Who reached Infinite-Stratos ? 作:卯月ゆう
「ただいま。みんな帰ってる~?」
そうって重厚な音を立てるドアを開け、帰ってきたのはこの家の主、紫苑だ。日本ならば玄関にある靴を見て誰がいる、いないとわかるがここではそういう訳にはいかない。
櫻が食堂の戸を開けて手を招くと紫苑は食堂へ入っていった
「あら、千冬ちゃん。それにみんなも、いらっしゃい。あら、初めて見る娘ね。クラスメート?」
「あっ、えっと、IS学園でテルミドールさんの副担任を勤めています、山田真耶と申します」
あたふたと言葉を続けようとする真耶に向かうと
「ごめんなさいね。とても若く見えたものだから。先生が2人揃って、ってことは、家庭訪問かしら? また櫻がなにかやらかしたの?」
「櫻が何かやるのはいつものことですし、どちらかと言うと後始末を頼む事が多いですから。ご希望でしたら4者面談でもしますか?」
「いいわね。普段の櫻もよくわからないし」
うげ、と声に出して苦い顔をする櫻、それを見て小さく笑う面々。紫苑はシャルロットを見ると携帯を取り出し、
「なんならリリウムも呼びましょうか? セシリアちゃんもいるし」
「いえいえ、大丈夫ですっ。お母さんには普段のこともよく話してますし」
慌てて言葉を並べたシャルロットに微笑むと「冗談よ」と言って今度は束に顔を向けた
「束ちゃんも、顔を見るのはいつぶりかしら?」
「そうだね。この前電話はしたけど、ここに帰ってくるのは3ヶ月ぶり? もっとかな」
「クロエも、元気そうで何より。学園のことは決めたの?」
「はい。束さまには喜んで、と」
「学園のことって何?」
そこで声を上げたのはもちろん櫻。このことは紫苑と千冬、束以外は知らないことだったのだから当然の反応だ
「くーちゃんを学園に入れようかな。って」
「聞いてないよ……。でも千冬さんが何も言わないってことは前々から相談はしてたんだね」
「ああ、初めて聞いた時は何事かと思ったけどな。紫苑さん、今日は書類も持ってきているので後でお願いします」
「ええ、わかったわ。じゃ、まずは4者面談かしら?」
私の書斎を使いましょう。と言って櫻を引きずり、千冬と真耶を従えて部屋をでた4人を見送った束達。特に深いつながりがあるわけでもなく、少し緊張した空気が部屋を包む
「束さん、何か飲み物でもどうですか?」
「うん、もらうよ。ありがと」
「姉さま、なにか取ってこようか?」
「大丈夫」
――わ、私の肩身がありませんわ……
「そういえば、今日はのほほんちゃんは居ないの?」
「本音は家の用事があるって言ってましたよ」
「そっかぁ、まぁ、日本の旧家の従者だもんね。年末年始は忙しっか」
「でしょうね」
会話終了。再び沈黙が場を包む。
――櫻ぁ! このままじゃ空気がぁぁぁ!!
というシャルロットの願いが通じたのかどうかはさておき、数分しか経っていないにもかかわらず広い邸内に櫻の悲鳴が響いた
「はぁ……」
束が呆れたようにため息をつくと、釣られたようにシャルロットがため息を付き、クロエがやれやれと肩をすくめた
「さくちん、きっといろんな黒歴史を暴かれて叫んでるんだよ。多分あと少ししたら嫌になって部屋を飛びだ――」
飛び出して、と言おうとしたところで食堂のドアを勢い良く開いた涙目の櫻が居た
「――して来るよ……はぁ……」
「千冬さんが、千冬さんがイジメるゥゥゥゥゥ!!」
「はいはい、可哀想にね~。束さんの胸に飛び込んで……グフっ!」
マジでタックルをかました櫻をどうにか受け止めた束はそっと櫻の頭を撫でて宥め、クロエに部屋に行くように言った
「櫻さんが泣いている所を初めてみましたわ……」
「だね……。なんか……かわいい……」
「シャルロット……」
3人、と言うよりは主に千冬と紫苑に何か言われたであろう櫻は膝立ちのまま束に抱きついて離さず、思わず束も3人に助けてと視線を送るも露骨にそらされてしまった
「それで、ちーちゃんに何を言われたの?」
「うん……、グズっ。えっとね、学園中の代表候補生をボコった話とかね。私のことが気に入らない先輩をリアルで絞ったりね……、グズっ――」
――マジかー。さくちん、それはいくら束さんでもフォローできないよ……
――え、櫻いつのまにそんなことをしてたの?
――だから食堂でお前の周りが空いてるのか……
――先輩が櫻さんを恐れる理由がわかりましたわ……
と、櫻の武勇伝、もといヤンキー顔負けの素行の悪さに思わず閉口する4人。その他にも整備科で便利屋――間違ったところをすべて直してくれる為――をしているとか、同級生の練習に付き合ってるなんていい話もあるものの、学園最強となってしまいかねない――楯無には生身じゃ勝てる気がしないらしい――彼女の暴れっぷりに4人が呆れ始めた頃、大人たちが戻ってきた
「なぁ、櫻。済まなかった。言い過ぎたよ。あとでハリボー買ってやるから、な?」
「うぅ……、子供扱いしないでくださいっ!」
「櫻、別に売られた喧嘩に利子付けて返すのを悪いとは言わないけど、少しは周りを考えて、ね?」
「ムッティまでぇぇぇ……」
「で、でも、整備科の皆さんにはとても好かれてますし、素行の悪さをもって有り余るカリスマ性はありますから!」
「ウワァァァン!」
真耶が言い終えると再び泣きながら束に飛びつく櫻だった
「いまのは山田先生がトドメさしたね」
「素行の悪さ、なんて言ったからな」
「織斑先生やおばさまはオブラートに包んでいましたのに」
「わわっ、私のせいですか?」
「「「そうですね(わ)(だな)」」」
「ふぇぇぇん! せんぱぁぁぁい!」
また泣き虫が増えたのであった
----------------------------------------
「気を取り直して、今日はおそばね。大晦日だし。年越しそば」
「こうしていると海外、って気がしませんね。高いホテルに泊まってるみたいです」
「明日はちゃんとおせちも用意してあるから。楽しみにしててくださいね」
「今日はグダグダして、明日もグダグダして、明後日もグダグダして……」
「明々後日にフランスだね。ワインの季節は過ぎちゃったけど、パリで美味しいフランス料理を食べて、フランス1番のホテルに1泊。先生たちはスイートですよ、もちろん」
「暫くは家に居られそうだな」
「だね~。山田先生は何処か行きたい所ありますか? 国内で」
「ロマンチック街道とか行ってみたいですかねぇ」
「あぁ。定番ですね。記憶の片隅には入れておきます」
「酷いっ!」
と、こんな調子で1日を過ごした7人は、年越しそばをすすると柱時計の音を聞きながら寒い寒いドイツで新たな年を迎えた
慌てて書いたショート。ちっとも話が浮かばないのでもう数話ヨーロッパで繋いでさっさと終わらせに掛かります。内容薄いです