魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」   作:ヘルカイザー

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ども〜

さて、この章ももう時期終わりの時が近づいて来ました。

後2話です!


ではではそんなこんなでよろしくお願いします。


第68話《覚醒の陸飛……人を超えた者達の戦い》

「あ゛あ゛っ!? うがぁぁぁ……グゾぉぉ……グゾがぁぁ! 何故、何故戻ったぁぁあああ!! ごろじでやる! こぉぉろぉぉぉすぅぅぅああああ!!! ……っ!? まで!! どごにいぐ!? 」

 

「お兄……さ…… 」

 

 私は今疑問に思う事がいくつかある。今お兄さんが使ったのはペン技……まがい物なんかじゃない。本物のペン技だ。

 そしてそれがお兄さんに記憶が戻っているという何よりの証拠だ。キャロさんのお兄さんへの想いが奇跡を……起こした。私はそう思う。想いたい。そうじゃなければ……命を賭したキャロさんが浮かばれない。

 後もう1つ。一番の疑問。何故お兄さんはみんなが動けないこの状況で平然と動いているのか。みんな地面に顔をつけ、指一本動けないというのにだ。

 さらにこの状況でお兄さんは敵をシカトし、キャロさんをお姫様抱っこの要領で抱えると、私のすぐ横へ寝かせる。

 

「お兄……ぁ」

「動こうとしなくていいよヴィヴィオ。悪かった。間に合わなくて……今頃……手遅れだったよ。全部俺の……」

 

「ち、違……そんなぁ……こと」

 

「わ゛だじをむじずるな゛ぁぁぁあああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! ……っ!? 」

 

 敵が動こうとしたその瞬間、お兄さんは後ろを見ずにボールペンを投げる。すると敵の顔スレスレにボールペンが通り過ぎ、敵は動きを止めた。

 そしてお兄さんはゆっくり立ち上がりながら敵の方へと向きなおる。

 

「少しは落ち着いたか? クラン・ペーパー」

 

「はぁ……はぁ……そうね。怒りを制御できないのは私の悪い癖だわ。というか、お前、何故動けるの? お前の力は四年前に全て解析してる。例え、四年間鍛えていたとしてもお前を抑え込める計算で術式は組んである筈」

 

「四年前……ふふ、そうだな。四年前なら手も足も出なかっただろうな。だが、言った筈だ、お前は1つミスを犯したと。それがお前の敗因だ」

 

「ミスだと? ふふ、はは! アキャキャ! ウキャキャキャ! 何を戯言を!! あの状況のどこにミスがあった? それに何勝った気でいるんだ? アキャキャ! この死に損ないがぁぁああああああああああああああああああ!!! 」

 

 何千本もの紙の束。それを敵は一点に収束させ、巨大な電柱のような物体を創り出す。そして、それをお兄さんに向けて放った。

 しかし、お兄さんはそれを見たまま動かず、その攻撃が当たる直前、ただ、目の前に右手を一本だけを突き出しそれを受け止めた。

 

「な、なにっ!? 」

 

「……俺は今までの人生、ここまで自分の感情を制御できないと思った事はない……今まで……生きてきて、ここまで誰かを愛したことはない。だが……お前はそれを奪った。キャロを……よくも………」

 

「な……んだ…………(馬鹿な……このゼロ・ポイント・フィールドは常人……少なくても四年前までの奴の力なら問題なく無力化できた筈……けど奴は弱まるどころか……さっきより…………)」

 

 ミシミシと紙の束から聞こえる筈のない音が鳴り始める。いくら硬化してるといってもあれは紙の筈だ。だがあれだけ密集していれば当然手で、それも手の握力だけで潰すのは人間のできることじゃない。しかしお兄さんはそれを砕いた。

 

「くっ、紙技……《鶴の折り紙》!! 」

「無駄だ……」

 

 お兄さんに追撃するように敵が放った鶴に折られた紙。お兄さんはそれを軽く手を横に振っただけで粉々にした。けどそれは見ていておかしな光景だ。

 何故なら折り紙が粉々になったところからお兄さんまでは少し距離がある。お兄さんの手はそこまで届かないのだ。つまり、お兄さんは何らかの形で素手で、魔力も使わずに衝撃波を生み出したということになる。

 

「っ!? 」

 

「クラン・ペーパー……お前では、今の俺は殺せない」

 

「何? 」

 

「言った筈だ、お前はミスを犯したと。四年前、お前は過去の世界で俺の体の骨や筋肉をズタズタに破壊した。これが何を意味するのか……わからないわけじゃないだろ」

 

「ふひゃひゃ! 何だそれは、筋肉を骨を破壊したから? それが何? 治ったから強くなったとでもいうの? アヒャヒャ! 貴方馬鹿? フヒヒ! ヒーっヒー! そんな事あるわけ……が…………」

 

「自分で言ってて……気がつかないのか? 」

 

 お兄さんが呆れたようにそう言うと、突然敵の顔色が変わる。何かに気づいたようだが、私にはよくわからなかった。しかし敵がある単語を呟いたことで、私の中で全てのピースは揃った。

 

「超回復…………」

 

「そうだ。俺の力は四年前の『100倍』。今ならこんな事もできる。ペン技遠式……三の型……《緑貫》!!! 」

 

 私にも多少の知識はある。通常、人間の筋肉が鍛える事によってキレると、それを元に戻す為に筋肉が回復しようとする。この間が筋肉痛と呼ばれる物だ。

 だが元に戻った筋肉はキレれた部分……そこが元の約2倍になると言われている。

 しかしお兄さんの口ぶりから、昔言っていたことに関係するとわかる。おそらく筋肉組織に異常をきたしているお兄さんの体は通常回復して2倍の所を100倍になる。それが私の答えだ。でもそうなると、お兄さんは人というにはあまりにかけ離れた力を持っていることになるのだ。

 

「そんな物、はたき落とせば! ……なっ!? 」

 

 緑の色を纏ったお兄さんのボールペンは敵の目の前で消滅する。正確にはお兄さんが放つ力が強すぎた為にボールペンが空気抵抗に耐え切れずに塵になった。そう考えるのが正しいだろう。

 

「クラン・ペーパー……お前は人の大事なものを踏みにじり過ぎた。キャロや多くの仲間を苦しめたその行い、断じて許すわけにはいかない」

 

「く、くるな! 死ねぇぇぇえええええええ!!! 」

 

 自分の身の危険を感じ始め、敵はガムシャラに攻撃を仕掛ける。もはやその場は大きな爆発でも起きているのではないかというくらいメチャクチャになっていた。しかしその中心で無傷のお兄さん。明らかに敵との力の差を感じさせる。

 

「クソっ!? 止まれ!! 止まれ!! 」

 

「無駄だ、俺にそのフィールドは通用しない」

 

「くっ……な、なら……時越えの砂時計よ!! 」

 

 キャロさんの時と同じく、敵は高らかとペンダントをかざす。すると敵は消え、突如としてお兄さんの後ろへ現れた。私が気がついた時にはもうお兄さんのお腹は手で貫かれた後。敵は殺したと笑っている。しかしその刹那、貫かれていたお兄さんの体が今まで幻を見ていたかのように消えた。

 

「き、消えた!? 幻影!? 違う!? 何だ、手応えはあった筈だ!? 」

 

「敵に恐怖を感じた者は戦場では生き残れない。前線にいたお前なら分かってるはずだ。お前が殺したのは俺の残像。……お前は今俺に恐怖している」

 

 声がした途端、今度はお兄さんが敵の後ろへ現れる。しかしこれはもう人間同士の戦いではない。言いたくはないがバケモノ同士の戦いにしか見えなかった。

 

「きょ、恐怖ですって……そ、そんな事ありえないわ!! 時越え、うがっ!? い゛ぎゃぁぁああああああああああああ!? ああっ、うぁぁ」

 

「何度も同じ事を俺がさせると思うか? 」

 

 すでにお兄さんに左手を潰されている敵は空いている右手でまた砂時計を抱えた。でもそれが発動する瞬間、お兄さんのボールペンがその砂時計ごと敵の手を射抜く。それにより砂時計は完全に壊れ、粉々になってしまった。

 

「嘘……そんな……これじゃ……やり直せない。私の、あの方の野望が……ぁ……ああっ、い゛やっあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! 」

 

「終わりだ」

「っ!? がっ!? かっ…………」

 

「これは……そこに倒れている仲間の分」

 

 敵がお兄さんの拳をもろに腹にくらい、体の空気を全て吐き出す。そして 、みんなの無念を晴らすかのように、お兄さんの逆襲が始まった」

 

「がふっ!? 」

「これはリンの分! そしてこれは……」

 

「うっ……ぐっ、グゾぉ……あ、ぐわぁぁあああああああ!? 」

「死んでいったキャロの分だぁぁぁぁああああああああああああああ!!! 」

 

 リンさんの想いを込めた拳の後のキャロへの想いのこもった回し蹴り。それにより敵はぶっ飛び近くの木に直撃する。さらにはあまりにも威力が強すぎたためか、その木が弾け、小爆発のようなものを起こし、私達を押さえ込んでいたフィールドが砕けた。

 

「あ、体動く! キャロさん!? キャロさん!? 」

 

 フィールドが砕けた事で動けるようになった私はすぐ隣のキャロさんに声をかける。しかしいくら揺すってもキャロさんも目は開かなかった。自然に目から涙が落ちる。

 もうダメなのか。キャロさんを助ける方法は、そう思い、希望を捨てずにキャロさんの胸の音を確認しようとした時、それをいつの間にか近くまで来ていた。ギンガさんに止められた。

 何故と思ったが、ギンガさんの顔を見てそっとしといてあげなさいと言われているように感じ、私は手を下す。

 

「キャロ……助けてあげられなくてごめんなさいね」

「むぐっ!? 」

 

「え? 今……あれ? 気のせい……だよね………」

 

 今一瞬キャロさんの声が聞こえた気がしたが、どうやら空耳だったようだ。私はまだキャロさんの死を受け入れられないらしい。

 けどここで疑問が1つ。何故自分で止めておいてギンガさんはキャロさんの口に手を置いているのか。聞いてみようかと思ったが、逆らうとギンガさんは怖いので止めておいた。

 

「くっ……ヒヒャヒャ……アヒャ、アヒャフヒャヒャヒャヒャ! もういいわ……もうお終いよ。あなたのおかげで……私はあの方の所へは戻れない。やり直しもきかない。だったらせめて……お前を道ずれにして死んでやるわ。フフ、昔あの小娘から頂いた、無限とも呼べる魔力、それを使ってお前だけでも地獄におとしてやる!! キエェェエエエエエエエエエエエエエエエエ!!! 」

 

「ま、魔力が収束していく……まさか!? リッ君、逃げて!? 多分そいつは」

 

 なのはママは何かに気づきそう叫ぶ。だがお兄さんはその場から動こうとしない。きっと分かっているのだろう。今逃げても間に合わない。それどころか、後ろにいる私達が危ないという事を。

 

「ちっ、面倒な事を……ペン技遠式……二の型……」

 

 お兄さんはペンを大量に真上に飛ばす。そして数秒後にそれは起きた。どういう原理かはわからないが、さっき投げた大量のボールペンはまるでミサイルのごとく敵むかい落下してきている。でもそのスピードはとても落ちてきていると言える生やさしいスピードではなかった。

 

「《花火》!!! 」

 

「フヒャヒャ! コザカシィィィイイイ!!! みんな吹き飛べェェエエエエエエエエエ!!!

 

「くっ……やはりダメか」

 

 とつもない量の魔力を収束している為か、敵はお兄さんのボールペンを全て燃やした。これでは攻撃は全てはたき落されてしまう。時間がない。私はそれに臆し、恐怖する。自分や友達、家族の死。お兄さんの死を。

 しかしお兄さんは諦める事なく敵を見ていた。鋭く、真っ直ぐな眼差しで。

 

「せめて砕けないボールペンがあったら……」

 

 私は何かないかと必死に考える。お兄さんを助け、最後に自分には何ができるのかを。

 

「お兄さんを助けるには……助けるには……どうすれば。砕けないボールペン。そんな物が本当にあったら……ん? 砕けない? ……あ! そうだ、これなら……お兄さん! これ!! 」

「ん? おっと!? ……これは……」

 

 私は1本のボールペンをお兄さんに投げた。それは私の大切な物。昔お兄さんに貰った1本のボールペン。それには私とお兄さんの思い出が詰まっている。だから私は忘れていない。このボールペンの強度は普通の物とは違うとお兄さんが言っていたことを。

 

「無駄無駄!! 私の周りは今や高密度の魔力で囲われている。どんな攻撃をしようと、ボールペンごときに貫けるはずがないわ!! 」

 

「確かに普通じゃ無理だ……だが……こいつならいける」

 

「なに!? 」

 

 お兄さんはそう言うと見た事もない構えを取り出した。私が渡したボールペンを右手で持ち、もう1本のボールペンを左手で持つと、まるで弓を引くような構えをとりだしたのだ。丁度エアー弓矢をするように。右手を肩の所まで引き、左手を前にピンと突き出す。

 

「アヒャヒャ! 何かしらそれは? 遊びなら付き合わないわよ? ウキャキャキャ! 」

 

『フフ、お前は目の前で消え、死角から現れるペンを見た事があるか? 』

 

「アキャキャ! とうとう頭までおかしくなったのかぁ? こいつはいい。そんな事できるわけないだろう? ウヒャヒャ!! 」

 

 お兄さんの言葉には私も含めみんな首をかしげる他ない。言っている事がよくわからないのだ。物理法則的に、物を投げるとなれば真っ直ぐにしか飛ばない。それを目の前で消して別の角度から攻撃を仕掛けるなど不可能な事。そんな事はあまり知識のない子供の私でもわかる。

 当たり前だがこの場にそれを理解できている人間いない。お兄さん以外は。

 

 

「2ペン流ペン技極式……『幻筆不可視の型』……」

 

 




 短編・キャロ様劇場

 第11話《流石はギンガさん》

 これはキャロが陸飛にお姫様抱っこで運ばれている時の事。実はキャロ、フィールドの影響で体の力を奪われ、体力も限界だったが為に意識を軽く落としただけだった。

 つまり……キャロはこの時すぐに起きていたのだ。

【私のキスで陸飛さんの記憶戻ったぁぁ! 何これ、夢見たい!! 私お姫様! お姫様みたい! やっぱり陸飛さんは私の王子様なんだ! キャー! 】

 このように久々に子供のようにはしゃいでいた。そして、少し悪ノリが過ぎ、死んだ事にされてしまったキャロは起きるに起きられない状況になった。

【どうしよう……なんか起きたら場違いな気がする…………】

「あ、体動く! キャロさん!? キャロさん!? 」

 この時、ヴィヴィオがキャロを呼びかけ、キャロは心底救われていた。

【ヴィヴィオ! ああ〜ヴィヴィオ本当にヴィヴィオは良い子だよ! これで私が生きている事に気付いてくれる筈。この件が片付いたら陸飛さんとデートぐらいなら許してあげるから。……あれ? ギンガ……さん? ギンガさんも心配してくれてるのかな? そうだよね、ギンガさんは私の大事な心の……】

「キャロ……助けてあげられなくてごめんなさいね」
「むぐっ!? 」

「え? 今……あれ? 気のせい……だよね………」

 ヴィヴィオからしてみれば、ギンガがキャロの口に手を置く事は疑問に思う事だったかもしれない。しかしギンガからしてみればそれは違った。何故ならこの時キャロが生きている事に気付いていたのだから。

【く、苦しい!? い、息が……っ!? 】

 気づかれない程度にキャロは薄めを開けてギンガを見る。するとどうだろうか。キャロには女性がしてはいけない笑みをギンガは浮かべているように見えた。

【ギンガさん!? 気付いてますよね!? 私起きてるの気付いてますよね!? 私ギンガさんに対して今日凄いフォローしてましたよ!? 敵に対してあんなに怒りぶつけてたじゃないですか!? なのにギンガさん、まさか私を殺して陸飛さんの隣奪うつもりなんですか!? 】

 キャロはギンガに口と鼻を塞がれているため息ができていない。しかしキャロは朦朧とする意識の中で気付いてしまった。やはり究極の敵はいつも自分のそばにいた事を。

【ちょっ!? 本当に……し、死ぬ……こ、殺され……る。もう……い、意識……が……え? 】
「キャロ……貴方がいなくなるなんてぇ……やだぁ…………」

 ギンガは突然泣き出した。キャロを見ながら笑みを浮かべて。

【どっちなんですかギンガさん!? 私に死んで欲しいのか、生きて欲しいのか!? い、言ってる事と……やってる事が……違…………でも……流石は……ギン……ガ……さん…………非常識……すぎ……る…………】

 キャロはここで意識を落とした。だがギンガはこの時。

【息してる……よかった、息してるよぉ】

 単純にキャロが生きていた事が嬉しくて酸素の出入り口を塞いでいる事に気付いていなかっただけであった。








次回もよろしくお願いします。

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