Who reached Infinite-Stratos ? 作:卯月ゆう
救ったのが誰なのかはサブタイ
―む? ここは……?
板張りの天井、年季を感じさせる白い壁、木枠の窓からは朝焼けなのか夕焼けなのか、斜陽が指している。
「目が覚めましたか?」
ふとかけられた声にとっさに腰に手を回す……が、収めてある 得物ナイフが無い。
「お探しものはコレですか?」
目の前の女性―格好からシスターと見受けられる―の手には愛用のナイフ。
それを片手に弄んでいる。
「お前は?」
「私は天草紫苑、この教会のシスターにございます。日本語がお分かりになるようですね」
シオンと名乗るシスターはいかにも、な慈愛の笑みで私に相対している。
それでも、片手にはナイフを離さない
「ああ、言葉は大丈夫だ。それで、ここは教会と聞いたが、具体的にはどこだ?」
上海海域で撃墜されたからおそらくは日本の南側だという検討はつく。
それよりも、ここからまたヨーロッパのコロニーまで戻れるのか、そもそも機体はどうなった。
疑問は尽きないが、まずは彼女から得られる情報を得てからにしよう。
「ここは日本の九州、熊本は天草にございます。地図で確認なされますか?」
「ああ、頼もう」
そう言うと紫苑はどこからともなくホログラムディスプレイを取り出すと、日本の地図を写しだした。
「日本の南に位置する大きな島。これが九州と呼ばれる島です。そして、その中央から西に見たここが、天草です」
そういうと地図にマーカーが表示される。だいぶ流されたようだ、生きてるのが奇跡とも思える。
「なるほど、位置は分かった。そろそろ、ソレを返してもらえないか?」
彼女の手さばきから刃物の扱いに慣れているというのは察しがつく、だが、彼女の身の上に見合った行動から、私は混乱していた。
「ダメですよ。まだ私はあなたが誰だかわかりませんし、それに、見たところあなたは人を殺し慣れていますね。そんな方に刃物を安々とお渡しすると思いますか?」
最もだ、仕方がない、ここは警戒を解くためにも身を明かそう。そうして一刻も早くここかr……
「ニセの身分を話されても信用いたしませんよ?さらに、一刻も早くここから出ようなどという考えも無駄です、少なくとも1ヶ月ほどは安静にしていてくださいね?」
「あ、ああ」
―なんだこの女は、まるですべてを見通されているかのようだ。
「あなたのことはだいたい検討がついています、傭兵さん?所属とお名前をいただけますか?」
どこまで見通されているのか、仕方がない。正直に話すとしよう
「そこまで察しがいいとは驚きだ、仕方がない。私はドイツ、ローゼンタール社所属のリンクス。レオハルト・フュルステンベルク。シオン、君には感謝しているが、私の身分上、此処にいては君たちに迷惑がかかってしまう。私を開放してくれないか」
正直に話した、これで彼女も……
「わかりました、レオハルトさん。ファミリーネームが呼びにくいのでファーストネームでよろしいですよね?」
「ああ、構わない」
「では、あなたの処遇を言い渡します」
え、何だこの展開は、処遇? 私はてっきり修道女に救われたのだと……
「あなたを我が教会の管理下に置き、ローゼンタールとの交渉は私の名のもとに行います」
この女、何を言っている?
私を管理下に置く?ローゼンタールとの交渉?無理に決まっている、墜ちたリンクスなど無用、私も直に始末されるだろうに。
「では、私は仕事がありますので、これにて失礼いたします。くれぐれも逃げ出そうなどと考えないように」
そう言って部屋から出て行く間際、さらに爆弾を落として行った。
「そうそう、あなたの機体、私が回収していますから。ご安心ください」
なんということをしてくれたのでしょう。
「お前、自分が何を言っているのかわかっているのか?」
「ええもちろん、傭兵を匿い、企業の技術の粋を集めたネクストを手元に置いている。これ以上でもこれ以下でもありません。私はこう見えても強いのですよ?」
ふふっと小さく笑う彼女はとんでもないことを冗談のように言い放った。
「夕食は6時半ごろお持ちしますね、その時にまた"ゆっくり"話しましょう」
そういう彼女は優しく笑いかけて部屋から去っていった。
―ああ、厄日だ。
私はそう思い、再びの眠りに落ちた。
「そちらのリンクスは私の手元においてます、ご安心を。機体も回収済みです、背部の羽が美しい機体でした。そちらから部品と人員を送っていただけますね? ええ、もちろん。その分のお仕事は引き受けますよ? まぁ、今どき私のノーマルでできる事など限られるでしょうが。ええ、アレを見る限りは五分といったところでしょうか、ノーマルにはPAなんて素敵なものありませんから。ええ、そう。では、おまちしております」
―ふふっ、楽しいことになりそうだわ。彼も面白い人だし
ここは天草灘にほど近い海辺の教会、その近くには港湾設備がチラホラと見受けられる。
そのドックの中には、ネクストに狩り尽くされたと思われていた 骨董品ノーマルが天使を眺めるように鎮座していた。
さて、2日連続であげます。私のアイディアが尽きないうちに書いてしまいたいですからね。
ノブレスオブリージュのレオハルトですが、ファミリーネームがわからないので適当にでっち上げました。ご了承ください。
かなりご都合主義な点が見受けられますが、目をつぶっていただけたら幸いです。
物語はこの後もしばらくこの2人の絡みが続きます、そうして主人公が産まれ次第、勢いを上げて時空をかっ飛ばす予定です。