えるし、どんな人か楽しみだよ」
「色々とすごい人よ。櫻ちゃんのお母さんだし」
シャルロットの中で少し歪んだ紫苑像が出来上がる中、リリウムはスコーンに合いそうなジャムを適当に見繕って会計を済ませた
「さて、家具も買ったしおやつも買った、夕飯の食材は家にあるから……帰ってご飯を作りましょうか」
「うん! お母さんの手料理は始めてだから楽しみだよ」
「シャーロットが帰ってくるからごちそうをつくろうと前もって準備しておいたからそんなに時間はかからないはずよ。すこし手伝ってね」
「もちろん!」
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いざ夕飯をつくろうとリリウムとシャルロットは広いキッチンに2人で入り、手分けして調理を進めていた。リリウムの言うとおり、あとは簡単な調理で完成の段階まで準備されてたため、シャルロットの仕事といえば焼く煮る炒めると言ったものばかりだった。それをリリウムが盛りつけダイニングに持っていく。母子の立場が逆な気もするが、この際気にしてはいけない
肝心なメニューはオニオンスープとステーキ、付け合せにハッシュドポテト。それとサラダとプディング。
なんとまぁ、まともなメニューだこと。などとは言ってはならない。もちろんサラダは生野菜だ
「さて、ひと通りメニューも揃ったし、食べましょうか」
「「いただきます」」
まずはシャルロットがスープを一口。思わずニンマリしている
「どうかしら?」
「玉ねぎの甘さが美味しいよ。ちょっと小腹が空いた時にいいかも」
「よかった。どんどん食べてね、お肉以外は少し残ってるから」
「は~い」
そのままシャルロットはリリウムと始めて食卓を共にし、お互いよくしゃべり、よく笑った。美味しい料理と美しい夜景。始めての食卓には出来すぎたくらい素晴らしい物が揃っていた。
食べ終わってソファでゆっくりしていたシャルロットに紅茶でも出そうと顔を覗き見たリリウムは思わず表情をゆるめてしまう
――あらあら、もう寝てるのね。いろいろあったし、疲れてるのかしら?
そっとシャルロットを抱えると自分のベッドに寝かせ、彼女も支度をしてから隣に入った。
――明日はシャーロットの家具を組み立てないとね。結構不器用だから……彼女に任せましょう
2人にとって久しい誰かが隣にいるぬくもりを感じながら深い眠りについた。どちらも幸せそうな笑顔を浮かべながら
二重投稿されてた話を削除しました。報告ありがとうございます。
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