Who reached Infinite-Stratos ?   作:卯月ゆう

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学園防衛戦

『全員に通達、敵ISの起動を確認。学園東沖、距離15000。テルミドール、マドカは迎撃準備』

 

 クロエの普段よりずっと冷えた声で全員が気を引き締めた。

 今回の学園防衛は2層しかない。第1層である櫻、マドカ、楯無がどれだけ粘れるかが勝負の鍵といえる。

 

 

「敵のお出ましだね。私が左、マドカは右で」

 

「あいよ。ここで全部落とすぞ」

 

「もちろん」

 

 パン、とハイファイブをして互いにISを展開。櫻はミサイルコンテナを並べながら自身の受けもつポイントに移動。マドカもさっさとポイントに着くとレーザーライフルと荷電粒子砲を展開して早くも迎撃体制を整えた

 

 

『マリー聞こえる?』

 

 コンテナを5個ほど設置し、これからロックオンしようというところで慣れない呼び名で呼びかけられた。

 

 

『スコール。今何処ですか?』

 

『沖合のボート。乗り心地は最悪ね。こっちにはファングクエイクとヘルハウンドの強襲部隊。陸地側からアラクネと人間が15。ボートに対ISマシンガンが付いてるけど、私が黙らせるわ。個人装備に対IS装備は無い。見てわかると思うけど、ボートに合わせて動いてるから先制するなら言ってちょうだい』

 

『分かりました、クロエにもそれを伝えておいてください。先制攻撃はしません。あくまでも専守防衛ですから』

 

『日本人らしいわね。じゃ、IFFの設定だけは忘れないでね』

 

『よし、マドカ。相手の攻撃が来たら容赦しないでおっけー。それまでは一切手を出さないでね』

 

『わあった。しっかし、専守防衛ってのもなぁ……』

 

『仕方ないでしょ? よし、この私の企業連で鍛えた演説テクニックを見よ!』

 

 何故かプライベートでも聞こえたため息を他所に、櫻はオープンチャンネルで呼びかけた。

 

 

『コチラはIS学園です。あなた方はIS運用協定に基づく、他国でのIS使用に関する規約に違反していると同時に、日本国法に定める航行禁止区域に侵入しています。直ちにISを量子化し、航行を停止してください。繰り返します――』

 

 至極真っ当な退去勧告に演説テクニックもクソもないだろう、と思いながらもマドカはハイパーセンサーで迫り来るボートをとらえ続ける。櫻の指示とあらばすぐにでも敵をロックオン出来るように、と

 

 

『再度勧告します。あなた方はIS運用協定に違反しています。これ以上の接近は当学園に対する侵略行為とみなし、防衛権を発動する準備があります。ISを量子化し、航行を停止してください。This is academy of IS. You are ――』

 

 止まらないとわかっているからか、焦る様子もなく、淡々と警告を発する櫻。マドカはこんな時に「英語力すげぇなぁ」とか考えていたが、ひと通り終わるとプライベートで敵機ロックオンの指示を聞きとり、すぐさま先頭のファング・クエイクに照準を合わせた

 

 

『まだだよ。まだ』

 

 たしなめるような櫻の声を聞きながら敵のボートを睨み続けるマドカ、そして、ISが5機、ボートから勢い良く飛び上がった

 痺れを切らしたマドカが吼える

 

 

『櫻!』

 

『まだ、相手が一発でも撃ってきたら億倍返ししていいから』

 

 そして、海から数発の実弾が飛んできたのは数秒後のことだ

 

 

『てぇ!』

 

 着弾を確認し、ミサイルコンテナをオープン。先陣を切ったファング・クエイクはマドカに撃墜されたようだ。

 

 

『マリー、私も撃つわ。当たらないでね』

 

 心優しい(?)スコールの宣言から敵の弾幕が張られ、ミサイルも爆炎のカーテンを広げてそこから敵機が一気に迫り来る。

 

 

『近接戦闘に入るよ! 誰も逃すな!』

 

『応!』

 

 月光を両手に持った櫻と雪片参型をロングリーチで構える2人の元に4機のISが突っ込んできた。

 

 スコールは一番後ろから長めのリーチを持つ物理刀を手にこちらに向かってくる

 

 

『一機!』

 

 まっすぐ突っ込んできたヘル・ハウンドを一機月光で叩き斬ると勢いそのままにスコールのもとに放りやる。上手いことキャッチしてくれたようだ。

 

 

『こっちも取った、次!』

 

 マドカも雪片で同じくヘル・ハウンドを叩き斬ったようだ。だが、ここで2人は焦る。

 

 

『ファング・クエイクが一機居ない!』

 

『クソっ! 抜けられたか』

 

『アレは隊長機よ。失策だったわ。ごめんなさい』

 

『まぁ、仕方ない。ここで4機中3機仕留めたんだからいいだろ』

 

『マドカ、落としたパイロットは?』

 

『あ……』

 

 波打ち際に人が漂っているのを3人は見てしまった。

 

 マドカが瞬時加速ですくい上げ、軽く腹を殴ると息を吹き返した。

 

 

『相変わらず人の扱いが雑ね、M』

 

『うるさい。あと、Mって呼ぶな』

 

『あらあら、テルミドールのところでずいぶんと変わったようね』

 

『言ってろ、雑兵共が乗り込んでくるぞ!』

 

 

 3人は意識を迫り来るボートに向けた

 

 

 

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『千冬さま、敵海上部隊と前衛の交戦を確認、これから防壁を下ろします』

 

『ああ、分かった。頼んだぞ』

 

 オペレーションルームで大量のモニターとズラリと並んだキーボードに一人立ち向かっているのはクロエ。マイクをひったくるように取るとすぅ、と息を吸って声を発した

 

 

『生徒に連絡します。学園に侵入者あり、これより、ケース3レベルの防衛体制に入ります。生徒は最寄りの一般教室、寮室、シェルターに退避してください。繰り返し生徒に連絡します。これより、学園はケース3の防衛体制に入ります。生徒は最寄りの一般教室、寮室、シェルターに退避してください。これより、防壁を下ろします』

 

 監視カメラの映像を見る限り、外に出ている生徒はほとんどおらず、シェルターに向かって走っている姿が見られる。寮の廊下にも人っ子一人居ないし、各学年の廊下にも誰も居ない。整備室も、同様に。

 まるで学園がもぬけの殻のようでクロエは若干の焦りを覚えたが、誰も居ないということは全員が教室ないし、寮の部屋にいるということだ、と解釈して次に備えた

 

 海辺を見れば桃と白の2機が輝く刃を振りかざすのが目に見える。だが、クロエは熱源探知に1機飛び出す機影を発見していた

 

 

『千冬さま。海からの1機が抜けました。そちらに向かっています。それ以外は櫻さまとマドカが』

 

『了解だ。真耶にも伝えておく』

 

『はい。楯無さま。そちらは』

 

『ちょうどいま正門の前ね。放送もあってか警戒してくれてるおかげで予定より少し時間がかかりそうだわ』

 

『オータムと連絡は』

 

『まだよ。ISの反応も無いからまだ展開してないみたい』

 

『了解しました。いま海の方は終わったようです。スコールを向かわせます』

 

『わかったわ。よろしくね』

 

 くるりと椅子を反転させるとキーボードを叩いて地下特別区画のカメラを各種映し出す。

 そこには堂々と廊下を歩く千冬と部屋で何故かステルスマントを被せられた山田先生。そして、階段を跳ぶように降りる本音だ。

 

 ――本音さま……。こんな時くらい少しは気を締めて貰いたいものです……

 

 と、姉のような事を思いつつも再びキーボードを叩いて海辺の3人を見る。すると……

 

 

 

 何故か敵パイロットを亀甲縛りにして転がして作戦会議をする3人の姿があった

 

 

 

『櫻さま、一体何をしているのでしょうか?』

 

『えっ!? み、見てる?』

 

『ええ。はっきりと。ソレは誰の仕業ですか?』

 

『え、え~っと……』

 

 困った表情でスコールを揺すっていることから犯人はスコールのようだ。ここはさっさと指示を出しておこう。と『スコールは寮に、テルミドールは本棟に支援を。マドカはパイロットをここに』と冷えきった声で言っておいた

 

 

『オータムだ。これから尞を制圧しに行く。更識とは話をしてある。聞いてるか?』

 

『いえ、なにも。後で折檻ですかね』

 

『まぁ、今移動中だとさ。大まかには各学年尞に1機ずつISを突っ込ませる。防壁もISの火力ならそんなに持たないだろう。私は1年の寮だ。更識は2年の寮に行った』

 

『分かりました。スコールを3年の寮に向かわせます』

 

『おう。頼んだぞ』

 

 再びキーボードを叩きながらスコールに3年寮に行くように伝えるとちょうど本音から『着いたよ~』と連絡が入った

 

 

「さて、私の戦いはこれからのようですね」

 

 

 

 

 そして、黒いISを纏うとそっと、目を閉じた


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