Who reached Infinite-Stratos ? 作:卯月ゆう
「3…2…1 今だ!」
高出力のレーザーブレードで扉が焼き切られると千冬が雪片を一薙して扉を吹き飛ばす。
中ではオーギルがゴム弾をバラ撒いて兵士をなぎ倒していた
「くそっ、束!」
「ちーちゃんが来たよ、さくちん、帰ってきて」
「はい、束お姉ちゃん」
束は冷静に櫻に帰投を命じ、矢継ぎ早に指示を出す
「ちーちゃんはいっくんのところに早く、今救急車を向かわせてるから」
「すまん、一夏! 大丈夫か!?」
倉庫の真ん中で横になっている一夏を千冬が抱える
「あー、セレたん、ドイツ軍の増援だ。面倒な奴らだね」
「はい主任、とりあえず中に入れなければいいですよね」
「そうだね、しばらく2人にしてあげな」
「分かりました」
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内部制圧が終わり、一夏を抱き上げた千冬は声をかけ続けた
「一夏……」
「千冬姉、助けに来てくれたのか……」
「違っ、私は……」
「ありがとう、千冬姉」
「一夏、ごめん、ごめんな……本当にごめんな、一夏」
「千冬姉は悪くねぇよ、簡単に拐われちまったのは俺だからな」
「一夏……」
「織斑さん、救急車が着きました」
「ああ、すまなかったな。セレン」
「いえ、私は正しいと思う行いをしただけですよ」
「お姉さん、ありがとう」
「お礼を言われる立場では……」
「済まなかった、束と櫻に礼を言っておいてくれるか?」
「ええ、分かりました。では私は戻りますね」
さすがにこれ以上水を指すのは無粋と察したのか、伝えることを伝えるとそのままISを展開して飛び去った
まだ明るい空に光る黄色い点に語りかけるようにつぶやいた言葉は、そっと風に消えた
「本当に迷惑をかけたな。お前ら」
これを機に一夏は貪欲に力を求めることになる、二度と姉に迷惑を掛けないために、万が一の時に自分のみならず、周りを救えるような力を求めて
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一方で今回の救出作戦の立役者達は早くもこれから先のことを考えていた
「束お姉ちゃん、今回の件は帰ったら調べ直さないと」
「そうだね、こんなチャチな作戦を立てる奴らだ、よほど犯罪慣れしてないね」
「顔は東洋人のそれだったから、中華系の組織かな?」
「束さんは日本の仕業じゃないかと思ってるよ」
「どうして?」
「犯罪慣れしていなくて、東洋人で、十分な動機があるからだよ。それにドイツも協力したのは十分な見返りがあるからだろうね」
「まさか、システムハックの一件が今回まで繋がってるとか言わないよね」
「束さんはそうだと思ってるけどね、役に立たなかったから切り捨てる。いかにも日本人らしいね」
「そんな、まさか……」
「ちーちゃんはこの後、代表の資格を剥奪、専用機も没収、それでドイツに送られるんじゃないかな? それでIS部隊の教官でもやればドイツも美味しいよ」
「でも、ここはスイスだよ? そんなのがバレたら……」
「政府要人が拐われたのを見つけたのがちょうど隣の国だったからさっさと助けに行きました。とでも言えば違和感はないし、世間からはヒーロー扱いだろうね」
「そんな……」
「詳しくは帰ってからだね、セレたんもただじゃすまないだろうから、どうにかしないと」
「代表資格の剥奪は免れないけど……せめて普通に……、あっ!」
「どしたの? さくちん」
「IS学園」
「ああ、そこにセレたんを先生として送るんだね! 島流しにもなるし、普通に生きられるよ」
「あとで参謀本部に掛けあってみるよ」
「お仕事はたくさんだね。そうだ、帰りに適当にジュースでも買ってきて」
「おさいふ持ってないよ……」
「あ……」
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「それで、首尾は」
「織斑千冬は試合を棄権、それに釣られてトルコ代表も試合を棄権してしまいましたが、概ね問題ありません」
「よろしい、あとは計画通り、織斑千冬を国家代表から降ろし、ドイツへの見返りとして1年間教官の任を与える。その後はIS学園に島流しだ」
「大臣、一つ問題が……」
「概ね問題ないといっただろ! 何事だ!」
「織斑千冬が突入する前に、何者かによって内部が制圧された上、救助に向かったドイツ軍さえ……」
「そいつの正体を調べろ、もしや
「ですが、実行班は実弾で、ドイツ軍はゴム弾で制圧されてたことがわかっています」
「ただ国家を相手にしたくなかっただけだろう、調べを進め給え」
「分かりました」
「役に立たない人形はさっさと捨てて次を用意すれば良い、3年後、再び役に立つ、な」