Who reached Infinite-Stratos ? 作:卯月ゆう
帰りの飛行機でさんざん騒ぎ、結局数時間しか寝なかった3人は、空港からヘリで学園に戻り、5限目まであと10分のところで教室に滑り込んだ
「間に合ったぁ」
「ギリギリだな、まだ間に合ったからよしとしよう」
「ふい~、疲れたぁ」
時差や遊び疲れてヘロヘロの3人に教室中が注目する中、5限目の担当、織斑先生が教室に入ってきた
「よし、3人は戻ってきてるな。では授業を始める」
そうして始まった5限目だが、3人は授業の内容よりも睡魔との戦いに意識を割いていた。
もちろん、千冬も気づいていたが、それぞれの事情もあり、特に当てたりはしないでいた。最も、寝たら容赦する気はなかったが
そして授業の終わりにラウラに近づくと「硝煙臭いぞ、シャワーくらい浴びてこい」と言って教室を去った
「織斑先生に硝煙臭いと言われてしまった……やはり分かる人には気づかれてしまうか」
「あと1時間の辛抱だよ。そしたら即効で部屋に戻れば」
「そうだな。そしたらネーブルの調整を頼む」
「おっけい。アリーナは許可とってないからシミュレーションだね。第1アリーナの整備室でいいかな」
「分かった。終わったら行く」
「はーい、もうすぐ初めますよー。1日の終わりですから、あと1時間頑張りましょうね」
「やまやだ。寝れる……」
「だな」
シャルロットも同じように考えたらしく、企業連組3人は机に伏して睡魔を受け入れていた
山田先生は起こそうとしていたらしいが、誰も起きなかったとか。
そして締めのSHRになると3人は気力で意識を覚醒させ、終わるとそれぞれの行き先に向かった
「さくさく~。お疲れ様~」
「本音ぇ、疲れたぁ」
「あとで甘いモノ食べようね~。そしたら元気になるよ~」
「甘いモノは……」
「まさかイギリスでスコーンとジャムを買って、ドイツでグミを買って帰ってきたとか言わないよね~?」
「そのまさかです。グミは買ってないけど」
「私のもある~?」
「もちろん。美味しい紅茶もセットでね。簪ちゃんとセシリアでも呼ぼうか」
「せっしーは……」
3人がいない間に一夏がセシリアの作ったサンドウィッチで医務室に運ばれた話をすると、櫻は「マジか……」という顔持ちで心のなかでのセシリアに対する評価を少し下げた
「簪ちゃんと3人でやろう」
「それがいいよ~」
「んで、私はこの後ラウラの専用機をいじらないといけないから第1アリーナの整備室に居るね。夕飯に来なかったら多分そこでくたばってる」
「手伝おうか~?」
「アレばかりは国防機密もあるからダメ。本音の手も借りたいところなんだけどね~」
「仕方ないね~。なんにせよ呼びに行くよ~」
「ありがと、お願いね」
「おまかせ~、ここでさくさくに恩を売っておけば卒業後に雇ってくれちゃったり~」
「本音の技術力なら今すぐにでも欲しいくらいだよ。でも家が家だからなぁ」
「おじょうさまに話をつければいいよ~」
「簡単に言わないでよ、絶対ガード固いでしょ」
「そうでもないかもよ? どっちかというとお姉ちゃんのほうが……」
「本音ってお姉さん居たの?」
「2つ上の3年だよ~。整備室に行けば居るかも。地味ぃなメガネの人だよ~」
「気が向けば声をかけておくよ。じゃ、あとで」
「寝ないでね~?」
「どうだろ」
整備室で準備を整え、一息ついて壁に寄りかかると、途端に睡魔が襲い掛かる。最初はなんとか抗っていたものの、次第に抵抗もできなくなり、そのまま床で寝てしまう
櫻が目を覚ましたのはなぜか医務室のベッドで、枕元には本音と簪がいた。
奥のベッドを見れば銀髪が見える。おそらくラウラだ。なぜここにいるのだろうか
「起きた? 大丈夫?」
「大丈夫、ふぁぁぁ。眠い」
「整備室でさくさくが倒れてる~って大騒ぎだったんだよ~。らうらうは廊下で倒れてたみたいだし~」
「櫻さんとボーデヴィッヒさん、2人ともここ3日何があったの?」
「いろいろあってねぇ、みんな寝不足&過労だよ」
「はぁ……櫻さん、本当に無理しないでね。みんな心配してるから」
「うん、ありがと。部屋に戻って寝るよ。夕飯はゼリードリンクでいいや」
「肩貸そっか~?」
「大丈夫、部屋までなら」
その夜、一夏によって、部屋で倒れているシャルロットも発見されており、3人の散々たる様はクラスの中での3人のイメージを程よくぶち壊した
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翌日、織斑先生と山田先生が揃って教室に現れると、誰かが「デュノア君は大丈夫だったんですか~?」と質問を投げた
「デュノアについてだが、まぁ本人から言わせるか、入って来い」
呼ばれて教室に入ったシャルロットは女子の制服に身を包み、首にはグレーのチョーカーがついていた
「えっと、イギリスのBFFから来ました。シャーロット・D・ウォルコットです。今まで騙してきて申し訳ありませんでした。今はデュノアとも縁を切り、イギリス人としての生活を始めることになりました。また、皆さんと仲良く慣れたら嬉しいです」
そう言って深々と頭を下げる。クラスのだれも文句ひとつ言わなかった
セシリアは本家の姓が出てきたために驚きの表情を見せていたが
「というわけだ、本人もこう言っている。許してやれ、とは言わないが、考えてやれ」
無言を肯定と受け取り「他に何かあるものは」と促す、するとラウラが手を上げた
「ボーデヴィッヒ。なんだ」
「私からも皆に謝罪をしたい。この前の事故でも大きな迷惑を掛けただろう。済まなかった。私の態度で不快な思いをさせたかもしれない、重ねて詫びる。私が軍を追い出され、皆と同じ立場に立って初めて見えたものがあった。これからもっとこの世界を広く見てみたい。こんな私に、これから付き合ってもらいたい」
「最後に私も、いいですか?」
黙って頷く千冬。山田先生は置いてけぼりだ
「この前、私達が休んだのはこのためなの。2人とも、自らの過去と決別して、新しい自分をつくりあげようとしている。私からみんなにお願いがある、2人をまた認めてあげて欲しい。クラスメイトとして、友人として。シャルロットはともかく、ラウラは軍を追い出される形で辞めて、初めて世間に触れることになった。彼女の行動は突飛なものかもしれない、でも見届けてあげて欲しい。手を貸してあげて欲しい。責任は私が取る。またみんなで笑い合えるクラスにしたいの」
誰がともなく手を打つと、それが伝わり、教室を包み込む
櫻は「ありがとう。」と言うと深く頭を下げて席についた。
ラウラもシャルロットも同じように頭を下げると自分の席に戻った
「よし、これから空気を切り替えていくぞ、来週は臨海学校だ」
心機一転、新しい心持ちとともに2人は新なる道を歩み始めた
強力な助っ人たちとともに