魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」   作:ヘルカイザー

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遅くなりました!

ではよろしくお願いします。


第65話《愛気竜流しVS紙技……時越えの砂時計》

「キャロ゛ざん゛……」

「もう大丈夫だよヴィヴィオ。ここからは私に任せて? 今回は『今まで』とは違うから」

 

「え? 」

 

 私を助けてくれたキャロさんは私は少し離れた場所で下ろすと、ゆっくりと敵の方へ歩いていく。けどその雰囲気はいつも感じるキャロさんのものではなかった。まるでもっと歳上を相手にしているような不思議な感覚。

 

「キャキャキャ! 毎度毎度よくもまぁ〜邪魔するわよね? いい加減にして貰えないかしら? ……その顔ヘドが出るわ」

 

「ふふ、今日で最後にしませんか? 私もいい加減貴方の顔を見るのも嫌になってきましたから」

 

「あ゛あ゛? ふざけないでくれる? たかが2回私に会ったくらいで何を言っているの? 私が!私が何度お前に計画をぶち壊しにされたと思ってる? その度にお前の顔を見ているんだぞ!!! ……ぷっ! ふひゃひゃ! でもそうね、これは言ってもわからないのよねぇ〜? キャキャキャ」

 

 会話の内容が噛み合ってないのか私には理解できなかった。だが2人は不気味にも笑みを浮かべ、足は止めない。互いに近づき、握手のできる距離まで詰めあった。

 

 互いに目を見て見つめ合い、鋭い敵意を向けている。

 

「何か言い残す言葉……あるかしら? 」

 

「……いっぺん死んでください? 」

「キャキャキャ! それが最後の言葉ね? いいわ! ちゃんと聞いてあげたわよ? だからさっさと死ね!!! 」

 

「キャロさん後ろです!? え…………」

 

「っ!? ……な、なんだと……どうして…………」

 

 さっきみんながやられたのと同じ方法で敵はキャロさんを攻撃した。当然私もそれを知らないキャロさんは防げるはずないものと思っていたのだが、キャロさんは後ろも見ずに敵の手を掴んでいた。右手を後ろに回し、背中から数センチのところで受け止めている。

 

「いい加減、芸がないですよね貴方も。初見ならともかく、『17回』も見ていれば貴方の攻撃なんてしていないのと同じ。愛気竜流しを体得した私に同じ技は通用しません。ぐ、ぬん! 」

 

「なっ!? ぎゃっ!? 」

 

 どんな力の流し方を使えば可能なのかはわからない。だが、自分よりも遥かに重い敵をあの体勢から自分の前に叩きつける。敵も驚いているが私も驚いている。

 キャロさんが強くなったのは私も知っているし、みんな認めていることだ。でも今日のキャロさんはそんな言葉では片付けていいものかと迷うレベル。

 

「ぐっ……このっ……(馬鹿な、私のこの力は感知できるものじゃない。にも関わらず死角からの攻撃をどうやって反応した? それに……17回? ふふ、何を馬鹿な。馬鹿な事を考えるんじゃない、私。そんな事あり得る筈はない。聞き間違えだ)」

 

「もう終わりですか? なら、次はこちらから行きますよ? 愛気竜流し……《双愛魔葬》!! 」

 

「ぐっ、いきがるなクソガキがっ!? ……あ゛……がふぁっ!? 」

 

 キャロさんが立ち上がった敵に対して右足を踏み込み両手を合わせた掌底を敵のお腹に叩き込んだ。キャロさんの技は物理攻撃を受け流す柔の技。攻撃の威力をゼロとしてその力を倍かそれ以上で返すもの。しかし今は何をしたのか、完全にキャロさんが1人で攻撃しに行ったようにしか見えなかった。

 

「かはっ!? こほっ!? ……クソっ……っ!? 魔力が……貴様、何をした!! 」

 

「私の技は物理攻撃を完全に殺す事に極意があります。でもそれとは別に、体内の魔力を全て体外へ吹き飛ばす技もあるんです。貴方のその力は膨大な魔力によるもの。だからそれを封じさせていただきました。これでさっきの反則じみた技は使えませんよ? 」

 

「何? ふひゃひゃ! 凄いわぁ〜? でも本当に私の魔力全部飛ばせたかしら? 」

 

「今更負け惜しみですか? もう貴方の魔力は」

「魔力がどうかした? 」

 

「っ!? くっ!? 」

 

 敵は当然とばかりにキャロさんの後ろへと移動していた。しかし敵の手刀はキャロさんに完全に無力化され、その手をキャロさんによって押さえ込まれている。だからキャロさんに怪我はない。敵も悔しそうな顔はしているもののどこか余裕だ。

 私はこの隙にと思い、倒れているみんなを少し遠くへ運ぶ。ただ、敵の目もある為、下手に動けないのが現状だ。

 

「そんな、今確実に手がたえがあったはずなのに!? 」

 

「確かに私の保有魔力は全て飛ばされてしまったわ? 私のは……ね? ウヒャヒャヒャヒャ! 紙技……」

 

「っ!? 愛気竜流し……竜っ…………あ……れ? あ、しまっ!? 」

 

 敵の動きにヤバさを感じたのか、キャロさんは敵から距離を取ろうと動く。しかしその瞬間、戦いの外で見ている私には信じられない物が見えていた。

 理由はわからない。けど確実にキャロさんの動きが止まった。それはほんの数秒だったかもしれない。そうかもしれないが、動きが鈍ったとかではない。説明しにくいが、キャロさん自体がその全てを停止していたのだ。つまり……キャロさんだけ時が止まったように、私には見えた。

 

「《貫通紙》! 」

 

「うぐっ!? 」

 

「ちっ! 急所をズラしたか。やるわね? ヒャヒャヒャ! 」

 

「キャロさん!? 」

 

 キャロさんの左肩は、敵の尖った紙によって見事に貫かれていた。だがその光景を見ると、キャロさんが右手でその攻撃をズラしたように見える。もしかするとそうしなければ今の一撃でキャロさんは殺されていたのかもしれない。

 

「痛い? 痛いわよねぇ〜? 顔に出てるわよぉ? ウヒャヒャ! これで満足には戦えないでしょう? 待ってなさいすぐ殺してあげるわ? 」

 

「慢心は……ぐっ……ふふ、足元をすくわれますよ? 」

 

 

「はぁ? うっ!? な……に? かはっ!? ごほっ、ごほっ!? ……くそ!! 何をした!? うぐっ……まさか…………」

 

 敵が笑い、何故かキャロさんまでニヤついた瞬間、敵は苦しみ出し、血を吐く。そして、キャロさんの肩に刺さっている紙を抜くと、よろけて後ろに後ずさった。

 

「ご明察です。貴方が私の肩を貫いた衝撃を、貴方の身体に返させていただきました。こ、これでおあいこですね? うっ……はぁはぁ」

 

「おのれぇぇ小娘がぁぁ……あ? んふふ。どうしたのかしら? 息が上がってるわよ? 」

 

 私から見れば状態は五分と五分。けど内面的なものを見れば、キャロさんの方がキツそうに見えた。何故ならキャロさんの余裕は繕っている以外の何物でもない。

 

「ほんっと……どうして毎回毎回……この日の為に努力して、努力して……努力して……それでも、貴方を飛び抜けることはできない。正直もう終わりたいですよ。辛いんです。あの痛みだって、忘れるわけじゃないんです。まだ残ってますよ? 『貴方に殺されたこの17回』。その時感じた苦痛。分かります? 後悔と貴方に勝てない私の弱さが! 」

 

「ぐっ……まさかとは思ったわ? でも事実みたいね? 私が時を飛び越えて何度も記憶を継承しているように、お前も記憶を継承している。おかしいとは思った。どうしていつもいつもお前の邪魔が、どこにいてもお前がいる! だけど納得した。可能だわ? 記憶があれば。という事は……お前のその技は私を倒す為に編み出した物のようね? 前回はこんな事なかったもの。17回……私の計画をぶち壊しにしながら私を分析してたってわけ? ふふ、アヒャ! ふひゃひゃひゃひゃ!! 凄いわ……尊敬してあげる。誰かの為にそこまでできる貴方を。たった1つの、大切な人の為に……だが! だからこそ……目的が似ているからこそ! 私は貴方に負けるわけにはいかないのよ!!! 時越えの砂時計よ! 」

 

 敵が胸元からペンダント。その先端の砂時計がついているそれをかざした瞬間、世界が……絶望に変わった。私が気がついた時には……もう……遅かった。

 

「あぐぁっ!? うっ……ごほっ!? 」

「さようなら、キャロ・ル・ルシエ。最後のダンス、悪くなかったわよ? クヒ」

 

「あ……そん……な…………キャロさぁぁぁぁああああああん!? 」

 

 私はずっと2人の戦いを見ていた筈だ。にも関わらず、瞬きすらする暇もなく、気はついた時には、キャロさんの胸は9本の紙によって貫かれた後だった。

 

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 

「ん〜ふふふ〜陸さんまだ学校にいるかしら」

 

 時間はそろそろ夕方。学校は放課後だろう。勿論その時間を狙って来たのだが、最近陸さんとなかなか会えていない。だがやっと時間が取れた今日、私はご機嫌である。そして陸さんがいるであろう教室のドアを思いっきり開けた。

 

「陸さん会いに来ました!!! ……あ……」

 

「…………ギンガ……ちゃん? えっと……できればドア壊さないで入ってきてくれると…………」

 

「す、すいません陸さん!? 私最近欲求不満で、力加減がその……」

 

「ま、まぁ〜ドアは直せばいいわけだし。気にしないで。失敗は誰にでもあるわけで」

 

 私が失敗しても優しい優しい陸さんは私を許してくれる。だから私はこんなにも甘えたいのだ。故に、私は拳を強く、強く、強く握る。これから陸さんにたっぷり甘える為に。私のもてる最高の拳を陸さんに届ける為に。私の愛を陸さんの元へ届ける。

 

「陸さん……殴らせてください! 」

 

「へ……い、いやだよ」

 

 陸さんは相変わらず照れ屋だ。本当は殴られたくてしょうがない癖に。私は陸さんを殴って幸せを感じる。だからきっと陸さんは私に殴られて幸せを感じる筈だ。

 

「陸さん愛してます。もう我慢できないんです。だから殴らせてください! 」

 

「待って、待って!? その考え方おかしいよ!? 仮に僕の事好きでいてくれるのは『嬉しいよ』? でもだったら……あ……しまっ……た…………」

 

「嬉しい? えへへ、嬉しい……嬉しい……嬉しい……嬉しい……嬉しい……嬉しい……陸さんが私が陸さんの事好きなの嬉しいって言った。ああ〜もうダメ。殴るしかない!! 」

 

「だ、だからどうしてそうなるの!? 」

 

 私はどうすれば。陸さんは私の愛を受け入れてくれる。今なら受け入れてくれる。そう思ったらより強く拳に力が入る。ゆっくり、ゆっくりと顔を緩ませながら陸さんへと近づき、拳を上に上に上げていく。

 陸さんは自分の椅子から逃げるように立ち上がり教室の後ろの方へと後ずさり始めるが、それは壁で止まった。

 

「ギ、ギンガちゃん……やめよう? そんな事しても誰も幸せになんかならないから」

「私……幸せですよ? 陸さん殴るの」

 

「もう何言ってもダメだ……なら逃げ、ごふぁっ!? 」

「愛・殺・拳……《激情拳》!!! 」

 

 私は真横に走り出した陸さんのお腹を抉り取るように捉え、そのまま反対方向の教台へ殴り飛ばした。それにより、陸さんが命中した教台は壊れ、その場に陸さんが転がる。

 私は嬉しかった。陸さんがわざわざ私の殴りやすい方向の動いてくれるなんて、やはり陸さんも喜んでいる。私は心底感激に満ち溢れ、さらなる愛の為に陸さんの方へ歩いていく。

 

「ぐっ……い、痛い……っ!? 」

 

「はぁはぁ、陸さん愛してます。もう私どうしたらいいんですか? 愛が、愛が止まらないんです。久々の突き入れた拳の感覚。陸さんの硬い腹筋。その苦痛に歪んだ、私だけが見せられる顔! でも、それでも私の拳は陸さんを求めて飢えているんです。どうしたら、どうしたらいいですか? 私は陸さんと愛し合いたい。けど普通の恋人がする恋愛なんて私はいらない。拳で、陸さんとこの拳で語りあえれば私はそれで!! それで……陸さん? ……S◯X……したくありませんか? 陸さんまだ経験ありませんよね? 私もなんです。勿論本妻はキャロで構いません。私は愛人でいい。2番でいい。2番でいいから私を愛してください! これから一緒に裸になって肌を重ね合いながら口づけをし、『殴り合いましょう? 』」

 

「……ごめん……ついていけない…………」

 

 陸さんは目を丸くし、私を引いた目で見る。けど私はわかっている。陸さんは照れてるだけで本当は私と同じ気持ちであると。だから殴る。陸さんが素直になってくれるまで、私の愛は衰えない。より強く、鋭く、その輝きを増す。

 

「愛・殺・拳……」

 

「ギ、ギンガちゃん!? お願い、待って!? 」

「《愛伝貫通拳》!!! 」

 

「かっ!? 」

 

「愛してます陸さん? 」

「どぅわぁっ!? 」

 

 私の渾身の拳。私の愛を、身体全体に衝撃波という形で貫通させる奥義。この一撃で陸さんは黒板に突っ込み、そこにめり込む。すると丁度その時、邪魔なメールが入った。送信者はキャロ。最初は無視しようかと思ったが、キャロは用もなしに私にメールなどしない。だから無視などできなかった。

 

「これって……タイマー設定メール? どうしてわざわざ……っ!? させない。陸さんを悲しませる者を絶対私は許さない。キャロ、もう少し持ち堪えて、今行くから」

 

 私はそのメールを見た。だが瞬間、私は走り出す。陸さんをその場に置き去りにし、キャロがいる場所へ。陸さんの最後のつぶやきを聞かぬまま…………

 

 

「うっ……ギン……ガ……僕は……『俺』は…………」

 

 

 




短編・キャロ様劇場

第8話《私……知ってるんですよ? パート1》

キャロがクラン・ペーパーと戦いを繰り広げていた最中、数名の人間にキャロからの時間差メールが届いていた。

『なのはの場合』

「あれ? キャロからメール? 」

なのはは突然来たキャロのメールに疑問を感じながらもそれを開けた。だがそこに書かれていたのは信じがたく、なのは自身すぐに動かなければならない内容だった。

『なのはさん、このメールを見ている時私はもうこの世にはいないかもしれません。

でもそれは私の力不足にほかならないことです。だから私が死んでも気にしないでください。なのはさんには今まで本当にお世話になりました。

………キャロ・ル・ルシエ』

手紙の一枚目はここまでであった。自分の教え子に、仲間に何があったのか。なのはには理解できていない。しかし2枚目をめくったなのはの心境は、驚きと絶望だった。

『P.S

ところで……私知ってるんですよ?

なのはさん……陸飛さんの写真使って【ピーーーーー】してますよね? 陸飛さんは私の大事な人なのに何考えてるのかなぁ〜と思ってます。

ちなみに……私が死んだらその事実がなのはさんの知り合いにメールとして拡散します。

そんな事になったら……楽しいことになりそうですよね?

それじゃ……頑張ってくださいね、なのはさん』

なのはは固まる。顔を真っ赤にしながらそれを見て固まっていた。そして、3枚目に書かれていた場所を示す座標を見た瞬間、なのははバリアジャケットを展開。大慌てで今やっていた全ての仕事を放棄して飛び出して行ったのだった。

「なんで、なんでなんでなんで知ってるの!? 怖い怖い怖い!! キャロ怖いよーーーーー!? 」






次回もよろしくお願いします。



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