Who reached Infinite-Stratos ?   作:卯月ゆう

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リベンジマッチ

今年も夏がやってきた

今回はスイスで行われる第二回モンド・グロッソ

眠れる獅子、オーメル参加もあり、昨回とは比にならない盛り上がりを見せていた

 

 

「一夏くん? 今何処?」

 

「えーっと、来賓席? 偉そうな人がいっぱいいるとこだ」

 

「わかった、ソコ動かないでね! あとジュース買っておきなさい!」

 

「ちゃんと覚えてたか! お前こそ、俺にジュース買ってこいよな!」

 

「いいわ、楽しみにしてる」

 

「ああ」

 

携帯をポケットに仕舞うと、口角を上げ、

 

「ついに、この時が来た!」

 

といきなり叫べば周囲の目一斉にそちらに向く

 

 

「ちょ、さくちん! 人のこと言えないよ……」

 

「あ、ああ。すみません」

 

「いっくんにまた会うためにいろいろしてきたのはわかるけど……」

 

 

そう、櫻は一夏との 再戦背くらべの為にこの半年間、嫌いな牛乳を飲み、運動をし、頑張って背を伸ばす努力をしてきたのである

その甲斐あってか、半年前5cmプラスの158cmと、同年代女子比プラス10cmとかなり成果が出ていた

 

――さぁ、一夏くん、覚悟していなさい!

 

 

「さくちん、こっちだよ」

 

「あ、うん」

 

束に手を引かれて来賓席へ向かう。今年は代表専用機の開発元で良かったと思った櫻だった

 

カードリーダーにIDを通し、中の金属探知機を通る。世界のIS関連企業の重役や各国代表の家族が集まるこのフロアはかなり厳重な警備が敷かれていた

 

「一夏くん!」

 

窓に張り付くようにして周りを見渡す一夏に声を掛ける

 

 

「ん? ああ、櫻! 束さんも、久しぶり!」

 

「約束を果たしに来たよ」

 

「久し振りだね、いっくん。ちーちゃんは?」

 

「千冬姉なら向こうで倉持の人と話してるよ。さぁ、櫻、お前の成長を見せてみろ」

 

「その言い方はちょっと変態くさいかな、って思うけど。いいわ」

 

一夏の前に立つ櫻は頭ひとつ高い、が

 

「櫻、お前その靴はずるいだろ……」

 

「もちろん脱ぐよ!」

 

よそ行きの服装に身を包んだ櫻の足元はもちろんヒールの高いパンプスだ

それを脱ぎ、束に渡すと

 

 

「じゃ、束お姉ちゃんジャッジを」

 

「たのんだぜ、束さん」

 

ジュース一本がかかった運命の瞬間

束お手製のメカが2人の頭上でレーザーを照射する

 

「結果を発表します」

 

ブリュンヒルデの身内と、オーメルの重役が何かしていると辺りには人が集まりつつ合ったが、 真剣勝負背比べ真っ最中の2人には見えていない

 

 

「勝者、織斑一夏! 結果158.5cm!」

 

「っしゃぁ!」

 

「毎日牛乳飲んだのに……」

 

「さぁ、櫻、約束どおり、ジュース一本な! 束さん、差はどれくらいだったんだ?」

 

「さくちんは惜しくも3mm足りなかったよ」

 

「ぐぅぅ、まぁ、約束は約束だから、買ってくるよ」

 

周囲の大人達は子供によくある背比べだとわかると、微笑ましい光景に優しい笑みを浮かべるばかりであった

そうでない人間も数人見受けられるが

 

 

「じゃ、一夏くん、待っててね。ちょっと買ってくる」

 

「おう、コーラな」

 

「おっけ、束お姉ちゃんはなにか飲む?」 

 

「束さんはソコのカウンターでお酒を……」

 

「はぁ……程々にね、ここは一応出先なんだから」

 

「わかってるよ!」

 

「あと、一夏くんにアレ渡しといてよ、さっきから辺りで変な気撒いてる奴が居るから」

 

「わかったよ」

 

最後は束にそっと耳打ちすると走りにくそうな靴を再度履き、そそくさと外へ駆け出した

 

「いっくん、これは束さんとさくちんからの贈り物だよ」

 

「え、いいのか?」

 

「いっくんはこれから色んなことに巻き込まれるだろうけど、コレがあれば大丈夫だよ」

 

そう言ってウマの蹄鉄をかたどったキーホルダーをそっと一夏のスボンのベルト通しに取り付けた

 

 

「ヨーロッパではウマの蹄鉄は厄除けのお守りなんだ、さくちんへの勝利記念だね」

 

「へぇ、そうなのか。ありがと、束さん」

 

「それを考えたのはさくちんなんだけどね、ジュースだけじゃつまんないって」

 

「そっか、後で櫻にも礼を言わないとな」

 

「一夏、束」

 

「お、千冬姉」

 

「ちーちゃん! 久しぶりだね! ハグハグしようゴフッ」

 

「残念ながら私は海外の文化に疎くてなぁ」

 

「だからってアイアンクローかまさ無くてもいいんじゃ……」

 

「なにか言ったか?」

 

「いや、何も」

 

「よろしい。久し振りだな、束」

 

「久しぶり、相変わらずちーちゃんの愛は痛いね」

 

「櫻が見当たらないが、どうしたんだ?」

 

「櫻なら、俺との勝負に負けてジュース買いに行ってるぜ」

 

「そうか、コレでオーメルからまた一つリードか」

 

「それもちーちゃんの勝負には含まれてるんだね」

 

「もちろんだ、次は総合戦術決勝だ、相手はもちろん」

 

「我らがトルコ代表、セレたんだね」

 

「ああ、あの厄介なブレードとマシンガンでここまで勝ち上がってきたんだ、相手に不足はない」

 

「あのブレードはどうなってるんだ? 束さん」

 

「ちーちゃんがいるからあまり詳しくは言わないけど、長さが変わるんだよ」

 

「へぇ、それって間合いが取りづらいからかなり厄介だな……」

 

「それだ、場合によっては雪片より長いリーチで斬っていたからな」

 

「でもちーちゃんだってワンオフアビリティでほぼ一撃勝利じゃん」

 

「当てられなければ意味が無い」

 

「千冬姉のアレはなかなか強烈そうだからな」

 

「一夏くん、おまたせ」

 

「おう、櫻。お守り、ありがとな」

 

「えっ、束さんから聞いたの?」

 

「まぁな」

 

「久しぶりだな、櫻、ほほう、なかなかいい勝負だったみたいだな」

 

「千冬さん、お久しぶりです。3mm差で負けました」

 

「ははっ、そうか。だがお前も大きくなったな。背丈以外にも……」

 

「ちょっ、千冬さん!」

 

「まだそういう話は早いか、まぁ、これで今のところは私達がリードだな」

 

「近接では2位でしたが、射撃ではダントツトップです、次で決まりますね」

 

「そうだな、お前の話しぶりから察するに、あの機体はかなり速いんだろ?」

 

「もちろん、企業連の技術の粋を集めた機体ですよ?」

 

「それに、隠し球も多そうだ」

 

「ええ、まっすぐばかりでは千冬さんに勝てませんからね」

 

 

 

 

「「では、決勝を楽しみにしてるぞ(していますから)」


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