Who reached Infinite-Stratos ? 作:卯月ゆう
「お久しぶりです、織斑さん」
「こちらこそ、ミスフュルステンベルク」
無言で中田を睨みつける束は放っておくとして
「わざわざトルコからようこそ。長かったでしょう?」
「そうですね、今日は家から来たので更に時間がかかりましたよ」
「そうですか、もう観光などはされたのですか?」
「ええ、昨日京都を」
「それは良かった。篠崎さんは如何でしたか」
「え、え~っと、京都で日本食を頂き、とても有意義時間を過ごせました」
「そうですか、中田さん。申し訳ないのですが、席を外していただけませんか?」
「しかし……」
「彼女らは私の古い友人です。万が一にも私に危害を加えようなどとは考えませんよ」
「それとも、我々に信用が無いということでしょうか? それはとても残念ですね。こちらはとても待遇がよく満足していましたのに……」
「くっ、では、私は失礼致します。時間になりましたら、またお呼びいたします」
「すみません、中田さん」
中田の退出を確認すると、束は再び埴輪を取り出すと、スイッチを入れた
メモに盗聴器と監視カメラの位置を書き込む
――盗聴器は私が処分するから、束は防犯システムへのハッキングを
――あいよっ
アイコンタクトで会話が成立するくらいにはこの3人の仲は腐って居ないようだ
「それにしても、千冬さんが国家代表なんて驚きましたよ」
「私もどうしてこうなったのか……」
「前回のモンド・グロッソ、私達もちゃんと見に行きましたからね。総合戦術決勝はすごい戦いでしたよ」
「まさかマシンガンを"斬って"しまうなんて、さすが織斑さんですね」
今ので防犯システムへのハッキングが終わったということだろう
「前回は企業連のISが出なかったようですが、何かあったのですか?」
「それが、モンド・グロッソに合わせた機体の開発が間に合わなくて。不覚です」
「ほぅ、世界の企業連がそんな事になっていたとは」
「お陰で前回は解析に全力を尽くせましたよ、次は千冬さんをも倒せるほどの装備を持った機体を投入しますから」
「それは楽しみだ、私と暮桜で"斬り"倒してやろう」
会話からすべて片付いたことに気づいたのか、束の口角が上がる
「もういいんだよね!」
「いいよ!」
「「ちーちゃん(千冬さん)ハグハグしようよ!」
束を受け流し、櫻だけを上手く抱きとめた千冬はやっと言いたいことが言えると、どこか安堵の表情を浮かべていた
「久しぶりだな、櫻。6年ぶりか。大きくなったな」
「お久しぶりです千冬さん。やっと普通にお話できます!」
「酷いよちーちゃん!」
「何だ束、居たのか。てっきり別人だとばっかり」
そこにはウィッグを外し、素の赤紫の髪を流す束
「まぁいい、こうして久しぶりに会えたんだ、短い時間だが、語ることも多いだろ」
「そうですね、アレから私達に何があったのか、千冬さんに何があったのか」
「束さんはさくちんにお世話になりっぱなしだからねぇ」
「だいたい見当はついていたが、まだ小学生の女の子に世話になっていて恥ずかしくないのか?」
「ぐっ、言い返したいけど事実だから言い返せない……」
「束お姉ちゃんにはウチの会社でIS作ってもらってます。前回出れなかったのは、作ったISがオーバースペックだったからですよ」
「まぁ、そんなことだろうとは思っていたさ。なぜ束がISを出さないのか。考えれば出さないんじゃなくて出せない事情があったということだ」
「いまでこそ一般的になりつつある第二世代機をデチューンしたもので出ようと思ったんですけど、不安定で……」
「なるほどな、常に力を制限されていたら不具合の1つや2つ出るものだ」
「ちーちゃんの暮桜はどうしたの? 機体変更は無いみたいだからアップデートくらい掛けたんでしょ?」
「これは国家機密にも関わるから内密に頼むぞ、二次移行した」
「おお! さすがちーちゃん! これはデータ取らせてもらわないとなぁ」
「ってことは、ワンオフアビリティーも?」
「ああ、詳しくはモンド・グロッソでのお楽しみだな」
「ちぇっ、でもコレでお楽しみがまた増えたね」
「我社の誇る最新型と、型遅れの進化版、どっちが強いのか」
「たぶんちーちゃんだね」
「ですよねぇ、千冬さんは素の戦闘力が高いですから……」
「お前ら人を貶してるのか褒めてるのか」
「束お姉ちゃん、ウィッグつけて」
慌ててウィッグをかぶり、櫛で髪を梳かしていると
コンコンと扉がノックされ、中田が入ってくる
その表情には焦りがありありと見て取れ、盗聴器や防犯システムがすべて看破されてしまったことがかなり効いているようだ
「お時間です。外に車を待たせておりますので」
「織斑さん、短い時間でしたがありがとうございました」
「では、モンド・グロッソでのご活躍をお祈りしております」
「ではお二人、一夏の夜をお楽しみに」
「ええ、そうさせていただきます」
そう言って別れると、どこか早足な中田に連れられ、あっさりと外の車回しに出された
「それでは、本日はありがとうございました」
それだけ言い切ると踵を返し、足早に去っていった
「効いてるね、アレは」
「だね。それで、ちーちゃんが言ってたアレは……」
「今晩うちに夕食食べに来い。だろうね」
「だよね!」
「一夏くんと会うのも久しぶりだなぁ」
「いっくんも大きくなってるんだろうなぁ」
「とりあえず、ホテルに戻ろっか」
「だね、疲れちゃったよ」
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「中田君、今回のコレはどういうことだね?」
「申し訳ありません。会場のセキュリティがすべて乗っ取られまして……」
「誰の仕業かわかっているのか?」
「それが痕跡が残っておらず、追跡は……」
「企業連の内部を探るチャンスだったのだぞ? そのために織斑代表に会話術を仕込み、薄汚いことすらしたというのに、なんというざまだ!」
「大変申し訳ありません」
「システムハックを短時間で行えるなど誰がやったか見当くらいつくだろう!」
「証拠が無いので……」
「くそっ、もういい、下がれ」
「はい、大臣」