Who reached Infinite-Stratos ?   作:卯月ゆう

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閑話: サンタクロース

 12月に入り、人々が慌ただしくなるなかで全国の、全世界の女の子が楽しみにする日といえば、そう。クリスマスである。

 恋人と過ごすもよし、家族と過ごすのも、友人たちと過ごすのもいいだろう。

 

 だが、24日の前に、サンタさんを呼ぶ(という表現は少し間違っているかもしれない……)習慣がある国がある。

 主にヨーロッパのキリスト教圏に多いのだが、12月6日を聖ニコラスの日(サンタクロースの由来となった聖ニコラス――ニコラウス――の命日らしい)としてお祝いするのだ。

 そのサンタは、2人組で、片方はお馴染みの赤い服を着たサンタ。もう片方は黒(茶色)の服を着た同行者を連れているというのだ。いい子には赤いサンタがお菓子を(国によってはみかんやナッツなど、違いがある)、悪い子には黒いサンタがお仕置きをするというのが大体の国で共通する部分である。

 

 さて、なぜこんな長ったらしい前置きをしたかといえば、事態も一段落し、テスト真っ只中の少し沈んだ空気に耐えられないお祭好きが居るからだ。

 

 

「なぁなぁ、リアーデさんや」

 

「どうしたんだい? りっちゃんや」

 

「もう12月だけどさ、クリスマス待ちきれないよね」

 

「だね~。朝起きて、リビングに置かれたツリーの下でプレゼントを開けてね~」

 

「なんという海外ドラマのテンプレ的展開……、アレって本当にやるんだね」

 

「私の家は違ったけどね~」

 

「違うんかい!」

 

「ツリーの用意も面倒でしょ? だから暖炉の傍にプレゼントが置いてあったなぁ。懐かしぃ~」

 

「まぁ、最近はそうだよね。ツリーなんて駅前とかでしか見ないし」

 

「あ、そうだ」

 

「ん? 何か思い出した?」

 

 突然携帯を取り出して誰かにメールを送るリアーデ。その宛先の主はちょうど、教室に入ってきた。

 

 携帯をいじりながら教室に入ってきたのは……

 

 

「リア、どうしたの? ちょうどメール来たけど」

 

「ふふん、お祭好きの血が騒いだのだよ。もうすぐあの日じゃないっ!」

 

「あの日? クリスマスはまだ先だよ?」

 

「はぁ……、チミ、それでもジャーマンかね? ラウラぁ~。次の週末ってなんの日だっけ~?」

 

 教室の後ろでタブレットとにらめっこをするラウラを巻き込むリアーデ。

 突然呼ばれた本人は「週末? 何かイベントでもあったか?」と首を傾げている

 

 

「はぁ……。セシリア~。次の週末ってなんの日~?」

 

「セシリアはイングリッシュじゃ……」

 

「もういいの、1年にドイツ人は5人しか居ないし。ヨーロッパならどこでもやってると思うんだけどなぁ」

 

「週末、ですか? 思い当たることはありませんわね……」

 

「セシリアも駄目かぁ。ロッテは~?」

 

 いつの間にか輪に入っていたシャルロットにその矛先が向く。

 

 

「サン・ニコラの日(仏語)だよね。ちっちゃい頃は教会でお菓子もらったりしたよ。懐かしいなぁ」

 

「そう! 週末。と言うか明後日はセント・ニコラウスの日(独語)! コレは騒ぐしか無いでしょ!」

 

「「「あぁ~!」」」

 

 そんなのもあったな。と言わんばかりの3人。りっちゃんこと田嶋さんは置いてけぼりだ。

 

 

「その、聖ニコラウスの日って、何?」

 

「説明しよう! 聖ニコラウスの日とは、ニコラウスって言う司教様がクネヒト・ループレヒトと一緒に子どもたちの家に回って、いい子にはプレゼントを、悪い子にはお仕置きをしていくっていうイベントだよ。んで、このニコラウスがサンタクロース、ってわけ。思い出したでしょ?」

 

「やったやった、ドイツに移った頃はクネヒト・ループレヒトが怖くてさぁ」

 

「私の部隊でも上官が部屋にやってきてプレゼントを配っていたな。その時は訓練の成績が悪いとお菓子詰め合わせのグミがシュネッケンだったりしてな。アレは楽しかった」

 

「ささやかなお仕置きだね、それは……」

 

 シュネッケンの不味さを知る櫻とリアーデが苦い顔をした。

 

 

「セシリアはやらなかったの? あ、プロテスタントだとそういうのはやらないか……」

 

「ええ、そうですね。知識としては知っていますけど、イギリス人の多くはクリスマスを祝うくらいかと」

 

「キリストーって一括りには出来ないんだねぇ」

 

「あ、りっちゃん。ここ世界史の範囲だよ。イギリスの宗教改革」

 

「現実に戻さないでよぉ」

 

 ケラケラと笑う乙女たちを他の生徒はいまいちよくわからない目で見ていたが、お祭り女こと田嶋とリアーデの2人に掛かれば名前ばかりのただのパーティーになることは間違いない。

 そうわかっている1組の生徒達は「楽しくなりそうだ」と期待に胸を膨らませるのだった

 

 

「というわけで、日曜にパーッと騒ごう!」

 

「結局騒ぎたいだけでしょ……」

 

「いいんじゃないか? テスト漬けで疲れているだろうし、これさえ終われば後は冬休みだ」

 

「お、さすがラウラ。話がわかるね~」

 

「うん、いいと思うよ。僕もみんなでワイワイやるのは好きだしね」

 

「よし、コレはやるっきゃないね。リアーデ、食堂の手配を。私はクラス掲示やるよ!」

 

「おっけ。じゃ、櫻とセシリアも、お菓子とかプレゼント、よろしく~」

 

「わかりましたわ」

 

「はいはい……」

 

 

 その日のHRで日曜の夜、食堂でパーティーを開くことが決まり、千冬は少し困った顔をしつつも、その目は笑っていた

 

 

 

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 準備は語るにあらず、食堂のおばちゃんたちに前もって騒ぐことを知らせ、パーティーメニューの用意をしてもらったり、セシリアと櫻が資金力に物を言わせて大量のお菓子とプレゼントを仕入れただけだ

 

 

「よし、全員揃ったかぁぁ!!!」

 

「「「「「「「いぇぇぇぇ!!」」」」」

 

 

 食堂の中央に用意された即席ステージでマイクを握るのはお祭り女、田嶋。

 頭にはサンタ帽をかぶり、食堂は一足先にクリスマスの飾り付けがされていた。

 

 というのも、いまいちよくわからないことを"適当に雰囲気"でやろうとした結果がコレである。まぁ、みんな騒ぎたいだけだからあまり気にしていないだろう

 

 

「じゃ、テスト明けを祝おうぜ!」

 

「「「「「「いぇぇぇぇ!!」」」」」」

 

 

 テスト期間明けの謎テンションでハイになっている乙女たち。だが、突然照明が落ちると、一点にスポットライトが当たる。

 

 

「ふむ、鷹月静寐。平常点は良好。定期テストでも学年上位をキープ。実技もこなす。ほほぅ。いい子じゃ、いい子じゃ。では、褒美をやらんとなぁ」

 

 聞き覚えがある声で赤い司教服に身を包んだ背の高い人物と、その後ろの黒いローブで身を隠した金髪。

 

 会場をうろつきながら適当な人の前に立つとその人の一年の成績を読み上げて褒美を渡していく。

 

 

 そして……

 

 

「谷本癒子。むっ、平常点は悪くないものの、テストが悲惨だのぅ。今回もあまり結果は芳しくないと見受けられる。コレは褒美はおあずけじゃな」

 

 仕方ない。とひとつ告げると後ろの黒いローブが懐からローブに収まりきらないであろうサイズの袋を取り出し、癒子を飲み込んでしまった

 

 

「ヒッ……」

 

「ゆっこぉぉぉ!!」

 

 パッ、と会場の明かりが戻ると背の高い司教と、ローブの従者が食堂の中心に居た。

 

 

「さて、余興はこんなところですかね。ゆっこ。出てきていいですよ」

 

 ローブの内側から癒子が顔だけだすと、また短い悲鳴が上がったが、ニヤリと笑って黒ローブに「このまま会場ウロウロして」と告げると物理を無視したその様で会場を怖がらせた

 

 

「ほら、調子に乗らない。おとなしく出てきなさい」

 

「はいよ。結構楽しかったけどね」

 

 そのままローブから出てきた癒子は先ほどとなんの代わりもなく、というわけには行かず、黒いギリースーツのようなもっさりした服と、白い角が2本。その手には鞭が握られている。

 

 ひょいと立つと「悪ぃ子は居ねぇがぁぁぁ」とどこぞのなまはげのようなセリフを吐きながら会場を練り歩く。――このクランプスとなまはげは似たようなものだが……

 

 クランプスに扮した癒子は「いい獲物見つけた」と言わんばかりに狙いを付け、その鞭を振り上げた

 

 

「ゆっこ、ソレはちょっとぉぉぉ!」

 

 パシッ! と乾いた音が響き、友理が目をつぶっている

 

 

「あれ、痛くない……?」

 

「ひひっ、驚いた?」

 

 その場に居たほとんどが鞭が尻に当たるように見えたが、実際はホログラムで、センサーに反応すると音がでるただのオモチャだ

 

 ――作者はほくそ笑んでいる

 

 ステージ上の田嶋とリアーデがゲラゲラと笑っているが、当の本人は不満気で、「うがぁぁ!!」と癒子を追い回している。

 

 

「いやぁ、いいもん作ったわ」

 

「それで、櫻さん? どうしてわたくしはこのような格好を……」

 

「ん? だって、ちょうどいいとこに居たから」

 

「んなっ!? 恥を忍んでこのようなボロ布を身につけていますのに……」

 

「まぁまぁ、他人の幸せのために身を削るのも貴族の仕事だよ」

 

「そう、ですわね……」

 

 どこか不本意そうなセシリア扮するクネヒト・ループレヒト。彼女の懐に仕掛けられた袋は量子変換装置の応用で、出口を1組の教室にセット。そこで衣装に着替え、首だけ出していたのだ

 

 

「さぁさぁ、聖ニコラウスの日っぽいこともそこそこに、って、アレ? 織斑くんと篠ノ之さんは?」

 

「あれ~? おりむ~ともっぴ~が居ないね~」

 

「姉さんもこないのか。仕方ないな」

 

「ありゃりゃ。ま、そのうち来るよね! さぁ、お前ら! 騒げ騒げ!」

 

「後でお楽しみ抽選会もやるよ~!」

 

 

 

 テーブルに並んだ多種多様な料理をつまみながらあちこちを回る田嶋とリアーデ。この騒ぎの立役者としてあちこちで飲まされている(もちろんノンアルコール!)

 

 ニコラウスとクネヒト・ループレヒトも大人気で、とっかえひっかえに数う人で固まると携帯で写真を撮っている

 

 

「いやぁ、この格好もなかなかつかれるね」

 

「櫻さんのソレは司祭服ですの?」

 

「うん。家にあったのを持ってきてもらった。だいぶ古いけどね」

 

「家に司祭服って……。櫻さんのお家は教会だった記憶はありませんが」

 

「いや、生まれた家は日本の教会だったからさ。ムッティもシスターだったんだよ?」

 

「へぇ。初めて聞きましたわ。確かに、紫苑さんは温和な方ですしね」

 

「さくさく~、せっし~」

 

 ダボダボの袖を振り回してやってきたのは本音とナギ、そしてマドカだ

 本音の皿には大量の料理。ナギとマドカはドリンクを手にしていた

 

 

「おつかれさ~ん。2人共似合ってるよ~」

 

「うん。櫻は背が高いから何でも様になるな。セシリアのソレは……。なんだ……」

 

「無理にフォローなさらなくても結構ですわ……」

 

「すまん……」

 

「まま、せっし~も楽しんでるんならいいんだよ~」

 

「そうですわね。それで、一夏さんや箒さんはまだ見えませんの?」

 

「ああ。どうも生徒会長に捕まったらしい」

 

「一夏くんも苦労してるね……」

 

「だな。それに、この調子だと――」

 

 

「やっほ~! 櫻ちゃ~ん! お姉さんが来たわよ~!」

 

 堂々と食堂に乱入してきたのは楯無と首根っこを押さえられた一夏。そして箒。山田先生と織斑先生も一緒だ

 

 

「ほらな。アイツなら絶対に来ると思ったんだ」

 

「おじょうさまもこういうの大好きだからね~」

 

「おや! 織斑君が来たぞ! 掛かれ!」

 

 

 突然リアーデが叫んだと思うと、次の瞬間には楯無の手から一夏は奪われサンタの格好になっていた。

 目にも留まらぬ早業に教師2人も目を見開いている

 

 

「コレでよし。じゃ、先生も生徒会長も楽しんでいってくださいね!」

 

「どうしてこんな……」

 

「ほら一夏、似合ってるからさ」

 

「う、うむ。こういうのも悪く無いと思うぞ。自信を持て」

 

「そうか? まぁ、こういう時くらいしかサンタなんてやらないしな」

 

「そうそう、何事も楽しんでいかないとね。はい、この後の抽選会で使うチケット。先生もどうぞ」

 

「おう、さんきゅな」

 

 

 そう言って5人にチケットを配ると櫻は長い裾を引きずってステージに上がり、マイクを取った

 

 

「さぁ、皆さんお待ちかねの大抽選会! 超豪華商品を手にするのは一体誰か!?」

 

 ドンドンパフパフ! とSEが着くようなテンションで始まった大抽選会。その賞品は櫻が超豪華と称するだけあってとんでもないものも混ざっている

 

 例えば、3等。一番下のいわば外れクジの時点で3万円分の商品券や代表候補生のレッスンプログラムが当たる時点で察していただきたい。

 

 もちろん、財布が寂しい学生が燃えないはずもなく。

 

 

「うおぉぉぉ!! コレで今冬は戦える!」や、「シャルロットと2人きりで……デュフフ」など思い思いの使い道に夢をふくらませている

 

 

「盛り上がってるね! じゃ、今回のルール説明! これから、あの0~9の数字が書かれた丸い的を回します。そこに、りっちゃんがダーツを投げて、あたった数字が当選番号ね! ソレを3回繰り返します! 完全3桁揃えばデュフフな賞品ゲット! もちろん前後賞、2等以下もあるよ! それじゃ、リアーデ、回しちゃって!」

 

 えいっ、と回された的。そこから離れた位置でデキそうな構えを見せる田嶋。

 それもそのはず、彼女はこのためにダーツの練習を重ねたのだ

 

 

「1投目、お願いしますっ!」

 

 鋭く放たれた矢。パスッと音を立てて的に当たるとリアーデが回転を停めた。

 

 その数字は4

 

 歓声をあげる者、失意に嘆くものが早くも出る中で櫻がざっと見回すと、一夏とシャルは早くも外してしまったようだ。

 ソレでも1/3はふるい落とされたようで、参加賞のうまか某をもらっている

 

 

「おや、思ったより人が残ってるね。後2桁当たるといいね! 外しちゃった人は残念でした。次……があるかはわからないけど、またの機会にね!」

 

 じゃ、2投目! とふたたび的を回す。

 田嶋が再び鋭く腕を振るうとその矢は吸い込まれるように的に当たった

 

 

「2桁目は……9! 9だよ!」

 

 ここで多くが脱落。織斑先生、箒、本音、セシリアがふるい落とされ、本音は残念そうな顔をありありと浮かべている。

 

 15人程が3等。商品券かレッスンプログラムを選び、受け取っている横で最後の1本が放たれようとしていた。

 

 

 

「さぁ、泣いても笑っても最後の1本。ここで国内旅行か海外旅行かが決まります。残ってるのは…… おっ、山田先生がまだ残ってますね! 先生も海外行きたいんですか?」

 

「そうですね~。私は国内の温泉がいいですかね。あ、海外が嫌なわけじゃないですよ!?」

 

「まぁ、先生はここ最近忙しかったですしねぇ。他には……、静寐はどう?」

 

「う~ん、正直どっちでもいいかなぁ。デザートフリーパスとかのほうが嬉しかったかも」

 

「ごめんね。それはちょっと食堂のおばちゃんとの兼ね合いで……」

 

 後ろでおばちゃん達がごめんね~、と言っているのが聞こえた

 静寐は小さく笑うと、でも、ここまでくれば何があたっても嬉しいわ。と言った

 

 

「あ、乱入者の生徒会長様。まだ残ってたんですね。図々しい」

 

「酷い言い草ね……。私だってここまで残るとは思わなかったのよ!」

 

「さ、行きましょう。最後の1本」

 

 リアーデがさっきよりも気合を入れて的を回す。田嶋もどこか緊張の色が見えた

 

 

「お願いしますっ!」

 

 小さくテイクバックと取り、フッ、と息を吐くと同時に矢を放った。

 

 

「最後の数字は……。1! Oneです! 当たった方はどうぞ前へ!」

 

 そっとステージ上に上がったのは、なんと山田先生だった。

 

 

「他には居ませんか?」

 

 櫻が呼びかけるも誰もおらず、ステージ上の山田先生に全員の視線が注がれた

 

 

「おめでとうございます! 1等。ファーストクラスで行く、ヨーロッパ20日間の旅は見事、山田先生に送られます! あ、ペア券ですからね!」

 

 未だに実感が無いのか、1等賞、と書かれた水引を手にキョロキョロとしている。

 

 

「では、山田先生。今のお気持ちをお聞かせください」

 

 どこぞのヒーローインタビューが如く、山田先生にマイクを向けると少し上ずった声で「う、嬉しいですっ!」とシンプルに答えたくれた

 

 

「山田先生、ペア券ですが、誰とヨーロッパを回りたいですか?」

 

「そうですね。残念なことに彼氏も居ないので…… 先輩、どうですか?」

 

 少し涙目の山田先生に視線を向けられた千冬は少し照れくさそうに

 

 

「私か? まぁ、いいが……」

 

「ありがとうございます。楽しみにしてますね」

 

「さてさて、付き合いたてのカップル見たくのろけるのは結構ですが、次2等当選者の方々、どうぞ前へ」

 

 

 そうしてステージにぞろぞろと4人ほどが登る。その面々は静寐、ラウラ、楯無、ナギ、そして的回しをしていたリアーデもいつの間にか加わっている

 

 

「さて、ここには温泉のペア券が3組。スキーリゾートのペア券が3組あります。1組余るね……」

 

 ちらりと視線を流すと、歓声が上がった

 

 

「まぁまぁ、そうあせらないで。まずはここにいる4人に、温泉か、スキーか選んでもらいましょう。多かったらだったらじゃんけんね」

 

 そして静寐とラウラが温泉を、楯無とナギ、リアーデがスキーを選んで上手くまとまった。

 

 騒がしいのが更に騒がしいのはここからで、前後賞の発表。

 賞品はなんと、ミステリーツアーである。日程は6日間で、内容を知るのは櫻と田嶋、リアーデとセシリアのみである。企画立案がセシリアであることも記しておく。

 

 

「さて、前後賞。2人に送られるのはミステリーツアー! 6日間でパスポートが必要だよ。えっと、一桁目が4、二桁目が9、三桁目が1だったね。490か492。居ないかな?」

 

 

 そっと手を上げたのは琴乃だった。

 

 櫻がそれを見つけると、手を招いてステージ上に引き上げた。

 

 

「おめでとう! このミステリーツアーは絶対琴乃のためになると思うよ。セシリアとりっちゃんがプランを組んで、私とリアーデで煮詰めたツアーだからね。結構日程がきついけど……。まぁ、詳しくは冬休みに入ったらね」

 

「えっと、よくわからないけど嬉しい? うん、櫻さんがそう言うならきっとそうなんだよね」

 

「まぁ、そういう反応になるわ……。でもまぁ、私としては当たったのがことのでよかったよ。楽しみにしててね」

 

「うん!」

 

 そうして余った景品を壮大なじゃんけん大会で奪い合い、櫛灘が温泉を勝ち取ってほくほく顔で聖ニコラウスの日に託つけた壮大なパーティーは幕を閉じた。


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