Who reached Infinite-Stratos ? 作:卯月ゆう
フランス、トゥールーズはバラ色の街、と呼ばれる独特な景観が特徴のフランス南西部の町だ
20世紀から航空産業で栄え、戦時中はここで製造された航空機がフランスの空を守っていた
現在でもここに本社を構える世界的航空機メーカーがあり、今日はそこで待ちに待った大型飛行機の引き渡しパーティーが開かれる
「一足早くパーティーのホストとして会場入りしました、櫻です、現地からお送りしております」
「櫻さん、そちらの環境などお伝え願います」
「えーっと、ブラニャック空港の現在の天気は晴れ、気温は約20度で過ごしやすいです」
「そうですか、絶好のパーティー日和になりそうですね!」
「そうですね、フランスという地理的特徴を活かして、共同購入社のトップのみならず、お金は出してないけど羨ましそうな目で見ていたGAグループ各社の社長も集まるそうです」
「実質企業連のトップ集合ということでよろしいでしょうか?」
「そうですね、ここを襲われたらひとたまりもないですね……って、束お姉ちゃん、いつまでこれ続けるの?」
「パーティーが始まるまで」
「えぇ、さすがに恥ずかしいと言うか……」
「だって退屈なんだもん!」
「ならちょっと退屈しのぎに面白いもの見ようか?」
「え? さくちん、どこ行くの?」
「ちょっとそこのハンガーまで」
櫻がパーティー会場となるハンガーとは別のハンガーの前で立ち止まると「おーぷんせさみー!」の呪文を唱え、扉が開き始める。
「さくちん、これって……」
「そうだよ、束お姉ちゃんの希望通り小さいのも自腹で買いました! フュルステンベルク家のプライベートジェットです!」
ハンガーの中には小型旅客機、漆黒のボディ、美しく磨かれた主翼。垂直尾翼にフュルステンベルクの家紋。エンジンカバーには"本"を読む"うさぎ"のマーク、機首横には"紫苑"の花が描かれ、翼には"桜"が舞う。みんなが1つに、という意味が隠されているのだ
「実際はアレの利用予約がこの先1年くらい埋まってて、買った意味なくね? って思ったから買ったんだけど。別に束お姉ちゃんのためとかじゃなくて……」
「さくちん、大好きだよ!」
櫻に抱きつく束、優しく受け止めた櫻は束を引き剥がしてその手を引く
「ささ、中を見ようよ!」
「だね!」
2人はタラップを登って機内へ
見たところ10席あるかないかという少ない座席数、奥にはギャレーともう一つ部屋がある
「さくちん、奥の部屋ってなに?」
「気になるなら自分の目で見る! コレはもうウチの飛行機なんだから、壊したりしない限りは怒られないよ」
「それもそうだね、ではお邪魔しまーす」
ドアを開けるとそこには……ソファとテーブルがあった
「執務室?」
「ちっちっち。執務室である以前にここは寝室。テーブルの下にはベッドがあるし、そのソファを動かせばくっついて大きなベッドになるよ。もちろん執務室でもあるからここから研究所のデータにアクセスすることもできるけど」
「これは、さくちんが一緒に寝てくれるんだね!」
「き、気が向けばね!」
「もぅ、さくちんは素直じゃないなぁ」
「い、いいの! ほら、そろそろお客さんも来るだろうし準備準備!」
「えぇ、もうちょっとさくちんとイチャイチャしたいよぉ」
「イチャイチャなんてしてないから! ほら行った行った」
今日のメインである超大型機の入るハンガーの前には、招待客のほとんどが集まっているようだ
受付をしているリーネとルイーゼがせっせと受付事務をこなしている
「さ、パーティーを始めよう!」
櫻の楽しげな声が響いた