魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」   作:ヘルカイザー

6 / 76
どうも〜!

では、よろしくお願いします。


第6話《ボールペン》

〜フェイトサイド〜

 

「鈴木三等陸士、キャロとの事は本当なの?」

 

「あや?それはないよん?」

 

私は今鈴木三等陸士を訓練所に連行して詳しくキャロの事を聞いている。キャロがいいなら私は何も言いたくない、でもよりによってこんな男。いい加減でやる気もないこんな男。

 

「それはキャロとの事は遊びだと?何も思ってないって言いたいの?」

 

私がそう言うと彼は黙ったまま面倒くさそうな顔をし頭をかいている。私はそれが許せなかった、まるで誠意が伝わって来ないから。キャロを幸せにする、キャロが大切だぐらいは言って欲しかった。こんな人にキャロは渡せない、任せられない。

 

「バルディッシュ!」

 

《イエッサー!》

 

私はバリアジャケットを展開し、デバイスを構えた。これから少しこの男には反省してもらわなければ気が済まない。

 

「およ?テスっち、俺ただの事務局員なんだけどん?魔法も使えないしん。」

 

何を言い出すかと思えば、今更そんな言葉で騙されないよ。

 

「地球出身で管理局に関わったなら少しは魔法が使える筈だよね?そうじゃなきゃ管理局と関わる機会なんてない筈。ましてや君は私と同い年なんだから。」

 

私と同い年と言うことは管理局がかなりの人材不足の時だ、だから魔法が使えないなんてことない。使えなければあの時の管理局には不要と判断された筈。私の言葉を聞いた彼は大きなため息をつき頭を片手で抑え始めた。これから軽くでも戦闘をしようと言うのに構えも取らないなんて、私が本気でやらないとでも思っているのだろうか?まぁ、勿論本気ではやらないけど、それでも人を小馬鹿にし過ぎだ。

 

「バルディッシュ!!」

 

《ハーケンフォーム!》

 

バルディッシュをハーケンフォームに変え一気に彼との間合いを詰める。そして、大怪我にならないように手加減しながら峰打ち放った、しかし私の攻撃は空を斬る。

 

「およっと!?」

 

私の攻撃が避けられたのだ……でも私は思った以上に彼が早く動けた為に私の予測を裏切ったのだと気にせずにもう一度彼に攻撃を仕掛ける。しかし、また避けられた。

 

「テスっち当たったら危ないよん!?」

 

彼は焦って見せているが私には余裕そうに見えた。私だって戦闘になれば前線に出ている人間だ、相手の力量くらい分かる。彼は本気で戦ってない。私は少し速度を上げフェイントを混じえて彼の死角に攻撃を放った、少し大人気ないけど、これならいくらなんでも避けられる訳が無い。

 

「え…………」

 

攻撃が当たったと思った瞬間、彼は無傷でその場から一歩も動いていなかった。私は驚きで訳が分からなくなった。でも彼はバルディッシュの間合いには入っている、私の攻撃は彼を捉えている……なのにバルディッシュの刃が彼を貫通したかのように通り過ぎたのだ。私は彼から少し距離を取り何が起きたのか見極めようとした。そして不意にバルディッシュに視線を落とした時、その理由が分かった。バルディッシュの魔力刃が砕かれていたのだ。つまり彼は私の攻撃を避けたのではなく、攻撃の元を絶ち攻撃が当たらないようにした。それが分かった私は固まったまま動けなくなった。武器も無しにどうやってこんな事が出来るのだろう……例え素手を魔力で強化したとしても死角からの攻撃をカウンターで砕かなければそんな事は出来ない。でも攻撃する時彼は動いてなかった。

 

「何を……したの?」

 

私は彼に尋ねた、こんな事ただの事務局員が出来るわけない。

 

「あやや?何のこと?」

 

しかし、彼はとぼけて答えようとはしない。どこまで人の事を馬鹿にすれば気が済むんだろうか。

 

「私を馬鹿にするのもいい加減にしろぉぉぉぉおおお!!!」

 

私は思わず感情的になり彼に突っ込んだ。

 

 

 

 

〜はやてサイド〜

 

「何や……これ…………」

 

私とヴィータはフェイトちゃんを止めに訓練所に来た、だけどそこで見たフェイトちゃんと鈴木君の戦闘を見て空いた口が塞がらなかった。ただの事務局員である彼が、本気でないとはいえ……フェイトちゃんをあしらっている?でも今の彼の動きや仕草は素人その物や。偶然……なんか?いや、ならバルディッシュの魔力刃が砕かれた事はどう説明するんや…………

 

「な、なぁ……はやて?あいつは……本当に事務局員なのか?」

 

「その……はずや…………」

 

こんな風に呑気に見ているとフェイトちゃんが痺れを切らして鈴木君に突っ込んで行った。

 

「フェイトちゃんあかん!?」

 

 

 

 

〜フェイトサイド〜

 

「こぉぉぉのぉぉぉおおおおお!!!……あ、しまっ!?」

 

私は我を忘れ気がついた時にはもう攻撃を中断出来るタイミングじゃなかった。でも攻撃が迫っても彼は避けようとしない。いや、もうこの速度の攻撃は彼には避けられないのだ。このままでは大怪我をさせてしまう、戦闘なれしていない彼につい本気になってしまった。しかし、そう思ってももう遅い。私の攻撃は彼を捉えていた。そして、ガンッ!?っと言う鈍い音が響いた。

 

「嘘…………」

 

「ぐっ!?」

 

信じられない事に彼はこの攻撃を受け止めていた、それも……ボールペンで。私はこんな馬鹿な事ないと思った。速度の乗った私の攻撃をただの安っぽいボールペンで防いだ。結果的には良かったのだけど、彼は一体何者なのだろうか……そう思ったが今はそんな事を気にしている場合じゃない。私はすぐにバルディッシュを下げ待機モードにする。そして、バリアジャケットを解き彼に頭を下げる。

 

「ごめんなさい!熱くなったとはいえ、一歩間違えたら大怪我をさせてた。こんなんじゃ私は隊長失格だね……」

 

私は視線を彼の顔に戻す、すると彼が何かを言おうと口を開く瞬間だった。何を言われるだろうと思った、避難?謝罪?慰謝料とか?しかし、何を言われてもしょうがないと思っていた私の予想を彼は裏切った。

 

「テスタロッサ隊長、戦闘訓練の御指導ありがとうございました!では失礼します!」

 

ビシッと敬礼をしそんな事を彼は言う。そして、私に背を向け訓練所から出て行こうと歩き出す。

 

「え、ちょっと!?何で?」

 

と言うか……最後のは幻覚だと思った時の彼だった。

 

「フェイトちゃん!」

 

突然声がしたと思ったら彼が歩いて行った方向からはやてが走って来ていた。今の戦いを見ていたのだろうか。いやそれよりはやてにしなければいけない事がある。

 

「はやて、ごめん。隊長にあるまじき行動だった。処分はいかようにでも……「必要あらへん!」え……ど、どうして?」

 

私は驚いてはやてを見る。

 

「鈴木君がこれは戦闘訓練だって言うんよ。そんな事言われたら処分も何もないやろ?でも少し反省してや?」

 

「う、うん……ごめんなさい。」

 

私ははやてに頭を再度下げる。でもどうして私を庇うのだろうか…………

 

「それからなぁ〜キャロの事なんやけど?鈴木君とキャロはただの友達だそうや。後で鈴木君に謝っとき?」

 

「え!?そ、そうなの?ど、どうしよう私……最低だ…………」

 

後で謝らないと……でも勝手に勘違いして酷いことした私をどうして庇ったのかな?そう思い私は彼がますます分からなくなった。

 

 

 

 

〜ヴィータサイド〜

 

「お〜い、待てよ!」

 

私ははやてと一緒に訓練所に入らず訓練所から出てきた鈴木を追いかけた。私の予想通りならあいつはまたやらかしてる筈だ。

 

「よよ?何だヴィっちじゃん。」

 

あいつは私の呼び声に気づき振り返る。だけどその残念そうな顔はなんだよ。

 

「だからやめろよその呼び方……いや、それよりお前右腕見せて見ろ!」

 

「やや?何で?」

 

何でかわかんないような顔してもバレバレなんだよ。

 

「いいから見せろ!?さっきの攻撃まともに受けて無傷なわけないだろうが!!!」

 

私が怒鳴るがどうしても見せようとしない。無理矢理見てやろうと思ったがやめた。

 

「分かった、もう何も言わねぇ。その代わりちゃんと医務室行けよ?」

 

「あいあい。ヴィっちありがとん!」

 

こいつにお礼を言われるのは初めてだな、悪い気はしねぇが気持ちが伝わらないのはこいつの口調のせいなのか?それから事務所に戻って行く鈴木を黙って見送った。あいつは何かを隠してる、ただの事務局員じゃねぇ。今回の一件でそれがよく分かった。でも……悪い奴じゃない……それも確信した。

 

 

 

 

〜はやてサイド〜

 

あれから二日後の業務終了間際、私のいる部隊長室のブザーがなった。誰だろうと思い許可を出した。そしたら鈴木君やった。

 

「チワワ〜っす!」

 

「部隊長室にそんな言い方して入って来るんは自分だけやで!?」

 

私は大声で叫んだ。それもしょうがない事や。こんな無礼な下っ端がいるんやから、まぁ〜もう今更期待はしてへんけど。

 

「で?どうしたんや?」

 

「いやや?はやてっちにやれやれ言われてた書類んだよぉ〜?できまちた。」

 

ドサッと私の机に置かれた書類の束、二日前に終わったのを確認した例の書類や。私は少しため息をつき鈴木君を見る。丁度いい機会や少し話をしよう。

 

「鈴木君、この書類二日前に終わっとったろ?何で出さなかったんや?」

 

「およ?こんな大量の書類渡された次の日に終わるわけないよん?はやてっちの勘違いじゃないのん?」

 

鈴木君はとぼけて来た、でもそれは嘘や。あの時確実に終わってたのを確認してるんやで?まぁ〜ええ。

 

「鈴木君、私に何か隠してへんよね?それと鈴木君は本当にただの事務局員なんか?」

 

私は少し探りを入れる。

 

「どう言う事ん?」

 

その反応は予想できとるよ、でも明らかにおかしんや。鈴木君にはおかしな点が幾つもある。確かに普通の部隊で事務作業をしている分には誰も気づかない筈や、私もこんな抜き打ちの書類を使わなかったら気づけんかった。それに事務局員に必要のないその戦闘能力、一般の武装局員なら未だしもあのフェイトちゃんとタメをはれる程の能力。

鈴木君のプロフィールには魔力が殆どないって書いてあるけど……魔力無しでフェイトちゃんとまともに立ち会えるわけが無い。

 

「本当の鈴木君はどんな人間なんや?」

 

「はてはて?言ってる意味が分からないん?」

 

強いな自分……私の目に狂いはないと思うんやけど。でも証拠もないしな。まぁ〜最低限仕事をしてくれれば今はええか。

 

「鈴木君、なんか私の勘違いみたいやわ。忘れてや。」

 

「そう?じゃじゃ、さいならぁ〜。」

 

そこはお疲れ様じゃ無いんか?それだけ言って鈴木君は部屋を出て行った。

 

 

 

 

〜リンディサイド〜

 

陸ちゃんが六課に入って大分たったわね。上手くやってくれているのかしら?まぁ〜陸ちゃんなら心配いらないか……でもまぁ、連絡しよぉ〜と。そう思い私は通信モニターを開き陸ちゃんにコールをかける。陸ちゃんは通信に出るのは早いのですぐ出た。

 

「はい!何でしょうかリンディさん。」

 

「あら♪陸ちゃん元気してる?最近どう?」

 

私がそう聞くとあまりいい顔をしなかった、これは気づかれたかしら?

 

「六課の局員が最近連続で行かされた部隊の局員だらけなんですが?これは偶然ですか?」

 

あらら、やっぱり気づいたんだ。

 

「気づいちゃった?その……大丈夫?」

 

「今は平気ですが部隊長が感づいてます。何のつもりか知りませんが俺の正体を露見させようとしてませんか?」

 

うーん、勘が良すぎて嫌だわ、陸ちゃんのそう言う所は嫌いよ?確かに六課の何人かにはあらかじめ陸ちゃんと関わって貰ったわ。はやてさんには気づくようにヒントを与えてるし。でもこれは貴方の為なのよ?

 

「陸ちゃんは少しお友達を増やした方がいいわよ?ほら、ずっと一人じゃ辛いじゃない?あの子達は信用出来るから。」

 

「余計なお世話です。」

 

少し強引過ぎたかしら?いえ、そんなことないわ。陸ちゃん……このままだと管理局の嫌われ者よ?それが仕事だからしょうがないのだけど。

 

「リンディさん、貴方まさか俺に友達作らせる為に六課に行けって言ったんじゃないでしょうね?」

 

「そんなわけないでしょ!?流石にそこまでしないわ!!」

 

それでも半々って所だけど。あれ……なんか凄い疑いの目だわ。

 

「陸ちゃん……彼女作らないの?」

 

「突然何を言い出すんですか!?」

 

だって……その歳ならいてもいいじゃない?陸ちゃんはモテると思うのだけど。ああ〜でもお仕事の時は酷いキャラだから嫌われるだけよね。やっぱりダメだわ!少しは理解者がいないとダメよ、貴方も幸せにならないと……そう思ってはいるが当の陸ちゃんが簡単に聞いてくれる筈もない。

 

「そうだ!?わ・た・し♡なんてど〜お?」

 

私がそう言った瞬間通信を乱暴に切られた。だから私はつい叫んでしまう。

 

「何よ陸ちゃん!?切ることないでしょぉぉぉぉぉおおおおおお!!!」

 

 




次回もよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。