Who reached Infinite-Stratos ? 作:卯月ゆう
オーメル・サイエンス・テクノロジー本社の社長室では体格に見合わない立派な椅子に座ってこれから始める会議に備えていた
尤も、櫻は音声だけの参加であることが通例なので特に身だしなみを整えるなどはしない
「時間になりました、始めます」
「お願い」
秘書を務めるリーネ(もともとオッツダルヴァの秘書をしていた女性だ)の言葉で仕事モードに切り替える
「それでは、企業連定期会議を始めます」
各社の社長、代表がきりりとした表情を並べている
「本日の議題は来る第二回モンド・グロッソに送るモデル
「ライールは第一回モンド・グロッソで優勝した日本の暮桜に見習い、高速機動戦を主眼に開発した機体です。武装はオーメル製マシンガンを2丁、インテリオル製レーザーブレードを1振、BFF製スナイパーライフルを1丁――」
櫻の口から淡々と話される機体構成を黙って聞く企業の面々
企業連はその立場故、国家代表の専用機に採用されたのがトルコ代表の1機しか無かった
各国は結束を強めた企業連が、その国の技術を取られることを恐れたのだ
「採用がトルコからのみと辛い情勢ではありますが、ブリュンヒルデには成れずとも、ヴァルキリーは狙って行きましょう。我々も国も、そのために彼女を選んだのですから」
「なにか質問事項のある方は」
「私から、いいかね」
「ではGA、ローディー」
「機体に搭載されるものに重火器が見当たらないのだが、コレはどういうことだ?」
「オーメル、フュルステンベルク、返答を」
「機体自体が軽いため重火器との相性が悪いというのもありますが、モンド・グロッソで重火器が活躍できる競技が無いというのが実情です。そのため、GAグループ各社の銃火器は採用を見送りました。よろしいですか?」
「ああ、理解した。仕方ないな」
「では他に――」
他に2つの議題を片付け、3時間に及ぶ会議は終わった
窓から外を見れば、美しい夜空と近代的な町並みが広がる
「終わったぁ。リーネさん、お疲れ様」
「はい、お疲れ様です。お茶淹れますね」
「う~ん、ありがと」
ちなみにだが、リーネは紅茶を入れるのが非常に上手い。その時の気分に応じて調合して淹れてくれるハーブティーが素晴らしいとはオッツダルヴァの弁だ
櫻もまた、彼女の淹れる紅茶を楽しみにしているのだが
「さてさて、彼女の調子も上がってきたし、半年後が楽しみだね」
「そうですね、射撃部門では間違いなくトップに食い込めるでしょう。はい、お茶です」
「ありがと、またいい匂いのお茶だね」
「ローズマリーですよ、疲れに効きます。それで、来週は休暇を入れられてますが、なにかご予定でも?」
「ちょっと日本に行こうかなぁって、友達にも会ってないしね」
「そうですか、おみやげ楽しみにしてますね」
「ふふん、楽しみしててね、美味しいもの買って帰るから」
「櫻さんの選ぶお菓子はハズレがありませんからね」
その後も社長室でのガールズトークは続き、時計を見て12時を過ぎたことに気づいたリーネが止めるまで話し続けた
「有澤社長に美味しいお茶のお店教えてもらわないとなぁ」