Who reached Infinite-Stratos ? 作:卯月ゆう
「んじゃ、束お姉ちゃん、千冬さん。また来るからね!」
「うんうん、さくちんが来るのを束さん首を長くして待ってるからね!」
「ああ、いつでも来い、次はうちに遊びに来るといい、一夏も喜ぶ」
「うん! ありがと! 師範もお世話になりました」
「いいや、こちらこそ、なんのお構いもできずに」
ありきたりな別れのあいさつを交わして、櫻は母の待つホテルへと向かう。
頭のなかではこれからの計画を立て、リスクとリターンを考え、
「初仕事でこれだけ大きいこととなると、やる気がでますなぁ!」
小学生らしい、やる気と元気に満ち溢れていた。
これからやることは山積みだ。
束のIS開発に資金的目処も付き、あとは機材を揃えればパパ~っと終わるよ!(束談)とのことなので、順にことを進めることにした。
まず、櫻と紫苑はこの街に家を買った。別荘兼、束の研究所を置くためだ。
さすがに神社に最新の設備を持った研究所を建てるのは
紫苑と櫻は
所変わって西アジアはオーメル本社
そこの応接室でオッツダルヴァと櫻が今後の展開を話していた。
「それでね、オッツダルヴァおじさん。これは多分世界のパワーバランスを崩すに至ると思うの、ACは今でこそ世界最強の兵器だけど、AMSの適正と対応するための手術が必要。でも、ISは違う」
「ほう、それをどうして私に教えるのだ?」
「たぶん、ISは兵器として使われてしまうから」
「お前の説明だと、ISと言うのは宇宙空間での活動を目的としたものではなかったか?」
「たしかにそうだよ。でも、ロケットがミサイルになったみたいに、ISも 拡張領域バススロットという4次元ポケットを持つ以上、あるいみ最強の戦車であり、戦闘機だと思うの」
「たしかに、一理あるな」
「それで、ものは相談なんだけど。おじさん。ISが世界に発表されて、世界がソレを欲したら、オーメル、いや、企業連として、ISの更なる研究開発に力を貸す。みたいなことを言って欲しいの」
「それで我々になんの利益が生まれる?」
「さっき言ったとおり、ISは兵器として使われることになる。兵器開発の上で、先に始めたというのは大きなアドバンテージになるんでしょ? だから、サクが公開されなかった情報を少し流すから、ソレで利益を出して欲しい」
「なるほどな。よろしい。少し考える必要はありそうだが、大筋お前の読みは正しいだろう。私が同じ立場なら、そんなあらゆる可能性を持つものをただのスペーススーツで終わらせるつもりはないからな」
「さすがオッツダルヴァおじさん、話がわかるねぇ」
「フン、お前に知恵を与えたのが誰だと思っている」
「それもそうだ」
「よし、今日のところはこれくらいにしよう。櫻、マリ……紫苑を呼んできてくれ」
「うん。それで、オッツダルヴァおじさんはなんでムッティをマリアって呼ぶの?」
「お前が知る必要の無いことだ。ほら、早くしろ。私には時間がない」
「は~い」
そうして広い部屋を駆ける背中をみて、
「私には時間が無いんだ」
改めてオッツダルヴァはそうつぶやいた。
そしてテレビ会議の回線をつなぐ。
「これからの話をしよう」
「そうだな」
「そうね」
そうして怪しげな笑みを浮かべていると、軽い音が響く。
「オッツダルヴァ、入るわよ」
「ああ」
紫苑が部屋にはいると、見慣れた顔ぶれがモニターに映し出されていることに驚きつつ、
「これ以上あの子に何をするつもりかしら?」
「なに、企業連をまとめてもらうだけだ。
「あなた達もそのつもりかしら?」
『ああ、そうだ』
『その通り』
この場には企業連を構成する3大グループ、
「私がお前らに、娘にお前のスキルを与えろと言った時は気が狂ってるのかとも思ったが、彼女の才能は私を預けるに値するものだった。だから私の後継として、この企業連をまとめて欲しい」
『と、オッツダルヴァが言う以上、私達も従わざるを得ない』
「時間もないしな」
「そう……アライアンスを救った傭兵から見るなら、才能ある人間に企業連が託されるのは尤もなこと。だけど、母から言うなら、そんな危険なことはさせられない。本人は喜んでやるでしょう、でも、やはり、娘を危ない目に会わせるリスクはできるだけ下げたいのよ」
「確かにその気持も分からなくもない、だが、私は彼女以外の適任はいないと思っている。だから、頼む」
そう言って頭を下げるオッツダルヴァ。普段の彼からは想像もできない。
ウィンもローディーも表情には驚きの色が見えた。
『あなたが言うほど、その子に価値はあるのかしら?』
口を開いたのはウィンだった。
「ああ、経営者としてのスキルは私が叩き込んだ。リンクスとしての技術は父親譲りだ。そして、人を落とすテクニックは、フッ」
紫苑をみて鼻で笑う。
「経営者としてのスキルを目に見せることはできないが、リンクスとしての技術はあれが残ってるだろう。見せてやる」
そう言って端末を操作し、シミュレータでの親子対決を見せると、案の定というべきか、2人から驚きの声が上がる。
『こ、これは……』
『この娘、やるな』
「だろう? 殺せる奴は生かせる。だから彼女にはすべてが分かるだろう、だから、な」
『私は、任せるわ、オッツダルヴァ』
『この娘に、企業連の行く末を託してもいいんじゃないか、オッツダルヴァ。マリア、君の気持ちはわかるが……』
すると、ドアが唐突に開き、
「その話乗った!」
満面の笑みを浮かべる櫻が開口一番、後先考えていないとも取れる同意とともに飛び込んできた。
それを見てニヤリ、と不敵に笑うオッツダルヴァ。
呆れた顔の紫苑と三者三様の様相で話の張本人を見ていた。
「決まりだな。櫻、話をしようか」
「ちょっ! オッツダルヴァ!」
「なんだ? 本人がいいと言っているのだ、良いじゃないか」
「そういう問題では!」
紫苑が言い切る前にケリを付けたのはだれでもなく、櫻だった。
「ムッティ、何のために身を守る術を教えてくれたの?」
「ッ!」
「サクは大丈夫、万が一なんてことを起こさせないことをオッツダルヴァおじさんに教わったしね!」
「そう、櫻がそういうなら、母として、止めることはもうできないわね」
「今度こそ、決まりだな」
そう言うと、オッツダルヴァは、
「さぁ、これからの話をしようか」
不敵に笑い、事を始めた。