Who reached Infinite-Stratos ? 作:卯月ゆう
そして、委員会の決定から数日、IS学園の第1アリーナに桜と白の2機は居た。
目的はもちろんIS学園編入のための実技試験。筆記はもちろん二人共満点でパスし、実技も問題無いだろうが形式的にやらねばならない。
相手はリヴァイブを纏った山田先生。1組への編入で間違いなさそうだ
「それでは両者カウント後に試験を開始します」
お仕事な声でコントロールタワーから見守るのは織斑先生だ。さらに客席には多くの生徒に混じって理事長や轡木十蔵の姿も見える。そして、最前列には本音と簪の姿もあった。
簪は事情を知らないはずだから、恐らくは本音に連れて来られたのだろう。
何人かの生徒が訝しげな表情で夢見草を見ていたが、気のせいだと信じたい。
軽く本音に手を振ってから臨戦態勢に移る。
まずはコア25%開放で機体の慣らしを兼ねて避けて回る。そこから60%まで開放。先生であろうと一気に叩きのめす。
『試験官を担当します。山田真耶です、よろしくお願いしますね』
「キルシュ・テルミドールです。こちらこそ、よろしくお願いします」
『本当ならもう入学どころか先生をしていただきたい程なんですけど、そうは行かないみたいで。すみません……』
「いえ、こちらも無理を言って編入させて頂く身。こうして試験を受けられるだけ幸せです」
『そうですか? ずいぶんと慎み深い方ですね。では、行きますよ』
そうしてカウントダウン。
5...
4...
3...
2...
1...
0...
ゼロカウントまで何も展開せず、突っ込むと同時にその手に武装を展開。ラファールにはノーマルなマシンガンが2丁、夢見草は何も展開せず互いに空中戦へと突入する
マシンガンの弾幕を目で追えないほどの軌道を描いて避ける光景に見ている生徒たちも息を呑む。
傍から見ればただ単に逃げ続けるだけの展開だが、その逃げっぷりが尋常でないのだ。
時に瞬時加速で視界から消え、時にPICを切って真下に墜ちる。
空中戦のセオリーからかけ離れた戦い方にコントロールタワーから見下ろす千冬も唸っていた。
『普通に合格点なんですけど、織斑先生が……』
「叩き落せ、ですか? ブリュンヒルデも残酷ですね」
『ごめんなさい!』
謝りながらマシンガンをハイレートの小口径なものに切り変え、弾幕の密度をあげる。
さすがに幾つか当たるが、ダメージは微々たるものだ。
「では、こちらからも参ります」
櫻は夢見草のコアリミッターを6割まで開放、展開装甲を駆動させ、攻撃と高機動に特化させる。
その手には
クイックターンでラファールに正対すると、弾幕を物ともせず、桜色の閃光がアリーナの端から端まで駆け抜け、一瞬でラファールのシールドエネルギーを削りきった。
「ラファール、山田真耶、エネルギーロスト。10分後に次の試験を行います」
『お疲れ様でした。実技はバッチリですね』
「すみません、先生」
『いえ、大人気ないのはこっちですから……』
「次も先生が?」
『いえ、次の娘は織斑先生が担当します。さすがに篠ノ之博士に従くレベルの娘を2人連続で相手するのは辛いですから……』
「そうですか。では、これからお世話になります。まやや」
『ふぇっ? どうしてそれをっ!?』
「まぁ、直接お会いすればわかりますよ」
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ピットに戻り、待っていたマドカに次の試験官は千冬だと伝えると本人のやる気は120%の上昇を見せたようで「最初から本気出す」と意気込んでいた
「まぁ、いくら千冬さんとは言え、打鉄だろうし、やり過ぎちゃ駄目だよ?」
「わかってるさ。それに、この機体をみた姉さんの感想も聞きたいしな」
「ホント、お姉ちゃんと私が本気出して作った白騎士のコピー。こりゃ一夏くんがキレるね」
「あんな雑魚、捻り潰して黙れせればいいだけだ」
「相変わらず一夏くんには冷たいね……」
「アイツのことは一生恨んでやるからな」
「はぁ……」
『試験開始1分前です。試験官と受験生はアリーナに入ってください』
山田先生の声でマドカのスイッチが入る。
「よし、行ってくる」
「うん。実戦経験値もたまるし、姉妹の仲も深まる。いいコトずくめだね」
「ああ。こんなに興奮しているのは白騎士を初めて纏った時以来だな」
「そんなんで自爆して失格とか笑えないからね」
ふふっ、んなわけあるか。と言ってマドカは飛び出していった
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『試験官を務める織斑だ。会いたかったぞ、マドカ』
「やっとこうしてまともに話せる、それだけで嬉しいよ。姉さん」
この会話はオープンチャンネルで話されているために会場内に丸聞こえなわけだが、 どこかの誰か黛薫子は慌てて駆け出して行ったり、 どこかの誰かは織斑一夏は闘志をむき出しにしてそばに居た
さっき以上にスタンドは湧いていた
「それで、姉さん。まさかISなしで拳で語れ、なんて言わないよな」
『もちろん。だが、久しぶりの再会だ、お前とも、白騎士ともな。ただの打鉄で相手するのは申し訳が立たないだろう?』
「まさか……」
『そのまさか、とは行かないが、束が私にいいアイデアをくれてな。専用機を新規に作るのはマズイからと学園の打鉄を改造したんだが、どうだ、なかなかいいだろう?』
千冬が展開したのは打鉄。だが、白騎士と同じようにその機体も白かった。
手に持つのはブレード一本のみ。背中に桜色のウイングスラスターが装備され、装甲をギリギリまで削った高機動近接戦特化仕様。
『白金、とでも言おうか? これでも不十分だが、コレはあくまでも試験だ。お前がまともにISを動かせればそれでいい』
「姉さんの"まとも"は何処からがまともなんだか」
『さあな。では、手合わせ願おうか』
マドカも千冬に合わせて
「織斑マドカ、白騎士。参る!」
『いつでも来い』
カウントもクソもなく唐突に始まった
見えるのは白と青の閃光と、時折刃が合わさる火花のみ。
『うん、筋はいいな。さすが我が妹だ。だが、甘いっ!』
わざと一撃を受け、振り抜かせた後、その首筋にブレードが叩きつけられる。
肉を斬らせて骨を断つを見事にやってのけた千冬。その証拠に今の一撃だけで白騎士のシールドエネルギーは半分以上削られていた。
「さすが姉さんだ。でも、私だって!」
すかさず斬り上げ、一旦距離を置く。そして肩のウイングスラスターにエネルギーを充填。一斉に放つ
そして、そのエネルギー弾の影から本人も飛び出した
「コレで終わりだぁぁぁっ!」
『ふむ、お前も一夏もバカ正直なところはそっくりだな』
千冬はただ、ブレードを真横に向けて両手で持っていただけ、そこに白騎士が突っ込んでいったのだ。まるで、そこに行くのがわかっていたかのように。
もちろん、ブースター全開で突っ込んでいっただけにその運動エネルギーははかりしれず、それがすべて自分に帰ってきたのだから結果は……
「受験者織斑マドカ、白騎士、エネルギーロスト。以上を持って試験を終了します。受験者は30分後に職員室横、会議室まで来るように」
「姉さんにはやっぱり敵わないか……」
『ふっ、妹が姉に勝とうなど10年早いわ。だが、結構焦る場面もあったな。少なくとも学園の中ではトップクラスで間違いないな』
「褒められてるのか、けなされてるのか……」
『今は褒められてると思っておけ。さ、細かい事務が待ってる。戻れ』
「はいはい……」
新しい武装を生成しました、というメッセージを画面の片隅に見ながら、マドカは緩んだ頬を引き締めてピットへ戻った。