Who reached Infinite-Stratos ?   作:卯月ゆう

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閑話: 後日談

合宿最終日、朝食をとった後に部屋で荷物やその他の整理をしていると、本音が押入れにあるものをみつけたようだ

 

 

「せっしー、なぎなぎ~、コレなんだと思う~?」

 

「どうしましたの? コレはっ……」

 

「モロに御札だね、それも封印な感じ?」

 

「わ、わたくし、日本ではこのようなアミュレットは悪いものを封印したり追い払うと聞いたことがありますわ」

 

「そうだよ~、でもほとんど迷信だよ~。ってことで、えいっ」

 

「「あぁぁ~~!!」」

 

勢い良く御札を引き剥がすと……

 

 

「ほらね~、なにもないんだよ~」

 

「で、で、でも、悪しき者が布仏さんに取り憑いたり……」

 

「本音、ドンマイっ」

 

「だからこんなの迷信だ――」

 

 

ドンドンとドアが激しくノックされる。

今の時間は他の生徒も各自の部屋に居るはずなのに

 

ガチャガチャと荒っぽくドアノブが引かれ、再びドアが叩かれる

 

 

「ほ、本音っ! セシリアが……」

 

「きゅ~ん」

 

「こ、これは冗談じゃないね。も、戻そう」

 

だが、乱暴に剥がしたせいか、御札は真っ二つに。

ドアも軋み、嫌な音を鳴らしている

 

 

「な、なぎなぎ? 御札、破れちゃってる」

 

「嘘でしょ~! あぁ、ここは何階だっけ……こりゃ飛べんな……」

 

「現実逃避しないでよ~。こうなったらさくさくに頼んで」

 

携帯で櫻に助けを求める、だが、

――お客様のおかけになった番号は、電源が切られているか、電波の届かないところに――

 

 

「終わったぁぁぁ!!!」

 

「え、天草さんとも連絡取れないの? んじゃぁ……シャルロットちゃんでもラウラちゃんでも!」

 

「あぃ!」

 

ドアは一定の感覚で大きく軋む。おそらくタックルをかましているのだろう

木のドアにはすでにヒビが入り、あと数回突っ込まれたら吹き飛びそうだ

 

携帯を手に、本音は力いっぱいに叫んだ

 

「助けて! でゅっちーっ!」

 

 

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「ふぁっ!」

 

「あ、起きた? すごいうなされてたけど、悪い夢でも見た?」

 

「え、ん?」

 

「大丈夫? 今は帰りのバスだよ?」

 

「あぁ、大丈夫。ちょっとこわい夢を見ただけから」

 

「最後におもいっきり『でゅっちーっ!』って叫んでたけど、どんな夢見たの?」

 

ちらりと後方を見るとシャルロットが苦笑いしている

 

 

「う~ん、旅館の部屋にあった御札を剥がしたら、ドアをバンバンされるんだよ~。それでせっしーは気絶しちゃうし、助けを呼ぼうにも、さくさくは電話に出ないから、でゅっちーに助けを求めたところで終わっちゃった」

 

「うわぁ、ソレって昨日の夜見たホラー映画のまんまじゃん。本音って結構そういうのに影響受けやすいタイプ?」

 

「かな~? ちなみになぎなぎは窓から脱出しようとして、高さで諦めてたよ~」

 

「あぁ、私ならやりそうだわ。癒子は?」

 

「そういえばいなかったかも~」

 

「まさか、ドアバンの主って……」

 

「ゆっこかもね~」

 

 

 

 

寝言で名前を呼ばれたシャルロットはクラスメートから壮絶ないじりを受けていたのは言うまでもない

 

 

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時間はさかのぼり、昨晩のことだ

千冬は一日の仕事を終わらせ、自室に入ろうとすると……

 

 

「さて、今日の業務も終わったし、さっさと寝る……か……。おい、束、ここで何をしている」

 

「え? 見ての通り、寝ようかな~って」

 

「一夏は?」

 

「いっくんなら隣の部屋で寝てるよ。朝起きたらあのおっぱいが目の前にっ!」

 

「はぁ……、それで、お前のことだ、ただ寝にきたわけでもないだろ」

 

「お話しながら少し飲もうよ、修学旅行みたいに!」

 

「お前は修学旅行に行ったこと無いだろ」

 

「そんなことはモーマンタイ! 次はいつ会えるかわからないしね。久しぶりにちーちゃんに会えて嬉しいんだよ。話したいこともいっぱいあるし」

 

懐から瓶ビールを取り出すと慣れた手つきで栓を抜く

一本を千冬に手渡すと、また別の銘柄を懐から取り出してまた栓を抜いた

 

 

「ほう、ドイツビールか、前に送ってきたのとは違うな」

 

「ドイツには星の数ほどのビールがあるからね~。さてさて、再会にカンパ~イだよ!」

 

「ああ、乾杯」

 

瓶を軽くぶつけ、一口煽る

 

「あぁ、生き返るな」

 

「おっさん臭いよ……」

 

「お前も仕事をすれば解る……ってちゃんと働いていたな。仕事終わりのビールは美味いものだろ?」

 

「う~ん、わからなくは無いけど、休みの日に庭で飲むビールがいいかなぁ」

 

「確かに、休日にのんびり飲むのもいいな。ドイツのつまみはやっぱりソーセージなのか?」

 

「あとはじゃがいも料理も多いよ。でもおつまみと言うよりは、夕飯の時に飲むのが多いかなぁ? おつまみって概念が無いっていうか。飲むときはビールだけひたすらに飲むんだよね」

 

「ほほぅ、ためになったな。休暇が取れればドイツに行きたいものだ」

 

「その時はママさんにも言ってパーッとパーティーしたいね!」

 

「だな。夏季休暇のためにも、ガッツリ働かねばな」

 

「それで体壊したら元も子もないけどね」

 

「まぁ、そうだな。程々に頑張って2週間位一気に休むさ」

 

「そういうところは日本的だよねぇ、あそこも」

 

「病気での休暇は有給とは別だぞ?」

 

「それでも残業とかはあるわけでしょ?」

 

「まぁな、スケジュールどおりに進めなくてはならないのが教育機関だから、仕方のないことだが」

 

「大変だねぇ」

 

「お前も苦労が無いわけではないだろ?」

 

「最近は部下の扱いにも慣れたし、ほとんど指示と確認だけが仕事だからつまんなくなってきちゃって」

 

「お前がそんなことを言うようになるなんてな」

 

「私だって成長するんだよ」

 

 

そして、気がつけば空き瓶が増え、夜が明けていた

2人は親友として、再会を約束して別れた

 

 

「また、会おうね。ちーちゃん」

 

「ああ、絶対にな」

 

 

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「ねぇ櫻、織斑先生の顔色少し悪くない?」

 

「なんか二日酔いみたいな感じだね……」

 

「なにか思い当たることでもあるの?」

 

「ウン……」

 

もちろん、昨晩クロエから束が居ないと連絡を受けていたから、おそらくと言うか絶対にソレだろう。

 

 

「篠ノ之博士絡み?」

 

「タブンネ」

 

「櫻、さっきから片言だけど……」

 

「ソンナコトナイヨ、アア、キョウモイイテンキダナー」

 

「無理しなくてもいいんだよ? 少し寝る?」

 

「そうするよ。おやすみ」

 

「また着く頃に起こすから」

 

「お願い」

 

 

 

 

 

そうして、舞台は再び、学園へと戻ってから、夏休みへと突入する


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