Who reached Infinite-Stratos ? 作:卯月ゆう
織斑家の前には背の高い黒髪と、背の低い銀髪の2人の女性が立っていた
「さて、ちーちゃんは本当に私達を夕食に招待してくれたのかな?」
「あの笑い方はたぶんそうだと思うんだけどね、モンド・グロッソでフルボッコにしてやる。っていうならもっとストレートな言い方をするでしょ、千冬さんは」
「だね、じゃあ。ぴんぽーん」
束が自分で言いながら呼び鈴を押すと、男の子の声で「はい、どちら様でしょう?」と返事が帰ってきた
「久し振りだね、いっくん。束さんだよ!」
「え、本当に束さんか?」
「もちろん、束さんだよ? さくちんも一緒に居るよ」
「櫻も来てくれたのか! 今開けるから」
せわしない足音が聞こえ、玄関のドアが開けられる
「束さん……か?」
「みんなのアイドル束さんだよ?」
「櫻も、変わったな」
「そりゃ6年も経てばね」
「まぁいい、上がってくれ、千冬姉から客を呼んだから夕飯は多めに作れって言われてたんだ」
「おっじゃましま~す」
「お邪魔します」
「おう!」
そうして織斑家で懐かしい顔ぶれが集まっての夕食となった。肝心な千冬がまだ不在だが
「ちーちゃんは?」
「なんか呼び出しくったとかで遅くなるって」
「アレですかね?」
「多分そうだろうね」
「そういえばこの部屋のスキャンは!」
「あ、いけっ! なんでもみえ~るくん2号!」
再び飛び出した埴輪、くるくると空中で回る様はなんともシュールだ
束はISを展開させろ、とメモを渡すと櫻の部分展開を確認すると
『電話のとこに1つ、テレビに1つ、ソファに1つ、台所にも1つ、ってもう数え切れないほどあるよ、どうしよう』
『いっその事全部はいちまいますか、日本にプレッシャーを与えられるでしょ』
『ここまで言っちゃったらね……』
「櫻、束さん、どうしたんだ?」
「ちょっといっくんは静かにしててね、さくちんと大事なお話してるんだ」
「束さんがそういうなら……」
『あとで有澤社長にもお願いして手を回さないと』
『こっちは帰ってから防衛省のサーバーにハッキングしてここでの会話ログを探して頂戴するよ』
『あとはムッティの知り合いのつても使おうかな』
『そこまでするの?』
『情報が漏れたら漏れた先を徹底的に潰す、オッツダルヴァおじさんの教えだよ』
『ダイナミック情報管理だね……』
『じゃ、そういうことで、洗いざらい話してビビらせましょ』
『りょーかい』
「終わったよ、いっくん、ごめんね」
「いや、いいんだその間に準備とかしちゃったし」
「千冬さんはまだかな」
「ちーちゃんの携帯に掛けてみる?」
「そういえば名刺もらってたね」
そう言って携帯で千冬にダイヤルする
ワンコール、ツーコール、スリーコールで千冬は出た
「はい」
「あ、千冬さん、櫻です」
「櫻、どうしたんだ? まさかもう家にいるのか?」
「ええ、そのまさかです、千冬さんは今何処に?」
「もう駅から家に歩いてるよ、あと数分で着く。先に食べ始めてていいぞ」
「いえ、ホストが居ないまま食事を始めるのは……」
「ははっ、そうか、少し待っててくれ」
「はい」
携帯を置くと真っ先に束が尋ねる
「ちーちゃんは?」
「いま駅から歩いてるって、多分走りだしたからもうそろそろ着くんじゃないかな?」
「ただいま、束、櫻、待たせたな」
「ほら、来た」
昼と同じスーツ姿でダイニングに入ってくる千冬、かなり様になっている
「おかえり、千冬姉、おそかったな」
「ああ、お偉いさんから呼ばれてしまってな」
「それって昼間のアレですか?」
「ああ、おまえらいいのか? この家も盗聴器だらけだろう?」
「ええ、さっき確認しました。ですがこのまま普通に喋ること喋って日本にプレッシャーを与えるのが得策だと」
「家に入って普通にいっくんとお話しちゃったからね」
「そうか、ならそうしよう。お前らが話してくれればそれは日本の利益になるからな」
「さすがに束さんはそこまで口軽くないよ?」
「ほら、束、お前が櫻と一緒にいる時点で企業連とのつながりがバレる」
「あっ」
「もういいよ、束お姉ちゃん、バレたら口止めすればいいんだから」
「相変わらず櫻はさらっと恐いことを言うな」
「ほら、みんな、飯できたぞ。せっかくみんな来たんだ、ちょっと気合入れて作ってみたんだけど、どうだ?」
テーブルに並ぶのは一夏お手製の品の数々、小さい頃から料理をしていたのだ、その腕はかなり上達したものと見受けられる
「一夏、アレ持ってきてくれ」
「千冬姉、またか? 程々にしてくれよ」
「いいだろ、祝の席だ」
仕方ねぇな、とつぶやいて一夏が冷蔵庫から取り出したのは、なんとも立派なラベルの張られたワイン
「一夏、グラスは2つだ」
「え、束さんに飲ませるのかよ」
「束も20だ、イケるだろ」
「さくちんの家のパーティーで何度か飲んでるからだいじょぶだよいっくん!」
「ドイツは18で成人ですから、束お姉ちゃんは結構前から飲んでますよ」
「そうなのか……束、ドイツビールはうまいのか?」
「そうだなぁ、日本でビール飲んでないからわかんないけど、トルコで飲んだ奴よりかはずっと美味しかったかなぁ」
「ドイツビールはかなり種類があるらしいからな、一度飲んでみたいものだ」
「こんどさくちんにお願いして送ってもらうよ! いいよね、さくちん」
「私はお酒を買えないから自分でやってね」
「楽しみにしてるぞ、束」
「うぅ、ちーちゃんのためなら!」
「はい、束さん」
「ありがとね、いっくん」
「櫻はオレンジジュースでいいよな」
「うん、ありがと」
「では、再会に乾杯だ!」
千冬の音頭でグラスを合わせる、久しぶりに揃った面々だ、騒がしくなることは間違いない