Who reached Infinite-Stratos ?   作:卯月ゆう

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突然の来訪者

 ゴールラインを通過した一筋の閃光。

 4人は真っ先に空を見上げ、一度見たシルエットを見つけた

 

 

「来たね、亡国機業(ファントムタスク)ッ!」

 

『あの時の借りは返させていただきますわっ!』

 

 シールドエネルギーが残り3割から4割ほどしか残らないシャルロット、ラウラ、セシリアと、レッドゾーンギリギリで耐えている櫻。戦力差はなんとも言いがたい。

 スタンドでは客の避難が始まっているようでもう1/3程は空席になっていた。

 

 

「本音! いるっ?」

 

 ピットを呼び出す。本音が居てくれれば3機で時間稼ぎをしている間にエネルギーを回復、そして追い返すくらいは出来るはずだ。

 最悪、公衆の面前で夢見草を展開するハメになる

 

 

『さくさく! 大丈夫?』

 

「なんとかね。エネルギーが無いから回復の準備だけしてくれる?」

 

『あいあい! マム!』

 

 

「聞いてたね! 3人共! 5分稼いで!」

 

『難しいこと言うね。まぁ、頑張るよ!』

 

『いいえ、ここは私が参りますわ!』

 

 そしてセシリアが飛び出した。スターライトを乱射しながら距離を詰めて行く。

 

 

『ふん、貴様になど興味はない。消えろ』

 

『そうは行かなくてよ? ここは私、セシリア・オルコットの相手を無理にでもしていただきますわ!』

 

『邪魔するか。ならば力ずくで片付けるまでだ』

 

 そうして英国製BT実験機対、実証機の戦闘が始まってしまった。櫻は慌ててシャルロットとラウラに地上からの支援を命令するも、上空の2人があまりにも不規則かつ早過ぎる為に援護射撃も出来ずに居た。

 お陰で櫻はピットに飛び込みエネルギーを急速充填、3分で残り6割まで回復させた。そしてノブレスオブリージュを再展開、パッケージはBFFの4脚、068FH 両手には実弾スナイパーライフルを構えた。

 

 

「ありがとね、本音。じゃ、あとは私達でなんとかするから、とりあえずアリーナから退避ね」

 

「わかったよ。ちゃんと戻ってきてね。この前の返事、したいから」

 

「そう。約束する」

 

 そう言って4脚の大柄な機体は見た目に似合わずふわりと浮き上がるとアリーナの中央に陣取った。

 ピットの隔壁がおりる向こうで、本音が『頑張ってね』と言った気がした

 

 

「よし、セシリアが惹きつけてる間にこっちも再編成。あとから来た4人はシールドエネルギーどれくらい残ってる?」

 

『総じて半分あるかないか、特に織斑君の損害は著しい』

 

『だな。俺は残り3割無いな。イエローギリギリだ。零落白夜も一回使えるかだな』

 

「箒、絢爛舞踏の発動は出来る?」

 

『すまない。あれから練習はしているのだが……』

 

「そっか。仕方ないね。今から臨時的に再編成します。織斑、篠ノ之は私達の後ろでレーダー索敵。ウォルコット、更識、凰はアタッカー。ボーデヴィッヒと私が後ろを持つよ。いいね?」

 

『『『『『『『了解!』』』』』』』

 

 櫻の指示で一斉に散開。櫻とラウラがアリーナの屋根で長物を構える。

 一夏と箒は高度を取りレーダー索敵。シャルロットと簪は2人が舞う市街地上空へと向かった

 

 

 

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 市街地上空へと戦闘の場所を移したサイレントゼフィルスとブルーティアーズ。

 緻密な射撃戦はいつの間にか近距離の格闘戦へと変わり、互いに刃をぶつけあっている。

 

 

 ――くっ! このままでは……っ!

 

 明らかに押され気味のセシリア。サイレントゼフィルスの操縦者は無言で正確無比な斬撃を繰り返すのみ。

 ガン! ガキッ! 

 

 ただの物理刀が何度と無くぶつかり、刃型身が削れるようにセシリアの精神力もまた削れていた

 時折放たれる支援射撃もフレンドリー・ファイアを避けるために遠くを通り過ぎるのみ。

 

 

『セシリア!』

 

『アンタ! 格闘戦下手なんだから代わりなさいよ!』

 

 オープンチャンネルで聞き慣れた友の声が聴こえる。だが、それに返す余裕すら今の彼女にはなかったのだろう。

 

 ガキンッ!

 

 大きな衝撃が加わり、インターセプターが根本からへし折れる。驚愕の色はただの隙にしかならなかった。

 

 

『コレで終わりだな』

 

 ビットによる一斉放火を浴び、残り少なかったシールドエネルギーが一気にデッドまで削られる。ギリギリで機体は姿を保っているものの、セシリアの体がついてこない。だが、気力のみで最後の一撃。高機動パッケージでは禁忌とされる"砲撃"

 

 ――ブルーティアーズ フルバースト

 

 最後の一撃と言わんばかりに放った一撃は、サイレントゼフィルスの斜め上を通り過ぎて行くのみだった

 

『セシリアァァァ!』

 

 シャルロットの叫びも虚しく、セシリアがサイレントゼフィルスの持つブレードに貫かれる。

 

 

「バーン」

 

 指で作った鉄砲。放たれた弾丸は重かった(思かった)

 

 

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「セシリアァァァ!!」

 

 

 目の前で同郷の友が貫かれた。デッドゾーンまで達したエネルギーではあの攻撃を防ぎ切れなかったということか。

 

 ただ、しっかりと見えたのは、震える右手が、想いを放つ瞬間のみだった

 

 

『んなっ!?』

 

 サイレントゼフィルスの搭乗者が驚きの声をあげる。

 機体を見れば背部ブースターから煙が上がっているのがわかる。だが今はセシリアを!

 

 重力に従い落下する少女を拾い上げると頭上では鈴がサイレントゼフィルスとやりあっている。

 美味いこと空域に縛り付けている

 

 

『いまだ、一夏』

 

 冷たい櫻の声は、その後の暑さと対比だったのかもしれない

 

 

 天空から舞い降りる白の翼。青い光を引き連れたソレは、サイレントゼフィルスに向かって光の刃を振り下ろした

 

 

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 ギリギリで体を捻られ、ライフルとビットが一機。ソレ以外はダメージを与えられずに一夏の役目は終わった。勢いそのままこちらに向かってくるのが解る。

 

 

「ラウラ。確実にブースターとビットをね」

 

『ああ、わかってるさ』

 

 そして重低音を伴って重量級の弾丸がサイレントゼフィルスを襲った。

 案の定最小限の動きで躱される。だが、狙い通り。エネルギーを纏った弾丸は通り道にあった装甲を少し道連れにどこかに消え去った。

 

 次弾装塡、射撃に入ろうとした瞬間、サイレントゼフィルスはそのまま高度を取り、空域を離脱した。

 

 

『逃げられたか』

 

「みたいだね。またかぁ」

 

『あの操縦者はかなりの技術を持っているな。それこそ、代表候補生か、国家代表と同レベルのな』

 

「だね。私が本気出しても同等かそれ以上だしね。4人掛かりで同等。か」

 

『その機体で本気出して同等、だろう? 以前聞いたISコアの6割を開放した機体ならどうなるかわからん』

 

「覚えてた? まぁ、アレなら。ねぇ」

 

『なんだ、含みを持たせて。いつ何時あの手の者が来るかわからないんだ、そろそろ見せてもいいんじゃないか?』

 

「駄目だよ。アレはまだこの世界には早過ぎる」

 

『そう、か。私はそこそこお前の事を理解したつもりでいたんだが、やはり私の理解を超えた場所にいるんだな』

 

 ラウラの声はどこか悲しそうに聞こえた。

 櫻はその言葉に、少なからずショックを受けた。やはり自分の選択は間違いだったのかな、と

 

 

「ごめんね。ラウラ」

 

『謝ることじゃない。私達凡人が天才を理解できるはずがないのだ。凡人に理解できるのは凡人の部分のみ。そういうことだ。だから私は友人としての櫻を理解できても、経営者、開発者としての櫻は理解できん』

 

「そっか。私もラウラの全部を知ってるわけじゃない。幾ら世間が天才だなんだと言おうと、私にも人の心はわからないもん。じゃあ、終わりにしよう」

 

『ああ。帰ろう。帰ればまた来れるから。な』

 

「ちょっと違うかなぁ……。まぁいいや。全機に告ぐ。第6アリーナに集合。シャルロットはセシリアをそのまま医務室へ」

 

『わかったよ。セシリアは腕を刺されたみたいだ。傷口は埋まりつつあるけど、失血もあったからね』

 

「できるだけ急いでね。他に負傷者は?」

 

 全員が問題ない、と答えたのを聞き取ると「うん、これ以上の被害が無くてよかった」と言ってアリーナの中央でISを量子化した

 

 

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「よし、揃ったね。セシリアは?」

 

「ちょっと失血で気を失っただけだってさ。数時間もすれば目を覚ますって」

 

 その言葉にほっと、胸を撫で下ろす。だが、また気を引き締め次の言葉に続ける

 

 

「先生として少しお説教ね。今回のコレは非常時の行動としては不適切。一応君たちは私達の生徒なんだから切り込んでいったら駄目だよ。あくまでも自衛に回ること。今回みたいに市街地へ飛び出して被害をだしたらシャレにならないからね。織斑先生へは私が言い訳して情状酌量の余地を探るけど、駄目だったらちゃんと反省。イベントもまたオジャンだし、どうするかな~」

 

 何か報告は? と促して、誰も何も言わないことを見届けると「じゃ、各自部屋に戻ろっか。疲れたでしょ? あ、ちゃんとISをいたわってあげてね。ダメージ云々じゃなくて、相棒をいたわるようにね」と言って自室へ足を向けた

 

 

 

 

 

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 部屋に戻ってシャワーを浴びもせずに部屋着に着替え、ベッドに座る本音の向かいに腰を下ろす

 

 

 

「ちゃんと戻ってきたよ。答えを聞こう」

 

「うん。私は、さくさく。いや、櫻・フュルステンベルクについていくよ。ちゃんとお姉ちゃんにも言ったし、かんちゃんもさくさくなら、って言ってくれた。おじょうさまはなんとも言えない顔をしてたけどね」

 

「そうか。その言葉を待ってたよ。私達と、本当の空を見に行こう」

 

 歳不相応な貫禄ある櫻に若干の戸惑いを覚えながら、本音はいつになく真面目に聞いた

 

 

「それで、さくさくは何で私を仲間に入れてくれたの?」

 

「本音は優秀な技術者だからね。それに、特に面倒な背景がない」

 

「でも、布仏は更識と切っても切れない縁だよ?」

 

「更識は私達もお世話になるかもしれないし、縁は切れないほうがありがたいんだよ」

 

「そうなの~? まぁ難しいことはわかんないからいいや。私はさくさくのところでISのお仕事をすればいいんだね?」

 

「そうだね。調整整備はもちろん、製作もできるようになってもらう。まぁ、それは追々ね」

 

「それって、さくさくや束さんと並べって言ってる?」

 

「技術水準は、ね。本音の性格は純粋だから駄目だよ、こんなになったら。ただ、技術を磨いてくれればいい。万が一離れ離れになったときも、その技術で生きていけるからね」

 

「さくさくって、まさか世界と戦争しようとかって思ってる?」

 

「そんなわけないじゃん。466のISを相手に1人で戦うのはさすがに無理だよ。私達の武器は技術と交渉術」

 

「はぅ……。さくさくなら『別にいいよ~』とか言いそうだったからヒヤヒヤしたよ~」

 

「私だってそんな馬鹿じゃないしね。楯無先輩なんか勝てる気がしないもん」

 

「おじょうさまはねぇ……」

 

「じゃ、これからのこと、少しお勉強しておいてね」

 

 櫻は本音に携帯端末とメモリーを渡すとシャワーへ直行した


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