Who reached Infinite-Stratos ?   作:卯月ゆう

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白騎士事件 Ⅱ

全方位から飛来するミサイルをハイパーセンサーが捉える

鳴り響くアラート、だが千冬はひどく冷静だった

 

「いいですか、千冬さん、ミサイルの先端は絶対に斬らないでください。ダメージを与えるための爆薬、場合によっては核もありえます。半分から後ろの部分を斬って推力をなくしてください」

 

「分かった」

 

「また何かあれば連絡を入れます。千冬さん、お願いしますね」

 

「ああ」

 

 

そうして、後に白騎士事件と呼ばれるISの世界へ向けてのデモンストレーションの幕が上がった

 

一つ、一つとミサイルを斬り伏せる

目の前で爆ぜるももろともせず、次へとむかう

それは一筋の光であり、人の手の届かないものだった

 

「千冬さん、自衛隊の戦闘機が発進しました、あと2~3分でそちらに着きます」

 

「了解!」

 

次、次と確実に落として行くが、いかんせん数が多い

だが、ここで諦めては白騎士の名折れ、最期の一振りまで気を抜いてはならない

 

 

 

――千冬さんも頑張ってるんだ、だからサクも

 

横須賀上空、13000m

ここからは地球の縁が見える

 

――さて、お仕事開始です

 

櫻の仕事はアメリカ軍の動きを止めること、ただし、夢見草に武装は積んでいないため、電子戦装備をインストールして、情報戦に務めることにした

 

――空母を主力にした艦隊ですか、さすがですねぇ

 

 

「ブリッジよりフライトデッキ、艦載機の発進を許可、離陸後は航空自衛隊の指揮下に入れ」

 

「フライトデッキ、了解、離陸後は航空自衛隊の指揮下に」

 

「フライトデッキよりアーチャー、離陸後進路を280に――」

 

 

――やっぱり飛ばしてきますか、ではこちらもトバして行きましょう

 

高出力ジャマーを展開、フルパワーで横須賀周辺に指向させる

 

黙る無線、ジャミング成功のようだ

 

 

「千冬さん、そちらの状況は?」

 

「ミサイルはすべて斬り伏せた、戦闘機が舞ってるが、叩き落とす」

 

「くれぐれも人を傷つけないでくださいね」

 

「ああ、パラシュートがそこらで開いているさ」

 

 

ジャミングを続けながら、両腕にはEMPガン

電磁パルスに指向性を持たせて発射する非致死性兵器だ。

それを空に向けて放った、その数8

 

 

「束お姉ちゃん、衛星は?」

 

「焼けちゃったんじゃないかな? 何も映らないからおーけーだよ!」

 

「りょーかい、次船行きます」

 

「はいはい、気をつけてね!」

 

 

EMPガンを格納すると、自由落下を開始

 

「さぁ、桜吹雪の時間ですよ!」

 

すると夢見草が光に覆われ、追加装甲を展開。背中には追加のブースターとスラスターが現れる

 

 

「上手く行ったよ、束お姉ちゃん!」

 

「こっちでも確認したよ、そのままさっさと終わらせよう!」

 

「あいあい!」

 

 

追加のブースターを装備した夢見草はそのまま重力と相まって、音速の数倍で外洋に展開する艦隊へ向かった

 

 

「束、こっちは終わったぞ」

 

「おーけーちーちゃん! あとはさくちんが頑張ってくれればおしまい! あとは束さんのターンだよ」

 

「束お姉ちゃん、こっちはもう大丈夫、しばらくは行動できないだろうから。おもいっきりやっちゃって!」

 

「よっし、束さん頑張っちゃうよ!」

 

 

 

それから束は世界へ向かって、ISの開発を発表し、ISに通常兵器で挑んだことを馬鹿にした。

ISはISでしか落とせない、その言葉を世界は黙って理解するしか無かった

 

「やっぱりこうなりましたか、千冬さん……」

 

「束は他人に興味がないからな……」

 

 

束のスピーチは世界に広まった。

各国は束の技術を恐れ、これからの世界のあり方の見直しに迫られた

 

束は全世界から追われる者となってしまった

 

 

「束お姉ちゃん、有名人になっちゃったね」

 

「そうだね、こんな形で有名になるとは思ってなかったけど」

 

「これからどうするの?」

 

「逃げるよ、ここも捨てないと。さくちん、ごめんね」

 

「あとでムッティにも謝ってね」

 

「ママさんにも迷惑かけちゃうね」

 

「千冬さんはどうするの?」

 

「ちーちゃんは普通に生きて欲しい、だから白騎士を捨ててもらう」

 

「それが正しいのかな」

 

「わからない、さくちんはどうしたい?」

 

「サクは夢見草を持って生きるよ、幸い誰にも見られてないしね」

 

「そっか、束さんと一緒に来る気はないの?」

 

「束お姉ちゃん、サクはやることがあるから、ごめんね」

 

「ごめんね、私のせいで……」

 

「ううん、束お姉ちゃんとはいっぱい楽しいことが出来たから、それに、これでお別れってわけじゃないよ」

 

「そうだよね、また会いに行けばいいんだよね!」

 

「そうだよ、また一緒に遊ぼ!」

 

 

 

 

 

世界はISを開発した篠ノ之束を有する日本を糾弾し、ISに関する技術の開示を求めた

束はシンプルに

「コアは私の手元においてある、欲しければ持って行っていいよ、そのかわりみんな仲良くわけなよ」

と、コアの所在を明らかにし、総数467個存在しないこと、コアは束にしか作れないだろうということ、その他付随する技術は研究所においてあるもののみコピーを許した

 

しばらくして、アラスカ条約が制定され、467個のコアの配分、技術研究のための国家、法を超えた機関の設置など、様々な条項を設けた

 

 

世界は篠ノ之束を求めた、それ故に、篠ノ之家は要人保護の名のもとに離散してしまった。

研究所に関する記録は束が書き換え、個人持ちの研究所ということになったため、紫苑と櫻には影響がなかったが、血縁はどうしようも無かった。

 

 

 

 

「ムッティ、ごめんね」

 

「いいの、とは言えないわね」

 

「ごめんなさい、ママさん」

 

「束ちゃん、これからどうするの?」

 

「一人で世界を逃げ回ろうかなぁって」

 

「束ちゃんはそれでいいの?」

 

「え?」

 

「束ちゃんはそれで満足なの?」

 

紫苑に問い詰められ、束は涙をこらえつつ言った

 

 

「私は作りたいものを作った、世界はそれを受け入れてくれなかった、だから仕方ない、よ」

 

「束お姉ちゃん、なんでそんなこと……」

 

「束ちゃん、世界を面白くするって言わなかった? だから私はあなたに協力した。このまま契約を捨てるつもり?」

 

「そんなこと……」

 

「私は束ちゃん、あなたが櫻を育ててくれる、そう思ったから協力したの。束ちゃん言ったわよね、契約どおりやってくれるなら櫻と仲良くするって。私は契約どおりやったつもりよ? 不満でもあるの?」

 

「ママさん、不満なんてあるわけないよ。さくちんとも仲良くなった、ISも作れた」

 

「なら、契約通り、世界を面白く変えなさい。拒否権は無いわよ、500万ユーロ返せるなら別だけど」

 

もちろん、束にそんな財力は無い、紫苑に従うほかないのだ

 

「束お姉ちゃん、これからどうしたい?」

 

「私は……私は、さくちんと、ちーちゃんと、みんなで世界を面白く変えたいよ!」

 

「なら、一緒に来てくれる?」

 

「何処に行くつもり? もう世界が私をさがしてるんだよ?」

 

「それはもちろん」

 

「「私達の故郷だよ(よ)」」

 

 

 

紫苑と櫻は、束をゆっくりと抱きしめ、静かに撫で続けた

 


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