Who reached Infinite-Stratos ? 作:卯月ゆう
「あらあら、お祭りは始まってるみたいね」
「そんな呑気に構えてる時ですか?」
「そうでもないわ。全員、私に続きなさい!」
沖に出たクルーザーから10人程がISを纏い跳び上がる。遠くに見える爆炎と、青緑の光の下へ。
「叩き落としなさい」
女の一声で色とりどりの機体が一気に加速した。
----------------------------------------
「マドカ!」
『わかってる! わかってる、あぁ、クソっ!』
敵は約40。的が大きいとはいえ、PAが邪魔だ。エネルギー兵器主体に戦っても半数は学園へと飛び去ってしまう。そして、また一機月光で切り捨てるとレーダーに新たな機影を捕らえた。
「マドカ、新しい客!」
『ああ、見えた。ISじゃねぇか!』
「嘘ッ! 退くよ!」
懐に入り込んできた一機をまた月光でスライスするとそのまま反転、マドカとともに後退していく。だが、レーダーに写ったのはその客人がネクストを撹乱、攻撃を加えるところだった。
『櫻、大丈夫か?』
「大丈夫じゃない! でもまだ来ないで!」
『ああ、こんな時に……!』
「ごめん、大丈夫だから。ほんとに」
『くっ……』
ラウラが慌てて呼びかけてきてもどうにかこらえさせ、目の前で起きていることを整理する。
「アレは、誰?」
『んなの今はどうでもいい。敵の敵は味方だろ?』
「終わった後に斬られるとか嫌だよ?」
『その時はその時だ。行くぞ』
今はそうするしか無いか、と再び混沌の中に飛び入り参加すると早速1機を屠る。
「ねぇ、なんか敵の動き、素人臭くない?」
『そうだな。まっすぐしか向かってこないから当てやすい』
それは事実であったようで、あちこちで煙を吐いて落ちていくネクストが見えた。だが、そう油断した時が一番危ないとも言う。
突然、大きな音を立てて脚部装甲がはじけ飛んだ。
「後ろ! 大型レールガン!」
あんなのがまともに当たったら絶対防御なんてお構いなしに足が吹き飛んでいただろう。素足を晒しながら一瞬想像して鳥肌が立つ。
『吹き飛べ!』
白騎士の荷電粒子砲が直撃。だが、青緑の光が一瞬見えると機体は一部焦げただけで未だに健在だった。今度はレールガンをマドカに向けて撃つ。
その隙に後方からの鉛弾の雨を気にもとめずにレールガンを叩き斬る。
『クソっ、攻撃が通らない!』
「プライマルアーマーが邪魔なんだよ。カタナでゴリ押しなら通る!」
『そうかいっ!』
雪片を手に一気に突っ込むとその腕を切り落とす。本人の不服そうな声のあと、再び振り下ろされたソレはヘッドパーツを砕くとコアまで歯を通した。
『零落白夜が通る!』
「でも、まだうじゃうじゃいるからね。エネルギー切れで墜ちないでよ!」
何処かから飛来したISも無言でネクストを切り伏せ、弾幕でPAを薄くしたところに大口径のグレネードを叩き込むなどあきらかにネクスト慣れした戦い方をしていた。
だが、そんなことを考える余裕も無く、視界に入る大きな影を片っ端から追いかけていく。
『ファントム、進路を西へ』
「え?」
聞き覚えのある声な気がして辺りを見回す。西に飛び去っていくのはすべて各国の第2、第3世代だ。
ここで一気に櫻の思考が加速する。
機体は各国の正規採用、及び開発機。IFFと一致せず。ということは…… 盗難機である。
「
『私達に構う余裕があるのかしら、お嬢さん。うふふっ』
櫻の放ったレールガンは当たり前のように外れ、ただ、飛び去る機影を見ることしか出来ない。
追いかけようにも女の言うとおり、この場にいるネクストをすべて落とさなければ。
その後の櫻はひたすらに的を落とす
----------------------------------------
「撃てッ!」
学園では砂浜や校舎の屋上にラファールの拠点防衛パッケージ、クアッド・ファランクスを展開、迫り来る複数のネクストに鉛弾の雨を降らせていた。
さすがにサブマシンガン以上のハイレートで弾丸を叩きこまれればPAも薄くなる。そこをスコールやオータムが束特製のレールカノンで撃ちぬいていく。
『ミューゼル先生! こっちですぅ!』
『こっちといわれても困ります!』
赤い機体が学園上空を飛び回り、煙を吹かせていく。時折爆音とともに建物が崩れる。戦力が足りない。そう思った時だ。
『ハ~イ、久しぶりね、スコール』
ネクストの大群の後方から、10機のISがやってきた。
『アスター…… これもあなたが?』
『そんなわけないじゃない。こんな骨董品、粗大ゴミに出したほうがマシよ』
そう口ではふざけながらネクストに攻撃を叩き込んでいく。思わぬ伏兵に隊列が乱れる。
『今は共闘、ですか?』
『ふふっ、そうね。少なくともいまコイツらに勝たれると私も困るのよ。それに、あなた達に死んでもらっても困るわ』
学園上空、ネクストに混じって現れたのは薄紫の機体。亡国機業のトップに立つ女、アスターだった。
スコールが苦い表情のままネクストを確実に落としていく。それに対し、アスターは顔に笑みを浮かべながらネクストの背後を取り、弱点を射抜く。
残りも片手で数えられるほどまで減った時、一機の様子がおかしくなった。
『ええぇっ、逃げっ!』
圧倒的火力を誇る兵器をもはや狙うこと無く撃ち続け、機体の挙動も怪しい。ふらふらと飛んだかと思えば突然QBで建物に突撃。そんなことを繰り返す機体に教員たちも混乱していく。
『落ち着いて! その場から離れなさい! クアッド・ファランクスは捨てて!』
とっさに叫んだスコール。思いあたることはひとつしか無い。
『逆流……』
『でしょうねぇ。どうする? コジマをまき散らされては困るものね』
黙ってレールカノンを構えるとハイパーセンサーのエイミングアシストをフル活用してイカレた機体を狙う。
引き金に指をかけ、引いた。
『あら、残念。私が貰って行くわ』
予測できない機動故に弾丸が逸れると、ネクストが飛び上がった先でアスターがそれを斬った。
ラスト1。コレを落とせば。
----------------------------------------
「私達の勝ち!」
メガフロート上空で最後の1機を斬り伏せるとそのままふらふらとフロートに降り立つ。コジマ濃度を測って安全値であることを見るとISを解除した。
後から降りてきたマドカに思わず気の抜けた声で聞いてしまう。
「終わった?」
「学園の方もスコールがなんとかな。ファントムタスクがほとんどを落として行ったらしいが」
「あの人の声、どこかで聞いたことがある気がするんだよね」
「そうか?」
心残りのある櫻の下にフロートのピットで待機していた面々が駆け寄る。
「櫻! あぁ、心配したんだよ!?」
「大丈夫だって」
飛びついたシャルロットを撫でながらなにか言いたげなラウラに振る。
「何かあった?」
「いや、うん。あのファントムタスクの女の声、私も聞き覚えがある気がすると思ってな……」
「後で声紋分析にかけようか」
「そうだな」
ラウラと頷きあうと後ろから肩を叩かれた。
「おつかれ、だったな」
「ええ。千冬さんの出番がなくて良かったです」
「そうか……」
「いいんです。コレも仕事の内ですから」
「済まなかったな。全て任せてしまって」
「いえ、私達に出来る最善手を打ったまでです」
千冬の、帰るぞ。と言う言葉でその場の全員がISを展開。学園へ向けて飛び立った。