Who reached Infinite-Stratos ?   作:卯月ゆう

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パーティーを始めよう

トゥールーズのブラニャック空港、そこのハンガー前には多くの人が集まっていた

ステージの上には桜色のパーティードレスに身を包んだ櫻、マイクを手にメモをチラチラと見ながらパーティー始めのスピーチをしようとしていた

 

 

「皆さん、今日は企業連、社有機就航記念パーティーにお越しいただきありがとうございます。飛行機の購入にあたっては、ローゼンタールを始めとする、ヨーロッパに本社を構える企業の出資をいただきありがとうございました。早くも1年後までの運行スケジュールが埋まり、本当に仕事で使うのか、という気がしなくもないですが、せっかく買った機体を全く使わないよりはいいでしょう。え? 長ったらしい話はいいから早く見せろ? 仕様がない大人たちですね、それでは、ハンガーにご注目ください!」

 

 

ゆっくりと巨大な扉が開いていくと、中から真っ白な胴体が姿をあらわす

おもわず小さな歓声が上がる、大人たちは新しいオモチャを手にした子供のような目をして、姿を晒すソレを見つめていた

 

 

「みなさん、コレが私達の導入した、本社機能の70%をカバーでき、簡単なISの整備ならこれだけで可能な空飛ぶ本社ビルディング『インテレクト』です!」

 

 

インテレクト:知力、知性、知識人達

もちろん、この大きな機体の中に本社機能の殆どを詰め込み、ISの軽い整備もできる設備を備えたこの機体を櫻は『ブレイン』と呼んでもいいと考えていたらしいが、あまりにひねりがなく、響きも悪いことからこの名を与えた

 

 

「さて、今日はこのインテレクトの就航記念のパーティーです、皆さん是非楽しんでいってくださいね! あとはタイムスケジュールにそって進みます、それではしばらくご歓談を!」

 

 

ひと通り話し終わると会場内の束の元へ

 

「さくちん、お疲れ様」

 

「やっぱり実際に人の前で話すのは緊張するね」

 

「だねぇ、部内ミーティングですら未だに緊張するもん」

 

「それはちょっと……」

 

「まぁ、しばらく束さんはぶらぶらしながらお酒飲んでるよ」

 

「飲みすぎないでね」

 

「分かってるよ」

 

 

櫻はホストとして会場内をウロウロしてはいろいろな人に声を掛けられ、声を掛け、慌ただしく過ごしていた

 

 

「あら、櫻ちゃん」

 

「お久しぶりです、リリウムさん。今日はありがとうございます」

 

「みんなで買った飛行機のお披露目でしょう? これは行かなきゃ、ってね」

 

 

櫻はリリウムの後ろでひょこひょこしている影を見つける

 

「そういえば、今日は私の遠縁の娘も連れてきたのよ。セシリア、ご挨拶を」

 

「セシリア・オルコットですわ、以後お見知り置きを」

 

「櫻・天草・フュルステンベルクです。よろしくね、オルコットさん」

 

「セシリアと櫻ちゃんは同い年なはずよ、仲良くしてあげてね」

 

「そうですね、同年代の友人もすくないですし」

 

「じゃ、私は適当にぶらついてるわ、2人仲良くね」

 

「あ、ハイ。リリウムさん。オルコットさん、何か飲む?」

 

「いえ、結構ですわ。先ほど頂いたものが残ってますし」

 

「そう、私は飲み物もらってくるからちょっと待っててね」

 

 

そう言い残しカウンターへ向かう、その姿をセシリアはただ見つめていた

「素敵な方」そっと呟く声もパーティーの喧騒に飲まれて消えるだけ

 

 

 

「ごめんね、待たせたね」

 

「いえ、人も多いですし、仕方ありませんわ」

 

「それで、オルコットさんはISとか乗らないの?」

 

「今後代表候補生のテストを受ける予定ですわ、IS学園もありますし」

 

「代表候補生かぁ、すごいねぇ」

 

「同い年で学校にも行かず企業をまとめているフュルステンベルクさんは私よりずっと立派な方ですわ」

 

「そう言われると照れるね。オルコットさんも代表候補生になるためにいろんな事を学んできたんでしょ? それは立派なことだと思うよ」

 

「それでも、自身の地位に自惚れること無く努めを全うされているのですから、もっと誇っていいのではないですか?」

 

「私はただ、持てる者の義務(ノブレスオブリージュ)を果たしているだけだよ。オルコットさんも常にどこかで意識しておくといいんじゃないかな。国家代表になった時のためにね」

 

「そうですか……意識しておきますわ」

 

さっきから名前呼びを避けてるように感じられるセシリアにたまらず

 

 

「んで、関係ないけどさ、ウチのファミリーネーム呼びにくいでしょ? 櫻でいいよ」

 

「失礼ですが、確かにドイツの方のファミリーネームは読みが難しいですわ。では私のこともセシリアと」

 

「あはは、たしかにドイツ語は音が難しいね。それに怒ってるみたいに聞こえるってよく言われるよ」

 

「ふふっ、そうなんですの? はじめて聞きましたわ」

 

 

その後も2人は会話に花を咲かせ、リーネがパーティーの次のプログラムへの進行を告げるまで少女達の話は終わることが無かった

再び壇上に上がった櫻はプログラムを進行させる、次は就航パーティーのメインイベントだ

 

 

「では、パーティーもクライマックス、インテレクトのファーストフライトです! 企業連の方々はアッパーデッキ前方、ステートへ、それ以外の方々はメインデッキ前方のエレガンスへご搭乗ください。飛行ルートはお手持ちのプログラムにあります通り、フランスから東京、ワシントン、ロンドン、チューリッヒと世界一周のルートとなります。各企業の方は事前に申請された場所でお降りください。それではまずアッパーデッキからご案内です」

 

 

 

 

招待客を飲み込んだ白い巨体は空へ舞い上がり、まずは東京へ向かった

10数時間の空の旅、2次会が始まらないわけがなかった。


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