Who reached Infinite-Stratos ?   作:卯月ゆう

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いざ、学園へ

待ちに待った今日はIS学園の入学式の日

実母である紫苑は生徒の保護者ということで学園内に入ることができるが、束とクロエはそうは行かない。

「さくちんの晴れ舞台が見たかったけど、ここはグッとこらえてママさんにコレを託そうと思うよ!」と危ない発言とともに紫苑に手渡されたのはいろいろ内蔵されたメガネ、なんでもみえ~る君3号。極小のレンズを搭載し、光学ズームで離れたところからでもバッチリだ

 

「じゃ、行ってくるわね」

 

「行ってきま~す」

 

「いってらっしゃい。さくちん、これからも時々会いに行くからね」

 

「千冬さんに怒られるよ?」

 

「ぐぬぬ……」

 

「櫻様、お気をつけて」

 

「うん、ありがとね、クロエ」

 

「じゃ、行きましょ、櫻」

 

 

そう行って2人は学園へ向かった

 

 

その道中、紫苑は娘と他愛もない会話をして過ごしたが、やはり気になったのは今日初お披露目の改造制服だ

 

「櫻、その制服はどうにかならなかったの?」

 

「最初は普通のワンピースジャケットもいいかな、とは思ったけど、やっぱり着慣れたのがいいかなぁって、結局……」

 

「だからってそれは思いっきりビジネススーツじゃない?」

 

「気がついたらそうなっておりまして」

 

 

秘密秘密と言っていた制服だが、実際は特に奇抜なデザイン、ということもなく、ぱっと見はまさにタイトスカートのビジネススーツだ。実際は異なったデザインの制服を3着ほど予備で用意しているのは母には内緒である

 

 

「もうちょっと制服っぽい感じがお母さんとしては嬉しかったかなぁ」

 

「だって、標準のアレは背丈に合わせるとスカートが短くてさ」

 

「そこを長くするんでしょ? なんのための改造可なのよ」

 

 

第二回モンド・グロッソの時点で女子としては十分背の高い部類だった櫻だが、その後も懸命な努力(カルシウムとビタミンと運動だ)を続け、父の血統と相まって急速に伸びた。その身長は170を超える。

 

 

「そもそも、サイズ展開が微妙なんだよ。世界各国から人を集めるんだから欧米人にやさしいサイズ展開にするべきなんだよ」

 

「はいはい、あなたの体格は父親譲りですものね、はいはい」

 

 

紫苑も日本人としては高身長ではあるが、娘に身長を抜かされて久しい

抜かされた時は娘の成長に喜んだものだが

 

 

「あ、そろそろ着くよ」

 

「そうね、忘れ物ない?」

 

「もう、さすがにそこまで子供じゃないよ」

 

「って言ってるそばから椅子に置き去りにされているのはなにかしら?」

 

それは束お手製の発信機、簡易的なエネルギーシールドの展開もできるスグレモノだ

 

「あ、アハハ……」

 

「先が思いやられるわね」

 

紫苑は娘の学園生活に多少の心配を抱えながら改札を抜けると

眼前には海、そして街路樹と花壇

 

「きれいな場所ね」

 

駅前は整備され、学園まで遊歩道が続く

周囲には娘のものと同じカラーリングの制服を纏った少女がちらほらと見受けられた

 

「ホントだね、テクノロジーとネイチャーが融合した感じ?」

 

「無理に感想を言うくらいなら黙っていたほうがいいこともあるのよ?」

 

母の辛辣な言葉に肩をすくめて答える

 

 

「ささ、学園まではあと少しだよ、行こっ」

 

「まだ時間に余裕はあるしゆっくり……」

 

 

 

そうしてしばらく遊歩道を進み学園の門をくぐると、アリーナへ進む

 

 

「新1年生はフィールドへ、保護者の皆様はスタンドへお進みください」

 

教員の案内に従い親子は別れる

 

「じゃあね、ムッティ」

 

「儀式の間はちゃんとしていなさい?」

 

「だからそこまで子供じゃないって」

 

「どうだか」

 

 

そうして始まったIS学園の入学式。理事長の挨拶に始まり、代わる代わる誰かが喋る流れは何処も変わらないだろう

 

「これにて、IS学園入学式を終了します。新入生は退場後、クラス割を確認し、各自の教室に向かってください」

 

パイプ椅子の束縛から放たれた新入生たちは軽くストレッチをしていたり、伸びをしていたりとみなお疲れのようだ

 

「え~っと、クラスは~」

 

クラス割が表示される大型ディスプレイの前に群がる人、そこから頭ひとつ抜けた櫻はサクっとクラスを確認すると教室へ向かおうとする、が

 

「ねーねー、おねーさん。私のクラスもよかったら見てくれないかな~?」

 

間の抜けた喋り方をするダボダボの制服を着た女の子と、水色の髪にメガネの女の子がいた

 

「いいよ、名前は?」

 

「私は布仏本音。こっちはかんちゃ、じゃなくて更識簪だよ」

 

「布仏さんと更識さんね……あぁ、あった。布仏さんは1組だね、更識さんは……4組だ」

 

「ありがと~、おねーさんはなんていうの?」

 

「私は天草櫻、布仏さんと同じ1組だよ」

 

「わぁい、さくさくと同じクラスだ~」

 

そう言いながらパタパタという擬音がぴったりそうな走り方で去っていく本音、櫻は早速付けられたあだ名におもわず

 

「さくさく?」

 

「ごめんなさい、あの子は人をあだ名で呼ぶことが多いの。改めて、私は更識簪、よろしくね」

 

「こちらこそよろしく、更識さん」

 

「できれば名前で呼んで欲しい。苗字で呼ばれるのは好きじゃない」

 

「わかったよ、簪ちゃん。クラスは別だけど、何かあったらよろしくね」

 

「うん。こちらこそ」

 

 

早速出来た友人の他に、すでに見知った顔ぶれが数人いた事に「あ」行の名前の櫻が気づくはずもなかった


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