Who reached Infinite-Stratos ?   作:卯月ゆう

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空を舞う騎士

「た、束ぇぇぇ!!!」

 

 千冬の叫びがこだまする。

 

 

「大丈夫、飛ぶことを考えて!」

 

 すると、なんとか機体は空中で停止。

 2人はほっと一息つく。

 

 

「おお、飛んだね! やったよちーちゃん!」

「あ、ああ」

「じゃあ、しばらく自由に空中散歩でもしてみてよ」

 

 すると白騎士はゆっくりと、赤子が初めての一歩を踏み出すように、空中を進んでいった。

 千冬も慣れたのか、だんだんとスピードが上がり、気がつけば白い光のようであった。

 

 

「コレはいい、最高だ!」

「そう言ってくれると作った甲斐があるってもんだよ! ね、さくちん」

「そうだね。そろそろエネルギーが切れそうです、千冬さん、戻って来てください」

「え、そうか……今戻る」

 

 少し残念そうな声色でつぶやく。千冬がここまで感情を表に出すとは珍しい。

 

「エネルギー補給したらまた飛べるから大丈夫だよ、ちーちゃん!」

「ふふっ、そうだな」

 

 やはり、千冬は心底嬉しいのだろう、声が弾んでいた。

 

「やっぱり千冬ちゃんもティーンエージャーね」

「あんなに喜んでるちーちゃん久しぶりに見たよ!」

「作ってよかったね、束お姉ちゃん」

「そうだね、さくちん」

 

 

 そんな間に白騎士は舞い戻り、

「戻れッ。って感じで」という束の適当な説明にもかかわらず、千冬は白騎士を待機形態である白薔薇のブローチに戻した。

 

 

「これが白騎士の待機形態かぁ、やっぱり騎士ってだけあって上品だねぇ」

 

 セーラーの襟に小さく輝くブローチを見ながら束は満足気に頷いた。

 

「それにしてもさすが千冬さんですね、あっという間に操縦にも慣れて」

「そうだよ、もっと時間かかると思ってたのに。まぁそこがちーちゃんらしいけど」

「束が言ったとおり、思ったように動くんだ。まぁ、飛ぶのは苦労したが」

「人間は普通飛べないからね、それなのにたかだか数分で飛べたちーちゃんって……」

「千冬さん恐ろしい……」

「お前らなぁ……まぁいい、それで、これからどうするんだ?」

「そうだねぇ、さくちんの専用機を作ってから、世界に向けてデモンストレーションかな?」

 

 束の言うデモンストレーションを言葉通りの意味にとらえた櫻は頷き、

 

「そうですね、これだけの技術があるから束お姉ちゃんは世界から引っ張りだこだね」

「わぁ、束さん有名人?」

「そうなちゃうね!」

「そしたら、もっとISを作って、宇宙行っちゃう?」

「いけちゃうね! 束お姉ちゃん!」

 

 夢をふくらませる2人を見て、千冬と紫苑は自然と笑みを浮かべていた。

 

 白騎士が繋がれた機械の、緑のランプが点灯し、ピピッと小さく電子音をならす。

 束が手早くコードを外すと、

 

 

「よし、白騎士のエネルギー充填完了! ちーちゃん飛んでらっしゃい!」

「ああ!」

 

 白騎士は再び白銀の風となり、夜の街を飛翔した。

 

 その日、千冬はエネルギー再充填を繰り返し、何度も何度も飛んだ。

 そして、喜びに満ちた千冬を見て、束は笑顔で千冬に付き合った。

 

 

「もう夜遅いからそろそろ終わりにしなさい。千冬ちゃんも、一夏くんから電話があったわよ」

「え、もうそんな時間ですか」

「ちーちゃん、白騎士持って帰っていいよ、エネルギーは自然と回復するから。いっくんのところに飛んで帰っちゃいなよ。言葉通りの意味で」

「ああ、そうする。ありがとな、束」

「千冬さんまたあした、白騎士持ってきてくださいね、データ取りがあるので」

「わかった、また帰りに寄るよ」

 

 そう言うと、再び風になった。

 

 

 

「次はさくちんの専用機だねぇ」

「やったね! 機体の設計はできてるんでしょ?」

「もちろん、さくちんらしく、桜色のかわいい機体にするよ! その名も夢見草!」

 

 

 夢見草は桜の別名、美しさにうっとりと見惚れてしまうことからそう呼ばれるようになったという。

 束はもちろん、櫻の専用機ということでこの名をつけた。

 

 

「さくちんの専用機のコンセプトは、拡張領域の機能確認と応用。だね。白騎士のデータがあるから前よりサクサク作れるよ!」

「そうだね!」

 

 テンションが上がる2人だが、やはりこの人には逆らえなかった。

 

「2人も、大して寝てないんだから今日は早く寝なさい? また明日から、ね」

「はぁい」

「ママさんがそう言うなら仕方ないね」

 

 

 まったく、手のかかる娘たちだ、と紫苑は思った。だが、彼女らとの人生を楽しんでいるのもまた事実。ACに乗っていた頃とは大きく違うベクトルの幸せに、紫苑は包まれていた。


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