Who reached Infinite-Stratos ?   作:卯月ゆう

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閑話:親バカの娘談義

 マンターゲットをぶった斬る桜色の機体をみて、紫苑はおもわずため息をついた。

 

「この人外じみた能力は本当に誰譲りなのかしらねぇ、自分の娘なのに恐怖すら感じるわ……」

「私達のいいところを撚り合わせたのだろうさ」

 

 

 言葉には出さなかったが2人共そろって櫻の能力だけでなく、容姿にも自信があった。飛んだ親バカである。

 だが、本当にレオハルトと紫苑のいいところを合わせたというのがぴったりな姿。

 顔立ちはレオハルトのそれに近いが、その目は深い黒で、紫苑のそれだった。

 背丈も同年代の子に比べれば高く、成長が期待できそうだ。

 

「あの子は将来きっと美人になるだろうな」

 

 言ってしまった。

 

「そうね、顔はあなたにそっくりだし、きっと美形ね」

 

 それを受け流しもせずに盛り上げる妻、親バカここに極まれりだ。

 

「そうだな、それに紫苑そっくりの黒い目がチャーミングだ」

「あら、褒めても何も出ないわよ?」

「なに、本当のことを言ったまでだ」

「ふふっ、そうなのね」

 

 ――性格はシオン似だろう、彼女は表立ってはこうだが、素はサクラにそっくりだ。バトルジャンキーなところなども……

 

 と口に出したら彼女の絶対零度の笑みを向けられ、何をされるかわかったものではないのでそっと心にとどめておくレオハルト。

 

「あらあら、なにか失礼なこと考えてない?」

 

 ――やっぱり心読まれてるような、以心伝心でって解釈するとよく聞こえるが……なぁ

 

「いや、ただ、サクラはシオンに似ているな、と思っただけさ」

「見た目はほとんどあなたじゃない、本当に白人の血は濃いのね」

「だが、要所要所は君にそっくりだよ」

 

 などと自分の娘を褒めちぎり、お互いに褒めあっているこの夫婦の周囲には果糖もびっくりの激甘な空気が漂っていたことだろう。

 

 

「娘の成長をもっと見届けたかったがなぁ」

 

 ふと、本音がこぼれてしまう。

 レオハルトの顔に失態の情が浮かぶ。

 

「いや、だが、今までも十分感じることができたな」

 

 慌てて挽回。

 しかし、言霊と言うやつか、様々な思いが浮かび上がる。

 

「初めて言葉を発した時、ハイハイを始めた時、立った時。人間の当然の成長なのに、我が子となるとここまで嬉しいとは」

「そうねぇ、初めて呼んだのは私だったわね」

「そうだったな、思い返すと少し悔しかったな、アレは」

 

 くくく、とレオハルトが苦く笑う。

 

「その後にちゃんとファーティって呼んでくれたじゃない」

「そうだが、先を越されたのは悔しいさ」

「しかし、子育てが大変なのは6歳までとは誰が言ったんだ? あの調子だと6歳を過ぎても大変そうだぞ?」

 

 変わらないのはその好奇心と行動力である。

 

「それがあの子のいいところでもあるのよ、周りからありとあらゆるものを吸収していく、だからあの子は豊かになったのよ」

「そうだな、優秀な道徳の先生に数学、理科の先生―」

「それに体育と外国語の先生まで居ればね」

 

 それはもちろんレオハルト、紫苑、そして黒森峰を始めとするドックのスタッフたちだ。

 

 余談だが、オッツダルヴァが出産祝いに送ってきたのは子供の教育にかかる費用に関する本だった、その点ではやはり、彼は経営や政治に明があるのだろう。

 

「こんどオッツダルヴァに会わせてみるか、彼に頼めば家計くらいすぐにまとめられるようになるだろう」

「社会科の先生ゲットね、ふふっ」

「楽しくなりそうだ」

 

 まだ小学1年生の少女にどれだけの知識を詰め込むつもりなのか、教育パパ、ママは軽く暴走気味に未来の展望を語る。

 それだけ自分たちの娘に絶対的信頼があるのだ、櫻なら、やり遂げるだろうと。

 

 

 

 

 当の本人はと言えば

 

「ファーティに勝ちたいから、私オリジナルの機体が欲しいの! それでね―」

 

 大勢の技術者達が見守る中、機体のアセンブリをディスプレイに出す。

 

「おお、流石No.2の娘だ、よくわかっている」

「だが、これでは彼のスピードに追いつかないんじゃ?」

「なら、ここをコレに変えてみたらどうだろう?」

「ああ、確かにこれなら追いつけます。で、ついでにここも―」

「すごいねおっちゃん! でも、コレだとバランス悪そうだよ」

「だから、ここをこうしてこうやってだな―」 

 

 技術者達と"わたしのかんがえたさいきょうのねくすと"作りに夢中だった。

 

 レオハルトが娘に負かされる日も近いかもしれない。


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