魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」   作:ヘルカイザー

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短編・キャロ様劇場

最終話《感謝してるから》

これはキャロが入院して2、3日経った時の事。陸飛が帰った後、キャロのお見舞いに2人の人間がやってきた。

「キャロ〜お見舞い来てあげたわよ! 」

「ちょっとルーダメだって大声出したら」

「あ、ルーちゃん、エリオ君。わざわざごめんね」

これはごく普通の会話。お見舞いに来た、だからお礼を言う。しかしエリオやルーテシアからしてみればこれは普通ではなかった。

【え、エリオ……】

【う、うん……】

「どうしたの? うふふ、2人ともこっち来て座って? 私2人が来てくれてすっごく嬉しい」

【【これは何かされる………】】

満面な笑みと素直な感謝。それはとても眩しい笑顔と共に放たれた言葉だったが、2人はそれを不気味に捉えていた。

しかし今のキャロは憑き物のとれた天使。何もする気などないのだ。

「う、うんそれじゃ〜お邪魔するわねキャロ」

「お、お邪魔します」

しばらく話をし、普通の時間が、何事もなく流れていく。だがこの間、2人は気が気じゃなかった。

「2人とも本当にどうしたの? なんか変だけど……あ! 喉渇いてる? だったら冷蔵庫にジュースが入ってるから飲んで? 」

「そ、そうね。頂くわキャロ……うっ!? 」

「ルー? どうし……ひっ!? 」

2人が開けた冷蔵庫には何本かジュースが入っていた。だがその中でも1本だけおかしな瓶が1つ。それは紫色に濁った危ない雰囲気を放つ異質の飲み物。

ルーテシアはこんな物は飲めないと別のジュースに手を伸ばす。

「あ! その瓶に入ってる奴おすすめだよ? それ美味しいから是非2人に飲んで欲しいな」

悪魔の言葉。逃げ道を塞がれた2人の心境は死刑台まで歩く死刑囚のよう。この得体の知れないジュースを飲まされる。それは恐怖以外の何物でもなかった。

「る、ルー……」

「こ、これを……う、くっ……」

「どうしたの? もしかして……私のおすすめのジュース……飲めないの? 」


「「ひっ!? 」」

キャロはただそう言っただけ。言っただけだが2人は震え上がった。ここで飲めなければ何をされるかわからない。そういう恐怖が2人を包む。

「(これはルーには飲めせられない!) ルー! ここは僕が! んっ! ごくっ」
「ちょっ、エリオ!? 」

「ん? あれ、美味しい……」

「へ? 」

「ふふ、でしょ? それ、陸飛さんが持ってきてくれたんだぁ〜」

2人はホッとした。何もない。それがまだ信じられない2人だが、ここは素直に信じ、もうしばらくゆっくりした後、キャロの病室を後にした。

だが…………


「怖かったね」

「そ、そうね。私達……キャロの事誤解しすぎなのかもね」

「そうだね。今度からは…………」

「エリオ? どうしたの? エリ……」
「うっ!? き、きもぢわる゛っ……お゛え゛っ!? う゛え゛っ!? あ゛っ!? う゛お゛え゛、お゛ろ゛お゛ろ゛!! 」

「ちょっ!? エリオ!? いやぁぁぁあああエリオぉぉぉおおおおおおおお!? 」


エリオはこの後死ぬ思いをしたと言う。

一方その頃病室では…………


「2人でお見舞い来てくれたんですよ? だから私嬉しくて! 」

「あ……はは。そ、そうか……」

「どうかしたんですか? 」

「い、いや何でもない!? よかったな! 」

「はい! 」

(あのジュース……賞味期限と言うか……物凄く美味しいんだが日持ちしないって言ってあったはずなんだが……大丈夫か? エリオの奴)


「えへへ、感謝してるよ。ルーちゃん、エリオ君! 本当に感謝し・て・る。ふふ」



短編・キャロ様劇場……完
















では本編、どうぞ!




最終話《戻った日常……そして壊れる日常》

私、キャロ・ル・ルシエは病院で退屈している。入院している為だ。しかもこの間の一件での無茶がたたり、思ったよりも長引きそうだ。

 

ただそれに伴い、嬉しい事が多々ある。それは毎日のように陸飛さんがお見舞いに来てくれるという事だ。毎日、毎日……午前と午後……ここで思う事が1つ。

 

 

あれ? 陸飛さん来過ぎじゃない? って事だ。

 

 

今は学校の方も授業が普通にあり、休みではない。だから先生である陸飛さんがこんなにもお見舞いに来れるのは違和感があった。故に、私は今お見舞いに来ている陸飛さんへ投げかける。これ以上ない言葉を、疑問を。

 

「陸飛さん? 授業しなくていいんですか? 今学校始まってるんじゃ」

 

「ん? 学校? なんの事だ? 俺今無職だろ? 」

 

違和感の正体はこれだ。これ以外考えられない。陸飛さんは記憶を取り戻した。取り戻したが代わりにその間の記憶。『記憶を失っていた4年間』の記憶を全て失っている。そう考えるべきだろう。

 

ならこれだけ私のお見舞いに来れるのも頷ける。つまりは……学校に行ってない。いや、それ以前に自分が今どういう立場かを分かっていない。

 

「陸飛さん……今学校の先生なんです。覚えてらっしゃいませんか? 」

 

「はい? いやいや、俺が先生? ……さっぱりだが。え? マジで? 」

 

ここで私はさらにマズイ事に気がついた。陸飛さんが学校に行ってないと仮定して……いや、もう確定なのだが、生徒達の授業をしてい状態をまるまる2週間。おそらく学校では暴動が起きてるにちがいない。

 

仕方ない理由だが、生徒にそれを知るすべはないのだから。

 

「って事は……俺今サボり中か? 」

 

「そ、そうなりますね」

 

「……はぁ……悪いキャロ。今日はもう行くわ。まだ間に合うだろ、何すればいいのかわからないが」

 

「はい! 頑張ってください」

 

「で……俺どこの学校の先生なの? 」

 

あいも変わらず、抜けているところは抜けているというべきなのか。私はもちろんそんな陸飛さんが好きなわけだが、今はそんな事を言っている時ではない。このままでは陸飛さんのイメージに関わる。

 

だから早く教えて学校へ。しかしそんな時、病室のドアが開かれた。誰かと思えばそれはコロナだ。お見舞いに? っと思ったのだが、私は疑問を持つ。

 

それはまたもや同じく学校は? っという疑問だ。

 

「こんにちはキャロお姉様。それにヴィヴィオのお兄さんも。これお見舞いのお花です」

 

「あ、ありがとうコロナ。それで……学校は……って言うかいつから私の事お姉様だなんて」

 

「え? 前も呼んでたじゃないですか? どうしたんですか? 」

 

「え……そ、そうだった? あれ? そう……だったのかな」

 

私は何か引っ掛かりを覚えながらも、さして気にとめてなかった事だった為、自分の気の所為だと思った。が、それは大きな間違いだすぐにわかる。何故なら、コロナはこんな……こんな顔で私を見たりはしない。そんな事気がついた事もない。

 

こんなに顔を赤らめ、誰かに恋をしたような顔を。

 

「それじゃそろそろ」

 

「あ! ヴィヴィオのお兄さん。学校の事なら大丈夫ですよ。私がちゃんと言ってありますから」

 

「言ってある? もしかして君は俺の生徒か何かだったのか? そうだったらすまなかった。授業……」

「だから大丈夫ですって……みんなは私が……『言い聞かせましたから』。と言うかそんな事心配する暇があったら、キャロお姉様の側にいてあげてください」

 

「コ、コロナ? どうしたの? 何か……あった? だったらいくらでも相談に」

 

コロナには、鬱憤と言ってはいけない事だが、私のいきようもない怒りをよくぶつけてしまっていたりした。自分でも自覚はあるが、余裕がないという理由で許して欲しい。

 

だから代わりではないが、コロナが困っていれば助けるし、力になろうと思うのだ。ただこれはとくにコロナと言うだけで、他の人達のも言えること。

 

私は仲間に、みんなに感謝をしている。あの抜け出せない時間の牢獄から解放してくれたのだから。

 

「ふふ、変な事言いますねキャロお姉様。何もありませんよ。何も……ね」

 

何故だろうか。何故こんなにも私の直感は危険信号を発しているのだろう。もう危機は脱したはずだ。それこそ、暗い未来など消え去ったはずだ。しかし今のコロナを見ていると安心できない自分がいるのだ。

 

「それじゃキャロお姉様。私はそろそろ行きますね。お兄さんとごゆっくり」

「見つけた! コロナ! 」

 

「ちっ」

 

「コ、コロナ? 今舌打ちしなかった? 」

 

「気の所為ですよ、キャロお姉様」

 

突然病室にヴィヴィオが飛び込んできた。何の用かはわからないが、私のお見舞いではないだろう。ヴィヴィオの様子はそうは見えない。まるで焦って誰かを探しているような感じであった。さらにはコロナの様子もさらにおかしくなる。

 

「コロナ! 今すぐこんな事やめて!学校のみんなを解放して! じゃないと取り返しのつかない事に」

 

「うるさいよヴィヴィオ。それにそれはできないって何度も言ってる筈だよ? あれ、私がやったわけじゃないから」

 

「なら誰が!? 」

 

「ふふ、教えると思う? 」

「コロナ!! 」

 

現状何が起きているのか全く理解できない。私も陸飛さんも呆然と2人のやりとりを見ているだけ。ただ、ヴィヴィオの様子からただ事じゃない事は感じ取れる。それに関わっているのがコロナだという事も。

 

「ヴィヴィオどうしたんだ? 2人共少し落ち着いて」

「ヴィヴィオのお兄さん? ちょっと邪魔ですよ? 黙ってて貰えます? 」

 

言わない……目の前の女の子は誰だと私は考える。少なくても私の知っているコロナはこんな事を言うような子ではない。おとなしくて、優しい子と言う印象だった。

 

つまり……あまりにも前とギャップがあり過ぎて、私には別人に見えている。

 

「お兄さん、今のコロナは正気じゃないよ! 今私達の学校は、っ!? がっ……ぐっ……コロナぁ……」

 

「うるさいって……何度も言わせないでよヴィヴィオ? 」

 

「おい!? 何してんだお前ら!? 」

 

コロナはヴィヴィオの口を封じるようにヴィヴィオに拳を向けた。単純な格闘技能ではヴィヴィオの方が上だろう。だが、ヴィヴィオは手を出さない。それがこの一方的な状況を作り出している。

 

コロナの拳を受け、それを耐えたヴィヴィオ。おそらくヴィヴィオは手を出したくないのだ。コロナが友達だから。でもコロナの方は違った。完全に力加減に躊躇していない。完全に本気の一撃をヴィヴィオに放っていた。

 

「あ……もうヴィヴィオのお兄さん何するんですか? 離してくださいよ。ヴィヴィオ殴れないじゃないですか」

 

「あほか!? こんな状況止めない奴がいるわけないだろ!? と言うかヴィヴィオ、大丈夫なのか! 」

 

「……う、うん……コロナ」

 

「はぁ……そんなに私の邪魔したいの? 」

 

「当たり前だよ! これがもしいい事なら邪魔なんてしたくない。でも今コロナがしてる事は悪い事だって誰が見てもわかるから! 」

 

私は今の状況に違和感を感じる。何かが噛み合わない。何かがおかしい。状況を知らない私でも引っかかる何かがある。それはヴィヴィオとコロナの立場。コロナに何かをやめるよう訴えるヴィヴィオだが、一方でコロナはまるで1人じゃないような言動をする。

 

今は理解に苦しむが、今言いたいのはこの一件には別の人物が絡んでいそうだと言う事だ。

 

「まず何があったんだヴィヴィオ? 」

 

「それは……」

「喋れば? 」

 

「え……」

 

「喋ればいいよヴィヴィオ。私ヴィヴィオのお兄さんに捕まってたら何もできないし、私がした『悪い事』、喋ればいい」

 

今まで必死に口を塞ごうとしていたコロナが一変、喋ればいいと言い出した。私にはコロナの心情はわからない。しかしそう言われたヴィヴィオはコロナを悪者にしたくないのか中々喋り始めなかった。

ヴィヴィオは今どんな気持ちでいるのか、それは苦悶の表情を見ればよくわかる。

 

「喋らないの? ふふ、ヴィヴィオは本当に優しいよね。でもね、そんな事しても、私の意思は変わらない。……いいよ。自分で喋ってあげる。ヴィヴィオのお兄さん? キャロお姉様? 私今日……」

「コロナやめてっ!? 」

 

「学校丸ごと潰して来たんだよ! 」

 

「「なっ!? 」」

 

空気がおかしくなった。ドッと……嫌な汗が体から滲む。とてもコロナの口から飛び出たものとは思えない言葉。私達は開いた口がふさがらず、ヴィヴィオは少し涙目になっている。

 

学校を潰した。私はこれを今でも信じられない。それこそ学校にはシスター達もいるだろうし、コロナより強い魔導師はゴロゴロいるだろう。では何故そんな事が可能なのか。そう思った矢先、嫌な予感は今目の前で現実のものとなる。

 

「あはは。ヴィヴィオのお兄さん……そろそろタイムアップですよ? ふふ」

 

「ん? っ!? あぐっ!? クソ」

 

「「え…………」」

 

コロナ不敵な笑み。そして、突然誰かがとんでもないスピードで陸飛さんを突き飛ばし、コロナをさらう。

 

さらにはまるで私達にその正体を晒すように病室のドアの前に着地した。だがそこに現れたのは想像もしていない人間だった。

 

「お前……レヴィ……か」

 

「レヴィ? はは、何それ。レヴィちでしょ? 陸はそう呼んでくれたんだ。僕達の知ってる陸は……だから……『お前』は陸じゃない!! 」

 

「待てレヴィ俺は! 」

「消し飛ばせ、ルシフェリオン……ブラストファイアー! 」

 

「シュテル!? 陸飛さん!? 」

「ちっ! 」

 

追撃と言わんばかりに現れたシュテルの窓の外からの砲撃。それにより、私の病室は大破した。私にはこの攻撃を防ぐ事は出来ない。万全ならまだ対処できるが、弱っている私には難しかった。

しかしそこは流石の陸飛さんだった。今の砲撃を躱し、私とヴィヴィオを抱えて屋上へと逃げた。抱えられている私達はすぐにそっとおろされ、私達の前にコロナとレヴィ。そしてシュテルが降り立つ。

 

「シュテル一体何のつもりだ!? 俺はお前らとそんなに険悪だった覚えはないぞ! 」

 

「レヴィ……シュテル……どうして」

 

「険悪だったつもり? 貴方は私達の何を知っているのですか? 『陸』じゃない貴方が。それにシュテル? 陸は呼んでくれましたよ? シュテちって……だから陸じゃない貴方が私の事を気安く呼ばないでください」

 

「一体何の事だ! お前らはさっきから何の話を……」

「覚えておらぬか? なら我が教えてやるぞ『鈴木陸飛』」

 

突然声が……私達の後ろから聞こえた。それは聞き覚えのある声。私達は後ろを振り向く。するとそこにはディアーチェがいた。彼女までもが鋭い目つきでこっちを見ている。その様子からは明確な敵意が見て取れた。

 

陸飛さんにはわからなくても彼女達が言っていることは私には理解できる。陸とはおそらく記憶を失っている時の陸飛さんだろう。だが今の状況はそうだとしても不自然だ。陸飛さんが彼女達と過ごした記憶を失ったからといって、ここまで敵意を剥き出して襲ってくるものだろうか。私は彼女達の人柄を知ってそう疑問に思う。

 

だからまだ……何かがおかしい。引っかかりがとれない。私はそう感じていた。

 

「お主は記憶を失っていた。ならその間はどうやって過ごしていた? その間の記憶はどうした? 我らと過ごした4年間、何も覚えておらぬのだろう? 我らと家族だった間の記憶。我らとの絆。……なぁ、陸。いや……お前は陸じゃない。我らの大事な陸と引き換えに戻ってきた男だ。我らは4年間お主の記憶が戻る事を望んでいた。陸が苦しい思いをしないならそれでいいと思った。だが……だが実際はどうだ? 何で……こんなに苦しい。こんな事、思っていいはずがないのに。何故こんなに……こん……なに…………」

 

「もういいです、ディアーチェ。全てはこの男を殺せば済む事。もうそんなに悲しまないでください」

 

「殺す? 待って、シュテル! 貴方達は何を考えてるの!? 陸飛さんにその記憶がなくても貴方達の知っている陸は陸飛さんなんだよ!? なのにどうしてそんな」

 

「キャロ、可能なんですよ。その男を一回殺して陸を取り戻す事が。だから私達は……陸の為なら、どんな事だってやるつもりです」

 

できるわけない。いや、と言うよりもその矛盾は何なのか。大事な人を殺して大事な人を取り戻す。理解できない。どうしてその結論に至ったのか。一体何をしたらそんな事ができるのか。

 

しかし彼女達の顔は本気だ。本気で陸飛さんを殺して記憶を取り戻す前の陸飛さんを取り戻そうとしている。

 

「そんな……そんな事できるわけが!? 」

『そ〜っれが、出来ちゃうんだなぁ〜』

 

「え……だれ? 」

 

「お前……(なんだ……初めて会ったはずなのに)」

 

(他人の気がしない)

 

私達の話を切るように入ってきた新たな人間。それは私と同じ色の髪をした少女。歳は私と同じだろうか。

ただ、何故か他人というにはあまりにもおかしな感覚があった。おそらくそれは陸飛さんも感じているのだろう。

 

「もう遅いよウメちゃん。大変だったんだよ? お姉様とお兄さんの相手するの」

 

「あはは、ごめんなさい『コロナお姉様』。ちょっと大変だったから」

 

「コロナ、その子だれ? 誰なの! 」

 

「ふふ、初めましてになるのかなここでは。ヴィヴィオお姉様。それに……『パパ』と『ママ』」

 

耳を疑う言葉。パパ? ママ? いった誰が? そう考え私はパニックになった。この状況がなんで、何が起こっているのか。もはや知るための材料は私にはない。

 

 

 

「どうもぉ〜! 私はウメ。ウメ・スズキ・ル・ルシエ・ストーン・ナカジマです! 正真正銘、貴方達の娘だよぉ? ふへへ! よろしくぅ〜ね? パパ、ママ? あは! 」

 

 

 

 

しかしこれは、回避しなければいけない私達のもう1つの戦い、その……始まりだったのだ。

 

 

「ちょっと待てぇぇぇええ!? なんだその名前!? 複雑すぎるだろその家族!? どうやったらそんな名前になるんだ!!! 聞くからに家族の構成が明確だぞそれ!? くっ……う、嘘だ……俺は信じない!! 信じないぞぉぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!! 」

 

「陸飛さん落ち着いてください!? しっかり!? 陸飛さぁぁぁぁあああああああん!? 」

 

 

 

 

第3章《失われた記憶》……完

 

 




短編・絶望のコロナちゃん劇場


第1話《胸の痛み》


「はぁ……どうしたんだろう私。最近なんか……胸のあたりが痛い。病気かな? 」

これはキャロが運命を切り抜ける為の戦いが起こる少し前の事。それは突然起こった。自分の胸が痛い。気持ちのモヤモヤもあり、何かねっとりと気分が悪いことにコロナは気付く。

「いつからだっけ……確か……キャロさんがヴィヴィオのお兄さんと話してる所見た時かな? う〜ん、わかんない。でも……なんか痛い」

「えへへ、こんにちはー! 」
「ひゃうっ!? ……だ、誰? 」

「あ! ごめんなさいコロナお姉様。驚かせちゃった? でも悪気はなかったんだよ? ふふ。私はウメって言うの! 」

「ウメ……ちゃん? その格好……私達と同じ学校のかな? でもなんか少しデザイン違うような」

コロナは突然声をかけられ、おかしな悲鳴をあげる。しかし振り向くとそこにいたのは自分と同じ歳であろうピンク髪の少女だった。ストレートのどこも結んでいない綺麗な腰まで伸びた髪。そして黒の瞳とどことなく誰かに似ていると思わせる可愛い顔立ち。コロナは不思議な感覚に陥った。

「へへ、コロナお姉様可愛い! 」

「え、その……ありがとう。ウメちゃんも可愛いよ。と言うか何でお姉様だなんて」

「う〜ん、説明すれば長くなるけど。いえば簡単。けど今はそれよりもコロナお姉様にお願いがあってきたの。私に協力して欲しくて」

「協力? 」

「うん! もし上手くいったら、コロナお姉様の好きな人自分の物にできるよ? 」

「好きな……人? え、私にはそんな人……いっ!? ……あれ? また胸が」

コロナはいないといいかけて言葉をやめる。好きな人なんていない。友達は好きだが、少女が言う好きはそんな好きじゃない。もっと特別な好きだ。

「コロナお姉様? ママの事好きでしょ? 」

「ママ? 誰の事言ってるのかわからないけど私はあなたのママなんてしらないよ? 」

「キャロ・ル・ルシエ」
「え…………」

「好きでしょ? ママの事。私……知ってるんだよ? 」

「好き? 私が? キャロさんの事? ち、違うよ!? そんな事ない!? だってキャロさん女の子だし、私も女の子で!? 第一、キャロさんにはヴィヴィオのお兄さんが」

「このままじゃママ不幸になるよ? コロナお姉様はそれでいいの? 素直にならなきゃ後悔するんだよ? ふふ、それに大丈夫、例え誰が相手でも、欲しい物は、奪えばいいんだよ。ママの事、メチャクチャにしたいと思わない? ね? コロナお姉様? あは! 」

コロナはこの瞬間壊れた。何か、感じた事のない黒い感情が自分の中から湧き上がってくるのを感じ、その感覚に呑まれていく。

「そっか。私……キャロさんの事好きなんだ。だからこんなに苦しんだ。……そうだよね。どうせ叶わない恋だし。もし本当にこのままキャロさんが不幸になるなら、その前に奪って私の物にしてもいいよね」

「そうだよコロナお姉様。ママもその方が幸せだよ! 私はコロナお姉様とママはお似合いだと思うなぁ〜」

「そうかな? へへ、キャロさん……キャロ……お姉様」








to be continued…………










次回もよろしくお願いします。



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