Who reached Infinite-Stratos ? 作:卯月ゆう
白騎士を作り上げた2人は、倍以上の速度で夢見草の制作にとりかかっていた
拡張領域の試験機ということで、束は機体制作を主に、櫻は機体制作を手伝いつつ、夢見草に積むものを考えていた。
「束お姉ちゃん、夢見草に積むものなんだけど」
「う~ん、どうしようかね? さくちん何か積みたいものある?」
「特にないかなぁ、武器積んでも仕方ないし」
「まぁ、量子変換と再展開ができればなんでもいいから、適当に用意すればいいよね」
「そうなのかなぁ?」
櫻はISが兵器として使われてしまうと予想はしていたが、束の目の前でISを兵器のように扱うことはしたくなかった。
これはあくまでも宇宙空間で行動するためのもの、まずはそのために必要なデータを集めることに専念するべきなのだ
「とりあえず、さくちんがすぐに用意できるものって何かある?」
「鉄屑ならそこら辺に落ちてるやつを使えるよ」
「う~ん、もっと複雑な構造を持つモノのほうがいいよねぇ」
「そしたら、ドリルとか、パイルバンカーとか?」
「そうだね、さっすがさくちん! 早速作っちゃって」
「あいあい!」
2人は見た目によらずテキパキと作業をすすめ、白騎士の2/3ほどの時間で機体、装備をすべて完成させた
「出来たぁ」
「完成だね!」
桜色のすこし丸みを帯びた機体、どこか枝垂桜を彷彿とさせるデザインに櫻も満足気だ
「さくちん、とりあえずこの場で全部量子変換して拡張領域に入れてみようか」
「うっし、やるよー」
櫻が作った採掘用ドリルに、パイルバンカー、さらにワイヤ射出機など、探索と収集に特化した装備が与えられた
もちろん、使い方によってはすべて武器として扱えてしまうのはこれらだけに言えたことではない
「インストール終わったよ」
「じゃ、展開しようか!」
「あいあい!」
次々と手に装備を展開する、さらに展開しては収納、展開しては収納を繰り返し、展開速度と収納速度を上げていった
「いくら早くしても問題なさそうだね」
「だね、さすが束お姉ちゃん」
「ふっふ~ん、もっと褒めていいんだよ?」
「お姉ちゃんすご~い、こんなもの作れるなんてかっこいい!」
適当に世辞の句を並べ立て、ふざけ合う2人。
櫻はひたすらに装備を入れ替えることに飽きたのか
「ねぇ、サクも飛んできていい?」
「もちろんだよさくちん、ささ、行っといで~」
「よっしゃぁ! いっちょ飛んできま~す!」
窓から飛び出し、そのまま飛行していく櫻
どこか身に覚えのある感覚に身を任せていた
――ああ、やっぱりネクストにそっくりだ、この感覚
やはり、イメージ通りに動くというのはネクストもISも同じようで、早くも限界ギリギリまで性能を引き出していた
「やっぱりさくちんはすごいね、ちーちゃんもすごかったけど。もう限界ギリギリだよ? アラートなったりしてない?」
「アラートは視界の片隅に出てるね、なになに? 機体が重力に耐え切れません? だって、束お姉ちゃん」
「これは改善の余地あり、だね。楽しくなりそうだ!」
「もっと動けないとだめだね、今戻るよ」
「は~い、待ってるよ」
機体を再び機械にセット、細かいマニピュレータが関節やブースターに伸びる
「やっぱり、ブースターを本体とくっつけると接合部に大きな負荷がかかっちゃうね」
「だから旋回するときとか、片方のブースターを強めに噴かすとアラート出るんだね」
「そうそう、だから束さんは考えたのだ。くっついててだめなら浮かせてしまえ、と」
「え?」
「言葉通りだよ、ブースターを
「そ、そうですか……」
さらっとすごいこと言うなぁ、と櫻が思っていると
「じゃぁ、ささっと終わらせて、もっかい行こうか!」
束はすでに作業を始めていた
「はいっ!」
数十分で作業は終わり、背中についていた1対のブースターは、非固定化され、スカート型の点火範囲の広いものも追加されていた
「なにこれ! 束お姉ちゃん、これかわいい! スカートみたい!」
「推力と空気抵抗を考えたらそうなるよねぇ」
「だけど、だけど! これスカートじゃん!」
「さくちんに似合うかなぁって思ってやったなんて言えな、あ……」
おもいっきり口に出してしまっている、それもそうだ、ISは慣性を打ち消して飛ぶのだから、慣性質量を変化させれば、空気抵抗を打ち消すくらい造作も無い
「束お姉ちゃん大好き!」
ISを装備したまま飛びつく櫻、装備したままということはもちろん
どんがらがっしゃーん。である
「さくちん、一応それも金属の塊だから……」
「ご、ごめんね、束お姉ちゃん」
「大丈夫だよ、さくちん。もっかい飛んでくる?」
「もちろん!」
「よろしい、その意気だよ、櫻くん」
「それ誰の真似?」
「だいぶ前にテレビで見た探偵さんかな」
「言われないとわからないよ」
「ぶぅ~、束さんすねちゃうよ?」
「束お姉ちゃんは鋼の心の持ち主だから平気だよね?」
「さくちんとちーちゃんは別だもん」
口を尖らせる束を背に、櫻は再び飛び出した