魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」   作:ヘルカイザー

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どうも〜

遅くなりましたがあけましておめでとうございます。


いやはや……すっごい間があいてしまいました。まずは申し訳ないです。


ですが〜やめた訳ではございませんので!

ではではよろしくお願いします。


第75話《希望と絶望の狭間で起きた異変》

「誰? お前はパパじゃない。同じ顔だけど違う。何よりなんでそんなに小さく……」

 

「僕が誰かってん……わからないよん。でも……ユリち達の事は……覚えてる……かな。だから……僕がやる事は1つ」

「でしゃばるな、偽物が!!! ……っ!? 止めっ……え……」

 

小さい陸飛が現れてすぐ、ウメは自分の父親でないと感じ、一切の加減をせずに掌底を叩き込んだがその攻撃は見事に空を切る。何故ならその攻撃が直撃する直前、ウメの手は小さな陸によって掴まれるとその瞬間からピクリとも手を戻す事ができなくなった。

 

「う、動か……ない? はは……は……いやいや……待ってよ……私今加減なんて一切……」

 

「えっとん……それで力入れてるのかなん? 僕軽く握ってるだけなんだけどん? 」

 

ウメはここにきて初めて動揺を表に出した。彼女は今、加減と呼ばれる行為を全て捨て、全力で攻撃を行った。しかもその後、腕を戻そうとして力を入れてもその手は陸の手から外れない。

 

「こ……こんな事……ありえない。パ、パパを相手にしてるならともかく……いや、今のパパですら私がこんな……ぐっ、クソぉぉぉおおおおお!! 愛殺……気竜流し、《竜魂螺旋……突破》!!! 」

 

「うっ!? あ……」

 

 

掴まれた手をウメは身体ごと回転し、螺旋の力を用いて、力ではなく、技で陸の手から逃れると、すぐに陸から距離を取る。息を切らせ、掴まれていた右手を左でさすりながらウメは陸を睨みつけた。

 

「はぁ……はぁ……はぁはぁ……ちっ! ……その女が何をしたか知らないけど……やってくれた。だったら仕方ない。私もあれを使わざるをえなくなった。例え差しちがいてでも……お前の存在を私は認めない!!! ……くぐっ!? ……あぐっぁぁぁあああ!! パワーっ、ブースト……1000%リミットオぉぉぉぉぉぉおおおバぁぁぁああああああああ!!! 」

 

 

 

「っ!? うっ!? な、何これん!? 」

 

「ウ、ウメ……ちゃん? それって……お兄さんのオリジナル魔法じゃ……」

 

 

「はぁああっあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! うぐっわぁぁあああああああああああああああああああああ!!! 」

 

雄叫びとともに、ギミミシといったおかしな音がウメの体から鳴り始める。それは少し離れているヴィヴィオの所にまで聞こえるほどで、ウメはそれが原因で苦痛の悲鳴をあげていた。

 

本来、陸飛が編み出したパワーブーストとは、肉体の限界筋力をパーセンテージで表し、魔力で筋力を刺激した分だけ筋力をドーピングするなのはでいう一種のブラスターモードに他ならない。ましてや、ここで差があるとはいえ、人が超えていい所など精々100%がいい所。だがウメはそれを軽く超え、その10倍のパワーを無理矢理引き出した。才能や鍛え抜いた体とは言え、そんな事をすればその代償は想像し得ないものだろう。

しかしそれ故、それに抗う力が存在しないのも必然だった。

 

 

「あぐっ……し、死ねぇぇぇええええええ!!! 」

 

「っ!? んっ、ぐくぁっ!? 」

 

ウメは暴走するように陸のみぞおちに掌底を放つ。そして心臓、頭……人間も急所ともいうべき場所へ何の躊躇もなく掌底の連打を放ち続けた。

しかしユーリの守護騎士として生まれた陸はその程度では倒れない。むしろ相手の情報を分析し、放っておくだけでどんどん強さを増していた。当たっていた攻撃は徐々に当たらなくなり、攻撃していた筈の彼女の方が段々とダメージを受けていく。

 

「ひふ、あはは!! あっはははは!!! ……っ!? 」

 

「石灰……砲技…………」

「んなっ!? ……かっ!? ……はっ」

 

 

「《石灰貫破》!!! 」

 

攻められ、反撃できないと思われた陸は不安定な体勢から一本のチョークを放った。当たり前だが、この世にチョークを武器に戦える人間などいない。オリジナルの陸飛の技、ペン技の技術を体で知っている小さな陸以外は。

すると当然その攻撃は初見という形でウメの体に直撃した。胸の中心でチョークが粉々に砕け、その時起こった衝撃波がウメの体を全て貫通するように走り抜ける。そして微弱な振動は、複数回往復する事で脳内から全身に伝わる電気信号へと干渉し、彼女の体の機能を一時的に狂わせた。

 

 

「くっ……ぁくっ……た、立て……なぃ……。ぃや……こんな所で……終われ……ない。……終わるわけにはいかないの!!! 」

 

「もうやめたほうがいいよん? よくわからないけど、君もボロボロだから。それ以上は命に」

「うるさい!? 黙れ黙れ黙れ黙れーーー!? やめる? 誰が? 私が? ……できるわけない!! 私は決めたんだ、全てを終わらせると。パパとママが幸せに過ごせる未来を手に入れるために! だから……だから邪魔をするなぁぁああああああああ!!! 」

 

「っ!? (あの体で立ち上がって)なっ!? 」

 

「愛殺気竜流し……魔力崩壊・阿修羅の型……」

 

小さな陸は一目みてウメの構えがヤバイ物だと判断した。さっきまで全身ボロボロだったが、それでも大きな魔力を有していたウメから全くそれを感じなくなったのだ。魔力ゼロ。実質そんな事はあり得ないのだが、今の陸にはそう見えていた。

 

「その状態ん……だ、ダメだん!? それは」

「そう……これは命を削る代償がある。けど……もともと死ぬ覚悟で来ている私には関係ないんだよ!!! はぁぁああああああ!!! 」

 

「くっ、っ!? は、はやっ」

「この型は既存魔力を全て代償にする代わりに身体能力を極限まで高める私が編み出した諸刃の剣。ママには止められていたけど、今となっては関係ない!!! 」

 

「な、ぐがっ!? 」

「お兄さん!? 」

 

 

 

「ふふ……あはは……これで……終わり! はは、はははっ、うっ!? ごほっごほ!? 」

 

「ウメ……ちゃん」

 

ヴィヴィオは蚊帳の外だった。陸が殴り飛ばされ、その直後、ウメが口から大量の血を吐き出す。彼女はただ見ているしかできない。目の前で守りたいと思う人間がひたすら命を削り合っていくのを。

 

だがウメは倒れない。止まらない。口からたれた血を手で拭い、真横に血を吐き出す。そしてまともに動けなくなった陸の側へと歩いていくと、人を簡単に殺せる拳を彼に叩きつけるよう放った。

 

 

「死ね!! ……は? っ!? え……な、なん……で…………」

 

「……き、君はん……」

 

「嘘……(これって奇跡? 私夢でも見てるのかな? )ううん。これは現実! 」

 

 

放たれた拳はパシッと受け止められ、その受け止めている手は段々と力が入り、ウメの拳を握りつぶす勢いでしめつけ始める。ウメは心の底では受け止めたのは誰かは分かってた。しかし直視したくなかった。受け入れたくなかった。

 

「ギ、ギンマ……マ……どうして」

 

「……随分好き勝手……やってくれたわね? 」

 

「な、なんで邪魔ばかり入るの? どうしてうまくいかないの? どうしてここに来たんだ!? ハッ!? おぶっ!? 」

 

ズドンっと人が人のお腹を殴ったとは思えない衝撃音が鳴り響き、乱入したギンガに殴り飛ばされたウメは反対のヴィヴィオのいる後ろの壁へと吹っ飛び叩きつけられた。

 

たった拳一つで全てを破壊する。それは外面的な事だけではない。相手の戦意。ギンガの拳はすでにその域にたっしていた。ギンガの底なしの愛ゆえに鍛え抜いたその拳で砕けない道理はない。到底常人には理解し得ない事だが、それでもギンガはそれ故強かった。

 

決して誰も説明できない想いの強さで。

 

 

「あ、あのん」

 

「……小さい陸さん? ううん。多分陸さんとは別の人ね。だって……貴方見てても全然ときめかないもん」

 

「かはっ!? ごほっ、ごほっ!? ……あ」

「さて、どうする? まだやる? 」

 

「くっ……(無理だ……私がどうしてギンママを先に閉じ込めたのか。私じゃ……万に一つの勝ち目もない。だってこの時代のギンママの拳はすでに……神の頂に届いている。どうする……ここまで来て……諦めるなんて……そんな、そんな事……)」

 

座り込んでいるウメに目の前に、ギンガは拳を構えながら立ちふさがった。そもそもウメがギンガを封じ込めたのは自分では倒せない為。これまで、キャロと共に多くの強敵と対峙してやられていたギンガだが、それはあくまでも相性が悪かったからであり、実際、近接戦闘において現状のギンガの拳を超える者は存在しない。当然この事実は陸飛も例外ではない。

彼はギンガの拳を受け止める事はできても相殺する事はできない。実は毎度毎度彼女の拳を受け止めていた陸飛だが、受け止めきれない衝撃は確実なダメージとしてキチンとくらっているのだ。ただ彼の体は特別頑丈な為、怪我をするまでいっていないと言うだけの話。

 

 

「なんでぇ……悪い事してるのは……分かってるもん。でも、やらないといけないの……止まれないんだもん。じゃないと……みんな不幸になる。だから、私がいなくなればそれで!? ……うっ!? あっ……嘘……こ、この感覚……ダ、ダメ!? 」

 

「な、何……」

 

「で、出て来ちゃ、ダメぇぇぇえええええええええええええええ!? あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!? 】

 

 

ウメが頭を抱えて後ろへ仰け反りながら叫び出した瞬間、彼女の綺麗なピンク色の髪は全て黒く染まり、黒い彼女の瞳は紅く染まる。

 

そして……さっきまで確かにそこに存在していた筈のウメの雰囲気が完全に消え、冷たく、どこまでも鋭い殺気を放ちながらゆっくり立ち上がると、その瞬間ヴィヴィオの足元に音もなく何かが転がってきた。

 

全く何が起こったか認識できていないヴィヴィオは恐る恐るその足下を確認すると、小さな悲鳴をあげて彼女の名を口にした。

 

「え……ギンガさん!? 」

「あぐっ、だ、大丈夫よ。ごほっ、ごほっ……い、今……何が」

 

ギンガはいつのまにか吹っ飛ばされていた事に気づくと痛むお腹を抱えながら小さく咳き込む。

またその直後に部屋へ入ってきたディアーチェとレヴィ。2人はすぐに異変に気付いた。

 

ウメの様子がおかしい事と気配が別の物になっている事。そして何より一部の場所でクレーターが出来ている事に。

 

「こ、これは一体……何が起こったと言うのだ……はっ!? な……ゆ、ユーリ!? 」

「ユーリ!? 」

 

ディアーチェとレヴィは部屋の中にクレーターができている事を確認するとその中心に血塗れで倒れているユーリに気づき、慌てて彼女へと駆け寄る。ディアーチェは必死に名前を呼び、それでも動かない彼女に涙すると……ディアーチェは憎しみを込めた目で立ち上がり、怒り狂いながら叫ぶと黒髪に変色したウメを睨みつけたのだった。

 

「き……さま……ゆ、ユーリに……ユーリを……我の大事な家族に何をしたのだ!! この、下郎がぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「陸飛さん……陸飛さん! 陸飛さん!! 」

 

「ぁ……き……キャ……ロ……」

「はぁ……よかった無事で……でも(すごい汗……あの陸飛さんがここまで弱るなんて一体……それにこのままじゃいずれ……)」

 

ギンガ達の戦いが激しさを増す中、陸飛の元には逃げ出したキャロがやってきていた。上半身裸で倒れている陸飛を少し起こし、その状態を確認していく。だが彼女は陸飛の状態を確認したのち、時間がないと再確認した。

陸飛が大量の汗をかき、少し自分の名前を言った後それ以上言葉を発さなくなったからだ。衰弱し、陸飛は生命維持が困難な状態へ近づきつつあった。キャロはそんな陸飛を見ながら強く拳を握りしめて唇を噛み切るように噛んだ。そこからは血が流れ、彼女はこれ以上ない怒りを纏う。

 

 

 

 

 

 

 

何より弱い自分自身に…………

 

 

 

「陸飛さん……結局私は守って貰ってばっかりです。陸飛さんにもギンガさんにも……多分これからもそうなんだと思います。けど……私だって戦えます。護れます。……いえ、違いますね。護りたいんです。だから……もう一度だけ……頑張っても……いいですか? 貴方の為に……私の為に」

 

 

キャロの言う護るとは単純な事ではない。彼女は自分の周りの環境全てを護ろうとしていた。大切な人は勿論、友人や家族。何より自分の捧げる愛。

 

しかしキャロの考えるそれは簡単なことではない。

 

何故ならそれは今戦っている未来の娘。ウメの事も勘定に入っての言葉なのだから。

 

 

「ウメちゃん……恨んでもいい憎んでもいい。けど……これ以上は、誰も傷つけさせないから。だから……私は自分の技を……進化したウメちゃんの技を超えてみせる。例え……この腕が壊れたとしても……必ず、必ず貴方を倒す! 」

 

 

 

 





短編劇場は短編主人公不在なので今回はお休みです。

何故なら〜


メインのコロナさんが地下で伸びてしまっているので!

許してあげてください。ギンガさんの拳は愛より重いのです!


次回もよろしくお願いします。

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