Who reached Infinite-Stratos ?   作:卯月ゆう

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高機動パッケージ? なにそれ?おいしいの?

IS学園の学食、いつもどおりに盛り上がる専用機持ちたちを横目に、牛丼を胃に押し込み、お茶を一口飲んでほっ、と息を吐いたのは櫻、簪、本音の3人だ。

 

 

「さて、文化祭の余韻に浸る間もなく次のイベント、キャノンボールファスト。打鉄弐式には高機動パッケージとか来てるの?」

 

「それが、案の定……ねぇ」

 

「あぁ……やっぱり? じゃ、ぎりぎりまで軽量化してから増設ブースターで対応だね。打鉄弐式は素の機動力は高い方だから極端にぶっ飛んだいじり方しない限りはバランスも崩れないだろうしね」

 

「それで、さくさくはどうするの?」

 

「もちろん、企業連が誇る変態集団、アスピナ機関からキャノンボールファスト専用と言っても過言ではない超高機動パッケージが来てるよ。その名も、VZ-Sobrero」

 

「そ、ソブレロ……。逆流……?」

 

 

おい、簪、目を輝かせるな

 

 

「先に行っておくけど、簪ちゃんの期待してるような姿はしてないからね? 穴なんかじゃないからね?」

 

「えぇ~、残念だなぁ」

 

「極普通の紙装甲高機動のISだよ。そこに秘密兵器ものっけちゃうからぶっちぎりで一位は間違いないね」

 

「それって普通なの~?」

 

「櫻さんの普通は私達の驚愕、もうなれたよ」

 

「じゃ、明日はその調整。と行きたいところですが、ちょっとお買い物に行こうと思います」

 

「突然どうしたの?」

 

「いやぁ、手持ちのPCがイカれちゃってさ。電器屋さんでパーツ買いたいんだ」

 

「なるほど。付き合うよ。そろそろ新しいの組みたいし」

 

「私も~。デラックスパフェはまだお支払い頂いてませんぜ、姉御」

 

「うっ……。と、とりあえず打鉄弐式の高機動向けセッティングを始めようか。そのために早飯食いをしたんだし」

 

謎のやりとりをする2人に疑問を覚える簪含め、3人は整備室に向かった。

 

もちろん、こんな時間に整備室が使えるのも、整備科教諭、天草櫻のおかげである

 

 

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純国産を謳いつつ、櫻が手を貸したことにより若干のオーメル臭が漂ってきた打鉄弐式。今回も開発元の倉持技研の支援が受けられないとあり、オーメル社製の小型ブースターをスラスターとして6機追加した。

 

 

「とりあえず、山嵐は降ろして追加ブースターを付けたよ。でも基本的にそいつらは向きを変えるためのスラスターの役割だから推進力自体は余り増えてない。だから、メインに山嵐のエネルギーを振ってスペックだけなら白式についていけるようにしてみたよ。実稼働は明後日以降だけど、どんな感じ?」

 

「違和感は無いね。ちょっとスラスターが増えた分制御が難しいけど、補助もあるしなんとか」

 

「うっし、ひとまず打鉄はコレでいいかな。本音、機体も文句言ってないよね?」

 

「推進系に若干のラグが出てるけど、修正できる範囲だよ~。ちゃちゃっとやっちゃうね~」

 

キーボードを叩く本音を見つつ、簪の隣で櫻もISを展開する。

現れたのは漆黒のIS。ありとあらゆる場所が面で構成され、さながら飛行機のようだ。事実、肩には垂直尾翼のようなものまで付いている

 

 

「これが、現代版フラジール……」

 

「そだよ~。空力特性をとことん追求したキモ……独創的なスタイル。そして武装はマシンガンだけという素敵仕様」

 

「櫻さん、さすがにそれは舐めすぎじゃないかな……?」

 

「まぁ、予備でグレネードとか持って行くよ。後ろにぶん投げれば牽制には仕えるでしょ」

 

「打鉄の調整終わったよ~」

 

後ろから本音の報告を聞き、「うい、おつかれちゃん」と返して再び簪に向く

 

 

「これはライバルとしての宣言だよ。スタートダッシュでお前ら全員おいて行ってやるよ」

 

「櫻さんが言うからには本当にそうなるんだね。じゃ、それの対策も打たないと」

 

「おう、がんばれよ、生徒諸君!」

 

「さくさくは先生で、生徒だからね~」

 

「まぁ、手加減はなし。今度こそ世界中の代表候補生をぶちのめしてやる」

 

「櫻さん、顔が恐いよ……」

 

 

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超音速で行われるキャノンボールファスト、必要なのはスピードを出すためのブースト。そして、カーブを曲がるためのスラスト。ライバルをけん制するための火力、そしてそれから身を守るための防御力。一番重要なのは、操縦者の反射神経だ。

 

バランスよく整えれば勝てるとも限らず、なにか一つにとがらせるとどこかで齟齬が発生する。

だが、あえてそれに挑むのも一興。とくに、整備科教諭として、生徒にこんな姿もアリなんだ、と教える絶好の機会だった。

櫻は生徒としてだけでなく、先生としてもキャノンボールファストへしっかりと腰を据えていた。

 

 

「スペック上は世界最速。だけど、ここにアレとコレをくっつければ……クヒヒッ」

 

 

自室でディスプレイに表示される設計図を見ながらニヤニヤと笑う姿は少し悪に落ちた科学者のそれを感じさせる。

 

ディスプレイの中のソブレロには、背中と腰に何やら怪しい物体が装備されていた


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