魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」   作:ヘルカイザー

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ども〜

遅くなりました。

ではよろしくお願いします。


第64話《圧倒的力……絶望の先に現れた希望》

「はぁ……はぁ……どうだクソッたれ! ……っ!? 」

「カスト!? 後ろ!! 」

 

「はい、お終い。なかなか楽しめたわよ? 初めてだったし、貴方とは」

「お……ごふっ!? ……馬鹿……な……(何の冗談だ……こいつ……人間の動きじゃ)クソ……がぁぁああああああああ!!! 」

 

「おっと!? 何よ、危ないじゃない? 大人しく殺されなさいな」

 

私とカストがたまたまこの場に駆けつけ、カストが戦い始めてしばらくした時それは起こった。私もカストが戦う場を見たのはJS事件に時と合宿の時。だけどそれだけ見て、カストは十分に強いとわかる。最後の攻撃もそうだ。あの攻撃だって避けられるタイミングと相手のバランスじゃなかった。しかし相手は瞬間移動したと思えるくらい、移動の痕跡を残さずカストの後ろへ回っていた。真後ろにいた私達も、気づいたのは相手が攻撃のモーションに入った後。明らかにおかしい動きだとわかる。リンさんと同じくお腹を貫かれたカストだが、何とか動き、真後ろへ攻撃、敵を遠ざける。

 

「クソ……いてぇ……の、貰っちまったぜ。ぐっ」

「カスト大丈夫!? 」

 

「馬鹿、下がってろって」

 

「カスト……ダメ! 馬鹿にしないでカスト。私はこれでも現役執務官なんだ、それで戦えるか戦えないかぐらいわかる。ここからは私が」

 

「たくっ……馬鹿はどっちだ。今の見てわからねぇのか? あいつは……人が超えちゃいけない一線を超えてる。それに……ぐっ、ちっ! リンがこんなにあっさりやられたんだ。この場であの野郎に勝てる奴なんていない」

 

普段カストがだいぶ負けず嫌いなのを私はよく知っている。そのカストが勝てないとハッキリ言うのだ。このまま挑むのは自殺行為だろう。しかしだからといって逃げられるかといえば、それは無理だ。こっちにはカストを含めた怪我人が2人。近くではアインハルトも気絶している。とてもじゃないが抱えて逃げるには無理があるのだ。

 

「フェイト……知り合いでも……何でもいい。戦力になりそうな奴ら片っ端から呼びかけろ! ……ぐっ、こいつはここで叩いておかなきゃならない類の相手だ! 」

 

「その……できない」

「あ? 」

 

「さっきからやってるんだけど……通信が一切通らないんだ」

 

「マジかよ……」

「ウキャキャキャキャ! 当たり前じゃない? この場は通信はおろか普通なら人だって近寄らない筈だわ? だって私が結界張ってるんだもの、キャキャキャ!! 」

 

今私は理解した。今の状況は私が思うよりはるかにマズイ状況だと。通信が通らないという事はこれ以上の応援は望めない。かといって逃げられないし、誰かが気づいてくれる事もないだろう。何故なら相手は何らかの目的の為に用意周到に準備をしている。このままでは全員殺される可能性もある。もし誰かが人質にでも取られた時にはお終いといってもいい。それだけは何としても避けなければならない。

 

「ヴィヴィオ、立てる? リオとコロナも」

「え? う、うん! 大丈夫」

 

「なら……ヴィヴィオ達にお願いがあるんだ。ここから逃げて、なのは達を呼んできてほしい。ある程度離れれば通信もできる筈だから」

 

「で、でもフェイトママ!? リンさんは!? このままじゃ」

「ぃ……って……ください……ですです…………僕は……大丈夫ですです……よ…………」

 

「リンさん……わ……分かりました!! リオ、コロ……ナ……え? 」

 

まず……私は、いや私達は理解が追いついていない。ヴィヴィオ達を逃し、かつ応援を呼ぶこの作戦。しかしそれはいきなり壊れてしまった。何をどうすれば可能なのか。いつ。一体いつの間にこのような状況になった。ヴィヴィオがリオとコロナを連れてこの場を離れようとした時だった。リオとコロナは敵の手に堕ちていた。

 

「そんな……どうして……リオ!? コロナ!? 」

 

「キャキャキャ! 大丈夫大丈夫、気絶してるだけ。そんなに慌てないでよ聖王ちゃん」

 

「てめぇ、今何を……した…………(こいつ……さっきの動きといい、まさか……いや、でもそんな事可能なのか? だがもし可能なら……こいつに勝つのは不可能だ。俺達はいつ殺されてもおかしくねぇ。はぁ……まさか、またこんな日が来るとは思わなかったんだが。しょうがねぇ…………)」

 

私も沢山事件の捜査やらで危ない状況を経験してきたが、今まともにどうすればいいのかわかっていない。いくら考えたところで、この状況を犠牲を出さずに収める方法が思いつかなかった。だがふと、カストを見ると何かに気づいたような顔をしている。私はこっそりどうしたのか聞いてみたりもした。しかしカストはなにも言わない。ただ私の方を見て少し笑うと、何か覚悟を決めたように目を閉じた。

 

「フェイト、悪い。許してくれなんか言わねぇからよ。せめて、死なねぇでくれよな」

 

「カスト? なに……をす「フェイト、カストを止めるですです!? ゲホっ、ゲホっ!? 」え!? あ……」

 

「オーバー・ザ・スキル……イレイサー!!! 」

 

「だめ、カスーー

 

カストがあんな顔をした訳が、この時初めてわかった。私達はどうやったかわからなかったが、気が付いた時にはあの公園から離れた場所にいた。通信も復活している。みんなも無事だ。ただ……この場にいないカストを除いては…………。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「《大神隠し》……ごほっ!? ごほっ!? うっく……どうだクソッタレ……」

 

「ちっ……やってくれたわね。流石は、元筆箱……消殺の消しゴムと言われただけはあるのかしら? まさか、空間まで消し飛ばせるとは思わなかった。でもわからない、それを最初から使えば、私から逃れることなんて簡単だったんじゃない? っと……思ったのだけど……どうやら、使っちゃいけない技だったらしいわね? キャキャキャ! そのザマで私とどう戦うというのか! ウキャキャキャキャキャ!! 」

 

 

「ふ、ふは。はははは! 確かに……この技、オーバー・ザ・スキルイレイサーは、俺の技の中で絶対に使っちゃいけない物だ。だがよぉ? 惚れた女守る為だぜ? 目の前でその女が死ぬかもしれねぇ……なら、例え、腕がぶっ壊れようと、足がぶっ壊れようが、自分が死のうが関係ねぇんだよ!!! 俺は……とっくに死ぬ覚悟……できてんだ。あいつの為になら!!! ぐっ……さぁ、どうした!! 殺せ、やってみろクソッタレぇぇぇええええええええぶっ……あ……かっ…………」

 

この技、オーバー・ザ・スキルイレイサーは、一撃放つと魔力はおろか、全身の筋肉をズタズタに破壊する物。だが俺はそれをフェイト達を逃がす為だけに使った。勝てなければ救えればいい。自分が死んでも救えれば、だから使った。そして、容赦なく俺の胸を貫いているこいつの得物は、俺の目に最後まで映っていた。

 

「ぴーぴーぴーぴーうるさいわよ? 黙りなさい? 言われなくても殺すわよ。キャキャ、犬死どうも? ウキャキャキャキャキャ! アキャキャキャキャキャキャ!! 」

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「カスト……カストが……嫌……そんなのってない……こんなお別れ」

 

「フェイトママ……」

 

「カスト……」

「フェイトママ!! 」

 

「っ!? ヴィ……ヴィオ? 」

 

フェイトママは泣いていた。普段涙なんて流さないフェイトママが。おそらくわかっているのだ。カストさんはもう生きていない。きっと殺されてしまったと。リンさんが止めたのは、単にカストさん1人が残るからではない。みんなわかっている。あれは、私達を逃がす為に使った技は、自分を壊す程の技。あの傷でその技、もう戦えるはずがない。

 

「悲しいのは……わかるよ。わかるけど、フェイトママは無駄にするの? 助けてくれた、カストさんがくれたこの時間。フェイトママは……」

 

「ヴィヴィオ……そうだ。なかったことになんか、させない。早く応援を」

 

「大丈夫、もうしたよ! だからここからもっと遠くへ」

 

「み〜つっけた! 」

 

「「「っ!? 」」」

 

私は聞き覚えのある声に背筋を凍らせた。早い。もう見つかってしまった。私から見れば、この人は化物。とても人には見えなかった。人の皮を被った悪魔。確かに応援はよんだ。しかしとても間に合わない。

 

「バルディッシュ……」

《イエッサー! 》

 

「フェイトママ何を!? 」

 

「時間を……できるだけ。応援が来るまで、私が生きてる時間だけは、ヴィヴィオ達を守ってみせる! (ごめんねカスト……でも、1人でカッコつけてどっかいっちゃうのはズルいよ。だから、私もすぐに)」

 

「時間稼ぎ? ならないわよ? だって今の私は……人間じゃないもの」

 

「っ!? ま、また!? (ダメだ、こんな速度の移動されたら、体が追いつくわけない。でもせめて)……バルディッシュ!!! 」

 

《プロテクション……ソニックムーブ》

 

また敵は一瞬でフェイトママの後ろへと移動。気づいた時にはもう攻撃モーションにはいっていた。カストさんやリンさんの時と同じ。このままではフェイトママもやられてしまう。だがそう思った時、フェイトママが背中に防御をはり、ソニックムーブで勢いをあげたバルディッシュを敵に向けて振り抜く。しかし当たったと思った攻撃は空を切った。代わりに残像がフェイトママの目の前で消える。

 

「くっ……なんで……いったい何をしたらこんなに早く動けるの? 」

 

「やるわね? 流石にスピードはあなたの方が上かしら? 」

 

「私の方が上? (そんな筈はない。現に私はまともについていけてない。なら何故、今の言葉は? )」

 

「ぐっ、フェ、フェイト!? よそ見をしてはダメですです!? 」

 

「え…………」

「はい、さようなら」

 

「あぐっ!? かっ!? ……ゲホっ!? ごほっ!? ……あ、ぁぁ……か、カストぉ……ごめんね。ごめ……ん……」

 

「あ……あああ、う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! フェイトママぁぁぁあああああああ!? 」

 

フェイトママは四方八方から紙でできた槍に串刺しのされ、そのままぐったりとしてしまった。あれでは助からない。殺された。奪われた。私の大切な人達が1人ずつ、消されていく。リンさんは意識があるが動くことはできない。だからこの場で動けるのは私だけだ。しかし、もう私は冷静に物事を見れる精神状態ではない。

 

「よくも……よ゛ぐも゛!!! うっ、ひぐっ、よくも!!! ぁぁぁああああああああああああ!? あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!! 」

 

「なっ!? ……こほっ、こほ!? ダメですです!? ヴィヴィオダメですです! 」

 

私は、勝てるわけない敵へ、拳を握りしめて突っ込んでいった。でも……そこで私が思い知らされたのは、絶望。そして私は朦朧とする意識の中で見ていた。触手のように伸びた紙の槍に弾かれ、バランスを崩した私の方へ向かってくる鋭く尖った紙を…………しかし、それは私を貫かなかった。

 

「キャキャ、これで串刺……し…………あ゛あ゛? またか……またお前か!! 」

 

「ヴィヴィオ、大丈夫? 」

 

「え……キャロ……さん? うっ……ひぐっ、えぐっ……ギャロ゛……ざん゛……う、う゛わぁぁぁあああああん!? 」

 

何故なら私が目を開けた時に見たのは私をお姫様抱っこしているキャロさんだったのだから。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「はぁ……ぬぐぐっ……言わんこっちゃない!! 見てみろシュテル! どうするつもりなのだ!? 」

 

「……ま、まぁ……私達は運命という歯車に踊らされただけです。少し落ち着いてくださいディアーチェ」

「何を言っておるのだ!? 現実逃避するでない!! この大量のボールペンの使い道を言ってみろ! 」

 

「あ、あわわ!? やめてください2人とも!? 」

 

「ええい黙れ! ユーリは引っ込んどれ!! 我はこやつの正気を疑っておるのだ!!! しかもちゃっかり私達などと言うでないわ! お主の失敗であろう! 」

 

我が大声をあげてシュテルつかみ掛かっているのは他でもない。久々に陸飛を除いた4人で買い物に出てきたのだが、そこで何やら怪しい屋台を見つけた。そしてくじ引きをやらないか? と言われ、あまりに怪しすぎると思った我は断ろうと思ったのだが、シュテルが興味をそそられてしまったのだ。その為、一回だけと懇願してくるシュテルを見て我は了承してしまった。まんまと了承してしまったのだ。何故なら普段シュテルにはたくさん助けて貰っている。こんな時ぐらい好きにさせてもいいのでは? そう思っての事だった。しかしどうだ。一等賞と言われ持ってこられたのはボールペン。大量のボールペン。それが1本2本ではない。ダンボールで何箱あるのだろうと言う数だ。もはや目では数えられない。しかもその所為で道が通行できなくなってしまった。

 

「どうするのだシュテル!? こんなに持って帰れるのか? できるわけないだろう!! 」

 

「置いていきましょう。無理なものは無理です」

「このたわけ!! 我らの物になってしまった以上、我らの責任だ!! さぁ、せめて邪魔にならぬところへ持って行くぞ? ほら、どうしたのだ? はやく始めぬと日が暮れる」

 

「ディアーチェ……ごめんなさい……私の所為なのに……や゛はり゛、ディアーチェは、や゛ざじい゛の゛でずね? うっ……うっ」

 

こやつは何を号泣し始めたのか。しかもこそばゆくなることを言ってくる。家族なのだから当たり前ではないかと言いたいが、今はやめておこう。これ以上泣かれるとこの作業が終わらなくなる。

 

「王様!? 」

 

「何だレヴィ……お主もはやく手伝え」

「あそこでフェイト達が戦ってるよ? と言うか……めっちゃピンチ!? 」

 

レヴィはさっきから街灯の上で周りを見回していた。そして何を騒ぎ出したのかと思えばそんな事を言い出す。そんな所から何が見えるのだと思うのだが、こやつの視力はズバ抜けていいので嘘ではないのだろう。

 

「はぁ……今日は厄日だ…………」

 

「ディアーチェ……私が慰めてあげます! 」

 

「ユーリ……お主はやはり可愛いな〜」

「えへへ、やめてくださいディアーチェ」

 

我はユーリの頭を撫でた。こうするだけでいくらでも頑張れそうな気がするのは不思議だが、いつまでもこうしている時間はない。我らは取り敢えず荷物を放置してフェイト達がいるという方向へ向かった。勿論、荷物は後で片付けるつもりで。

 




短編・キャロ様劇場

第7話《満ちる時》

「エリオ君、ルーちゃんにこれ見せちゃうよ? 」

「やめてよキャロ!? また変な誤解されるから!? 」

「じゃ〜わかるよね? エリオ君がやらなきゃいけない事」

これはリンが襲われる3日前。キャロがエリオをいじっていた時の事。キャロがエリオにある写真をチラつかせていた。それはキャロが着替えている所に入ってきたエリオの写真。だが当然この写真には裏がある。実はこの写真、キャロがサーチャーを仕掛け、エリオを自分で呼びつけて撮った物。

「きょ、今日からキャロが戻ってくるまで二人分仕事します…………」

「よろしい! ふふ」

「でもどうして? キャロ抜け出してもなんだかんだで戻ってきたらちゃんと仕事するし。仕事サボるような事しなかった……よね…………」

「サボりじゃないよ。これは……戦いなの。あの女と『17回』と繰り返してきた! 」

「キャロ? 」






to be continued…………








次回もよろしくお願いします。

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