魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」   作:ヘルカイザー

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ども〜

遅くなりました。

ではよろしくお願いします。


第66話《反撃開始……キャロの切り札》

「うっ……カス……ト……え? 」

「大丈夫? ヘイト? 」

 

「レ……ヴィ? それに……つっ!? 」

「動かないでください! まだ治療してる最中です」

 

「シュテル……」

 

 私が目をさますとさっきいた場所に寝かされ、回復魔法をかけられていた。私は助かったらしい。だがそうなるとすぐに彼の生死が心配になる。この時私は少し取り乱していた。ヴィヴィオ達の安否もそうだったが、私達を逃がすために犠牲になったカストの事を考えずにはいられなかった。

 もし死んでいたら、そう考えると取り乱さずにはいられない。大人しくというシュテルの言葉を聞かずにシュテルの肩を掴み、カストと子供のように叫ぶ。

 

「カストは!? ねぇ、2人ともカスト見てない!? 私よりカストを」

 

「ちょっ、落ち着いてくださいフェイト!? 」

 

「カスト!? カストは私達の為に!? ……っ!? 」

「少し落ち着けフェイト! 」

 

「……ディアーチェ? 」

 

 私を少し強く肩を掴み、私を止めたのはディアーチェだった。真剣な眼差しで、眉間にしわを寄せながら私をその場にそっと寝かせる。するとディアーチェの後ろからもう1人女の子が顔を出した。

 

「私もいますよ〜! 」

 

「ユーリ」

 

「それでだがフェイト。すまない、我らはカストを見てない。見つけたのはフェイトだけだ」

 

 ディアーチェに見ていないと言われ、私は悲しくなった。でもせっかく助けてくれた4人に、いつまでもこんな顔を見せるわけにもいかず、私は無理矢理笑顔を繕ってみせる。しかしそんな物はすぐにレヴィに見破られた。

 

「ヘイト? 大丈夫? 泣きそうだけど。僕はそんな悲しそうなヘイト見たいくない。そうだ! 僕がカスト探してきてあげるから! そしたらヘイト元気でるよね! 」

 

「レヴィ……ふふ、私はフェイトだよ。……ありが……とぅ…………」

 

 不思議だった。レヴィは太陽のように私の心を溶かしてくれた。私が今動けない代わりに、自分がカストを探しに行くと、ガッツポーズをしながら言ってくれた。だから私は、素直に嬉しく、レヴィの求めてくれた笑顔をレヴィに向けてお願いした。

 

「なら、シュテル。我らはヴィヴィオ達のところに行こう。急げばまだ間に合う筈だ! 」

 

「はい! 」

 

「フェイトさんの事は任せてください! 」

 

 レヴィは私の為にカストを探しに、ディアーチェとシュテルはヴィヴィオ達の所へ。3人はそれぞれ、心強くも動いてくれた。そしてシュテルから引き継ぎ、私を一生懸命治療してくれるユーリ。

 

「ごめんねユーリ……迷惑かけて」

 

「へへ、困った時はお互い様です」

 

「……ユーリは優しいね」

 

「えへへ、そんなぁ〜……っ!? あ、あれ? あれって……」

 

「どうしたのユーリ? ……っ!? 」

 

 それは一瞬だった。フワッとした風が吹いたと思った時。ユーリが驚いて顔である方向を凝視して固まった。だから私も気になってその方向を見る。するとそこで見たのは全速力で私達の横を通り過ぎ、今さっきヴィヴィオ達の所へ向かった、ディアーチェ達と同じ方向に向かっている、私達のよく知っている人間の姿だった。

 

「り、陸!? 」

「陸飛!? 」

 

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 

 

「あっ……かっ……」

「キャロさん!? キャロさん!? 」

 

「そこでいくら呼びかけても無駄よぉ〜? キャキャキャ! 私の得物は確実にこの娘の心臓を捉えている。これで生きている人間なんていない。はは、あはは! ウキャキャキャキャ! 」

 

「ごほっ!? ……ふふ……言ったはず……ですよ? 慢心は……足元を……救われる……と」

 

「ああん? キャキャ! 負け犬の遠吠えかし……っ!? な……に…………」

「どこ見てるんですか? 後ろですよ。愛気竜流し……《竜力愛破》!!! 」

 

「かっ……ぐっぎゃぁぁぁぁああああああああああああ!? 」

 

 今回は本当に終わりだと思った。だが今目の前で串刺しにされていた筈のキャロさんが元からいなかったかのように消え、代わりに敵の背後から強烈な一撃を叩きこみながら現れたのだ。あれはいつだか夜中にアインハルトさんをぶっ飛ばした時の技。

 強い……素直にそう思った。あのような化け物を相手にして、あそこまで冷静に、優位に立ち回れるキャロさんを強いとしか言いようがない。何がキャロさんをあそこまで変えたのか。いくら考えても私にはわからない。想像がつかないのだ。ただ1つわかるのは、キャロさんから負ける雰囲気を感じないということだ。

 

「ごほっ!? ごほっ!? ……ぉ……のれぇ……」

 

「どうしたんですか? 息……上がってますよ? 」

 

 単純な挑発。さっき敵に言われ、やられた事をそのままやり返している。今なら敵も冷静ではない。だから今の挑発はかなり有効だったらしい。その証拠に唇を噛み締め、すぐにでも噛みつきそうな顔で、キャロさんを睨んでいた。

 それにしても何故さっきの攻撃をかわせたのか、私は気になった。だが次の瞬間、それは納得のいく形で私の前に現れる。

 

「ぐっ……そこにいるねずみぃぃがぁぁぁああ!!! 出てごい゛!!! 」

 

「ちょっ!? それ洒落にならないわよ!? 」

 

 敵が突然トチ狂ったかのように近くの木を薙ぎ倒すと、そこから大慌てで飛び出してきた人間がいた。バリアジャケットをきた、ティアナさんである。どうやら最初からそこに隠れていたようで、さっきの現象は幻影によるものらしい。

 

「あはは、見つかっちゃいましたね。小細工はここまでですか」

 

「みたいね。まったく、こんな面倒ごとに巻き込んで、後でご飯奢りなさいよ? 」

 

「そうですね。今回ばかりはそれくらいしないと申し訳ないですから。喜んで奢りますよティアナさん」

 

「よく言うわよ……人の事脅して無理矢理協力させた癖に…………」

「さぁ〜なんの事ですか? 」

 

 ここにティアナさんがいるということは、さっきキャロさんが消えたように見えた説明がつく。ただどうしてなのか。ここまで優位に、ましてや2対1のこの状況でも、敵は余裕そうだ。確かに腹が立って冷静さを失っているのかもしれないが、それでも私には互角の戦いには見えなかった。

 

「ま〜た、余計なねずみが増えたわね? ムカつく、どうしてこうも腹立たしいのかしら……死ね……てめぇら全員ここから生かして返すものか!! ぶち殺してやらぁぁぁああああああ!!! 」

 

「ひうっ!? 」

「ヴィ……ヴィヴィオ……」

 

 完全に人が変わったような敵の怒気に私は悲鳴をあげた。だがその時、私の足を誰かが掴む。後ろで倒れているリンさんだ。でもその声は弱々しく、もう元気なリンさんの面影はなかった。

 

「え? リンさん!? よかった、まだ意識が」

 

「逃げる……ですですよ」

「そんな、リンさん達を置いてなんて」

 

「このままじゃ……みんな殺されますですです。あいつは……人を……ゃ…めて、ごほっ!?、ごほっ! 」

「リンさん、もう喋っちゃダメだよ!? 」

 

 リンさんは見るからに限界に近い状態だった。限りなく人外に近い、バグキャラのようなリンさんでさえ、人間である以上死ぬ時は死ぬ。ましてや、リンさんから流れる血は早く病院に連れて行かなければならない量だ。このままではいつ死んでしまってもおかしくない。

 

「キャロ、リンさんマズイんじゃない? 医療の知識がなくてもあれはマズイのわかるわよ」

 

「わかってます。でもあいつを倒してからじゃないと」

「じね゛ぇぇええええええええええ!!! 」

 

 おびただしい数の紙の槍。それはキャロさんとティアナさんに襲いかかる。すると、ティアナさんではかわしきれないと判断したのか、キャロさんがティアナさんの前に立ち、その攻撃全てをいなし、あさっての方向に逸らした。こうしてみているとキャロさんも十分人外化しているように見える。

 

「キャ、キャロ……助かったんだけど……あんたそんな武闘派な子だったっけ? 」

 

「ふふ、乙女のたしなみです」

 

 そう言い、ティアナさんにウインクをしながら微笑む。私は思うのだ。それは絶対に違うだろうと…………

 

「いや、それ絶対違うから。まぁ、いいけど。で? どうするの? このままだとジリ貧よ? 」

 

「大丈夫です。手はあります。もうそろそろだと思いますが」

 

「もうそろそろ? 」

 

 キャロさんは何かを待っていた。私は勿論ティアナさんも何を待っているのかわからない。今のキャロさんの考えは理解できないのだ。こう状況でこうまで冷静でいられるキャロさんは異質に見える。隣にいるティアナさんと比べてしまうと悲しいくらいティアナさんは普通だ。

 

「ゴロ゛ス! 次は殺してやる!! 紙技!! 惨刀か、っ!? バインド!? ぐっ、このっ! 」

 

 突然敵をピンク色のバインドが拘束する。一体誰がやったのかと周りを見渡せば、敵の真上になのはママがいた。

 

「ギンガ、今だよ! 」

 

「何!? なっ!? 」

「愛・殺・拳……《愛殺情砕拳》!!! 」

 

「ごはっ!? あ……あ゛あ゛っ…………」

 

 バインドで完全にリズムを崩された敵は、突然真正面に現れたギンガさんに反応しきれず、ギンガさんの拳をみぞうちへと防御なしでくらった。

 考えただけでゾッとする。あの拳を防御しないでくらうなど、殺してくださいと言っているようなものだからだ。

 

「陸さんを悲しませる者は許さない。陸さんからキャロを取り上げようとする者も、私は絶対許さない!! 愛・殺・拳……《爆砕愛情連拳……『100連打』》!!! 」

 

「なぶっ!? 」

「オッラァ!!! 」

 

「ごぶっ、あぶっ!? 」

「はぁぁああああああああああああああ!!! 」

 

「ごほっ!? おぶっ!? オエ゛ぇ!? 」

 

 凄まじい拳の連打。おそらく1発1発がなのはママの砲撃に劣らない威力がある筈だ。ギンガさんの技は物理攻撃最強と言ってもいい。

 その拳の前ではシールドはただの紙切れの如く、武器は柔らかいアルミのように粉砕される。

 そして、その拳は触れる物全てを粉砕する愛の拳だ。

 

「ラァストォ!!! 」

「がっ!? 」

 

 100発の拳。その全てが同じ場所。みぞうちだ。普通の人間ならもう死んでいる。だがそれでも、敵は一歩一歩お腹を抱えながら後退り、必死に呼吸をしようと息を吸う動作をしている。

 

「はっ!? はっ!? ……い゛ぎ゛……がっ、でぎ……はっ、はっ…………」

 

「キャロ、行くわよ! 」

「言われなくてもそのつもりです! 」

 

 ギンガさんはひるんでいる敵に対し、さらに追い討ちをくらわそうとキャロさんに呼びかける。しかしキャロさんはギンガさんが声をかけた時には走ってギンガさんの横を通り過ぎた直後だった。

 今この瞬間、私は恐怖する。この2人は敵に回したら危険であると。

 

「愛・殺・拳……」

 

 キャロさんが先に敵の前に移動し、その後ろからギンガさんが拳を構え始める。だがギンガさんの拳の弾道はキャロさんに向いており、後ろを見ていないキャロさんは避けられる状態ではない。

 

「愛気竜流し……」

 

 異様。そこにいた誰もが目を疑う光景。それは誰にも真似できないキャロさんとギンガさんだけの合体技。

 

「《超愛拳》!!! 」

 

 ギンガさんがそう叫ぶと同時に真下に魔法陣が展開。拳に魔力が大量に込められていくのがわかる。そしてそれは、風の抵抗を無視し、ゴォォ! という音を立てながら後ろを向いているキャロさんへと向かう。

 

「《超愛乱流》!!! 」

 

 しかし刹那。キャロさんがそれを後ろを向いたまま右手で触れ、回転するようにかわすと、明らかに威力と音が倍になったギンガさんの拳が敵の顔面を直撃した。

 

「あぶっお゛ぼっ!? 」

 

 グシャリと聞こえてもいない音が聞こえた気がした私だが、空耳だと言い聞かせ、この場の状態を確認した。敵は数十メートル先にぶっ飛び、大の字に倒れたままピクリとも動かない。勝ったのか、それともまだ立ってくるのか。私は嫌な汗をかきながら見る。

 しかし敵はフラフラと立ち上がり、まだ終わりじゃないと言わんばかりにこっちを睨みつけた。

 

「ヴィヴィオ、大丈夫!? 怪我はない? 」

 

「マ……マ……わ、私は平気だよ……でも、リンさんが!? 」

 

「え……リン……りん? リンりん!? 」

 

 少しこの場に余裕が出来たことで、なのはママが私のところに降りてきた。そして、重症のリンさんに気づくと急いで駆け寄り、回復魔法をかけていく。

 しかし医療のプロではないなのはママでは限界があった。

 

「ダメ、このままじゃ……」

 

「なの……りん……はやく……逃げ」

「喋らないで! すぐに病院に」

 

「させ……ごほっ!? ごほっ!? ……ねぇわ……言った……筈……だ……てめぇらここから生きて返さねぇぇええええええ!!! アキャキャキャキャキャキャキャキャキャ!!! 」

 

「ちっ! しぶといわね。でもこれで!! 愛・殺・拳……《愛殺情砕、え…………」

 

「なっ、ギンガさん!? 」

 

「クヒ……まずは1人。じゅるり! 」

 

 キャロさんの悲痛な叫びで私達は一斉にギンガさんの方へ視線を戻した。するとそこには左手を飛ばされ、紙の槍でお腹を貫かれてるギンガさんの姿があった。

 

 




短編・キャロ様劇場

第9話《私……知ってるんですよ? パート2》

『ティアナの場合』

「あれ……キャロから? 何かしら」

それはキャロからのメール。ただしティアナの場合はキャロがクラン・ペーパーと激突した日より1日前に送られた。
これはティアナが本局を訪れていた時の事。

『ティアナさん、私から一生のお願いがあります。もしこれが叶うならティアナさんにどんなお願いでも協力も惜しみません。

どうか私を助けてください。明日、指定した時間にある場所に来て欲しいんです。そして、何も聞かず私と戦ってください。注意しておきますが、これは命がけです。下手をしたら私もティアナさんも死にます。

でも私が明後日の幸せを手に入れるためには明日をどうしても乗り切らなければなりません。どうかお願いします。

…………キャロ・ル・ルシエ』

内容はここで終わっていた。そして2枚目に場所と時間。ティアナは困惑した。しかし大事な友人の手前、ティアナは迷った。何故内密に行動が必要なのか。自分1人ではなく、管理局の応援を仰げばいいのではないかと。

だがメールに3枚目があるのを気づき、それを開けた瞬間、ティアナはモニターを操作していた手をプルプルと震わせた。

『P.S

あ〜そうそう。言い忘れましたが。

私……知ってるんですよ?

ティアナさん、最近気になる人が出来ましたよね? 仕事の同僚で、とても優しそうな人のようですが。

そんなティアナさんが実はその彼をこっそり物陰から見てたり、最近ではサーチャーで眺めたりしてますよね? けどその彼が好きだから仕方ないのかぁ〜……あれ? でもこれって……ストーカーじゃないんですか?

ふふ、もし彼が知ったらティアナさんの事……幻滅するだろうなぁ〜。

あ! なんでもないです、忘れてください。

それでは、あくまでティアナさんのお心遣いを期待します。』

それが3枚目の内容だった。

「忘れられるわけないでしょぉぉぉがぁぁぁああああああああああああ!!! 」

そんなティアナの叫びは本局中に響き渡ったと言う…………







次回もよろしくお願いします!

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