Who reached Infinite-Stratos ?   作:卯月ゆう

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白騎士、見参

 研究室に籠もり早4日、初めてのIS、白騎士の完成も目の前に迫っていた。

 

「さくちん、そっちは」

「あとここをバイパスすればそっちにエネルギーラインが形成されるはずなんだけど」

「そうだね。そしたらコレをつなげて……」

「「完成!」」

「できた、できたよさくちん!」

「やっとできたね、束お姉ちゃん!」

「早速ちーちゃんを!」

「そうだね! 早く千冬さんに乗ってもらわないと!」

 

 

 さて、ISの完成をよろこぶ2人だが、時刻は昼の12時過ぎ、千冬は学校だ。

 だが、誰のいたずらか、この部屋には時計が無く、携帯で時間を確認するほどの余裕は2人には無かった。

 

 呼び出し音のあと、千冬が出ると、

 

 

「ちーちゃん! できた、できたよ! ちーちゃんの専用機!」

「できた、できたんです、千冬さんの専用機!」

「お前ら、今何時だか、わかるか?」

「「え?」」

「今は12時45分、私は学校で弁当を食べてる最中だ。わかるな?」

 

 その声に怒気が含まれているのは明らかで現に2人は電話越しといえど、肩を震わせていた。

 

 

「ち、ちーちゃん? ごめんね、ココ時計無くてね」

「千冬さん、そ、そのすみません。時間が分からなくて……」

「完成が嬉しくて騒ぐのは百歩譲って許してやろう。だが、人に迷惑をかけるのはどうかと思うが」

「ち、千冬さんごめんなさい――」 

 

 言い訳のまもなく、

 

「お前ら、後で覚えておけ」

 

 死刑宣告がなされた。

 プチッ、と電話が切られると

 

 

「ああ、テストは明日からにしようね、さくちん」

「そうですね、束お姉ちゃん」

 

 魂が半分抜けた状態で2人寄り添い崩れ落ちた。

 

 昼食をもって降りてきた紫苑の目には、肩を並べてすうすうと寝息を立てる束と櫻。

 

「あらあら、2人とも。ってことは、完成したのかしら。お疲れ様」

 

 2人共殆ど寝てないのだろう。いまはこうして上げるのが最善。

 ブランケットを掛け、昼食をメモと一緒に置いておく

 

「あとは千冬ちゃんね」

 

 

 

 そうして、夕方やってきた千冬は、紫苑に挨拶も早く、研究室に向かった。

 紫苑はISが楽しみなのかと思っていたが、千冬は2人へのお説教が最優先事項であった。

 

 頃合いを見計らってちょっと豪華な夕飯をもって降りて行くと、正座で千冬に説教される束と櫻。

 それを見た紫苑はふふっと笑うとドアの前で千冬の説教の終わりを待った。

 

 

 そして更に30分が経った頃、やっと千冬の説教が終わり紫苑が夕飯を手に研究室に入る。

 

 

「はい、みんなお疲れ様。ISができたんでしょ、ささやかだけど、お祝いしましょ」

「そ、そうだね~ママさんありがと~」

「ムッティ、うん、そうだね……」

 

 足の痺れか、精神的ダメージか、どこかげっそりした2人を前に千冬は、

 

「そうですか、まぁ、いいか。束の夢への第一歩だ」

 

 と、数時間声を上げ続けたにもかかわらず飄々としていた。

 

 それからささやかなパーティーが開かれ、色々と胃に詰め込んだ2人は元気を取り戻し、千冬も満足そうな顔をしていた。

 

 

「それでは、皆様お待ちかねのISの登場だよ! さくちん!」

「はい!」

 

 そうして、鉄の筒が回るとそこには、

 多数のコードに繋がれた白銀のISが居た。

 

「ほぉ……」

「これは……」

 

 千冬は驚きの、だが紫苑の顔には別の意味での驚きがあった。

 

「ムッティ、これ、ファーティみたいでしょ?」

「そうね、そっくりよ」

 

 そう、その通り。この白銀のISの纏う雰囲気はまさに騎士のソレで、レオハルトのようであった。

 

 

「これが、ちーちゃんの専用機、白騎士だよ!」

「白騎士、これが……」

「はい、千冬さん、これが、千冬さんの専用機です」

「束さん、これは……」

「ママさん、これはさくちんのデザインだよ。本当はもっと騎士というより侍みたいにしたかったんだけど、さくちんがね」

 

 束はココ数日で紫苑のことをママさんと慕うようになり、態度もだいぶ柔らかくなっていた。

 

 

「さくちんが、このデザインのほうがいいってさ」

「ええ、そうね。私の大切な人に似てるわ。ありがとう、束ちゃん」

 

 束を抱く紫苑、その目には涙が浮かんでいた。

 

「ママさん、さくちんには聞かなかったけど、大切な人って……」

「もちろん、私の夫。櫻の父親よ」

「そうなんだ……」

 

 意味を知った束は隠されていた思いをゆっくりと噛み締め、ゆくゆくはこれらISが、自分の、櫻の夢を叶える翼となるよう、強く願った。

 

 

「束お姉ちゃん、フィッティング、終わったよ」

 

 いつの間にか千冬は白騎士を纏い、フィッティングを終えた櫻が束を見ていた。

 

「よ、よし。ちーちゃん。気分はどう?」

「ああ、最高だ」

「良かったぁ! よっし、一つ、飛んできてよ!」

 

 機体につながったコードが一つ一つ外れていく。

 

「飛ぶってどういうことだ」

「言葉通りだよ、ちーちゃんが思った通りに動くんだ、だから、ちーちゃんが飛べると思えば飛べるよ!」

 

 フロアの壁が開き、そこまでの道のりが青く照らされる。

 光のランウェイに千冬が足を踏み入れる。

 

 

「さぁ、さくちん、ぶっ飛ばしちゃって!」

「あいあい!」

 

 カタパルトによって加速した白騎士はそのまま外へ飛び出し、

 

 

 重力に従った。


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