Who reached Infinite-Stratos ?   作:卯月ゆう

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まどかに

 ポラリスの2人が編入試験を終えた翌日、2人にとっては転入初日に当たる日はやはり浮ついた空気が流れていた。

 2人はSHRを前に教室の前で織斑先生に入室を促されるのを待っている

 

 

「さ、櫻……?」

 

「どしたのワサワs……じゃなくて、どうしたの?」

 

「いやぁ、なんか緊張しちゃって、ね」

 

「マドカって普通に学校行ったことないんだっけ?」

 

「まぁ、そうかな。気がついたら彼処にいたし……」

 

「ま、ここは基本的にはいい人揃いだからなんとかなると思うよ。一夏くんとその周りはどうかわからないけど……」

 

「だよなぁ……。結局あいつらに説明がなされないままに私は櫻を殺したヤツって印象を与えて終わってる気がするんだけど」

 

「ま、そんときはフォローしたげる」

 

 話を聞いていたかいなかったか、扉を開けて千冬が入室を促した。

 

 

「というわけで設立されたばかりのポラリスから2名、受け入れることになった。自己紹介を」

 

 クラスメイトの大半は櫻に視線を向け、一夏とその周辺の専用機持ちはマドカに視線を向けていた。

 色んな意味で注目度抜群だ

 

 まずは櫻が一歩前に出て一礼してから言葉を紡いだ

 

 

「みなさん、お久しぶりです。といったほうがいいでしょうか。櫻・天草・フュルステンベルク改め、キルシュ・テルミドールです。私が死んでから1ヶ月と半分くらい経ちましたが、この通り、あの世から帰ってきました。肺機能が下がったのは本当で、いまは身体の1/4をナノマシンで補っています。その副作用で髪の色も落ちて、眼の色も変わってしまいました。ですが、今までどおり、皆さんと仲良くできたらと思います。束お姉ちゃんの下にいるキルシュではなく、みなさんの記憶にある櫻として接してもらえたら嬉しいです」

 

「さ、櫻! 櫻が帰ってきた!」

 

 誰かが口を開けば黄色い歓声とまでは行かなくても「おかえり!」や「生きてたんだね」などと声が聴こえる。泣いてる子も何人か。本音の言っていたことは本当らしい。

 

 

「本音、約束通り、帰ってきたよ」

 

「うん。待ってた。待ってたんだよぉ……」

 

 泣きそうになった本音を櫻が抱きとめて優しく撫でる。黒板の前の教員2人とマドカはどうしたものか、と言った顔だ

 

 

「櫻、クラスを感動の渦に巻き込むのは結構だが、もう一人いるんだ……」

 

「すみません。ここまでみんなに愛されてるとは……」

 

 アハハぁ、と乾いた笑いを浮かべる櫻に千冬も呆れ顔だ

 そしてマドカに行け、と促すとおずおずと自己紹介を始めた

 

 

「えっと。織斑マドカです……」

 

 クラスの視線がマドカに集まる。今までさんざん余裕かまして専用機持ちをいたぶってきたMは何処へやら、視線に射抜かれガチガチになったマドカが棒立ちになっている

 

 

「えーっとぉ……以上です!」

 

 

 ズガッ! と音を立ててクラスの大半が崩れ落ちた。

 

 

「自己紹介も満足に出来んのか……」

 

「だってぇ! こんなの初めてなんだもん!」

 

「泣き事言うな!」

 

 必殺、出席簿アタックが炸裂、スパァン! といい音を立ててマドカの頭に直撃した

 

 ――どこかでみた流れですわ……

 

 ――あれ、なんだろうこの既視感……

 

 

「えっとぉ、織斑マドカです。趣味はISに乗ること、特技はISに乗ること、好きなものはISと姉さん。えっと、他には……」

 

「いうことを選ばんか馬鹿者!」

 

 スパァン! と本日2度めの出席簿アタック。マドカはその場でダウンだ。

 

 

「もういい。ほら、専用機持ち共、そう睨むな。今は首輪付きだ、下手な真似は起こさんだろう」

 

 さっきからずっとマドカを睨み続けるセシリア達を千冬がなだめると、一夏が神妙な顔で尋ねた。

 

「千冬姉、あとで説明してくれるよな」

 

「そうだな。放課後に来い。オルコット、ウォルコット、篠ノ之。それから凰と更識も呼んでこい」

 

「それは私達も同席しろ、ってことですかね?」

 

「そうだな。そのほうが手間も省ける」

 

「ん~、だとお姉ちゃんも居てくれたほうが……でもいろいろあるし……」

 

「束はいい、面倒だ」

 

「聞き捨てならないよ! ちーちゃん!」

 

 窓にへばりつく天災を一目見ると、織斑先生は何事もなかったかのように「よし、1限目、IS運用論始めるぞ」と普通に授業を始めた

 

 

「スルーなんて酷い!」

 

 窓をこじ開け侵入、もとい乱入してきた束にクラスはもう驚きを通り越して白けている

 

 

「うるさい。ただでさえお前らのお陰で面倒が増えたというのにこれ以上問題を持ち込むな! 話なら放課後に来い!」

 

「ちぇぇ~っ」

 

 ツマンないのぉ、と言いたげな顔をして普通に空席に腰を下ろすと教科書とノート、筆記用具をポケットから取り出した。

 

 

「おい、なぜ当然のごとく授業を受けようとする」

 

「えぇ~いいじゃん、別に邪魔するわけじゃないしぃ~」

 

 そういう束はいつの間にかIS学園の制服を身にまとっている。年頃の女の子とは圧倒的に差があるのは致し方ない(何がとは言わない)

 

 

「はぁ……。もうどうにでもなれ」

 

 千冬の胃にダメージを与えつつも、櫻達に平穏な日常が戻ってきた

 

 

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 時は流れて昼休み、束と櫻とマドカ、そして本音のポラリス組は学食で昼食を取っていた

 やはり時の人となってしまっただけあって注目度は抜群、一夏以上のパンダっぷりだ。

 

 

「いやぁ、目立ってるねぇ」

 

「今じゃ時の人だもんね~」

 

「視線恐い視線恐い視線恐い……」

 

 マドカは自己紹介で何かのトラウマを植え付けられてしまったようだ……

 

 

「相席いいかしら~?」

 

 周りが躊躇して空いている隣に堂々と陣取るのは生徒会長殿と会計様。そして簪。

 

 

「久し振りだね~。元気にしてた?」

 

「ええ、おかげさまで。まさかこんなことになるとは思いませんでしたよ、博士」

 

「コレも何も全部愚かな人類の所為さ。せっかく翼を与えたのに。だから矯正してあげるんだよ」

 

「やっぱり博士らしいですね……。櫻ちゃん、今はキルシュちゃん、かしら? 生きていたようね」

 

「生きてたらマズイことでもありましたか?」

 

「まぁ、特にないけど――簪ちゃんが超心配してたなんて言えない……」

 

「心の声が聞こえた気がしたけど気にしないであげますね。久しぶり、簪ちゃん」

 

「櫻、だよね?」

 

「髪のと瞳の色以外の見た目は変わってないはずだよ。遺伝子的にも私は天草櫻なはずだけど」

 

「生きてた……、本当に……」

 

 そのまま櫻に泣きつく簪を先程の本音のように撫でると「簪ちゃんを泣かせた罪は重いわよ?」と物騒なつぶやきをする楯無と目があった。

 

 

「おじょうさまに隠し続けるのは大変だったよ~」

 

「のほほんちゃんは頑張ったね。束さん褒めちゃう!」

 

 本音の頭をワシャワシャと撫で回す束を他所に楯無が真面目なトーンで聞いてきた

 

 

「それで、あなた達、本当は何をしたいの?」

 

「ただ、ISをあるべき姿に。それだけですよ。人類が裏切らなければ」

 

「それで空に要塞を飛ばしてるわけね……」

 

「そんな物騒な言い方しないでくださいよ。アレは私達の本部ですよ?」

 

「本部だからこそ要塞化するものでしょ……」

 

「いやだなぁ、私達の即応戦力は私とマドカの2人だけですよ?」

 

「自衛のための戦力を持たないわけがないわ。それに"即応"でない戦力もいるでしょうし」

 

 さすがに痛いところをどんどんついてくる。確かに、突発的事象に対応できるのは櫻、マドカの2人のみだが、即応性がない戦力には最強の布陣を揃えている。束、クロエ、そして数百体ものゴーレム。

 さらに言えば情報戦など、裏での戦いに挑む戦力にも企業連始め、多くの役者がいる

 

 

「まぁ、その即応しない戦力に更識を加えたい、というのが本音だったりしますが……」

 

「お仕事は誰からも分け隔てなく受けるわよ。ただ、何処にも肩入れしない。それが基本スタンスね。それだけはわかって頂戴」

 

「まぁ、お仕事を断られなかっただけ良しとしましょう。さ、早くしないと休み時間が終わりますよ」

 

 隣でぱんぱかぱーん! と本音におみやげのISをサラリと渡す束を視界の片隅に捉えながら、懐かしい学食の味を楽しんだ。

 

 

 

「視線恐い視線恐い視線恐い視線恐い視線恐い……」

 

「マドカ、行くよ」

 

「さ、櫻ぁ!」

 

 午後はお楽しみの実技だ


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