Who reached Infinite-Stratos ?   作:卯月ゆう

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セカンドタッチ

 田先生のヨーロッパ紀行、3カ国目のフランスでは初日からオルセー美術館、そしてシャンゼリゼ通りとパリの有名ドコロを確実に回っている。

 現在は大人2人と別れ、シャンゼリゼ通りのカフェで一休み。

 

 

「やはり異国の町並みというのは見ていて飽きませんわね」

 

「だな。学園のハイテクぶりとは真逆でとても綺麗だ」

 

「なんなら今度は京都でも行こうか? 春休みとか」

 

「いいね。僕も一度言ってみたかったんだ。お寺とか神社とか」

 

「いいですわね。金閣寺は海外でも有名ですわ」

 

「定番だな。私としては本場で抹茶を頂きたいところだ」

 

「ラウラは茶道部だもんね。もう作法もバッチリなの?」

 

「もちろんだ。織斑先生に扱かれたからな」

 

「でも、ラウラが茶道部に入るって聞いた時は驚いたよ。言っちゃ悪いけど、スゴイ意外だったしね」

 

「そうですわ。ラウラさんは……そうですね、武道とかそちらに行くとばかり思っていましたし」

 

「柔剣道はある程度出来る。ならば新しい文化に触れるのも一興だと思ってな。そういえば、櫻は部活に入っていたのか? もう半年以上経つが」

 

「いやぁ、生徒会ってことでごまかしてもらってるかな。時々いろんな部活に飛び入りしたりしてはいるんだけどね」

 

「飛び入りって……」

 

「櫻さんの人徳が垣間見えましたわ」

 

 乙女の話は止まることを知らず、ぐだぐだと話し続けるうちにずいぶんと時間が経ってしまったようだ。時計はもうすぐ4時半を指そうとしている。

 さて、そろそろ待ち合わせ場所に戻るか、というところで少し派手な格好のご婦人と従者のような男性が入ってきたのが見えた。

 

「派手な服の方ですわね。でも、そこまで口説くないのはセンス故でしょうか」

 

「シャルロット、アレがフランスの上流階級と言うやつか?」

 

 ラウラが問いかけるもシャルロットはその婦人に目を向けたまま動かない。

 どうした? と再度ラウラが呼びかけるとやっと返事をした

 

 

「大丈夫か?」

 

「う、うん。なんともないよ?」

 

 その声が聞こえたか聞こえなかったか、婦人がこちらに目を向けるとずんずんと近づいてくる。それに合わせるかのようにシャルロットの顔が引きつっていった

 

 

「あら、祖国を捨てた妾の子がこんなところで何をしているのかしら? そのお友達も詐欺まがいの方法で釣ってきたの?」

 

 苦い顔をするシャルロット。この罵倒から相手に察しを付けたのがラウラ。そして、相手が誰かも知らずに口火を切ったのはセシリアだった

 

 

「どなたか存じませんが、シャルロットさんはわたくし達の立派な友人でしてよ。彼女を貶そうなど、このセシリア――」

 

「ストップ、セシリア」

 

 察しが悪いのは相変わらずというべきか、熱くなりかけたセシリアを櫻が止め、再び口を開いた

 

 

「こうして直接顔を合わせるのは初めてでしょうか、デュノア夫人。それと、奥にいらっしゃるのはオリヴィエ社長ですか?」

 

「私はあなたを知らないわ。誰なの?」

 

「ポラリス、共同代表のテルミドールです。あなた方には元企業連CEO、櫻・フュルステンベルクと言った方がよろしいでしょうか?」

 

「あなたが、そう……。あんな妾の子を金で買い上げデュノアの信用を失墜させてくれたのね!」

 

「元を正せばあなた方の詰めの甘さが招いたことでしょう。経営者としては3流以下ですね」

 

「黙りなさい! 金に物を言わせてIS市場を独占して……。デュノアはお陰で経営危機よ!」

 

「そうですか。それにしては羽振りが良さそうですが。確か、本社はオート・ノルマンディーでしたよね。わざわざパリまで出向いてお買い物とは」

 

「あなたには関係ないでしょう! ああ、もう。一息つこうと思えばこんな……!」

 

 呆れるように言って踵を返すと路上に停めた車に乗り込んだ。

 その場に残されたのはオリヴィエ・デュノア社長。彼は櫻とシャルロットの前に立つと頭を下げた

 

 

「お会いできて光栄だ、マダムフュルステンベルク。シャルロットを助けてくれてありがとう。そして、ロロット久し振りだね。元気だったかい?」

 

「……うん。お父さん……」

 

「それはよかった。こんなにいいお友達も出来て、父親として幸せだ。本当なら、私が何とかするべきだったのに申し訳ないことをしたね。マダムウォルコットにも迷惑を掛けてしまった」

 

「いいんだよ。あの人にはお父さんも逆らえないんでしょ?」

 

「情けないことにね。だけど、こうしてロロットに会うことが出来た、それだけで私はまた前を向いて歩くことが出来る。またいつか、私の手に会社を戻すまでね」

 

「頑張って、お父さん」

 

「オリヴィエ社長。また何かあればご連絡を」

 

「ああ、その時はまた世話になるかもしれないね。もう無いといいが……。じゃあ、ロロット、元気でな。お友達もさっきはひどい言葉を掛けてしまったね。すまなかった。またこの国を楽しんでいって欲しい」

 

「うん。お父さんも、元気で」

 

 シャルロットの言葉を聞くと、優しい笑みを浮かべてから車に向かっていった

 

 

「あれが、デュノア社の社長夫妻でしたの……?」

 

「うん。僕が一番憎むべき相手、かな」

 

「あの口調が腹立つ女はさておき、やつれた男は実父なのだろ?」

 

「そうだよ。僕、お父さんが僕のことをあんなに考えてくれているなんて思ってもいなかった……」

 

 泣きだしたシャルロットを座らせるとローズマリーを頼んだ

 ひとまず落ち着くまでにこの経緯を話そうか、と櫻がシャルロットに問えばちいさく頷いて答えた

 

 

「あの会社に何があったのか話すと長くなるんだけど。そうだな、ざっくり話すなら今の社長夫妻は政略結婚的な要素が大きい。ってとこかな。だからロッテのお母さんと結婚したくても出来なかったんだと思う。それで気がつけばあの女が会社の経営権を握り、社長は名ばかり。経営の素人に手綱を握られた会社は失墜の一途。イグニッションプランからも外され、苦肉の策でロッテを学園に送り込むも逆手に取られてあっさりと。今はラファールのメンテナンスとアップデートで食べてるみたいだけど、これも近いうちに終わるね」

 

「本当にざっくりですわね。でも、大まかにはつかめましたわ。ですが、どうして社長夫人が櫻さんに喧嘩腰でしたの?」

 

「お前は本当に察しが悪いな、セシリア」

 

「なっ、何を言いますの? ラウラさんはこんなざっくりな説明で事態を把握できまして?」

 

「まぁ、偶然知ってしまったこともあるが、シャルロットの今の家がヒントだな」

 

「ヒント、って……。ん……? シャルロットさんのイギリス移住を手引きしたのは櫻さん?」

 

「その通り。もっと言っちゃうとオリヴィエ社長も手を貸してくれた。本当はシャルロットに言うべきだったんだろうけど、本人に口止めされちゃってね」

 

「それはきっと、シャルロットさんを思ってのことなのでしょうね」

 

「そうだろうね。自分の元を離れるのは寂しくても、これ以上つらい思いをさせたくなかったんだよ」

 

「いい父だな」

 

「ええ、本当ですわ。娘思いで……」

 

 親が居なかったり失ったりと少し訳ありな2人が遠い目をしたところでマズかったかな、と櫻が少し顔を曇らせたところ、セシリアがそっとお茶のおかわりを淹れながら

 

 

「シャルロットさん、落ち着きましたか?」

 

「うん、大丈夫。ありがと」

 

「聞いてた? ロッテ」

 

「うん。お父さんが僕の移住に手を貸してくれたなんて……」

 

「実の親だから、あんなに早く手続きが済んだんだよ。ウチがシャルロットを抜き取ろうと考えたら何処からとも無くコンタクトを取ってきてね。それで」

 

「そっか。それなのに恨んでる、なんて、僕は酷い事を……」

 

「いいんじゃない? きっと社長はロッテを愛してたから憎まれ役を引き受けてくれたんだよ」

 

「だといいな。きっとそうだよね」

 

「うん。さっきのでわかったでしょ?」

 

「もちろん。あぁ、元気出てきた。いろんな人に愛されてるってわかったからね」

 

 そう言って笑ったシャルロットの笑顔はいつも以上に明るかった

 

 その空気に釘を差すようにして鳴った携帯。櫻がポケットに手を入れて首をふるとシャルロットが「あ、」といった顔で電話に出た

 

 

『オルコット。今何時だ?』

 

「えっと……」

 

 そう言って腕時計に目を落とすと時刻は5時を10分ほど過ぎている。マズい

 

 

「5時10分です。スミマセン」

 

『私達はお前らが居ないと動けないんだ。頼むぞ……』

 

「ハイ、今すぐ向かいます……」

 

 携帯をしまうと「織斑先生」と言った。4人が真冬のシャンゼリゼを駆け抜けるのに、そう時間はかからなかった




急遽予定変更(という名の思いつき)でフランス編続きました。

デュノア夫人、更にISのSSではよく出てくるシャルロットのお父さん(超いい人)登場です。

デュノアが羽振りのいい理由、そしてだいぶ前の話で出てきた「アレ」が今後の鍵になってきますね。
特にとっさの思いつきが無ければ次こそ海峡をわたってイギリスに入ります

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