Who reached Infinite-Stratos ?   作:卯月ゆう

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BRIEFING

「集まりましたね」

 

場所を櫻の部屋に移し、6人にはすこし窮屈な空間で部屋の中央に映しだされた地図を睨んでいた

 

 

「作戦を説明します。本作戦の目的は学園防衛です。敵の目的はおそらく我々の身柄、それと地下特別区画の暮桜と思われます。

 私とマドカと織斑先生で敵ISを誘導、出来るなら処理。本音と山田先生は指定した場所で拠点防衛パッケージを展開。楯無先輩は生身の方をお願いします。クロエが学園のシステム保持と隔壁を用いた敵の誘導を。概要は以上。クロエ、聞こえたね」

 

『はい。大丈夫です。では、私から少し補足を。今のところ敵の具体的な規模は不明です。ですが、追って連絡が入ります。その際は私から全員にプライベートチャンネルで報告。そして楯無さま。今回は相手の生死は問いません。あなたが殺す必要があると思われたなら殺めても結構です。千冬さまにはこの後私がマッスルスーツをお渡しするのでそれを着て頂きます。撃破は目指さず、誘導をお願いします』

 

「おそらく、敵は海上、及び陸上から侵入。まっすぐ本棟に向かうと思われます。

 侵入が確認され次第クロエが一般教室と学生寮の防壁を降ろします。その後、私とマドカで上陸した敵の排除を。千冬さんは本棟で敵を待ち受け、マドカが可能な限りの迎撃を、千冬さんはE-4まで誘導してください。そこで山田先生が撃墜します。抜けられたのは本音が地下で迎撃。本音が突破された際にはクロエが最後の砦に。その際はワンオフアビリティを使っても構いません。楯無先輩は遊撃をお願いします」

 

一気に話し終え、「何か質問は」と聞くと楯無が手を上げた

 

 

「私だけ大雑把すぎない? 遊撃、って一括りに言われても、ねぇ」

 

「先輩はあまりこっちで行動を縛るより、自分の判断で動いてもらったほうが得策かと。本音を言ってしまえば、相手の行動がさっぱりわからないので作戦の建てようがないんですよ」

 

「まぁ、そうね。わかったわ。装備制限はあるのかしら?」

 

「全員装備制限はありません。ただし、先も言ったように使いどころには気をつけてくださいね。一般生徒に被害を出すわけに行きませんから」

 

次に手を上げたのは意外にも山田先生だった

 

 

「侵入が発覚した時点で教員による制圧部隊が組織されると思うんですけど、それは……」

 

「それなら織斑先生がこっちにいる時点で組織に時間がかかることは明白、その上、クロエが防壁を下ろすので外に出ている先生以外は部屋から出られませんので大丈夫です」

 

――邪魔にはなりません。と言いかけて飲み込んだ。さすがに失礼すぎる

その後も淡々とことは進み、途中で(窓から)入ってきたクロエを交えて細かい詰めが進んだ。

 

時計の針が真横を向こうとした時に、クロエにプライベートチャンネルで通信が入った

「スコールからです」とクロエが言うと、櫻の表情が更に締まった

 

暫しの沈黙のあと、クロエがスコールからの情報をそのまま伝える

 

 

「敵の総数は31。ISは6機、ファング・クエイクが2機とヘル・ハウンドが2機、アラクネが2機です。その他は5人の班が5つです。沖合で空挺。その後、ゴムボートで直接上陸する班と、離れたところに上陸し、陸上から侵入する班に分かれているそうです」

 

「大盤振る舞いだね。それにしても6機は辛いなぁ。私とマドカが如何に削れるか、ってとこか」

 

「スコールとオータムは内部に侵入、敵の散開を待って行動を開始とのこと。予定通りです」

 

「おっけ。じゃ、人は楯無先輩とスコールとオータムに任せよう。私達はISの相手に集中。作戦開始時刻は?」

 

「現在東海上およそ500kmとのことなので、約20分ほどかと」

 

「了解。じゃ、私達もはじめましょう。散開!」

 

 

良くも悪くも有名人である櫻の部屋から学園でも目立つ人物がわらわらと出てくる光景はかなりひと目を引いたらしく、結果として「あまり良くないことが起こる」という噂が女子のネットワークで一気に拡散したのは櫻の嬉しい誤算とも言えよう。結果として多くの生徒が早めに寮に戻ったのは後々いいように影響した

 

 

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IS学園本棟。一般教室や職員室はもちろん、その地下には3層15の防御区画に別れ、最深部にはオペレーションルームの他、今は石像と化した千冬の愛機、暮桜が眠っている。

その中の一つで束の手土産であるマッスルスーツに着替えて数本の鞘に入った刀を腰に据える。

 

 

「それと、コレを」

 

クロエに手渡された眼帯とも言えるソレを左目につけると視界にISのハイパーセンサーと似たようなウィンドウが表示された

 

 

「これは?」

 

「ハイパーセンサーを簡略化したものです。ハイパーセンサーと全く同じ、とはいえませんが、殆どの機能は使えます。それでコア・ネットワークにも介入できるので音声通話位なら問題なく出来るはずです」

 

『なるほどな。どうだ?』

 

『感度良好です。問題ありません』

 

「わかった。それで、この刀にも仕掛けがあるんだろう?」

 

「刀には爆薬が仕込んであります。起動キーは『木っ端微塵』です。それと、手にも炸裂装甲が仕込んであるので、ISの斬撃や正拳なら一度は防げます。反動はありますが」

 

「なるほど。要は刀で落とせ、炸裂装甲で逃げろ、と」

 

「そこは千冬さまにおまかせします」

 

その背後で一際大きな駆動音を響かせるのはラファールを纏った山田先生。その腰部には対IS用の大口径ガトリングガンが4門装備され、その後ろには補助脚が備わっている。

これこそがラファール、拠点防衛パッケージ『クアッド・ファランクス』

 

 

「こっちもパッケージインストール終わりました。システムオールグリーンです」

 

「よし、では、行こうか」

 

「「はい」」

 

長い黒髪を結ながら2人に呼びかけた千冬はその刀を握る手に力を込め、部屋の扉を開いた

 

 

 

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『相手の中にスコールとオータムが混ざってます。IFFには気をつけてください』

 

「わかってるわ。それに、しばらく私の仕事はなさそうだしね」

 

『それと、スコールとオータムには人殺しが出来ません。覚えておいてください』

 

「どういう意味?」

 

『言葉通りです。言い方を変えれば、殺傷兵器は使えない、ということですかね』

 

 

第1アリーナ近くのベンチに腰掛けて櫻と言葉を交わす楯無。その表情は普段の人たらしのそれでは無く、更識家当主のそれだった。

学園の生徒達の長として、なんとしてでもこの学園は守りぬく。その想いが彼女を動かしていた

 

 

「それって、生身の人間相手には無力も同然じゃない。ゴム弾を使ってもISなら人を殺せるわよ?」

 

『ええ。だから彼女達には空間制圧系の武器しか使用許諾を下ろしていません。ガスとかですかね』

 

「屋外では無力ね……。どう使えばいいのやら」

 

『腐っても元テロリスト、亡国機業がトップですよ? ISを使わずに制圧とかやってくれるんじゃないですかね?』

 

「やってくれるんじゃないですかね。って無責任な……。わかったわ。ほとんど1人で片付けるつもりで行く」

 

『おっと、ハイパーセンサーに輸送機を捕らえました。距離2万。パラシュート開いてますね』

 

「30分かからないくらいかしら。ISは?」

 

『まだ見えません。では、ご武運を』

 

「あなたもね」

 

空を見上げれば満点の星。山奥ほど綺麗に見えるわけでは無いが、都心部に比べれば幾分瞬きの数は多いように思える。

冬も近づき、寒さが身にしみる中でこれから起こることを考え、身を締める

 

 

「流れ星?」

 

1つ、鋭い光が天蓋を横切れば2つ3つと次々と光が夜空を彩っていく。

何時か妹と共に流星群を眺めた記憶に想いを馳せたのもつかの間、自分の頬をはたくと短く息を吐いて天に手を伸ばした

 

 

「待ってなさい。絶対追いついてやるから」

 

その指の先には一際目立つ星と、それに連なる6つの星が輝いていた

 

 

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「にしても寒いなぁ」

 

短いスカートと、広がった袖のいかにも寒そうな制服のマドカが腕をさすりながらぼやく

 

 

「もっとまともなデザインにしておけばよかったんだよ」

 

それに対する櫻はタイツとタイトスカート。上着は普通のジャケットスタイルで寒いは寒いだろうが、マドカよりずっとまともな格好をしていた

 

 

「敵さんはどうよ」

 

「ボートで移動中。あそこは航行禁止区域なんだけどなぁ」

 

「だから選んだんだろうよ。ISもまだか」

 

「だね。展開してるならスコールがなにか言ってくるだろうし」

 

「まさかスコールとオータムもあのボートとか言わないよな」

 

「無いでしょ。わざわざ空を飛べる人間を突き落とす理由が無いもん」

 

「そうか? レーダーにかからないため、とかありそうだけどな」

 

「たかが20kmじゃレーダーに掛かっても迎撃出来ないよ。でも、そっか。ありえるかもね。それ」

 

「自分で迎撃できない、って言ったくせにか?」

 

「普通は、ね。でも今は私達が居るから5秒で支度できる。それでも一瞬で迫り来るISは脅威だけど、迎撃の可能性は通常時より飛躍的に高い」

 

「それを警戒してわざとあんなまどろっこしいことを、ってわけか」

 

うんうん、と頷いて地面に寝転がる櫻。視界には雲ひとつない夜空が広がる。

 

 

「冬の夜空はいいねぇ」

 

「星か。いつもあるのにちゃんと見たことは無かったな」

 

「そんなもんだよ。普遍は埋もれるからね。その中に特別な何かを見出すのが人間っていきものだと思うよ」

 

「お! 流れ星!」

 

「しし座流星群かな。今日だったんだ」

 

次々と天蓋を横切って行く星々に目を奪われるが、レーダー警報音で意識を再び戻させられる。

 

 

「流星群もいいけど、敵ISの起動を確認。来るよ」

 

「ギリギリまで引きつけて」

 

「叩き斬る」

 

隣のマドカと拳をぶつけ、空に光る星を睨んだ。

 

 

――絶対に負けない。ポラリスの名の下に


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