Who reached Infinite-Stratos ? 作:卯月ゆう
大通りから少し入った住宅街に佇む小さなお店、『petit animals』
今日もまた、常連さんがお買い物に来ていた
「うさこさ~ん、頼んでたもの出来てますか~?」
「もちろん。のほほんちゃんの狐の水着と、簪ちゃん用のペンギン、さくちゃん用のしろくまね」
「えへへ~、ありがと~。期待以上の出来だよ~。全部で幾ら?」
「全部で10万と5千だけど、のほほんちゃんだから10万でいいわ」
「ありがと~。もっと高いかと思ったよ~」
「今回は素材にお金が掛かっただけだからね」
「これで合宿は大丈夫だ~」
「あら、そうだったの? 気をつけて行ってきてね」
「は~い。覚えてればおみやげ買ってくるよ~」
大きい紙袋を持ってホクホク顔で店を出た本音はコレをどうやって2人に着せるかを考えていた
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本音が店を出る少し前、駅前のショッピングモール『レゾナンス』のファッションフロアには更識姉妹がいた。
楯無が簪の水着を見立てているようだ
「簪ちゃん、これなんか似合うんじゃない?」
そう言って見せたのは空色のシンプルなビキニ。
ただ、簪は不満そうだ
「それはちょっと……」
「えぇ~、いいじゃない。シンプルで、簪ちゃんにピッタリだと思ったんだけど」
「もっと露出が少ないのがいい。――お姉ちゃんみたいにスタイル良くないし……」
「簪ちゃんは良い身体してるんだからこれくらい気合入ってもいいと思うんだけど。ならコレは?」
次は白に水色の水滴があしらわれたベアトップと黒のショートパンツ。コレなら簪も文句ないだろうと楯無自信のチョイスだった。
簪の顔を伺うと、悪くない感触
「これは?」
「いいと思う。あまり派手じゃないのがいい」
「なら決まりね。ちょっと買ってくるから待ってて」
「いい、自分で――」
「たまにはお姉ちゃんにカッコつけさせなさい」
「ありがと」
最近は素直にかっこいい姉だと普段から思っているのだが、楯無には思うところがまだあるようだ。ここは黙って姉の好意を受け取る
「じゃ、次は私の買い物かしら」
「おなかすいた」
「そうね、クレープでも食べる?」
「うん、そうしよう」
姉妹がクレープを求めてエスカレーターを下っていった
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同居人や友人が水着を買いに外に出る中、自室で黙々と荷造りするのは櫻だ
スーツケースに袋に分けられた衣類を押しこみ、荷物リストにチェックをつけていく
「荷物はこれでよし。船も横浜に停泊中。大丈夫そうだね」
机の上で携帯が震える
「もしも――」
「やっほー、束さんだよ!」
「束お姉ちゃん、どうしたの?」
「明日から臨海学校でしょ? 束さんもあそびにいくヨ!」
「え?」
「だから、束さんも海に行くよ!」
「お仕事は全部私がやるからなんにもないよ?」
「束さんは箒ちゃんにISを渡すだけだよ」
「なにそれ聞いてない」
「言ってないもん。それにお披露目会の予定も立てたよ」
「なにそれこわい。って冗談じゃないよ! コア作ったの? それにお披露目会ってどうせまたどこかのお国に迷惑をかけるんでしょ?」
「箒ちゃんのためならなんでもしちゃうのが束さんなのだよ。お披露目会はミサイルなんてチャチなこと言わずにもっと派手にやるよ!」
「はぁ……千冬さんに言いつけるよ?」
「ちーちゃんにはもう遊びに行くって言ってあるも~ん」
「なんでまた……。仕方ない。それで、箒ちゃんのISは?」
「さくちんの夢見草での技術を活かした第4世代だよ。基本的には一般企業の第3世代なんて目じゃない性能だね」
「リミッターはかけてるよね?」
「もちろん。箒ちゃんは力を手に入れたら溺れるタイプだからね。束さんが直接作ったものの中では一番スペックが低いね。でも箒ちゃんの成長次第でリミッターは外れるかな」
「 無段階移行シームレスシフトってヤツ? 夢見草はほとんど変わらないんだけど」
「そうだよー。夢見草は基本スペックがおかしいから進化するところが違うんじゃないかな? とにかく細かいことは明後日ね~」
一方的に切られてしまい、仕方なく携帯をポケットに戻す
波乱の予感しかしない合宿に頭痛のタネがまたひとつ増えた櫻だった