Who reached Infinite-Stratos ?   作:卯月ゆう

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合宿開始っ!

合宿当日、移動中のバスの中では本音を始めとする数人が集まって大しりとり大会が始まっていた。

一夏ラヴァーズの面々も(と言っても1組ではセシリアと箒だけだが)も強制的に加えられ、セシリアが日本語のボキャブラリーの少なさで苦戦していた

 

一方の企業連組は櫻とラウラが熟睡、シャルロットは2人を見守りつつ、周囲と普通に雑談をしたりと有意義に過ごしていた

 

 

 

「全員自分の席にもどれ、間もなく到着だ。寝ている奴は周囲の者が起こしてやれ」

 

織斑先生の一声で散っていた人間が戻る。

シャルロットが櫻とラウラの肩をゆすり起こすとバスはトンネルに入った

 

その長いトンネルを抜けると、雪国……ではなく、左手には海が広がり、湾岸線にちらりと建物が見える

 

 

「全員戻ったか? よし。到着次第自分の荷物を持って部屋に移動する。入り口で私か山田先生に報告、部屋の面々が揃ったところで部屋の鍵を渡す。部屋に荷物を置いたら自由時間だ。先に行っておくが、羽目をはずし過ぎないよう、気をつけろ」

 

 

宿の正面に止められたバスから次々と降りては荷物を受け取って部屋に向かう。同室となった櫻、ラウラ、シャルロットの3人は眠い目をこする2人をシャルロットが先導して部屋にたどり着くと荷物から勝手に水着やタオルを引き出し、2人を引きずってそのまま更衣室へ向かった

 

更衣室で櫻とラウラを着替えさせようと脱がせているところに本音がやってきた

 

 

「でゅっちーも海に行くの~?」

 

「本音ちゃん、ちょっと手伝ってくれないかな?」

 

「コレは……にひひっ。ちょっとまってね~」

 

そう言って本音がバッグを漁ると、中から白いきぐるみのような何か

それをニコニコしながら慣れた手つきで櫻に着せると「借りて行くね~」とそのまま引きずって言ってしまった

 

 

その後、ラウラを着替えさせると完全に覚醒したようで、手近なバスタオルで完全武装し、部屋に戻ろうとしたところをシャルロットに海へ強制連行された

 

 

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「かんちゃんも着ちゃおうよ~。さくさくと私とお揃いでさ~」

 

「なんで海に来てまでソレを着なきゃいけないの?」

 

「海だよ!? ペンギンが輝くんだよ~」

 

「私はコレでいいから、櫻さんも自分で持ってきたのがあったはず」

 

櫻は意外とノリノリで、しろくまを身にまといあちこちでいろんなクラスの人と戯れていた

その様は簪にも見えたようで「嘘だろ」みたいな顔をしつつもどこか納得していた

 

 

「私は櫻さんほどノリが良くないのは本音も知ってるはず。それにコレはお姉ちゃんが……」

 

「おじょうさまに選んでもらったの~?」

 

「そ、そうだよ。だからちゃんと着ていたい」

 

「なら仕方ないかなぁ。今度は着てね~?」

 

「気が向いたらね」

 

そう言いつつ目を逸らすと白い塊がシャルロットに連れられて一夏の方に向かっている

 

 

「本音、アレも本音のきぐるみ?」

 

「えぇ~? アレは違うよ~。誰だろうね~?」

 

「多分触らない方がいい。あっちで鷹月さん達がビーチバレーやってるから入れてもらおう」

 

「だね~。触らぬ神になんとやらだよ~」

 

 

 

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いつの間にかしろくまの着ぐる水着を着せられていた櫻は本音の仕業と早々に結論付け、貴重な自由時間を堪能することとした。

いろんな人とおしゃべりをしたり、波打ち際をプカプカと浮いていたり、パラソルの下でまったりしたり。

 

簪がビーチバレーをしようと誘ってきたのもそんな時だ。本音は一夏たちを誘いに行ったらしい

 

 

「っし、いっちょやりますか」

 

「お~、櫻ぁ来たねー」

 

「櫻さんは私達のほうね。向こうは織斑君達」

 

「なるほど。普段の鬱憤ここではらそう。IS無き今、奴らは只の人。我らと変わらん。勝ちに行くぞ」

 

「「お~っ!」」

 

 

ここに一夏、シャルロット、ラウラ組 対 櫻、鷹月、櫛灘組のビーチバレーが始まった

 

 

 

「お、相手は櫻か。敵に不足なしだな」

 

「ふっふ~ん。一夏くん、私が背の利を活かしてフルボッコにしてあげるよ!」

 

「櫻っ! 私を忘れないでもらいたい!」

 

「やるからには勝ちに行くよ。相手が雇い主だろうとね」

 

「やる気は十分、ではこの勝負に勝ったらボーナスを少し出そう」

 

「「よしやろう」」

 

「私達も居るからね。そう簡単に負けないよ!」

 

「櫻さん、そのボーナスは私達にも出るの?」

 

「欲しい? なら出すよ」

 

「「絶対負けない!」」

 

 

厳正なるじゃんけんの結果、サーブは一夏側から、ラウラが放つことに。

若干ボールが大きいような気がするが、ボールを宙に放り上げると鋭いサーブを放つ

 

 

「あい!」

 

櫛灘が上手くサーブを拾うと鷹月が櫻につなぐ

 

「櫻さん!」

 

「っしゃぁ!」

 

一夏の顔面めがけて放たれたビニールのボールは当たる直前で鋭くカーブし、カバーに入ったシャルロットも届かず、砂浜に突き刺さった

 

殺人スパイクを放った本人はひょうひょうとハイタッチをしている。そしてチラリと一夏を見ると口角を上げた

 

 

「くっそぉ、あんなスパイク打つなんて聞いてねぇぞ」

 

「ビニールボールの不安定な機動を上手く使ったんだね。ならこっちも同じことをするだけだよ」

 

「だが、次のサーブは向こうだ。また櫻ならたまったものではないぞ」

 

警戒度を跳ね上げた3人の予想とは裏腹にボールを持ったのは櫛灘だった

少し跳ね上げて地面に叩きつけたりと感触を確かめている

 

 

「7月のサマーデビルと呼ばれた私のサーブ、受けてみろっ!」

 

パン、といい音を立てて放たれたサーブはうまい加減でふらふらと読めない機動を描く

 

 

「はい!」

 

声を上げてラウラが拾い、一夏に回す。

そしてそのまま打ってきた

 

 

「ふわっ!」

 

「惜しいね! 次あるよ!」

 

まさかの2タッチに惑わされ、試合は1:1に。

 

 

「そういえば何点マッチにする? 長いから7でいい?」

 

「だな。サクサク行こうぜ」

 

「ならちゃっちゃと突き放して勝ちたいね」

 

「こっちのセリフだ。行くぜ」

 

 

その後も観客を徐々に増やしつつ白熱した試合展開で進み、6:6で迎えた櫻のサーブ。

しろくまがボールをはね上げ、長身が宙に踊る。

そしてボールを余った袖で打った

 

「あっ!」

 

見ていた誰かが声を上げるも放った本人は無表情。ボールもまだ宙に浮いている

そして高く浮いたボールはそのまま前衛のシャルロットの元へ

 

「一夏っ!」

 

軽く上げられたトスに反応して一夏が腕を振り上げ跳び上がり、鷹月が身を屈める

 

 

ブンッと一夏の腕は空を切り、影からラウラが飛び出した。

 

「なっ!」

 

鷹月の顔が驚きに染まると

 

「はぁっ!」

 

ラウラがそのまま跳び上がりスパイクを放つ

 

 

反対のコートで待っていたかのように櫻が手を上げて跳ぶとボールはそのまま跳ね返り着地したラウラの頭上に落ちる

 

 

「っしゃぁ!」

 

雄叫びとともにガッツポーズをかます櫻、それに駆け寄る鷹月と櫛灘。一方ではボーナスをのがした2人がうなだれ、一夏は悔しそうな顔をしていた

 

 

「楽しんでいるようだな」

 

声のした方を見れば、黒いビキニを身につけた織斑先生と白いパーカーを羽織った山田先生の2人が来ていた

 

 

「ビーチバレーか。山田先生、一戦どうですか?」

 

「え、えっと、私は……」

 

「織斑先生こっち~」

 

「布仏、それは……水着か?」

 

「そうですよ~。さくさくとおそろいなのです」

 

「なら山田先生はこっちだね。簪はどっちに行く?」

 

「えぇっ、私はそんな、スポーツはにが――」

 

「私は本音の方につくよ」

 

「なら一夏くんは――」

 

「「それはだめ(だよ~)」」

 

「えぇ~。じゃ、癒子ちゃんなら?」

 

「ギリセーフかな~」

 

「というわけで癒子ちゃん、カモン!」

 

「よっし、私の本気、見せてやるっ!」

 

 

そうして第2回戦、教師を織り交ぜて始まった試合は織斑先生と櫻が同じように動き、基本的にはほぼサーブやアタック拾いに専念し、時折山田先生や本音を狙ってスパイクを放って点を稼いでいた。

 

 

「せ、先輩、そろそろ勘弁して下さい……」

 

「まだゲームは終わっていないようでな、最後まで手は抜かない主義なんだ」

 

「ひぇぇぇ~」

 

「さくさくもそろそろ……ね」

 

「私も織斑先生と同じかな。最後まで手は抜かないよ」

 

「はぅぅぅぅ」

 

 

そしてバテつつある山田先生と本音を置いてけぼりに、櫻と織斑先生が打ち合い、時折簪や癒子がフェイントをかけて相手を揺さぶっていた。気がつけばゲームは6:5で本音達がリードで最終局面に入っていた

 

 

「山田先生、コレで終わっちゃいますよ。気合入れてください!」

 

「そう言われても~」

 

「櫻はまだやる気みたいですから、こっちも行きましょう」

 

「はわわ~」

 

相手側、簪のサーブで始まる。

うまいこと癒子が拾って櫻につなぐ。ソレを山田先生が打ちやすい位置に打ちやすいスピードで上げるとうまいこと打ってくれる。山田先生は運動音痴、というわけではないようだ

――おそらく体の一部が邪魔なのだろう

よくあるお遊びビーチバレーのテンションでボールを扱う4人と先生(教え子)に負けたくないと意地を張ってガチで遊ぶ2人が入り混じるとどうなるか。

 

ボールが破裂するギリギリの力で放たれるスパイクの応酬だった

 

 

 

そんな打ち合いを制したのは本音、簪、織斑先生組。だが、先ほどのゲームのように喜ぶ姿は無く、肩で息をする簪と地面に突っ伏す本音の姿だった。

 

山田先生は普段の姿からは想像もできないタフネスの持ち主だったようで、肩で息をしつつもスポーツドリンクを一口飲むとかなり回復していた

 

 

「久しぶりに楽しい時間だったな。たまにはこうして生徒との交流を持つのも良い」

 

「そうですね。一人ひとりはこんな子だったのか、って気づかないところに気づけました」

 

「それは天草のことか?」

 

「いえ、彼女だけじゃないですよ。まわりで応援している子もそうです。普段から真面目な子もこういった場では素がでますからね。確かに天草さんは織斑先生と同じ雰囲気をまとっていましたけど」

 

「さて、どこか日陰で一休みしてから戻るとしようか」

 

「また仕事ですかぁ。また休みの日に来たいですね」

 

「そうだな」

 

 

あとから聞いた話では、織斑先生のスタイルを羨む生徒も居た上に、山田先生がバレーをする姿をみて下品な笑いをあげていたのも居たとか。つくづく恐ろしいと思った櫻だった

 

 

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遊び疲れた生徒たちが楽しみにするイベントといえば夕食。

広間に並べられた会席膳には刺し身を始め、様々な海の幸を使った料理が並んでいた。

 

基本的には会席膳の前に座って食べるのだが、様々な文化を持つ生徒がいるこの席にはテーブルも用意されては居るが、どこぞのブリティッシュは郷に入れば郷に従えの心でも持ち合わせているのか、しっかりと会席膳の前に正座していた。

隣は空席。これが意味するものとは

 

 

「やっぱりおりむーはモテモテだね~」

 

「セシリアはすごいつらそうだけど」

 

「ちょっと突っついていいかな~?」

 

「面白そうだけど可哀想だからやめておきな。幸せな瞬間の為に彼女なりの努力があったはずだから」

 

「あの姿を見れば解るね~」

 

「ささ、早いとこご飯食べてお風呂行こ」

 

「「いただきま~す」」

 

 

その夜、部屋に戻った本音の報告により「セシリアはエロい」という事実が発表され、本人が否定に奔走すると言う事件があったものの、特に大きな波乱は無く合宿1日目は終わった。

 

 

 

「ロッテとラウラが居ない……」

 

部屋に一人残された櫻を残して


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