Who reached Infinite-Stratos ? 作:卯月ゆう
「始めっ!」
箒の鋭い声で一夏対櫻の試合が始まる。
中段の構えで一足一刀の間合いを保ちつつ、両者相手の出方をみる。
「やはり櫻ちゃんには素質がありますねぇ、竹刀もブレていないし、足運びもおかしくはない。とても数十分前に始めたとは思えませんな」
「そうですか、嬉しいですね」
「どうです、紫苑さんも刀を振りたくはありませんか?」
「私は結構ですよ、柳韻さんには敵いそうにありませんし」
「そうですか、残念です。おや、櫻ちゃんが動きましたね」
竹刀を鋭く振りかぶり、面狙いの一閃が走る。
「面ッ!!!」
鋭い打撃音とともに頭を押さえる一夏。
「め、面一本! 大丈夫か一夏?」
「ごめんね、一夏くん、大丈夫?」
やってしまったようだ、彼女の剣はすでに完成されたもの、間違いなく経験の差が出ている。
一夏は竹刀を動かす間もなく打たれたのだ。
「痛ってぇ、綺麗に面取られちまったなぁ。ホントに剣道はじめてなのかよ櫻」
「ごめんね、ほんと、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ、これくらい」
「櫻ちゃんが取りましたね、すごい子だ」
「ははは……」
乾いた笑いしか返せない。
とりあえず2人の元へ、
ああ、頭の天辺に見事なたんこぶ、これはやり過ぎだ。
「大丈夫? 一夏くん、ごめんね、櫻がやりすぎたみたいで」
「大丈夫大丈夫、男だからな!」
「そうね、男の子は強いのよね」
「おう! しっかし、櫻はすげぇな、俺もビビっちまって手が動かなかったぜ」
「そ、そんなことはない」
目が泳いでいる、おそらく殺気放って気で押したのだろう。
「櫻、次は気をつけなさいよ? あんまりあぶないと追い出されるわよ?」
「うげ、はぁい」
櫻に念を押し、道場の隅に戻る。
「見たところ櫻ちゃんの剣は日本のものではありませんね、西洋の剣術に近い、お父様の影響ですか?」
「ええ、そうですね」
下手なことは言えない、
言ったら彼女がどういう目で見られるか。
「それも、彼女は強い気を持っている、確かな信念、自分の技術を熟知しているのでしょう。あんなに幼いのに、本当にすごい子だ」
「一夏、迎えに来たぞ」
ふと縁側を見ると長身の女性が、見たところ高校生くらいだろうか。
「やぁ、千冬ちゃん、ちょうど今日はお客さんが来ていてね」
「どうも、天草と申します」
「こちらこそ、織斑一夏の姉の千冬といいます」
しっかりしているなぁ、と思っているとリベンジマッチが始まるようだ。
「よし、櫻、もう一本だ、次は勝つぜ!」
「よしきた、次も負けないからね!」
「千冬ちゃん、こっちで一緒に見てみようじゃないか。一夏くんの試合を見るのも久しぶりだろう」
「では、そうさせて頂きます」
そうして、紫苑の隣に腰を下ろす千冬。
――この子、なんというか、気が強いなぁ
「千冬ちゃんは気が強いでしょう?」
「え、ええ」
「そ、そんなことはっ」
「ほらほら、始まりますよ」
そう言われて視線を剣道場に戻す。
「始めっ!」
再び箒の声で試合が始まった。
両者一歩も引かず、一足一刀の間合いを保つ。
櫻は、剣を上に上段の構えで攻めの姿勢をアピールしていた。
だが、殺気がない分一夏には余裕が見える。
「おや、今度は気を放ってませんな、紫苑さん、止めましたか?」
「ええ、まぁ」
「そうですか、その分一夏くんは楽でしょうねぇ」
「みたいですね、さっきから手を開いたり閉じたりしてる、一夏のクセです」
「狙ってますねぇ」
千冬の言うとおり、一夏は竹刀を握る手を閉じたり開いたりしている。千冬が指摘するくらいなのだから、あまりいい癖ではないのだろう。
「胴っ!」
一夏が胴を狙う。
「行きましたね、一夏くん」
乾いた音ともに竹刀が弾かれ、
「メェェンッ!!!」
再び面に鋭い一閃、
2度めの面を同じ位置に喰らい、再び悶える一夏。
「面一本!」
「きまりましたな、胴払い面、見事でした」
「ええ、きれいな太刀筋でしたね」
「そうですか」
「一夏くん、やっぱり痛いでしょうねぇ、あれは」
「2度めですからね……」
「さっきも面を取られたのですか?」
「ええ、それも一振りでした」
「これはまた鍛えなおさねばダメですね」
「まぁまぁ、千冬ちゃん、そう慌てないで」
竹刀袋に手をかけた千冬を柳韻が止める、
「はぁ。でもあの子強いですね」
「やはり、千冬ちゃんもそう思いますか」
「ええ、構えの際は気を放たず、剣を振る瞬間に集中している、一閃に心技体をまとめていますね」
「そうですそうです」
「は、はぁ……」
「千冬ちゃん、紫苑さんと一試合やってみませんか?」
「え、なぜです?」
「私の好奇心、ですかね」
はっはっはと笑う柳韻、本当に興味が出たから、というふうに笑う。
「よろしいですか? 天草さん」
千冬もその気なようだ。
――仕方ない、やりましょうか
「分かりました。防具などをお借りしますね」
「ええ、どうぞ。付け方などは……大丈夫そうですね」
「織斑さん、よろしくおねがいしますね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
弟をコテンパンにされてしまったからか、それとも自分の不甲斐無さか、千冬から放たれる気が強まるなか、防具をつけ、竹刀を取る。
「お、千冬姉来てたのか。柳韻さんと試合か?」
「いいや、一夏、私は天草さんと一太刀交えることにしたよ」
「え、櫻のお母さんとか、それ平気なのか?」
「ムッティは強いから大丈夫だよ、少なくとも一夏みたいに一瞬でおわるってことは無いねっ」
「櫻、テメこのっ!」
キャッキャッと駆けまわる一夏と櫻を見ながら、千冬の元へ。
「おまたせしました」
「では、はじめましょう」
「審判は私が努めます。箒、一夏くん達と見ていなさい。おそらく、いや、絶対に自分の糧になるからな」
「はい。ほら一夏、櫻、行くぞ」
「「うぅ~」」
あっさりと箒に捉えられたアホの子2人を引きずり、道場の隅、さっきまで紫苑や柳韻がすわっていたところに落ち着く。
「ふふっ」
「ずいぶんと余裕ですね」
「あなたも自分の子を持てばわかるわ」
「そうですか……」
「では、準備を」
お互い白線のもとに立ち、剣尖、目線をあわせる。
両者から――おもに千冬だ――から放たれる圧倒的な気に、子供達は気圧されていた。
「お、おい櫻、お前のお母さんおっかないぞ」
「一夏くんのお姉さんだって、怖すぎでしょ……」
「では、始めっ!」
千冬初登場
8/4 追記
課題に手を付けず、気づけば8月ですね
課題以外にもやることが山積みで何から始めればいいのやら。
PVとUUは休日ということもあってか、かなりの方に読んでいただけました。
1日1話更新なので週末にまとめて。という読み方もアリですね。なにせ1話辺りの文字数が2000文字程度とかなり少ないので。
次の話ではあの人が登場します。場所、登場人物からもう察しがつくのではないでしょうか?
それでは、次もお楽しみに。