Who reached Infinite-Stratos ? 作:卯月ゆう
一応小説評価も付いてるみたいですし、誰にも見向きされないよりはマシだと思います。
関東の片田舎、そこにあるかなり広めなお屋敷に有澤重工の社長、有澤隆文はいた
キンコーンと立派な音をひびかせる呼び鈴を押せば、中から女の子が2人駆け出してくる
「隆文おじさん!」
「おじさん、いらっしゃい」
「久しぶりだな、刀奈ちゃん、簪ちゃん」
「ささ! 中でお父さんが待ってるから」
「ああ、そう引っ張らないでくれ、わたしももう若くない」
「おじさん、アレは」
「もちろん持ってきているよ、後で渡そう」
先ほどからハイテンションで隆文を引っ張りまわしているのは更識家の長女、刀奈。それにくらべ、いくつかおとなしめなのが次女の簪だ。聞けば簪はヒーローものにハマっているとかで、アクアビットマンやトーラスマングッズを強請られていた
――あの笑みには敵わんのだよ。
とは隆文の弁である
「お父さん! おじさんが来たよ!」
「客間に通してくれ」
「は~い!」
「お姉ちゃんばっかり……」
「簪ちゃんもおじさんと遊びたいの?」
「それは……」
顔を赤くして俯いてしまう簪、引っ込み思案な性格も相変わらずなようだ
「簪ちゃん、後でおみやげを渡すときでいいよね」
「うん、ありがと、おじさん」
気がつけば長い廊下ももう半ば、客間の前にいた
「入るぞ」
「おう」
襖を引けば、この家の当主、更識楯無。隆文の意外な人脈が明らかになる
「久しぶりだな、隆文、お前から連絡が来るとは珍しい」
「ああ、更識としてのお前に用があってな」
「ほほう、まぁいい、まずはひとつ、酒でも飲もうじゃないか」
「そうしよう」
「刀奈、簪、少しはおじさんから離れたらどうなんだ?」
「うぅ~」
「
「違うわ、あとその名前で呼ぶな。もう俺は楯無だ」
「そうか、スマンな」
「おじさん、早く」
「簪ちゃん、そう焦らなくてもコレは逃げないぞ」
そう言って隆文が紙袋から取り出したのは、1/72トーラスマンこと ハイドラアルギュロスHYDOR-ARGYROS、簪がアクアビットマンを始めとするヒーロー各種を集めていると知ってのチョイスだ。
「簪ちゃん、前からほしがってただろ? だからおじさんの知り合いにもらってきたんだ。あとコレもね」
そう言って差し出したのはただの紙封筒。
「おじさん……コレは……!」
「そうだ、実際のアクアビットマンとトーラスマンの写真さ、可動風景じゃなくて済まないね」
「ううん、これでも十分! おじさんありがと!」
「お前か、簪に変なおもちゃを与えてるのは……」
「お父さん、変じゃない、アクアビットマンもトーラスマンも正義のヒーロー」
「はぁ……」
熱く語りだす簪を片目に刀奈が口を開く
「隆文おじさん、私には何かないの?」
「刀奈ちゃんは好みが難しいからなぁ、コレなんてどうだ?」
「むむ? 扇子?」
「ただの扇子じゃないぞ、それは扇面が極薄の有機ELフィルムでな、持ち手の部分にはISの技術が盛り込まれてる素敵な扇子だ」
「う~ん、よくわかんないけどありがと、おじさん」
「それが使いこなせれば刀奈ちゃんも人気者だ」
「そう?」
パン、と開かれた扇子には『魔訶不思議』と達筆に書かれていた
「え? なにこれすごい!」
「そういう扇子なんだ。さぁ、そろそろいいかな? お父さんと話があるんだ」
「「はぁい」」
「物分かりのいい子は好きだぞ」
「頼むから娘に変なものをあたえないでくれ、隆文」
「何が変だ。まぁ、確かに 変態技術者トーラスは確かに変だが……」
「はぁ……気苦労が絶えないよ。それで、要件は何だ?」
「楯無、最近防衛省内部できな臭い動きが起こってるのは知ってるか?」
「ああ、それも大臣の周辺ですべてが起きている」
「そうなのか? まぁいい、それで、この前モンド・グロッソで起きた織斑一夏誘拐事件も防衛省が手を引いてるんじゃないかって、お上様がな。それでお前らに情報収集を頼みたい」
「なるほど、
「さすがにウチも情報屋じゃないからな、それに、地下の動きは地下に住んでる奴のほうが察しやすいだろ」
そう言ってお猪口に軽く日本酒をついで煽る
「違いない、それで、金の話だが」
「ユーロ建てでいいか?」
「この際気にせん、それで」
「手付で2、満足いく成果だと認められれば13。更に必要とあらば物資支援付きだ」
「なるほどな、いいだろう、乗った」
「そう言ってくれると信じてたぞ。そのためにお上様はお前の
「お前の趣味じゃないのか……」
「簪ちゃんのは私が選んだ、前にアクアビットマンを上げた時かなり喜んでたからな。刀奈ちゃんのはお上様のセンスだ」
「なるほど――企業連は変態しかいないのか?」
「それで、ひとまず織斑千冬は処分としてドイツに飛ばされたが、その間にまた何かあれば」
「その時は叩き潰していいんだな?」
「そうでなければお前に頼まん」
楯無のお猪口にも日本酒をついで互いに煽る。
「しかしだ、なぜそこまでしたんだ?」
「それが分からないからお前に頼んだんだ。まぁお上様は織斑千冬を監視下に置くため、配下に留めるため、と予想していたがな」
「なるほどな、勝手に暴走してくれればなんの違和感も無く枷をはめられる」
「そのとおりだ、だから自作自演をしたんじゃないか、とな。そうだ、コレをやろう」
そう言ってミュージックプレイヤーを取り出すと、再生ボタンを押す
ひと通り聞いた楯無は渋い顔のまま
「おい、コレは……」
「今年の頭にあった企業連代表と織斑千冬の会談の際に盗聴器が仕込まれていたらしくてな、それに気づいたウチの面々が会場の掃除をしたら上の奴らは案の定な」
「これでも十分脅しのカタになるだろ」
「コレで脅してもっと大きい物を掴んで欲しい」
「面白い、企業連とは実に面白いな」
「だろ? 得意な奴に任せれば成果が上がる、ってのはウチの考え方の基本だからな」
「よし、明日にでも行動を始めよう。さ、堅苦しい話は終わりだ、久しぶりに酒でも飲み交わしながら昔話でもしよう」
「だな。刀奈ちゃん、簪ちゃん、もういいぞ」
隆文が声をかければ襖から飛び出してくる刀奈と簪、おそらく話の頭から尻尾まで聞かれていただろう
「やっと終わったぁ、隆文おじさんがお父さんと仕事の話をするなんてね」
「おじさん、フィンの組み方教えて欲しい」
「もう組み始めたのか、簪ちゃんは手が早いな。ん~、どれどれ? 面妖な、変態技術者どもめ……プラモにどれだけ細かいパーツを組めば気が済むんだ?」
「刀奈、明日から家を開けるから、頼んだぞ」
「え? うん、わかった」
その後、互いに昔話と言う名の黒歴史暴露が行われ、方や父としての威厳が、方や知り合いの素敵なおじさんの地位が崩れかかったとかそうでなかったとか