Who reached Infinite-Stratos ?   作:卯月ゆう

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夏空の下

散々火花を散らし合った日本代表と企業代表は試合準備のため別れてピットに入っていた

 

「最終確認!」

 

「メインシステム問題ありません」

 

「推進系統問題なしです」

 

「火器管制問題なし」

 

「バイタルも大丈夫です」

 

「よし、今こそオーメルの力を、企業連の力を、世界に見せつけるのだ!」

 

「「「「「「おう!」」」」」」

 

 

「やってるね~」

 

「主任!」

 

「いやいや、気合が入るのはいいことだけど、空回りしないでね? セレたん」

 

「はい、篠崎主任」

 

「じゃ、我らが姫様から気合を引き締める言葉でも頂こうかな?」

 

「え? コホン。相手はブリュンヒルデの称号を初めて手にした日本代表、織斑千冬です。相手に不足はありません。今こそ私達の技術力と、心意気を持ってブリュンヒルデの称号をセレンに与えられるよう精一杯頑張りましょう!」

 

「「「「「応っ!」」」」」

 

 

束の携帯端末がアラートを示す

 

「さくちん、緊急事態だよ、いっくんが会場外に」

 

「とりあえず、この場を収めてから事態の収拾に向かいます、千冬さんのことだから決勝の棄権すらしかねません」

 

「束さんはサポートの準備をしておくね」

 

「おねがい」

 

 

「では、決勝まであと3分です、技術スタッフは機体の再確認、5度目だろうと10度目だろうと細かいところまで目を通しなさい。セレンさんは甘いモノでも食べて落ち着いててくださいね。では始めッ!」

 

パンッと櫻が手を打つとピットの中は再び忙しなく動き始める

そして櫻は荷物を置くと外に……

 

 

「フュルステンベルク社長」

 

「どうしたの? セレンさん」

 

「社長は日本の代表と親しいと聞いています、あの人のクセなどは無いんですか?」

 

「ないね、千冬さんにはとにかく隙がない。だから、隙は自分で作るんだ。あと、レーザーブレードはかなり警戒されてるから、どんどん使って消耗させるのもありかな。現場のことは現場に任せるよ」

 

櫻はドアの外にでると、一目散に走りだした

 

「束お姉ちゃん、状況を!」

 

「いっくんは南西に約3キロ先をそのまま西方向に移動中、たぶん車だね」

 

「くそっ! 人が多くて夢見草がっ!」

 

「地下駐車場を抜けて、出口D-4番から出て」

 

「Ja!」

 

「次左ね、その次も左、そしたら反対側の階段だよ」

 

「左、左、あった」

 

「いっくんが止まった。ソコから7キロ西の倉庫だね。おっと、お客さんも居るね」

 

「はぁはぁ、数は」

 

「熱源は15、倉庫内各所に分散」

 

「来て、夢見草」

 

「レーダーにマーキングしたから全力ダッシュで」

 

「あいあい!」

 

 

 

会場では総合戦術決勝が全盛を迎えていた

 

片手にブレード、片手にマシンガンで近~中距離のレンジで攻め立てるトルコ代表、セレンの攻撃に、千冬も防戦一方となりつつあった。

 

パラララララと乾いた音がつながると、 瞬時加速イグニッションブーストで一気に距離を詰め、ブレードを振りかぶる

 

「掛かった」

 

千冬が雪片を引くと刃身が輝き、

 

一閃、それは空を切り裂いた

 

 

直後、背中から受ける衝撃、見れば黄色の 機体LAHIREは千冬にマシンガンを向け、ブレードを真横に向ける謎の構えを取っていた

 

 

突っ込もうとしたセレンの考えと裏腹に千冬はいきなり真上に飛び出し、エネルギーシールドを零落白夜で切り裂くと虚空へと消えた

 

 

「主任! これは一体!」

 

「間に合わなかった! とりあえずちーちゃんを追って!」

 

「は、ハイッ!」

 

 

 

 

 

目的地にオーバードブーストもびっくりのスピードで駆けつけた櫻に聞きたくなかった情報が入る

 

 

「さくちん、ちーちゃんにこのことがバレた! 今そっちに向かってるよ!」

 

「誰がコレを……アレはドイツ軍?」

 

「外から突入しようとする熱源が20、ドイツ軍なの? なんでこんなところで」

 

「わかんないけど、早く一夏を!」

 

「奴らより早くいっくんを助けるんだ! 交戦は絶対に避けてね!」

 

「もちろん!」

 

 

 

 

 

 

たったの数秒がここまで長いことなど初めてだろう、トルコ代表、セレンは試合を放棄し飛び出した千冬を必死で追いかけ、制止しようと言葉をかけ続けた

 

 

「織斑さん! 止まってください! 試合放棄ですよ!」

 

「構わん! 一夏が、一夏が!」

 

「束音主任が止めろと言ったのです!」

 

「なっ、束が」

 

いきなり空中で止まる暮桜、それに向かい立つようにライールが位置取る

 

 

「やっほー、ちーちゃん、セレたん、聞こえるかな?」

 

「束、どういうことだ!」

 

「いっくんが、誰かに拐われて、その先の倉庫に居るよ。さくちんが今突入して内部を制圧したところだね。あっ!」

 

「どうした、束!」

 

「ちーちゃん、聞くけど、その情報は何処から手に入れたのかな?」

 

「たしか、ドイツの衛星で…と」

 

「くそっ!」

 

怒りを露わにする束に思わず千冬の顔が厳しくなる

 

「どういうことなんだ? 束」

 

「いまドイツ軍がいっくんの居る倉庫に突っ込んだよ、さくちんは脱出した。奴ら最初から仕組みやがった!」

 

「主任、これから……」

 

「とりあえず、いっくんのところに行ってあげなよ。もうちーちゃんもセレたんも試合を放棄したとして失格だからね」

 

「はぁはぁ、千冬さん、セレンさん、聞こえますか?」

 

「櫻か! 大丈夫なのか?」

 

「機体は軽く傷つきましたが、大丈夫です」

 

「さくちん、状況を!」

 

「ドイツ軍の特殊部隊と思われる兵2個分隊が内部へ突入、クリアリングをとってます」

 

「一夏は?」

 

「私が内部制圧した時は無傷で無事でした」

 

「そうか、よかった……」

 

「ちーちゃん、安心するのはまだ早いよ、ここまで仕組んだ奴らだから何を為出かすかわからないからね」

 

実際に中では倒れた一夏を囲むように兵士が連なっていた

 

 

「とりあえず、もう一度突っ込みますか? 非致死性兵器なら揃ってますから、その間に千冬さんに来ていただければ」

 

「いや、その必要は……」

 

「さくちん、ドッペルゲンガーを中に撃ち込んで制圧を。使用弾種は問わないよ」

 

「束! やりすぎだ!」

 

「さすがに実弾は使いませんよ、コレばかりは腹が立ちましたがね」

 

「くそっ、今行くからな!」

 

「セレたんはアリーナに戻ってきてね、むやみに首を突っ込むことないよ」

 

「私は、私は社長の下に!」

 

「ちょ、セレたん!」

 

千冬の後を追うセレン、目標の倉庫は目の前だ

 

 

「アレを斬れるか?」

 

「もちろんです」

 

「なら、私の合図で扉をぶった斬ってくれ、私が突っ込む」

 

「はい、織斑さん」

 

「ふっ、それは櫻の教育の賜だな」

 

「え? なんでしょう?」

 

「まぁいい、行くぞ!」


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