Who reached Infinite-Stratos ?   作:卯月ゆう

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モンド・グロッソは目の前に

月日は流れ、束が世界に託した夢、ISは真意とかけ離れ、兵器としての面が前に出ていた

本来の用途である宇宙空間での運用を想定した研究開発を進めているのはオーメルと、会見に触発された数社の企業のみだった

彼らは宇宙への夢をつかもうとする同士であり、関係は良好だったが、ISを兵器として運用する各国は互いの力を知られまいと軍事機密として秘匿し、技術を盗もうものならスパイとして処罰されることもしばしばだった

 

国際IS委員会は競技会の名称をモンド・グロッソとし、来年度夏の開催を決定した

近接格闘、射撃、総合戦術など、ISを使ったスポーツ武道のようなものとなり、各部門に代表選手を送り出す、まるでISのオリンピックである

 

それが委員会により発表されると、世界各国はこぞって参戦を発表した

ISを媒体にした国家戦争とも言える状況でIS開発のトップを独走するオーメルはモンド・グロッソに自社製ISを出さないことを決定、世界を驚愕させた

 

その代わりにオーメルは世界中でISによるデモンストレーションを行い、技術力をアピールしていた

 

 

 

オーメル・サイエンス・テクノロジー IS研究部

それはローゼンタールに存在したIS研究部門の人員をそのままオーメルに移し、軍事課、宇宙開発課、総合開発課に分かれて多面的にIS開発を行う部署となった

 

 

雑多な部屋に置かれたデスクで頭を抱える天災が一人

 

 

「あぁ、どうしよう」

 

「主任、どうかされましたか?」

 

「う~ん、世界がモンド・グロッソに向けて開発したISをこぞって自慢しあってるから、うちもそういうのしないとだめかな~って」

 

「オーメルとしてはモンド・グロッソに参戦しないという決定ですから、無駄に技術を見せないという意味でもアレの公表は控えるべきでは?」

 

「さくちんもそう言ってたし、やっぱそうなんだよねぇ」

 

「でしょうね」

 

「ありがとね、エドもん」

 

 

エドもん、と呼ばれた男は 主任束に小さく笑うと自分のデスクに戻り手を動かし始めた

 

 

確かに、第一世代に合わせた性能とはいえ、ただのデチューンでしか無いアレ(JUDITH)をモンド・グロッソで暴れさせるわけには行かない、ISの進化のヒント集をばら撒くようなものだ

 

 

――はぁ、ちーちゃん大丈夫かなぁ

 

 

天災のため息は紅茶の匂いに溶けて消えた

 

 

 

 

そして冬を超え、春になると眼前まで迫ったモンド・グロッソへの参戦国と代表の名前が発表された

その中には、日本代表として織斑千冬の名前もあった

 

 

「さくちんさくちん! だいだいだいニュースだよ!」

 

「千冬さんのこと?」

 

「そうだよ! ちーちゃんが国家代表だよ? なんで驚いてないの?」

 

「もちろん驚いてるよ、一周りして普通になってるだけ」

 

「あはは、さくちんらしいや」

 

「これは応援に行かないとね、束お姉ちゃん」

 

「だねだね!」

 

「視察、ということで会社のお金で行けるし、美味しいもの食べて帰ろっか」

 

「研究室のみんなにおみやげも買わないとね」

 

「束お姉ちゃんが他人に気を使うなんて、変わったね」

 

「これも全部さくちんとママさんのおかげかな」

 

 

ドイツへ来てから束は変わった、いい方向へ。自分が気にいらない人間はトコトン嫌うが、近しい人間となら普通に会話が成立するくらいにはなった

研究部内での評価も高い

 

 

「モンド・グロッソまで後1ヶ月、オーメルとしても本腰入れて各国のISを調べないと」

 

「解析機器は束さんにお任せ!」

 

「怪しくなくて、小さいのをお願いね。チケットはこっちで手配するよ」

 

「おっけーい!」

 

 

 

大切な友人の参戦と社長としての立場が複雑に絡み、第一回モンド・グロッソが近づく


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