魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」   作:ヘルカイザー

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ども〜、毎度毎度感想などをいただきありがとうございます。

ではではよろしくお願いします。


第8話《噂》

六課食堂にて

 

「そう言えば管理局に結構有名な噂ありますよねぇ〜?」

 

スバルは話の流れの中でそんな事を言い出す。今フォワードとなのはにフェイトは昼食をとっていた。そこでたまたま出た話題。それは管理局にある噂だ。

 

「へぇ〜それってどんな噂なの?」

 

なのはが興味本位で食いつき、他の皆もそれに耳を傾ける。

 

「え〜と確か……もう機能しなくなった取り潰し寸前の部隊に入って、誰にも気づかれずにそこで溜まりに溜まった書類を片付けるって言う話なんですけど……」

 

「あ!それ私も聞いたことある!?確かそれだけじゃなくて、人手不足で手が足りなくなった部隊にも入るって話だった筈……部隊の状態を正常にして元のように機能させるって話?」

 

スバルの話にティアナが付け足す。キャロとエリオはよくわからないようで首を傾げていたがなのはとフェイトは興味があるようだ。

 

「誰にも気づかれずにって……普通に仕事してたらバレるよね?そんなに大量に書類をやってるんだったら机に山積みだろうし……周りから見たら一目瞭然だよね?」

 

フェイトの言うことは最もな意見だ、確かに一人が書類を大量に片付けているのならやっている書類と終わっている書類で机の上は大変な事になっている筈である。

 

「そうなんです、だから不思議なんですよ!それで噂の人はこっそり残業をしているんじゃないかって。」

 

「残業?でもそれもおかしくない?残業しているなら記録も残るだろうし……それにすぐバレるような……。」

 

なのははスバルの言った事に反論するように言うが確かにその通りで残業はすればバレる、必ず個人の勤怠記録に残ってしまうからだ。

 

「それは確かにそうなんですけど……でもだからその噂の人は誰にもわからない、見えないって事からこう呼ばれているんです……『幻の残業局員』って!」

 

スバルがそう言った瞬間、ガタッと音がし皆がその方向に視線を集めた。するとその音はキャロが立ち上がった時に出た音だった。その顔は何かに気づいたような、驚きに染まっている顔である。

 

「キャロ?」

 

フェイトが心配してキャロの名前を呼ぶ。

 

「え!?あ……すいません、何でもないです!?」

 

キャロは慌てて座り俯く。その空気で完全に話が終わってしまったがその時だった。

 

「貴様!?どう言うつもりだ!!」

 

突然響いた怒鳴り声になのは達だけでなく食堂にいた全員がその方向に目を向ける。その怒鳴り声の主はピンク色の髪をし長いポニーテールをした女性だった。

 

「シグナム?……あ!」

 

フェイトは何故怒っているのだろう?っと言う顔をしていたがシグナムと呼ばれる女性、まぁ〜ライトニングの副隊長なのだが、その目の前にいた人物を見て頭を抱えた。

 

「およ?そんなに怒らないでよん?シグっち?」

 

その人物とは陸飛である。実はシグナムが食事を取りに食堂に来た所、偶然陸飛と鉢合わせたのだ、でも陸飛とシグナムはこの時初対面だった為にシグナムは陸飛の服装を見て注意した。しかし、陸飛は直すどころかいつもの適当な口調で話した事でシグナムの怒りに火をつけてしまったのだ。

 

「よ、よりによってシグナム副隊長にあんな言葉遣いするなんて……あいつ勇者だわ……」

 

ティアナは呆れを通り越して感心していた。でもそれはティアナだけではない。それを聞いて、見ている全員がそう思っていた。

 

「シグっち……だと?そうか……貴様には少し荒療治が必要なようだな?こっちに来い!!その根性叩き直してやる!!!」

 

「え!?ちょ!?やめへ、引っ張らないでよシグっち!ゲフッ!?」

 

襟を掴まれ無理矢理連行される陸飛。やり過ぎてはいけないからとなのはとフェイトもその後を追う。

 

 

 

 

〜シグナムサイド〜

 

このだらしのない男は一体何だ。終いにはいい加減な言葉遣いを……

 

「さぁ〜構えろ鈴木!貴様の根性を今ここで叩き直してくれる!!」

 

訓練所に移動した私達は向かい合った。

 

「あや……俺戦闘職じゃないのよん?」

 

そんな事は関係ない、お前が戦闘が出来ようが出来まいがそれは逃げ道ではない。そんな言葉で逃がしはしない。

 

「男なら腹を決めろ!!それとも……お前も『ワーク・エスケーパー』の様に都合が悪くなったら逃げ出す軟弱な男なのか?……っ!?」

 

私がそう言った瞬間、背筋が凍るような感覚に襲われた。鈴木も顔つきが変わっている。

 

「『ワーク・エスケーパー』……その名を口にし、その人をダメな見本にしたからには……当然、その人に会ったことはあるんでしょうね?どうなんでしょうか、シグナム副隊長?」

 

何だ……さっきまでと気配がまるで別人だ。それにこの感覚は……恐怖か……いや、静かな鈴木の怒りによる物か。いずれにしても何にそんなに怒ったのか、私にはわからない。

 

「いや、会ったことはない。だが『ワーク・エスケーパー』のやった事は管理局で知らない者など「何も知らないならその名を口にするな!!!」…………」

 

私の言葉を遮り鈴木は私を黙らせる。そこに明白な怒りを私は感じた、私の認識は間違っているのか?

 

「シグナム副隊長、貴方の望み通り相手になりましょう。」

 

さっきまでやる気のカケラもなかった男が自分から相手になると言い出した。私の挑発に乗って感情的になっているだけなのか?バリアジャケットを展開し私はデバイスであるレヴァンティンを構える。

しかし、何を考えているのか鈴木は構えない。普通にその場に立っているだけだ。

 

「何をしている、構えろ!」

 

「…………」

 

だが鈴木は答えないばかりか何も動かない。私を馬鹿にしているのか?普通の事務局員でありながら私の攻撃をそのまま受けられるとでも思っているのか?

 

「お前がそのつもりならもういい、その傲りごと叩き伏せてやる!!!」

 

私は鈴木の懐に潜り込みレヴァンティンを真横から振り抜く。しかし、次の瞬間私は目を疑った。

 

「な!?」

 

振り抜いた筈のレヴァンティンは鈴木に届く事なく止まっていた。正確には鈴木が素手でレヴァンティンを掴んだのだ、しかも左手だけで。

 

「くっ……この……っ!?」

 

馬鹿な……動かない……私は掴まれたレヴァンティンを戻そうとしかがどう言うわけかピクリとも動かない。手に魔力でも注いでいるのかと思ったがそれもなさそうだ。その証拠に鈴木の手からは血が出ていた、もし魔力を注いでいるのだとしたら少なくても怪我はしない筈だ。そうやって暫く膠着状態が続いていると鈴木が掴んでいた手を突然離した。私は驚きながらもその隙に鈴木から距離を取る。

 

「お前何者だ!?タダの事務局員がその様な力を持っている訳がない!!!それに魔力を感じないのはどう言う訳だ!!」

 

私の問いに鈴木は手についた血をズボンで拭きながら答えた。しかし、その答えは私の想像を超えていた。

 

「簡単なことです、魔力なんて使ってないからですよ。」

 

なん……だと?ならこいつのは腕力のみの純粋な力なのか?

 

「馬鹿な……どんな鍛え方をしたらそこまでの力が身につく……」

 

そして私が警戒しながら鈴木を見ている時だった、目の前にいた筈の鈴木が……消えた。私は固まって動けなくなった、何故なら消えたと思った瞬間私は背後で気配を感じたからだ。それも何かを突きつけられている、見ていないから何かはわからない。だが…………

 

「私の負けだ。」

 

私は完全に鈴木に負けた。

 

 

 

 

〜フェイトサイド〜

 

「嘘…………」

 

私達はシグナム達の後を追い、この戦闘を最初から見ていた。でもそれは信じがたい物だった、あのシグナムが手も足も出ない何て……

 

「フェイトちゃん……鈴木君今の戦闘……一度も魔力使って無い…………」

 

「え!?」

 

なのはの言った事に私は驚かずにはいられなかった。戦闘が始まってからなのははモニターで何かを測定していた、今の言葉からして恐らく鈴木君の魔力を見ていたんだ。武器も使わず……魔法を使っていなかったとはいえ、素手だけでシグナムを完封できるそのデタラメな腕力……いや、でもレアスキルかなんかだったらまた別の話になるのかな?そう言えば私と戦った時もそうだったけど……どうして使う物がボールペンなんだろう?今シグナムに突きつけているのもボールペンだし……他に持ってないから?

 

「フェイトちゃん……鈴木君って一体……」

 

「うん…………」

 

私達は鈴木君について何も知らない、いつもサボっていてふざけてる彼しか見ていないから。でもたまにいつもの鈴木君とは別の鈴木君がいる、今もそうだ。私達はその鈴木君を知らない、理解できない。でもそれを知る術も……ない。

 

 

 

 

〜キャロサイド〜

 

陸飛さんがシグナム副隊長に連行された日の深夜、私はまた差し入れをしに事務所へと足を運んだ。せめてこれぐらいはしたかったから……

 

「り〜くっとさん♪差し入れです!」

 

陸飛さんはいつものように私を見るとため息をつく。

 

「また来たのかキャロ……気持ちは嬉しいけどそれで君が体調壊したら元も子もないだろ?早く寝ろ。」

 

「ふ〜ん……そんな事言うんですか?でも今更そんな事は聞きませんよ?陸飛さんがこの事を私の中だけでって言ったんですから、もし私を追い出すならバラしますよ?」

 

私は最後に舌を出して悪ぶって見せる、勿論冗談なのだが。

 

「まったく……とんでもない小悪魔に知られたもんだよ……フフ。」

 

少し怒られるかと思ったけど、陸飛さんも満更じゃなさそうに笑う。

私は差し入れを陸飛さんの机の上に置き、いつものように陸飛さんの肩に頭を預ける。これが一番落ち着くから。でも私がそうしても陸飛さんは嫌がらない、それどころかいつも頭を撫でてくれる。なんか頼りになるお兄ちゃんが出来たみたいだ。

 

「陸飛さん?今日は大丈夫だったんですか?シグナム副隊長に連れて行かれましたけど……」

 

「ああ、別に問題はないよ。だけど少し……嫌な事を思い出した。」

 

嫌な事?私はその嫌な事を聞こうと思った、だけど悲しそうな陸飛さんの顔を見てたら言いたくないのだろうと思って聞くのをやめた。代わりに今日は気になった事を話す事にした。

 

「今日皆で話していたんですけど……管理局の噂で『幻の残業局員』って言う人の話なんですけど。それって……陸飛さんの事ですよね?」

 

私がその話をしたら陸飛さんは何も答えなくなってしまった。私を撫でていた手も下げてしまい、私は少し残念だったが何か悪い事を言ってしまったんじゃないかと言う不安にかられた。

 

「あ、あの……私何か悪い事言いました?」

 

あまりにも黙っているので少し心配になり、私はこちらから話し始めた。

 

「いや……気にしなくていい。ただ……どう答えようかと思ってさ。まぁ〜キャロには今更隠す事じゃないから言うけど……確かにその噂は俺の事だ。だけどそれは俺だけが積み上げた噂じゃない。」

 

私はそれを聞いて首を傾げる、陸飛さんの他にも陸飛さんと同じ仕事をしている人がいるのかなぁ?

 

「陸飛さんみたいな人が他にもいるんですか?」

 

「いや、いないよ。俺だけだ……俺だけ……」

 

その時の陸飛さんの顔は忘れられないと思う。何かを悔やむ様な……悲しい顔。私は陸飛が思い出したくない事を思い出させてしまったのだろうか……

 

「さぁ〜キャロもう寝ないと、明日があるんだから。」

 

「……はい……わかりました。」

 

そう言われ私は渋々事務所のドアへと向かう。

 

「陸飛さん……あんまり無理しないでくださいよ?」

 

私がそう言うと陸飛さんは笑って手を振ってくれた。

 

 

 

 

〜リインサイド〜

 

私は今とんでもない現場に居合わせてしまいました。見つけたのは偶然で、本当に偶然で……何故か深夜なのに鈴木三等陸士が仕事をしていたんです。見つけてから思わず物陰に隠れて様子を伺っているんですけど……どう言うわけかキャロまでやって来ました。って言うか来て早々どんだけイチャイチャしてるですかぁぁぁぁぁ!?こんなの不純です、不潔です、鈴木三等陸士はロリロリが好きなんですか?あ、あれ?私が一人で色々妄想してるうちにキャロはもう部屋に戻ったみたいですけど、鈴木三等陸士はまだ仕事してるです。鈴木三等陸士は六課常駐じゃないから自宅に帰ってる筈です、なのに無断で六課に残って仕事をしているなんて……それに鈴木三等陸士の雰囲気もいつもと違うです。昼間はサボっているのに……あんなにいい加減なのに……

 

これははやてちゃんに報告した方がいいのでしょうか?いえ、はやてちゃんに報告する前にもう少し様子を見ることにしますです。もしかしたらスパイか何かかもしれないです、それにいつもふざけているのはそれを隠す為の演技かもしれません。まず私が見極めて、それから報告するです。この人は最初からどこか信用できなかったんです、絶対尻尾を掴んでやるですよ!私はそう誓って部屋に戻った。

 




次回もよろしくお願いします。

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