Who reached Infinite-Stratos ?   作:卯月ゆう

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孤独のラウラ

シャルロットと櫻がロンドンに発ったのと時を同じくしてラウラは一路ミュンヘンへ向かっていた

 

目的はもちろんローゼンタールに自身の専用機を受け取りに行くこと。

「少し考えさせてくれ」と言っておきながら、その次の日には「その話、乗った」と返事をしたラウラへの櫻の行動は早かった。

櫻曰「ローゼンタールの開発人員総動員してとりあえず8割完成させたからあとはこっちで私が面倒見るよ」とのことだ。その時の櫻の顔が少し引き攣っていたのは気のせいだろう

そんなこともあり、すぐにでも受け取れることになった。

 

迎えが来ているとのことで、半日のフライトをなれないファーストクラスで過ごすことになったラウラだが、フライトは約10時間だと機内アナウンスが入ると離陸前にそのまま寝てしまった

 

そしてきっかり8時間後に目を覚ますと、軽食を取り、到着後のプランに目を通す

ヘルシンキ到着後、飛行機を乗り継ぎミュンヘンへ。空港からローゼンタール本社へ直行、専用機のフィッティングなどを行い自由時間、滞在時間がわずか数時間の強行スケジュールだった

これでは家を買う暇も無かろう。などと考えてオレンジジュースを一口飲んだ

 

 

-----------------------------

 

長いフライトを終え、ゲートから出たラウラに殺気が襲う

目を向けた先にはスーツを着た妙齢の女性。勘違いかとも思ったが、一瞬目があった際に相手が笑ったことで確信に変わった。

相手がバッグから何かを取り出そうとしたため、慌てて人混みに紛れると日本語で「ラウラ・ボーデヴィッヒさんはいらっしゃいますか?」と聞こえた

 

声のした方にはさっきの女。笑いながらローゼンタールのシンボルが描かれたプレートを持っている

 

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒさん?」

 

「ああ、そうだ。ローゼンタールからの迎えか?」

 

「私はローゼンタールの社長をしている天草紫苑といいます。よろしくね、ラウラちゃん」

 

「えっ、その、済まない」

 

「いいの、殺気を向けたのは私だし。それで隠れるのも仕方ないわ」

 

「ただの学生だからな。私は」

 

「うん、確かに本物ね。櫻の言ってた通りの娘だわ」

 

「櫻……、あの背の高いやつか。ということは、あなたは」

 

「ええ、櫻の母親ね。あなたの身元引受人でもあるわ」

 

長いから車でね、と促され歩きながら話を続けた

どうやら櫻の行動の影には彼女の力があったようだ

 

止めてあった車に乗ると、前から声を掛けられた

 

 

「はじめまして、ですか。ラウラ・ボーデヴィッヒ」

 

「お前は?」

 

「私はクロエ・クロニクル、ローゼンタールのIS研究部に勤めています」

 

振り返った顔はどこか見覚えのある、と言うより自分にかなり似ていた

ただ一点違うのは、その金色の目。目を合わせれば震え上がるような深い黒に一点、金色の瞳があった

 

 

「嘘だ……まさか」

 

「ええ、そのまさかですよ。私はあなたと同じです」

 

「お前は研究所の襲撃でお前は死んだはずだ」

 

「私は現にこうして生きています。襲撃者(紫苑)に頂いた命です」

 

「ラウラちゃん、驚くのも無理は無いけど、軍、と言うより国ってそういうものなの。特にあなた達(シュヴァルツェハーゼ)は特別だから」

 

「だがッ! あぁ、そうか……」

 

自分たちが都合のいい実験動物であることを思い出し、その実験は秘密裏に行われていて然るべきだ、ならば関連する事象くらい伏せられて当然。そう思い直して一息つく。

 

 

「えっと、多分契約書にサインを済ませたはず、だからもうあなたはローゼンタールの社員。配属部署は社長直下の特殊作戦部隊よ」

 

「なぜ一企業にそんなモノが?」

 

「表沙汰に出来なかったり、世間体的に良くないものを排除するためね、だから初陣としてドイツの遺伝子強化体研究所を破壊、この前はあなたのISに積まれていたVTシステムの研究元を吹き飛ばしたわ」

 

「それは法的にまずいはず――」

 

「だけど明るみに出るのもまずいから泣き寝入りしかない。端からそんなことをしなければ済む話なのにね。だから、あなたのその技術を存分に発揮して欲しいの。表向きはIS研究部所属のテストパイロットとしてね」

 

「確かに、私向きだな。面白そうだ」

 

「それで、普段は今までどおりにIS学園で第3世代機のテストをしてくれればいいわ。機体も今までとあまり差はないはずだから」

 

「分かった。それで私が住む為の家を買いたいのだが」

 

「それなら心配しないで、ウチに住んでもらうから」

 

「それは社員寮とかそういう……」

 

「フュルステンベルクの家よ?」

 

すっとぼけた顔をしたラウラにもう一度事実を告げる

 

 

「コンスタンツの家に住んでもらうわ。私が身元引受人だし当然ね」

 

「は、はぁ……」

 

「他に質問は?」

 

「特にない」

 

「よろしい。何かあれば櫻に聞けばいいわ。賃上げも櫻にね」

 

「これだけもらえるなら十分だ。軍より良い」

 

「満足みたいで何より。まだしばらくかかるから寝ててもいいわよ?」

 

 

-----------------------------

 

 

ローゼンタール本社裏の広大なスペースには漆黒のISと様々な機器が並べられ、主が乗るのを待ち続けていた

国と委員会の決定によりコアをリセット、双方の確認を終えてローゼンタールの所属となったところで束が自己進化の系譜を不完全ながら蘇らせた。

機体は半分シュヴァルツェア・レーゲンをキャリーオーバー、その上でローゼンタールの技術を盛り込んで、束が機体を作った

 

 

「社長とパイロットが来たぞ!」

 

誰かの声で空気がピリッと硬くなる

 

 

「お疲れ様、操縦者を連れてきたわ」

 

「お疲れ様です。ではこちらに、主任がキリンになりそうです」

 

連れられたテントにはそこまで歳をとったようにも見えない男がどっしりと構えていた

 

 

「アルベルト、お疲れ様。準備はいいみたいね」

 

「もちろん。お、その娘が新しいパイロットですか? クロエちゃんに似てて可愛いな」

 

「あんまり色目使うと斬られるわよ? この娘はルイーゼより固いから」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。これから世話になる」

 

きっちりと頭を下げるラウラからはそんな気配がちっとも感じられないが

 

 

「この娘が姫より固い、ねぇ。まぁいいや、嬢ちゃん、さっさと着替えて飛ばそうか。待ちくたびれちまってな。隣のテントが更衣室になってる、スーツもそこに用意してあるからそれを着てくれ。何かあったらクロエちゃんにな」

 

「わかった」

 

後ろで変態共が「つるぺた幼女!」などと言っているが気にしたら負けなのだろう

さっさと着替えを済ませるとテントから出て機体のそばに向かう

 

 

「コレが、私の新しい機体か」

 

「その通り、シュヴァルツェア・レーゲンをベースにかなりいじってある。AICもついてるからな」

 

「なるほど、もう乗っていいか?」

 

「もちろん、ファーストシフトまでさっさと終わらせよう」

 

「よし、やるぞ」

 

「いいぞ、そういう気合は大好きだ。立ち上げてくれ」

 

機体に身を預けると懐かしい感覚。システムが立ち上がり、目の前を文字列が通り過ぎる

 

――Schwarzer Neble Start Up――

 

黒い霧、その名を与えられたラウラの愛機はゆっくりと地から足を離すとその手に初期装備のプラズマ刃を展開した

 

 

「機体の調子は?」

 

「問題ない。レーゲンとも差異はあまりないし、すぐに使える」

 

「良かった。そのままフィッティングに入ろう」

 

姿を変えるネーブル

無骨ながら工業製品として洗練された、ローゼンタールらしいシルエットをまとっていた

 

1対あったスラスターも形が変わってスカートのような一体型になり、両肩にはレールガンが1対装備され、腕にワイヤーブレードの発射口が移された

 

そしてFCSの性能が大幅に上がり、AICを使う際にかかる負担が減った。これでAICを1対多に使いやすくなるだろう。

 

 

「よし、終わった。コード切れ、飛ばすぞ」

 

一声でネーブルに繋がれたコードが取り外され、晴れて自由の身になる

 

 

「よし、嬢ちゃんおもいっきり飛んでこい。そこの的にレールガンをぶっぱなしてもいい」

 

「ああ、言われなくても」

 

飛び上がったラウラは機体の扱いを知るため、少しずつ激しい機動をおこない限界や癖を見分けていた

 

扱いにもだいぶ慣れた頃、上空でクロエに呼びかけられる

 

 

『機体には慣れましたか?』

 

「ああ、上々だ。レーゲンより機動性はいいな」

 

『キャリーオーバーの上で発展させていますから当然です。ファーストシフトを起こしたら降りてきてください』

 

「了解」

 

手応えを感じてきたラウラには感覚的に、そろそろファーストシフトが起こるのではないかと思っていた。

空中で静止すると、的に狙いを定めてレールガンを撃つ。

立体機動をしながら撃つ、そうして5発も撃った頃に機体が輝いた

 

 

「ファーストシフトが終わった。今降りる」

 

『了解です』

 

 

降りてきたネーブルにまたコードが繋がれる。

モニターに男たちが集まり、データを確認すると主任に報告

 

小さくガッツポーズする姿が見えた

 

 

「嬢ちゃん、よくやったな。期待以上だ」

 

「私は求められたことをしたまでだ」

 

「本当につれねぇな。まぁいいや、本日の仕事はここまでっ! 撤収! 係りの者はそっちにつけ!」

 

主任の一声で動き出す。機材がカートに載せられ、テントがたたまれていく

 

 

「嬢ちゃんもISを解除していい。これからちょっとしたパーティーだ、来るだろ?」

 

ちらりと紫苑の方を見ると笑った。行け、ということだろう

 

 

「ああ、ごちそうになろう」

 

「よし来た、そうでねぇとな」

 

再び着替えようとまだ立っているテントに入るとクロエに呼び止められた

「これに着替えてください」そう言って手渡されたのはスーツ一式と社員証が付いたストラップ

スカートスーツなんて軍の礼式以外で着ることの無かったラウラは若干戸惑いつつも着替えを済ませて出て行った

 

 

「似合ってる似合ってる。櫻の着てたやつをとっておいて正解ね」

 

テントから出ると紫苑に褒められた

となりにはクロエも居る

 

 

「じゃ、5時まで自由にしてていいわ。時間になったら正面玄関にいてね」

 

「わかりました」

 

返事をしてビルに入っていったラウラを見届けると、紫苑とクロエは街の中に消えた

 

 

-----------------------------

 

 

 

研究部では真っ昼間から飲めや歌えやの騒ぎで、隣から苦情が出るのではないかとラウラは心配していたが、ここ数日の研究部職員の過労っぷりは他部署の人間にも知れわたっており、その分の休暇をとっているのだと許容していた

 

 

「おら、嬢ちゃん、もっと食わんと大きくならんぞ」

 

「い、いや、私は……」

 

「そう言うなって、姫のスタイルが羨ましくないのか?」

 

「いや、別に……」

 

酒の入ったアルベルトに絡まれているラウラを残念な目で周囲の技術者たちが見守る。内心は「俺じゃなくてよかった」であるのは言うまでもない

 

 

「主任、彼女にも都合があるかと」

 

そこで助け舟を出したのは姫ことルイーゼ、アルベルトが言うだけあって、その顔立ちとスタイルは下手なモデルよりも美しい。

 

 

「う~ん、そうかぁ? すまんな、土産に持っていけ、故郷の味だ」

 

そう言って瓶ビールとソーセージを紙袋に突っ込んで渡す

さすがにこれは断りきれずに受け取ると、ルイーゼについて研究部をあとにする

 

 

「大丈夫? 主任は酒が入ると面倒だから」

 

「ああ、助かった、礼を言う」

 

「いい、後輩を助けるのも先輩の仕事」

 

胸元に下がる社員証をちらりと確認してラウラから話を振る

 

 

「あなたもテストパイロットなのか?」

 

「ええ、ここのテストパイロットは社長と私とあなたの3人。そういえば名前を聞いていなかった。私はルイーゼ・ヴァイツゼッカー。よろしく」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。こちらこそよろしく頼む」

 

「固くならないで、ここは軍ではない。お姉さんみたいに思ってくれていい」

 

「そ、そうか」

 

「まだ時間はある?」

 

「あと2時間ほどは」

 

「なら社内を案内する。時間が余れば近所のお店も」

 

「頼む」

 

「なら、まずは社長室から」

 

エレベーターで最上階に行くと、エレベーターホールのすぐ脇に大きな扉、反対に社長室の札がさがった扉があった

「こっち」と普通に扉を開けるといかにも社長室。と言った家具の置かれた部屋があった

 

 

「勝手に入ってよかったのか?」

 

「大丈夫、私達なら」

 

そう言って更にデスクの引き出しを開け、電卓を叩く。するとカチッという音が何処からか聞こえる

 

 

「番号はこんど社長に聞くといい。こっち」

 

今度は部屋の中央に置かれた応接セットのテーブルを倒すと、床を開ける

そこには階段があり、下に降りられるようだった

 

困惑気味のラウラをつれて更に階段を降りると、テンキーに番号を入力、重厚な扉を開く

 

 

「ここがタスクフォースの部屋。あなたの職場」

 

6人分のデスクとラップトップ、そして重役用のデスクが1つ置かれたただのオフィスに見える。

その一つが少し飾り付けてあり、プレゼントボックスが置いてあった

 

 

「あの机があなたの、プレゼントも開けて欲しい」

 

「えっ、ああ」

 

ラウラがプレゼントボックスを開くと、中にはローゼンタールのロゴ入りの箱。恐る恐る開くと、

 

 

「ISスーツ?」

 

「そう、仕事着。普段はテストで着たブルーグリーンのISスーツを着る。ただ、こっちの仕事ではソレ」

 

広げてみると真っ黒で艶がなく、足首から手首まで覆われてハイネックのそれはまさに影、隠密行動に使うソレの雰囲気だ。更に箱には手袋。そしてスニーキングスーツのようなものまで入っていた

 

 

「それと、私からのプレゼント」

 

そう言って手渡されたのはコレもまた黒い手袋だった

銃を構えるうさぎが手の甲に刺繍された通気性に優れたサマーグローブ。右手人差し指だけ切られていた。

なんとなくチョイスの方向性が斜め上なプレゼントをありがたく受け取ると実際にはめて銃を構える素振りをする

 

 

「目的を言わなかったのに、ハンドガンを構えるなんて」

 

「前は軍にいたんだ、その時のクセかもな」

 

「私ももともと軍にいた。第3偵察教導大隊所属、最終階級は曹長」

 

「教導隊か、エリートじゃないか。私は出自故の階級だからな」

 

「聞いている、ラウラ・ボーデヴィッヒ少尉。第1装甲師団、IS中隊、特殊作戦部隊シュヴァルツェハーゼ隊長。この前の事故の責任を取らされ除隊。非常に残念」

 

「気に病むことはない。敵も討ってくれたようだしな」

 

「シューティングレンジに行こう。まだ時間はある」

 

「そうだな、このグローブも使ってみたい」

 

 

2人はまたエレベーターに乗ると今度は地下へ、通常兵器。特に個人用兵装の試験を行うシューティングレンジに入った

 

 

「軍に配備された銃は他社製品も含め、全ておいてある。銃と弾薬は向こうの倉庫、社員証をタッチすれば鍵が開く」

 

「分かった。ターゲットは?」

 

「このリモコンで。スコアもコレに出る」

 

「よし、撃とう」

 

「楽しんで」

 

 

2人はシューティングレンジを占有し、見る見るスコアを加算していった

ラウラはホルスターとセットでハンドガンの抜き打ちを、ルイーゼはボルトアクションライフルで狙撃をしていた。

 

 

「なかなか良いものだ。滑らないし、指切りだからトリガーに指もかけやすい」

 

「それに、中指にはパッドが入ってるからボルトを引いても痛くなりにくい」

 

「そうなのか。やってみよう」

 

パタパタと走って倉庫から銃と弾薬箱を持ってくると、ルイーゼの隣に伏せた

 

 

「撃てるの?」

 

「訓練で何度か撃った。まぁ、さすがに偵察隊には敵わんが」

 

そう言ってマガジンに弾を込め、銃にはめ込む。

ボルトを一回引くとそのままストックに頬を付けた

 

ドン、と低い射撃音が響くと反動でラウラの身体が跳ねる

 

 

「ふむ、こんなものか」

 

弾丸はターゲットの中心からだいぶずれて着弾、ラウラは少し残念な顔をしている

 

 

「まず姿勢が悪い。今はタイトスカートだから足は開けないけど、もっと左に身体を流していい」

 

「こうか?」

 

「そう。それで狙ってみて」

 

ストックに頬をつけ、左腕でストックを抑える

右手をグリップに付けて指を伸ばす

 

 

「もっと右腕を楽にしていい。狙撃は自分がいかに楽になるかが重要」

 

「なるほど、こんなかんじか?」

 

右腕をもっと開くと確かに姿勢が自然になり、楽な気がする

スカートで制限される足が確かに不快だが、仕方ない

 

 

「それで、ゆっくり狙って、呼吸を整え、撃つ」

 

「呼吸を整え、撃つ」

 

再び響いた銃声。吐き出された弾丸はターゲットの中心から数センチズレたところに着弾した。

 

 

「おお、これはすごいな。流石教導隊だ」

 

「軍属の人なら基礎ができてるから少しの修正でこれくらいできるようになる」

 

「それでも修正すべき箇所が一目でわかるのは経験だろう」

 

「それは何処の専門でも同じ。私がISに乗ったらラウラから教えを請うことになる」

 

「その時は容赦なく扱いてやろう。私はお前ほど器用じゃないからな」

 

「楽しみにしておく」

 

 

その後もアサルトライフル、重機関銃、挙句の果てにはロケット砲まで持ちだしてぶっ放して楽しんだ2人は時を忘れていた

いまはラウラの近接格闘術講座となっている

 

 

「相手の力を利用してそのまま投げ飛ばすんだ」

 

そう言ってラウラが拳を突き出す

それを受け流して懐に……入り込めない

 

 

「ラウラ、私には無理みたい」

 

「そんな弱音を……あぁ、そうか。済まないな」

 

途中で察したようで、ルイーゼの全身を目でなぞる

 

 

「ならば、足を掛けてみろ。腕のいなし方はさっきと同じで、自分に引きこむようにな。あとは足を出すだけだ」

 

そう言ってまた拳を突き出すと今度はそのまま腕を引きこまれ地面に倒される

 

 

「そんな感じだ。簡単なものを身につけておけばISでも応用できる。とくに力の逃がし方はな」

 

「なるほど、面白い」

 

「お二人さん、楽しんでいるところ申し訳ないんだけど飛行機の時間よ?」

 

 

振り返ると紫苑とクロエが2人を見ていた

慌てて持っていたハンドガンを倉庫にしまい、薬莢をダストシュートに掃き捨てると紫苑の元へ向かう

 

 

「45分オーバー。もう飛行機が空港で待ってるわ」

 

「すみません」

 

「シャワーを浴びる時間はないわ。出国審査で引っかからなければいいけど」

 

「そんなに匂いますか?」

 

「分かる人には解るわね」

 

 

ルイーゼに見送られ、車を飛ばして空港につくと出発ゲートで紫苑から「無事でね」と何処に突っ込んだらいいかわからない言葉を掛けられてそのまま出国審査を受けた

 

「clear,vorangehen(大丈夫です、前へどうぞ)」「Dank(ありがとう)」

 

幸い、引っかかることもなく、無事にゲートを通過するとそこには櫻がいた

 

 

「遅かったね、ボーデヴィッヒさん。帰りはプライベートジェットだから、こっちね」

 

「ああ、済まない。地下で色々撃っていたら楽しくてな」

 

「あそこはいろいろ置いてあるからねぇ」

 

そのまま外にでると車に乗り、黒塗りの飛行機の近くで降ろされる

 

 

「さ、乗って。荷物も持って行って」

 

急かされ、乗り込むともう一人先客がいた

 

 

「あっ……」

 

「お前は、デュノアか?」

 

「うん、今はウォルコットだよ。詳しくは明日わかるけど」

 

「お前もいろいろあったみたいだな」

 

「まぁね。ボーデヴィッヒさんもそうでしょ?」

 

「そうだな。お前も天草の口車に乗せられたのか?」

 

「違うよ。僕はこうなることを望んだんだ。デュノアを離れたい。ってね」

 

「そうか、望んだ。か」

 

シャルロットとラウラが話している間に櫻が戻り「はーい、シートベルトを締めてねー」などと言ってまわる

 

 

「それで、ボーデヴィッヒさん。専用機はどんな感じだった?」

 

「レーゲンと変わらないな。より強化された、と言っていい」

 

「う~ん、こっちも仕事の甲斐があったわ。残りの細かい仕上げは学園でやろうね」

 

「そう言われている」

 

 

「間もなく離陸します。シートベルトをご確認ください」

 

機長のアナウンスで飛行機が滑走路に入ると櫻は仕事が片付いた実感がわいたのか、歳不相応に呻きに似た声を上げた

 

 

「やっと帰れる~」

 

「あとで買ってきたお茶とスコーンを食べようよ。ボーデヴィッヒさんも一緒に」

 

「ありがとう。いろいろあって腹が減っていてな」

 

「そういえばボーデヴィッヒさん、シャワー浴びた?」

 

「変な匂いがするね、なんだろう?」

 

「そうか……済まない」

 

「悪臭ってわけじゃないんだけど。硝煙の匂いだよね、これ」

 

「ああ、さっきまで小火器をいろいろ撃っていてな」

 

「遅れた理由がソレって言うのがボーデヴィッヒさんらしいと言うか……」

 

「そうかもね。僕はISではいろんな武器を使ったけど、僕自身はこれといって使ったことがないんだよね」

 

「フランスは銃規制があるのか?」

 

「そうだね、許可制だよ。シューティングレンジみたいなところもあるらしいんだけど、縁がなかったからなぁ」

 

「天草、IS学園には法が適用されないんだよな」

 

「そうだね。よくよく考えると危ないけど。まさか……」

 

「ああ、私の銃を持ち込もうかと思ってな」

 

「そもそも日本の税関を通らないからダメじゃない?」

 

「ならパーツごとに国際郵便で……」

 

「その熱意をもっと他の方向に向けようよ……」

 

 

 

その後も3人はなんだかんだで仲良く空の旅を過ごし、気がつけばお互いを名前で呼ぶ程度にはなったようだ




お気に入りが気がつけばかなり増えてるようで…
さらにカウンターもよく回ってます。いやぁ、継続はなんとやらですかねぇ…?

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