魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」   作:ヘルカイザー

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ども〜

すいません大変遅くなりました。

長らく仕事で出張していたもので時間が取れなかったものでして。

ではよろしくお願いします。




第63話《砕けた定規……怒りの消しゴム》

「キエェェェエエエエエエエ!!! 」

「でぇぇぇえええええりゃぁぁぁああああああ!!! 」

 

僕とクラン・ペーパーは手数の勝負を始めた。最初の一撃は互いにかわし、その後すぐに一撃のはたき落としが始まる。昔ならいざ知らず、今の僕がこの女に対して遅れをとる事など考えられない。何故なら僕の技のそれはすでに神域にふれている。僕は鍛え上げた先に人がかけてはいけない場所へほんの少し手をかける事が出来た。だから僕は負けない。一歩たりとも下がらない。

 

「うぐっ!? ……かはっ!? 」

 

「無駄ですですよ。僕が負ける事など、ありえないですです。もう諦めた方がいいと思いますですですが? 」

 

僕は30センチの定規をクラン・ペーパーに向けた。クラン・ペーパーは反応できなかった僕の蹴りを受けて地面に倒れ伏せている。だがどうしてこんなにも余裕を感じるのか。僕は怪しい何かをクラン・ペーパーから感じ取る。倒れながら嫌な笑みを浮かべている彼女はどこか狂気を感じざるおえない。

 

「キャキャキャ! 哀れね〜哀れね〜好きなだけ吠えるといいわぁ〜? キャキャキャ(吠えなさい? 今お前の周りには不可視にしてある全方向の紙刺しがある。終わりなのはどちらなのかしら? キャキャキャ)」

 

「ふふ。それでです? 僕の周りにあるおもちゃはいつ使う予定ですですか? 遊びなら付き合うつもりなんてありませんですですよ? ……ふん!!! 」

 

「なっ!? ……くっ……化け物が…………(やはりまともにやり合って私に勝機なんてない。こいつは本当に人間なのかしら)」

 

全方位360度。何を仕掛けようと無駄だ。僕には通用しない。思った通り姑息な手段しか使わない。しかし何をしても無駄だ。その証拠に僕の周りに配置してあったおもちゃは、僕が得物で回転するように振り回した定規による衝撃波で全て消し飛んだ。

 

「1つ……己が魂を定規に宿し」

 

「? 」

 

「2つ……斬るのは悪の魂を」

 

「……ふ……キャキャ! くだらないおまじないね? 」

 

「3つ……鍛え上げ、求めた極みの先に破を見つけ、瞬間を殺す、我が定技の完成形! 故に、極破瞬殺定技。その技……身をもって知るといいですです……極破瞬殺定技……」

 

僕は両手で真上に掲げた定規を円を描くように上から時計回りで一周させた。クラン・ペーパーは警戒してシールドと紙のバリアを何重にも重ね僕の前にはる。だが無意味。まるで無駄な行為だ。僕を前に、守りなど愚かな愚行。

 

「100式……《Cut OF Break The Measure》(カットオブブレイクザメジャー)!! 」

 

「そんな技で……っ!? (バカなっ!? 防御を貫通して!? ) ぐっ……がぁぁぁあああああ!? 」

 

僕が振り下ろした定規はその捉える事の許されない音速を超える衝撃波となってクラン・ペーパーに向かう。この技は初速があまりにも速いため、どんな防御層だろうと意味をなさない。それを貫通して敵を斬る。その為防御は相手が切られた後に切れるという時差が起きる。これが防御を貫通していると錯覚させている要因だ。

 

「終わりですですよ? だから今すぐ管理局に自首するといいですです。さもなくば……僕は覚悟をもって……貴公を斬る! 」

 

「……うっ……ごほっ!? ごほっ!? ……うっ……ううっ……くひ! くひひひ! ひゃひゃ! キャキャキャキャ!! ウキャキャキャキャ!!! ああ〜もう……悔しいわ〜。力でお前と正面から渡り合えない事が……何度やっても……どうしてかしらね? キャキャキャ! 」

 

「別に貴公が弱いわけじゃないですです。僕が……強くなり過ぎただけですです」

 

「ひひ! そうねぇ〜? 確かにお前は強くなり過ぎた。でもね? それはあくまでも……」

 

「? ……え…………」

「『人として』という意味で! 何だけど? 」

 

いつの間に……僕の思考は一瞬のうちにそれに支配された。僕が反応できなかった。さっきまで目の前で倒れていたクラン・ペーパーは消え、かわりに僕の後ろから彼女の声がする。よって僕の背後に彼女がいる事が嫌でもわかった。しかしありえない事だ。一瞬とかそんなレベルではない。まるで初めから彼女がそこにいたかのような……そんな感覚に襲われた。そして動揺と背後を見せてしまった事もあり、身体をそらしたがそれも遅く一撃を貰ってしまう。

 

「しまっ!? かっ……はっ!? 」

「ふひ! リン・ストーン、愚かな自分の甘さを呪うといいわ? お前はいつもそう。なるべく敵を殺さずに済まそうとする。それがお前の敗因よ? キャキャキャ! 」

 

「ぐっ!? 勝った気になるのは早いですですよ! ……極破……うがっ!? ……あ……え? ……なん……で…………」

 

「痛い? キャキャ! このままお腹をかき回してあげましょうか? キャキャ! ウキャキャキャキャ! 」

「うっ!? が……う゛ぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!? うぷっ!? ……おえっ」

 

また僕は背後を取られた。しかも今度は完全にスキを見せてしまった。僕が負ける……また……こんなに簡単に。そう思うと何かが壊れる気がした。あんなにも鍛え、これほど周りと差をつけてきたと言うのにだ。悔しい。負けるわけにはいかない。僕は朦朧とする意識の中そればかりを考えていた。でも今僕のお腹はこの女に素手で貫かれ、その中をグチャグチャとかき回されている。痛い……痛くて死にそうだった。

 

「あらあら〜ぐったりしちゃって。可愛いわね? キャキャ! 無駄にデカイ乳がこぼれそうよ? ウキャキャキャキャ! さぁ〜次はどうしてあげようかしらね? ……んあ? っ!? 」

「覇王……」

 

「ちっ! 」

 

「断空拳!!! 」

 

聞き覚えがあった。突然聞こえた声に。何かが砕けたような大きな音。僕は聞こえてくる僕を呼ぶ声にだんだんと意識を戻していった。するとまずはじめに見えたのは涙目になっているヴィヴィオの顔。そして大人モードになっているハルハルがいた。リオやコロナも一緒にいる。学校の帰りだろう。

 

「リンさん!? しっかりしてくださいリンさん!? 」

 

「ヴィ……ゔぃ……」

「リンさん!? 」

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「なんという事を……くっ! よくも! ハァア!! 」

 

私がアインハルトさんやリオ達との下校中の事だ。とある公園。そこはあまり人のいない公園だったが、誰かが激しく暴れていた。よく見ればリンさんだった。もう一人は誰だかわからない。でも紙のようなものを操っていた。そして私達はおかしな光景を見た。時間が止まり、進んだような感覚。さっきまでリンさんの目の前で倒れていた女の人が突然リンさんの背後に現れた。いや、いた……と言ったほうが正しいのか。とにかく説明できない感覚と光景だ。

しばらく手を出せずに見ていた私達だったがリンさんのお腹が貫かれた事で急いで加勢する。何ができるかはわからないがリンさんがかなわない敵を私たちが勝てるわけもない。だがリンさんは殺させない。何故ならリンさんは大切なお友達だ。

 

「ヴィ、ヴィヴィオ? 」

「コロナ、リオ……リンさん……お願い」

 

「ヴィヴィオ何するつもりなの? 」

「そうだよヴィヴィオ!? リンさんが勝てなかったんだよ!? 」

 

「それでも……リンさんは殺させない! アインハルトさんも私も、絶対にそんな事させたくない! クリスいくよ! 」

 

「「ヴィヴィオ!? 」」

 

今も必死で戦うアインハルトさん。私は大人モードになりすぐ加勢する。だがアインハルトも私も……まるで歯が立たない。と言うよりもこの女の人はその場かから一歩たりとも動いていない。アインハルトさんと私の拳を紙ので防ぎ、いなし、無数の紙で私達を叩き伏せる。地面に這いつくばる私達をこの女の人はあざ笑うように見ていた。まるで遊んでいるように。

 

「うっ……ナメないで……ぐっ、ください!!! ……あ……がっ!? あ……ああ…………」

「アインハルトさん!? 」

 

「ガキのくせに鬱陶しいのよ。いい加減疲れたわ」

 

アインハルトさんが本気で放った拳。だがそれは紙ででぐるぐる巻きにされ、威力を殺される。そして動けないまま巨大な紙でできて丸太のような物でお腹をド突かれたアインハルトさんは気絶しそのまま大人モードを解除する。しかもこの女の人はさらにアインハルトさんを攻撃しようと紙でできた鋭い針を構えた。殺す気らしい。私はすぐに地面についている身体を起こし、アインハルトアインハルトさんを庇うように女の人の前に立ちはだかった。しかし私は攻撃を避ける事も出来なければ受ける体勢でもない。死ぬ……それが私の頭をよぎった。

 

「神隠し!! 」

 

「なっ!? 」

 

もうダメだと目を閉じた私だがいつまでたっても私には何もこない。恐る恐る目を開ける。するとさっきまであったはずの神は消えていた。かわりにタキシードぽい服を着たバーのマスターがいた。そう……カストさんだ。助かった。そう思った。私は気が抜けて腰が抜ける。ふと横を見るとフェイトママも一緒だった。格好から見て、カストさんとデートでもしていたのだろう。怪我をしている私を心配して駆け寄るフェイトママ。そして敵である女の人を睨んだ。カストさんを見れば今まで見た事もないほど……怒りをあらわにしている。いつものおちゃらけた感じじゃない。

 

「ヴィヴィオ! ヴィヴィオしっかりして!? 」

 

「……フェイト、ヴィヴィオ達を連れて下がってろ」

「え、カス……ト? っ!? ……カ、カスト? 」

 

「ふひ! あらあら? 久しぶりねぇ? 消殺の消しゴム! これまで何度もあった世界にお前は一度も出てこなかったわ。こう言う世界もあるのね? キャキャキャ! 」

 

「黙れ……貴様……一体誰に手を出した…………」

 

怒り……それはカストさんの、私たちが知っているカストさんのイメージを粉々に壊した。少しヤンチャな言葉使いだが、実は凄く優しい。そんなイメージの男の人。フェイトママの恋人で、とてもタキシードが似合うバーテンのマスター。

 

「誰に? お前の仲間にかしら? ウキャキャキャキャ! だからなんなの? キャキャキャ! あなた如きがだからどうしたというの? ……ん? 」

 

「俺の……生涯の仲間に……親友に手を出すとは……生きて……生きて帰れると思うな! ゴラ゛ァァアアアアアアア!!! 」

 

「っ!? な、何が……ハッ!? 」

「スキル……イレイサー!!! 」

 

カストさんの周りを突然黒い魔力光が包み込む。そしてカストさんが懐から大量の消しゴムを出し、それを空中に放り投げた。バラバラと宙を舞う100以上はあろうかと言う消しゴム。一体それだけの消しゴムをどこに入れていたのかと言うくらいの光景だがお兄さんの時の事もあってそこはもう慣れた。

 

「これは!? 」

「《流星群》!! オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオ、ッラァァアアアアアアアアアアアアアア!!! 」

 

「くっ!? ぐっ!? 」

 

空に舞い、落ちてきた消しゴムをカストさんは次々に女の人に向けて手で弾くように射出していく。その数、威力はよくわからないが、女の人がはっている防御や紙のシールド、紙の槍はその消しゴムが当たると同時に消え去り、消滅していく。だが女の人も紙をフル活用してそれを相殺し始めた。外から見れば明らかにカストさんが押している。これなら勝てる。私はそう期待した。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……クソ! なかなか面倒くさいじゃない? こんなにやるなんて思わなかったわ? っ!? お前……」

 

「スキル……ファイナルイレイサー! ……《終焉のねり消し》」

 

「ぷふ!!……アキャ! アキャキャ! フヒャヒャヒャヒャ!! 本気? 本気なのね? 面白いわ! そう言えばあなたの本気を見た事なんてなかったわよね? ゾクゾクしちゃう! 紙技……終幕演舞……《千羽鶴》」

 

カストさんは消しゴムを1つ右手で持ち、それを真上に上げた。左手は相手を指すように前に伸ばしている。だが相手も名の通り、千の鶴はあろうかと言うくらい周りに紙でできた鶴を高速で折り、配置した。するとカストさんが先に動き、それに合わせて女の人が鶴をカストさんに向けて飛ばす。

 

「はぁぁぁああああああああ、ウッオリャァァアアアアアアアア!!! 」

 

「なんですって!? 」

 

「「「「ええっ!? 」」」」

 

カストさんは何を思ったのか手に持っていた消しゴムを地面に当て、そこからとんでもないスピードで擦り始めると、そこに巨大な黒い塊を生成。大きい。それはとどまることを知らずただただ大きくなっていた。そしてその黒い塊は飛んできた鶴を呑み込みながら消し去り、さらに大きくなる。よく見ればこれはねり消し。消しゴムのカスから生成された半径5メートルはあろうかと言う常軌を逸したねり消し。一体何個の消しゴムでこれが出来るのか? いや、そもそもどうやって短時間でここまで大きくできるのか。もはや極芸である。

 

「終わりだ! 消しカスになり、やがれぇぇえええええ!!! 」

 

その巨大な消しゴムは女の人に向かって蹴り飛ばされると、大きさに見合わないスピードで射出された。

 

 




短編・頑張れなのはさん!

第1話《立ちはだかる正妻、息のかかったクラス》

それはコロナがキャロにシバかれてからしばらくしての事…………

「あれ? なのはママどうしたの? 今日は授業参観とかじゃないのに」

「え!? い、いや……それはその……リッ君いないかなぁ〜と思って」

「お兄さん? お兄さんならまだ教室にいるけどどうして? 」

本日、授業参観でもない日にヴィヴィオの母親であるなのはは学校に訪れていた。目的は邪な事。こっそりと思ったが学校で、しかもヴィヴィオ見つからずになど不可能な話でなのは案の定見つかってしまったのだ。

「それはその……り、リッをその……遊びになんて誘おうかな……なんて思って……!? ヴィヴィオ? 」
「なのはママ……ひぐっ、うっ……強く……生きてね? 」

「え……え!? どうして泣いてるの!? え?え!? 」

ヴィヴィオはなのはの手を強く握ると憐れむような表情で泣きながらなのはを見る。そしてどこかへ走り去ってしまった。何も知らないとは残酷な事である。ヴィヴィオが陸飛に思いを寄せている事も知らないなのははヴィヴィオの悲しみも、これから自分に起こる不幸もわからないのだ。

「あ、コロナちゃん! 」
「え? あ! ヴィヴィオの……どうしたんですか? 」

「陸飛先生いるかな? ちょっとお話し……あるんだけど? 」
「お話し? 」

「う、うん……ちょっとプライベートなお話しなんだけど」
「ヴィヴィオのお兄さんなら教室にいると思いますよ? 」

「そうなんだ、ありがとう! 」

なんの疑いもなく、コロナを通り過ぎ、教室へと向かうなのは。しかしなのはが見えなくなった瞬間、コロナは通信を入れた。するとモニターにはピンク髪の女の子が出る。

「キャロさん……ヴィヴィオのお兄さんを奪おうとしている不届き者がいます」

この学校になのはの安息の地はない。そして……なのはが教室のドアを開けるとそこには誰もいなかった。念の為、教室の奥へと入るなのは。だがそれは愚かな行為だった。

「いない……行き違いだったのかな? にゃっ!? ……ドアが……ふぬぅぅ!! 開かない!? どうして!? 」

それは突然の事だった。教室のドアは全て閉められるとまるで鍵を閉められているように開かなくなった。そしてなのはを突然の無数のバインドとアルケミックチェーンがぐるぐる巻きにした。突然の事でなんの警戒もしていなかったなのははあっさりと捕まり地面に横たわる。

「な、なのこれ!? ……キャ、キャロ? 」

「はぁ〜……なのはさん? 残念ですよ。本当に残念…………」

「何……が? 何が残念なの? と言うか……何するの? これ解いてくれないかな? キャロ? 」

どこから現れたのかなのはを見下ろすキャロに教室に入ってくる陸飛の生徒数名。その真ん中にコロナもいる。なのはを縛っている無数のバインド、それはこのクラス全員のが行ったバインドだ。さらにその上からこれでもかと言うくらい巻いてあるキャロのアルケミックチェーン。これではいかになのはと言えど解く事はできない。

「なのはさん? 今日は……星が綺麗ですよね? 」

「え? 星? 星ってまだ夕方だよ? 」
「今日は心置きなく眺めてください。夜空の星」

「い、いやだからまだ夕方だよ? ちょっ!? どこに連れて行くの!? やめて!? なんで!? キャロ!? キャロってば!? ちょっ!? いにゃぁぁぁああああああああああああああぁぁぁぁ…………」

生徒に抱えられ教室の外へ連れ出されたなのは。その後何があったかは……永遠の謎である。




to be continued…………












次回もよろしくお願いします。






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