Who reached Infinite-Stratos ?   作:卯月ゆう

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シオンさんの過去話と世界観の整理。
完全オリジナルストーリーでACの世界観無視っております・・・


PV数で一喜一憂しております、卯月です。
物事を数値で表したものってわかりやすくて好きなんですけど、私はその評価と言うか、自分の数値はあまり見たくないんですよね。自分の価値を図られるみたいで。
まぁ、それでも見たくないものを見てしまうのが人の性、これからもちまちま頑張ります。応援の程よろしくお願いします。

章の名前は音楽から取っています。プレリュード、前奏曲という意味合いです。
物語はまだ序章、これから少し、時間軸を流れるペースがあがっていきますが、基本的には"ゆっくりさん"です。ごめんなさい


閑話:私が出会った彼女の話

 ――これは、今では 聖女マリアなんて呼ばれてしまう私が、如何にしてそうなったのか。

 彼と出会い、私の中で思うことがあったから、ゆっくり、思い返してみようと思ったのだ。

 

 

 

 今から数年前、アークの内部で大規模な粛清があったようだ、それも、ランカーによって。

 基本的に企業への肩入れを禁ずるアークが、一企業との癒着を暴かれてしまったのだ。

 それに伴う大幅な組織改革、そんな大波の中で1人の少女()がレイヴンとして放り込まれた。

 なれない世界の中で私は力をつけた、死なないための、生きるための力を。

 だが、それもつかの間、大量破壊兵器による騒乱によりアークも瓦解。統治機構として企業の合意の下「アライアンス」が設立された。

 そして幾許かの月が過ぎたころ、ひとつの声明が世界を更なる混沌へ導いていった。

 

「アライアンスの打討とレイヴンによる新たなる秩序の創出」を語るバーテックスが表舞台に現れたのだ。

 世界の秩序。その名のもとに2つの勢力による対立が激化、そして、企業はバーテックスを率いるジャック・Oの抹殺を計画する。

 それと並行し、発見された謎の機体、パルヴァライザー。

 アライアンスへ従いた私へ多くの任務が与えられた。24時間のうちに、全てを終わらせろ、と。

 私はただ従い、斬って裂いて貫いた。ただがむしゃらに。

 

 気がつけば周りには誰もおらず、私は最後の鴉(Last Raven)となってしまった。 

 

 

 

 アライアンスは時代の流れとともに進化し、構成する企業にも変化が現れ、「ネクスト」の登場とともに大きく飛躍した。

 

 アライアンスは「企業連合」へと変貌し、乾電池からACまで、のスローガンを持ち、家電から兵器まで、様々な方面に影響力を広げていた。

 だが、複数の者が絡みあうだけに、内乱は発生し、それぞれの企業に属するリンクスが代理戦争のような形を取っていた。

 

 もちろん、企業連に属さない企業も存在し、それぞれの技術を武器に、企業連と上手く折り合って生きながらえていた。

 

 私はアライアンス時代の功績とコネクションを生かして、独立した傭兵として生きていた。

 どこにも属さず、誰にも肩入れしない。かつての「アーク」のようなスタイルが、私の生き方となっていた。

 アライアンスが企業連となっても、私は1人世界中を飛び回り、多くの戦場で生きてきた。

 時には彼ら(企業連)からの依頼も受け、MTに混じって輸送団の護衛などを行っていた。

 

 多くの戦場見てきたが故に、人が理解し合い、協力しあうことができないということをいやというほどわかってしまった。

 価値観の対立は小さな争いを生み、それは人々を巻き込んだ戦となる。そこに利益を見出そうとする輩が加われば立派な戦争の出来上がりだ。

 

 もっとも、その中で金を稼ぎ、飯を食べてきた私が語る資格など無いのだろうが。

 

 

 私の存在を大きく揺るがしたのは、自分自身の言葉と、一人の少女だった。

 アジアの紛争地帯で仕事をしていた私は、戦火の下、銃声の響き渡る市街地で、私は反政府組織の排除の任についていた。

 暗い路地を一つ一つ確認し、異常のないことを確かめる。

 

 私はそんな中で1人の少女と出会った、彼女は使い方もわからないであろう小銃を私に向けて、ひたすらに「来るな!親殺しめ!」と震えた声で叫んでいた。その背後を見ると彼女の親であろう男女が折り重なるよう倒れていた。おそらくは追い詰められ、娘をかばって撃たれたのだろう。

 

 私はバラクラバを取り、銃を下し、敵意の無いことをアピールした。

 それでも彼女は必死の抵抗を続けた。己を守るため、守ってくれていた存在を失ったことを理解しきれていないからこその抵抗なのだろう。

 

 私は出来る限り優しく彼女に語りかけた

「私は敵じゃないよ、君を守るために来たんだ。それをおろして、ね」

 

 それでも彼女は泣きながら銃を向け続ける。

 

「君はお父さんとお母さんを守りたいんだろ? お姉さんもそうなんだ、私はみんなを守りたい」

 

「本当? 信じていいの?」

 

「それは君次第だよ。ただ、今の私を殺したら、君はお父さんとお母さんを殺した奴とおなじになってしまうね」

 

 その一言が彼女に刺さったようだ、力が抜けたように銃を落とすと、そのままへたり込んでしまった。そして、堰が切れたようで、涙を流しながらこういった

 

「お父さんとお母さんは私を守ってくれた。だから私は同じことをしなくちゃいけないと思った。分からなかった。私を守るために命すら捨てたお父さんとお母さんを、私も命を賭けて守らなきゃいけないと思った」

 

 その潤んだ、だが真っ直ぐな目には彼女の生の炎が見えるようだった。

 私の適当な言い訳を、こんなに素直に受け止めるなんて。

 それは幼いころの自分を見ているようであった。

 

 

 親を早々に失った私は、親戚と名乗る者たちの間を回され、時には暴力にすらさらされた。

 自分自身を守るために、ひたすらに力を求めた。目の前の敵を払う力を、私に楯突くものを薙ぎ払う力を。

 そして、行き着いたのが、アークだった。

 

 そこで私はひたすらに目の前の敵を払う力をつけ、実際にそうしてきた。

 だが、それは本当に正しい行動だったのだろうか。

 自分で吐いた言葉と、少女の目を思い出すとそれすら不安になった

 

 私は自分自身を見直すべきだと考え、祖国である日本に帰ることを決めた。

 あてのない旅路、自分探しの旅、なんて言葉がピッタリの適当な放浪だった。

 

 そうして、そんな放浪人である私を拾ってくれたのがかつてこの教会のシスターであった――彼女は欧州の修道院を出た、本物のシスターさんである。天草ハルであった。

 どこか懐かしい雰囲気を醸し出す彼女に、私は惹かれたのだろうか?

 誰に対しても笑みを絶やさず、包容力ともいうのだろうか。懐の深い、女性だった。

 

 私は彼女に自分を見つめなおす術を乞うた。だが、彼女はただ、

 

「それは自分自身で見つけるべきです。あなたのことがわかるのはあなたしかいないのですから」

 

 

 そう言って優しい笑みを向けるだけだった。

 

 彼女は、人を殺、奪うことしか能のない私に、人を救い、与える術を教えてくれた。

 私と対局に位置する彼女から見た私はどう写ったのだろうか。

 

 彼女は私のことを何も聞かなかった。おそらく、わかっていたのでは無いだろうか?

 

 そんな私を、彼女は教会に置いてくれた。そこで私は自然と、彼女から慈愛の心を学び、排除する力ではなく、受容する力を学んだ。

 私にはすべてが新鮮だった、目の前の敵を排除するのではなく、受け入れるなどとは、戦場を舞っていた私では、想像もできなかっただろう

 

 今思えば、彼女は私に反対のものを与え、私を磨いてくれたのではなかったのだろうか。

 

 

 数年前、彼女が逝く直前に彼女が私に授けてくれてくれたのは、日本ではありふれたことわざだった。

 

「情けは人の為ならず、といいます。あなたの人助けは、かならず、巡り廻ってあなたへ返ってくるのです。あなたは大切な人を、大切なモノを守るだけの力だけをつけてきたようですが、守るだけでは気づかぬうちに失くしてしまうこともあるのです。失くしてしまったものは救い上げ、与えるしかありません。私はその術をあなたにお教えしたつもりです。あなたには力がある、だからその力を、自分のためだけでなく、他人のためにもつかいなさい。そうすれば、自ずと答えが返ってくるはずですから」

 

 そう言って、私に優しい笑みを向けたのを最後に、彼女は息を引き取った。

 

 

 その後の私は、彼女の姓である天草を名乗り、シスターハルの代わりにこの教会を取り仕切り――と言っても私1人しか居ないのだが。時折、シスターハルから伝え聞いた神の教えを近所の人々に説いたり、懺悔を聞き入れたりと、シスターっぽいことをこなしていた。

 

 その裏では、救える人間を救うべく、人命救助、難民支援など、私の"救い"の力を使ってきた。

 

 

 あの男が来るまでは……




シンプルに纏めてしまうと、国家解体戦争なんてものがあらず、3系で存在した企業は再編を繰り返し、4系の企業へ収束します。そうして、企業は互いの利益の追求とNPO的活動のため、企業連へと再編されたのです。

AC時代は出来る限り平和にしておきたいですからね


基本的に私がサボらない限りは毎朝6時に投稿予約をしています。
朝の通勤通学のおともにしていただければ幸いです

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