Who reached Infinite-Stratos ?   作:卯月ゆう

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Scherzo 桜の成長録
これから


「さて、これが私の最後の仕事だな」

 

「そうですね、後は彼女に任せましょう」

 

「これから世界はどう変わるのだろうな、ISの登場によりパワーバランスは大きく崩れた。通常兵器はこれから売れないだろう」

 

「ですが、彼女はローゼンタール内に早速ISの研究部門を設けたと聞いています、日本から連れてきた科学者もいるとか」

 

「彼女はISが発表されれば世界のパワーバランスが崩れると予測していた、さらにISが発展していくことを予想しての行動だろう。1日でも早く手を始めたほうが他社に対して有利に立てるのはどんなことでも同じだ。コアの配分はどうなってる?」

 

「条約で配分されたコア、467個、そのうち、企業連のグループ各社の内訳はGAグループで9個、オーメルグループで9個、インテリオルグループで6個の計24個です」

 

「5%か……これは多い方なのか?」

 

「いいえ、単体で配られた数を見ると非企業連各社と変わりません。さすがにあそこ(委員会)までは手が回りません」

 

「仕方ない、世界各国も大慌てで立ち上げた委員会だ、他の国も変わらんだろう」

 

「そのようですね。コア保有数はアメリカと日本が最多、ついでドイツ、イギリス、フランスなど技術力に優れた国が並びます」

 

「オーメル・サイエンス・テクノロジーとしての配分数が少ないのはトルコの国力故か」

 

「そう考えるのが妥当でしょう」

 

「だが、配分の多いアメリカと日本にはGAグループがある、EU圏はオーメルとインテリオルで抑えられる。中国の配分は?」

 

「中国には5個です。今までの行いが悪いのでしょう」

 

「君もキツイことを言うな。まあ、国連の常任理事国なのに少ないのは事実だな」

 

「アメリカは国力、日本にはIS学園など、条約で定められたものの負担を求めるためにそれ相応の対価として、ということでしょう」

 

「だろうな、IS学園、だったか? 無法地帯は」

 

「そうですね、操縦者育成と技術開発を目的とした教育研究施設です。あれの運営をすべて投げられるとは、日本も大変ですね」

 

「大きな負担となることは間違いないだろうな。さらに技術が発展すればするほどそれを狙う輩が集まる。防衛も考えねばならないなら、ISコアの配分が多いのも納得できる」

 

「そろそろ時間です」

 

「そうか、では行こうか」

 

「ええ、これからに」

 

「ああ」

 

 

 

オーメル・サイエンス・テクノロジー本社、広報室にあるブースには報道陣が集まっていた

世界に手を掛けるコンツェルンの代表が変わるのだ

それも後任は女性であるという

 

「それでは、これからオーメル・サイエンス・テクノロジー代表、及び企業連盟代表交代の会見を始めさせて頂きます」

 

一斉に焚かれるフラッシュの数々

それを物ともせずオッツダルヴァが壇上に姿をあらわす

 

「皆様、お集まりいただきありがとう。このタイミングで代表を交代することの意味は大きいと私は考えている。我が社の主力商品である通常兵器がISという未知のスペーススーツによってただの鉄屑となってしまった今、私のような古い人間が世界の軍事をリードする企業の代表であることはメリットにならない。技術の進歩についていけるだけの力がある人間に代わることがオーメルを、ひいては企業連をこれから飛躍させることにつながると私は確信している。後任のフュルステンベルクはISの先進性にいち早く目をつけ、オーメル傘下のローゼンタールでIS研究部門の代表を務める人物だ。その手腕は私が保証しよう。では、フュルステンベルク」

 

オッツダルヴァが壇の隅、司会を務めていた秘書の横につくとスクリーンにはSOUND ONLYの文字が

 

「オッツダルヴァより紹介いただきました、フュルステンベルクです。このような形での会見となり申し訳ありません」

 

そこに響いたのは若い女性の声。

若いというより、子供が無理に大人っぽく振舞っているような雰囲気すら感じさせる

 

「私はもともとネクストの研究開発に携わっていました。ISの登場と、開発者である篠ノ之束博士の言葉に衝撃を受け、現在はローゼンタールでISの研究をしています。

 我々にはグループであるという強みがあります。非連合他社は単独で開発を進めねばなりませんが我々は連合各社での成果を共有し、ともに進んでいく力があります。さらに私は基本研究の成果は世界に公表しようと考えています。IS本来の用途である宇宙進出のために」

 

会場は衝撃の発言にシャッター音一つ聞こえなくなってしまった

 

「間違って解釈して頂いては困るのは、我々が公開するのは基本研究部分のみです。具体的にはブースターやスラスターへのエネルギー関連、PIC関連。そして操縦者保護機能の3つです。それだけあれば宇宙に行けますから。兵器としての開発はもちろん進めますが、IS本来の用途を忘れてはならないと考えています。そのために必要なことは共有し、必要でないことは隠すだけです」

 

会場がざわめく

 

「話を変えて、企業連の運営ですが――」

 

 

その後一人で20分近くこれからのビジョンを語り続けたフュルステンベルク新代表の発言は世界中を駆け巡り、オーメルには技術開示を求める問い合わせが殺到した

そのため彼女は予定を変更し、現時点での研究成果を公表。追加分はその都度公開していった

 

ISの技術はとてつもないスピードで進み、国際IS委員会は世界のIS技術を発表する場として競技会を開催することを決定した。

 

 

 

「目論見通りだよ、束お姉ちゃん」

 

「そうだね、さくちん」

 

「でも企業連は競技会には出ない」

 

「え? さくちんと束さんで作ったISなら無双できるよ?」

 

「それがイケナイんだよ、束お姉ちゃん。能ある鷹は爪を隠すって言うでしょ?」

 

「なるほどねぇ、確かに今のISはあくまでも飛んでる火薬庫でしか無いからね」

 

「世界はわかってないんだ、ISが何のために作られ、どうやって使われるべきなのか」

 

「確かに束さんの思ってた方向に世界は向かなかったね、わかってくれてるのはさくちんとママさん、ちーちゃんくらいだよ」

 

「だから世界に分からせてやろう、ISの真の目的を」

 

「おぉさくちん怖いねぇ」

 

「束お姉ちゃんもそう思ってるでしょ?」

 

「まぁね、自分の子供達を喧嘩させて喜ぶ親がどこにいるのか聞いてみたいよ」

 

 

 

天災と称されし天才、篠ノ之束の思いは世界に理解されぬまま時は進んでいく

 


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