Who reached Infinite-Stratos ?   作:卯月ゆう

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紫苑視点の回
レオハルトさんと紫苑をくっつけます。ええ。決定事項です。この話で決めましょう

私は彼女いない歴≒年齢ですので、恋愛話は期待しないでくださいね


10/7 追記

タイトルを上手く端折れないか考えていたのがこの頃です。
こちらでは英訳(それっぽくですが)してそこそこかっこ良くなりましたが、暁の方は長いし語呂悪いしでいいことありませんね。


March 私達の娘の話
鴉、決心する


 私は迷っていた。

 彼はよく従い、私の期待以上の活躍をしてくれる。

 リンクス同士の闘いでも、平和維持に近い任務でも。

 彼は。

 

 

 

「ねぇ」

「なんだ?」

「あなたは私をどう思ってるの?」

 

 夕食の席で投げかけた直球の質問、彼はどう答えてくれるだろうか

 

 

「そうだな……私の命の恩人、そして優秀なオペレーターであり。目標だ」

「そう……」

 

 はぁ、と思わずため息が出てしまう。

 私が彼の何に惹かれたのかは分からない、浜辺で倒れていた彼を見つけた時から、私の中の何かに彼がひっかかっていた。

 

 

「なんだ、不満か?」

「そうね」

 

 やはり私の思いなど分からるはずもないだろう

 私は彼が欲しい、そう思っているなど。

 

 

「ふむ、夕食後にすこし散歩でもしないか」

「どうしてよ」 

 

 思わずぶっきらぼうに対応してしまう。

 

「今日は満月だ、浜にでも出よう」

「いいわ、付き合ってあげる」

 

 やはり私は素直になれないところは変わらないようだ。

 その後は無言で夕食を食べ続けた。沈黙がつらい。

 

 彼が流れ着いてから半年ほど経った、もう天草の人々とも馴染んで、おみやげをもらってくることもしばしばだ。

 この地に馴染んでくれたことは良いことだと思うし、彼を受け入れてくれたこの地の人々はシスターハルの受容の心を尊んでくれているとひしひしと感じる。

 私との距離も縮んでいる気がする、以前は疑いを捨てきれていなかったことが感じられたのに、最近は信頼すら感じる。

 だから彼は私を『優秀なオペレーター』といったのだろう。

 

「それが私の思い過ごしじゃなければいいんだけどなぁ」

 

 問題はそこである。そこにあるのは上下の信頼か、それとも……

 

 コンコンと軽く扉がノックされる。

 適当に返事を返すと、扉を開けずに彼の声が聞こえた。

 

「そろそろ出ないか」

 

 彼からのお誘い、無碍にするわけにはいかない。

 

「ちょ、ちょっと待ってっ」

 

 慌てず落ち着いて、戦場での基本だろう。

 

 ――よしっ、やってやれ。紫苑ッ!

 

 己に活を入れ、戦地へ向かう時さながらの気を振りまきつつ扉へと向かった。

 

 

 

 --------------------------------------------

 

 

 扉の向こうでの気の変化に気づかないほど私も鈍ったつもりはない。

 ――シオン、なにをしでかすつもりだ?

 

 

 圧倒的なまでの気、それは歴戦のリンクスさながらだった。

 すこし不安になり声を掛けることにした。

 

「おい、大丈夫か?」

 

 

 これで扉を開けたら刀を片手に、なんて事があれば腰を抜かす自身が今の私にはあった。

 シオンならそれがありえてしまうのが恐ろしい……

 

 

 --------------------------------------------

 

 

「おい、大丈夫か?」

 

 扉を開ける直前、彼から声がかかる。

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

 とっさに変な答え方をしてしまった。

 扉を開けると、待っていた彼は案の定どこか不安げな表情をしていたけれど。

 

 

「さぁ、行こうか」

「そうね」

 

 そう言って教会から少し歩く、その間も活を入れたにも関わらず、私の心は揺れに揺れていた。

 ――ふぁぁぁぁぁどうしようどうしようどうしよう、大丈夫だ紫苑、問題ないッ!

 

 焦りが完全に裏目に出ている……

 

 

「少し休もうか、ゆっくり月も見たいしな」

 

 そう言って砂浜に腰を下ろす。

 隣で空を見上げる彼の横顔は、月明かりのもとで陰影がクッキリと見えた。

 

「ここは惜しいところだな、月が山から登ってくる。山から登る月も美しいのだが……」

「西側だからしかたないわ、夜明け前の海に沈む月も綺麗よ?」

「そうだろうな、何れ見たいものだ」

 

 波の音を聞きながら、潮風を身体に受ける。

 ―なんだろう、とても落ち着いてきた。

 

 

「なぁ」

 

 彼が突然口を開く。

 

「さっきシオンは私が君をどう思ってるか、と聞いたな」

「そうね、もう答えはもらったわよ?」

「いや、まだ言いそこねたことがあったことを思い出してな」

 

 月明かりに照らされた横顔はどこか憂いを帯びているように見えた。

 

 

「シオン、君は、私の命の恩人であり、優秀なオペレーターであり――」

 

 そしてゆっくりと私の目を見て、こう言い放った。

 

 

 

「――私の愛する人だ」

 

 

 自然と繋がれた手の温もり、私をまっすぐと見つめる眼差し。

 私はしばらく呆然とした後――

 

 ――ふぇっ?今なんて言われた?ん? これって、告白ですかぁぁぁぁぁぁっ?

 

 先ほどまでの落ち着きが嘘のように頭のなかは混乱しきっていた。

 

「な、ななななな……」

 

「な?」

 

 ニヤニヤとしながら私を見てくるレオハルト。

 

 ――ええい、侭よッ!

 

 私は勢いで彼を押し倒し、そのまま唇を合わせる。驚く彼の顔が見えたが気にしたら負けだ。

 

 

「んっ……」

「…………」

「これが、私の答えよ。レオハルト」

「そうか、然と受け取ったぞ。シオン」

 

 

 丸く輝く月明かりの下、少し離れた木の下にもう1組の男女がいた

 

「あらあら、紫苑ちゃんったら強引ねぇ」

「お前もあんな感じだっただろ、あれは今でも覚えてるぞ?」

「ふふふ、あなたったらっ」

 

 バシッ、といい音とともに男が苦い顔をする

 

 

「っ痛ぇなぁ、結婚前はもうちょっと優しかっただろ」

「あら、今でも優しい奥様よ?」

「ははっ。そうだな。これからも頼むぞ、夏子」

「ええ、あなた。 さて、紫苑ちゃんにお祝いでも送りましょうか」

「そうだな、これからを担う若者達だ、大切にしないとな」

 

 

 鴉と猫が結ばれた時、物語は一歩、前へ動き出す。

 

 

 

「そうだ、シオン、子どもは何人欲しい?」

「えっ? い、いきなり何を言い出すのさ!」

「いや、私は女性とまともに付き合ったことがなくてな……」

「それってまさか童……」

「いやいやいや、一応ガールフレンドくらい居たぞ! すでに経験済みだ! ただ、まともに女性と"交際"をしたことが無いんだ」

「ま、私も戦争戦争からいきなりこんなスローライフだからなぁ……」

「お互い不器用な付き合いになりそうだな」

 

 恥ずかしさを誤魔化すようにカラカラと笑う彼。

 私までつられて笑ってしまう。

 

「ふふっ。そうかもね。でも、私達ならなんとかなる気がする」

「そうだな。たとえどんな苦難が待ち構えようとも、君がいれば、私は……」

「よくそんなクサいセリフ吐けるねぇ」

「んなっ!? あくまで思ったことを口にしたまでだ! つまり、なんだ。シオンが居るから私はこのように在れるんだ。だから、その……」

「はいはい、もう帰るわよ。少し肌寒くなってきたわね」

「ふむぅ……」

 

 

 不器用な鴉と猫はなんだかんだで猫が下なようだ。




さて、気合で2人をくっつけました。

夏子さんはthe近所の陽気なおばちゃん。って感じをイメージしたんですが、どうでしょう?


オリジナル(暁版)にちょっと修正を加えて最後のやりとりを加筆しました。

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