魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」   作:ヘルカイザー

62 / 76
ども〜

ではよろしくお願いします。


第62話《過去の因縁……激突の2人》

「私はあんなの聞いてない!? あいつはグダグダのダメ男だと? ふ、ふざけるな!! 全然違うではないですか! それにあの男は教師なんかじゃない、最後のあの目……あれは……あれは…………」

 

「そうよ? あの男は本来教師なんかやってる柄じゃない。あの男は今の綺麗な管理局になる前に活躍した、管理局元特殊部隊の暗殺部隊員。今は私が記憶を消したから記憶喪失なんだけどね? にしても……貴方にはガッカリだわ! せっかくリン・ストーンが余計な介入をしないように私が手伝ったと言うのに……失敗して」

 

暗闇の中2人の人間は言い合いをしていた。いや、一方的に抗議していると言うのが正しいのかもしれない。片方は陸飛と試合をしたあの教師。ファン・ドラムティだ。そしてもう1人は長身の女性。不気味に笑い男を見下すようにみている。

 

「し、しかしデス・ペーパー様!? 」

 

「もういいわぁ〜消えなさい? 私の最後の部下、ファン・ドラムティ? キャキャキャキャ! 」

「そ、そんな!? デス・ペーパーさゔぁっ!? ……あ……ごふっ!? う…………」

 

「こうして貴方を殺すのも何回目かしらね? ひひひ! ま、ガッカリしたと言っても最初から貴方なんかに期待してないわ。だって目的はリン・ストーンを誘き出す事なんだから。キャキャキャキャキャ! 」

 

その日……ミッドのとある下水道で男の死体が上がった。それはこの間陸飛と戦った教師。名をファン・ドラムティ。彼はあの試合後突然失踪したのだ。しかしこうして変わり果てた姿で発見された。

 

「テスタロッサ執務官、現場の状況と痕跡になります」

 

「ご苦労様です。ありがとうございました」

「はい! それでは」

 

「この妙な死体……それにヴィヴィオの学校の先生がどうして? ……これは何か……起き始めてる? 」

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「あ……ああ……嘘……こんなの嘘だよ」

「ヴィヴィオ、諦めよう? ヴィヴィオのお兄さんは変わったんだよ。前より全然素敵だよ」

 

「う、うん……リオの言う通りだよヴィヴィオ。お兄さん……普通にモテててるね」

 

あの大会はその後もお兄さんの活躍で結局優勝。クラスのみんなはそれはそれはお兄さんを褒め称えた。しかし問題なのはその後。お兄さんは普通に優しそうな教師になり、それはそれはみんなにキャッキャ言われている。もうクラスのみんなは夢中だ。この一件で私は思う。お兄さんにはロリ殺しならぬロリキラーでもついているのではないかと最近思うのだ。

 

「せ、先生! 」

 

「ん? どうしたの? まだ授業中……」

「先生はその……好きな人いますか? 」

 

「あ! 私も聞きたい!? 」

 

「私もですわ! 」

 

「先生〜教えてくださいよぉ〜」

 

前まで、授業を催促し、なかなか授業をしないお兄さんに激怒していた物だが、今はクラスのみんなが授業を止めてしまう事がある。そんなみんなに私もコロナも呆れているのだが、ここにもう1人……お兄さんのロリキラーによって心を壊された哀れな女の子がいるのだ。

 

「ヴィヴィオヴィヴィオ! お兄さんって本当はあんなに強くて優しいの? 私知らなかったよぉ〜」

 

そう。それはリオだ。あの大会で必死に戦っているお兄さんがカッコよかったらしく。それからはお兄さんへの熱が芽生えてしまったらしい。しかし私はここでも思うのだ。もし、もしお兄さんが記憶を取り戻した場合。みんなはそんなお兄さんにどこまで熱を高めてしまうのだろうと。つまり、言ってしまえば……今のお兄さんに比べて本来のお兄さんはケタ違いにカッコいいと私は思う。本当に本人なのかと言うくらい違う。今でも多少は面影があるが、違うのだ。

 

「こ、こんな状況キャロさんが見たら……みんな殺されるんだろうなぁ…………」

 

「ん? あれって……ひっ!? ヴィ、ヴィヴィヴィヴィヴィオ……わ、わわわ私、トトトイレ行ってくる……ね? 」

「え? コロナ? ちょっ!? どうしたんだろうそんなに慌てて……よっぽど我慢していたのかな? 」

 

コロナは大きな声でトイレに行ってきますと言うと大慌てで教室を出た。みんなもそんなに我慢していたのかとあまり気にしなかったが次の瞬間、教室は静寂に包まれた。今トイレに行った筈のコロナ。そのコロナの声が聞こえて来たのだ。断末魔という形で。

 

「そ、そんな!? 私は違います!? 違うんです!? ちょっ!? いやぁぁぁぁあああああああああああああああ!? ぎゃびっ!? 」

 

「え……何? 今の悲鳴……コロナの声……だったよね? 」

 

「およ? はい、今日の授業はここまでですね。それでは皆さん、また明日」

 

「あ! 先生話の……続……ひっ!? 」

 

「なっ!? これ!? あ、アアアアルケミックチェーン!? と、とととと言うことは……」

 

授業が終わるチャイムがなりお兄さんが出て行った後、クラスのみんなは立ち上がる前に椅子ごとチェーンでぐるぐる巻きにされ、開けっ放しのドアから顔半分だけある人物の顔が飛び出した。それを見たみんなはそれを見たものから小さい悲鳴を上げる。それは誰か……キャロさんだ。どうしてこんなタイミングでここにいるのかと言いたいが見られてしまったからにはもうお終いである。

 

「さぁ〜みんな? 特別授業……始めましょうか? ふふ、挨拶は? 」

 

『よ、よろしくお願いします!! 』

 

ビシッと揃ったみんなの声。もはやキャロさんはクラスのみんなにとって恐怖以外の何物でもない。完全にトラウマになっているのだ、昔の出来事が。しかし私は不覚にもこの時ボーッとしてしまった。

 

「ヴィヴィオ? 貴方の声だけ聞こえなかったんだけど……反抗期? 」

 

「ひっ!? ち、違……な、何するんですか? あ、あのキャロ……さん? ちょっ!? 待って、私の体はそんな方向に曲がらない!? 嫌!? いぎゃぁぁぁああああああああああああああぁぁぁ…………」

 

キャロさんは私が挨拶しなかったのが気に入らなかったらしく、チェーンで私の手足を引っ張りピンと伸ばすとそのまま手の方を右へ、足の方を左へ、それぞれねじり始める。そして……何やらゴキンっとなった瞬間、私は意識を失った。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「陸飛さん、追加の梅干しですよ〜」

 

「あ、ありがとう……ところで……さっきみんなの悲鳴が聞こえた気がしたんだけど……」

「気のせいですよ? 」

 

「え? で、でも」

「気のせい! ですよ? 」

 

「わ、わかった……気のせいだったんだね(こ、怖い!? )」

 

今日、私は陸飛さんへ追加の梅干しを届けに学校まで来た。しかし教室で見たのはモテモテの陸飛さんだった。私はそれを見た瞬間、自分の中の黒い感情が膨れ上がるのを感じた。だから凄くイライラしている。

 

「陸飛さん? さっき……デレデレしてませんでした? 」

 

「え!? してないよそんなの」

「そうですか? 私には……小さい子達にチヤホヤされて……喜んでるように見えましたけど」

 

「ひっ!? そんな事ないよ!? そんな事ない」

 

「あ……すいません。忘れてください」

 

私はつい陸飛さんに八つ当たりするような事を言ってしまった。でもそれも仕方ないと許してほしい。私だって陸飛さんとこんな関係はヤキモキするのだ。できれば、早く元の陸飛さんとたくさん過ごしたい。お話ししたいとおもう。しかし私がいくら望んだところで陸飛さんが元に戻るわけじゃない。焦ってはダメなのだ。陸飛さんのペースで。陸飛さんが負担にならないように記憶を取り戻してもらわなければ。

 

「陸飛さんお仕事頑張ってくださいね? それじゃ〜今日はこれで失礼します」

 

「う、うん……ありがとう」

「はい! 」

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「陸ぅ〜おかえりなさい!!! 」

「ごふぁっ!? 」

 

夜。時間はもう19:00を回っている筈だ。そしてそんな時間、陸は帰ってくる。だから私はいつものように弾丸の如く陸へと突っ込んだのだ。そうされた陸はいつもお腹を押さえて苦しそうにする。その度に私はディアーチェに怒られるのだ。

 

「ゆ、ユリち? もう少し優しく来てくれない? 毎日は流石に僕も辛い……」

「はうっ!? ご、ごめんなさい……あうぅぅ(陸に嫌われるぅ)」

 

「あ、大丈夫!? 気にしてるわけじゃないから。もしあれなら……今まで通りでも……いいです」

「え? いいんですか? えへへ! 陸ぅ〜」

 

「ちょっ!? ごふぁっ!? 」

 

「陸よ……やせ我慢するでない。死にたいのかお主は……」

 

陸はお人好しだ。私のこんな行動もなんでもなく受け止めてくれる。しかしいくら私がアタックした所で、陸は私を特別扱いなどしてくれない。私を1人の家族としてしか陸は見ないのだ。私達4人を平等に、誰1人ひいきする事なく。それは陸のいいところだが私達にとっては少しヤキモキする所だ。できれば、女の子としても見てほしいところ。

 

「陸ぅ? 陸は私達の中で誰が一番好きですか? 」

 

「「なっ!? 」」

 

「え? えっと……」

 

それは聞いてはいけない禁断の言葉だった。だがこの際はっきりさせておくべきだと私は思うのだ。誰が陸の一番であるのかという事をである。

 

「ユーリ、お主はなんて事聞いておるのだ!? 」

「そ、そうです!? こんな家族に爆弾を持ち込むような事を」

 

「何言ってるんですかディアーチェ、シュテル? これは……戦争ですよ? 」

 

((ほ、本気!? ))

 

そう、私は本気だ。本気で爆弾を持ちかけた。陸が誰を選ぶのか。それは私だけでなくみんなが知りたい事の筈だ。だからみんなの代わりに私が聞いたのだ。

 

「くっ……ユーリの奴……なんという事を……」

 

「り、陸飛は誰を選ぶんでしょうか……」

 

「その……あの……さ? 選ばないと……ダメ? 」

「ダメです! 言ってください陸ぅ! 」

 

陸はかなり困った様子で私達を見る。しかしそんな顔をしても逃しはしない。私は身を乗り出して陸に圧力をかける。すると陸はさらに困った様子で何かを言おうとしていた。そんな陸に私達は息を呑む。

 

「う、う〜んと……僕は……みんなが好きだよ」

「陸ぅ!? そうじゃないんですよ!? 」

 

「け、けどさ……僕はユリちは可愛いと思うし」

 

「え? 」

 

それは確かに感じる今の陸からの本音。どこも偽っていない。真っ直ぐな陸の気持ち。

 

「シュテちは凄く気が利いて僕は好きだ」

 

「陸飛……その……」

 

陸の気持ちは私達にはよく伝わる。シュテルもそう言われ嬉しそうに、恥ずかしそうにそれを聞いていた。

 

「ディアちはなんだかんだで一番で優しいし」

 

「や、やめんかたわけ……」

 

いつもは怒ってばかりいるディアーチェもこれでもかというくらい顔を赤くして照れている。それ程に、陸の気持ちは真っ直ぐなのだ。

 

「レヴィちは素直で……いい子だし……」

 

「本当!? 僕いい子? 」

 

私はこの答えに決して納得したわけじゃない。けど嬉しかったのは事実だ。だからこれ以上は話を続けない方向で私は我慢する。何故なら私は陸を困らせたいわけじゃない。ただ、ただ少し。もう少しだけ自分を見てほしいのだ。それは他のみんなも同じだろう。

 

「さぁ〜ご飯にしましょう。陸飛もさぁ? 」

「う、うん」

 

最近私は不安だ。陸の言葉遣いが少し変わり、普通になりつつある。そして、陸が陸じゃなくなる気がするのだ。勿論、記憶がない陸にとっては元に戻っているのかもしれない。しかし私達にとっては今の陸が陸なのだ。だから陸の記憶が本当に戻った時、陸は果たして私達の側にいてくれるのか。今まで通りでいられるのか。私を含めてみんな不安だった。

 

 

「「「「「いただきます! 」」」」」

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「やっと見つけたですですよ、随分と久しぶりじゃないですですか? さぁ〜一体どういうつもりか教えて貰いますですですよ? クラン・ペーパー! 」

 

「キャキャキャキャ! 哀れねぇ〜わざわざ誘い出されて何を強気になっているのかしら? リン・ストーン」

 

「? なるほど……狙いは僕ですですか。どうりで陸ちゃんの暗殺も中途半端だった筈ですです。もし本気で殺るつもりですのならあそこで終わりになんてしない筈ですですからね? 」

 

僕は陸ちゃんのあの試合の後、私のバインドをかけた人間を追ってまるまる3日探し回った。痕跡は紙。その独特な魔力と得物を僕は忘れない。昔、僕達が戦った文房具の残党。そのリーダー格にして僕と互角だった人間。

 

「リン・ストーン。貴方はこの傷を……覚えているかしら? キャキャキャキャ! これを聞くのも何回目かしらね? ひひひひひ! 」

 

「忘れてませんですですよ? それは僕がつけた傷。正直……同じ女性として許されない行為だったと、それは謝りたいところですですが、あいにく襲ってきたのは貴方の方ですですからね? 自業自得ですですよ? 」

 

「ちっ! 口の減らないロリビッチね。キャキャキャキャ、でも今日で終わりよ? 今回は……以前とは違うの。ひひひ、半殺しにして何でもいう事を聞くメス奴隷にしてやるわぁ? あの方に渡すのはその後」

 

相変わらず人として下衆という言葉の似合う女だが、今の僕は負けるという考えを持ち合わせていない。何故なら僕に敗北などもうありはしないからだ。

 

「キャキャキャ! 紙技……紙刺し……」

 

「ふぅ……極破瞬殺定技……112式……」

 

クラン・ペーパーは自分の周りに尖らせた紙を9枚用意すると僕の方へ照準を合わせるように向ける。だが僕も30センチ定規を出し、半身になりながら左側に構える。そして、風で飛んできた缶が地面に落ちたのをかわきりに僕達は一斉に動き出したのだった。

 

「《九紙突》!!! 」

「《Cut OF Blood Measure》!!! 」

 

 




短編・キャロ様劇場

第6話《違うんです!? 》

それはキャロが教室に入る前に廊下で起きていた出来事。この時、コロナはふと……教室の後ろのドアを見たのだ。勿論気づいていたのはコロナだけ。そこにはドアの隙間から見えるキャロの嫉妬に狂った目である。コロナはそれをみて動揺し教室から逃げた。しかしそれはコロナにとってさらなるトラウマの要因になる。コロナが教室から出た瞬間の事だ。逃げようとするコロナの足はチェーンで巻かれその場に転倒する形で止められた。

「きゃっ!? ……きゃ、キャロ……さん? 私は違いますよ? 私ヴィヴィオのお兄さん好きなわけじゃないですし、ましてや奪い取ろうなんて」

必死に弁明するコロナ。しかし目の前のキャロにはもはや何を言っても無駄だった。何故なら自分は教室のクラスメイト全員の恐怖を植え付けるいわば着火材。生贄なのだと。

「コロナ? 今逃げるって事は……確信犯だよね? 陸飛さんが誰の物なのか……分かってないみたいに見えたよ」

「そ、そんな!? 私は違います!? 違うんです!? ちょっ!? いやぁぁぁぁあああああああああああああああ!? ぎゃびっ!? 」

コロナは恐怖のあまりキャロに背中を向けた。しかしその瞬間、あっという間に距離を詰めたキャロによって首を捻っちゃいけない方向に回され意識を落とした。




to be continued…………









次回もよろしくお願いします。



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。