魔法少女リリカルなのは!?「幻の残業局員」 作:ヘルカイザー
ではよろしくお願いします。
合宿初日の夜、就寝の時間それは起こった。私とディアーチェ、レヴィとユーリは同じ部屋だ。そして陸飛はエリオと同じ部屋である。だから私、シュテルは陸飛の部屋へと夜這いをかけに行くところだ。誰にも悟られないよう部屋を出て行き、陸飛がいる部屋へとたどり着く。
「陸飛……今日こそは一緒に〜……なっ!? へぶしっ!? ……あなた……は…………」
陸飛の側まで行き、陸飛の布団の中に潜り込もうとした瞬間、強烈な衝撃が私の頭を襲う。私は立っていることができなくなりその場に崩れた。そして……私が意識を失う直前、私が最後に見たのは……床で気絶しているパジャマ姿のエリオだけだった。
◇◆◇◆
とうとう夜になった。そしてディアーチェが寝ているのを確認した私は部屋を出る。その時シュテルの姿が見えなかったのには気になったが今はよしとした。
「確か〜ここだった筈です」
私は陸の部屋にたどり着くと、部屋へ侵入した。しかしその時だ、床に転がっているシュテルが目に入ったのは。私は驚き固まる。そして静かにシュテルの側へと駆け寄った。
「シュテル!? どうしたんですか!? 一体何が!? 」
「ユーリ……逃げて……ください……私達は先をこされました」
「え……そんな誰、がっ!? あ……あ……れ? …………」
私は誰かに首筋を打たれその場に倒れこんだ。そして……そんな私が意識を失う直前に見たのは……気絶し上半身裸になったエリオさんの姿だった。
◇◆◇◆
「そ〜と……そ〜と……」
「ヴィヴィオさんどこに行かれるのですか? 」
「ひゃうっ!? 」
「ヴィヴィオさん? 」
私が静かに部屋を出ようとした時、運悪くアインハルトさんに見つかってしまった。私は必死に言い訳を並べる。しかし何を感づいたのか、アインハルトさんは自分も行くと言い出し、私達は2人でお兄さんの部屋を目指す。だがその途中、私達はとある人物と遭遇した。
「あら? 2人揃ってどこ行くの? 」
「ルールー!? い、いやその……」
「陸兄の部屋行くんでしょう? 私もエリオ君の所行く途中なの。だから一緒に行きましょう? お互いライバルではないんだし」
「そ、そういう事なら……ね、アインハルトさん」
「え? は、はい、そうですね」
「行かせないよ? 」
「「「!? 」」」
話がまとまった矢先、私達の前に誰かが立ち塞がる。しかしこの重くのしかかる威圧感とこの声。私は一発で誰だか分かった。そう、キャロさんだ。私達に向けて構えをとり始める。どうやらこのまま私達を沈める気らしい。
「3人とも……陸飛さんの部屋に行って何する気なのかな? 」
「キャ、キャロ? 2人はともかく私はエリオ君とイチャイチャするだけだから通してくれない? 」
「ダメだよ」
「え……なんで? 」
「エリオ君が私より先に幸せになるのは凄くムカつくから」
「ええ……何それ……これじゃ私もやり合わなきゃいけない雰囲気よね? 」
「ヴィヴィオさん、相手は1人です。3人がかりなら簡単に……っ!? え……」
「3人がかり? ふふ、アインハルトは何ナメた事言ってるのかな? 貴方達ごとき、チーム戦じゃなきゃ潰すのに5分とかからないんだよ? 」
「アインハルトさん、逃げてください!? 」
キャロさんはアインハルトさんの言葉が気に入らなかったのか、アインハルトさんの目の前に一瞬で移動すると彼女のお腹に軽く手を添える。そしてそれに対して危機感を感じたのか、アインハルトさんは反撃に出た。
「くっ……やられる前に……やります! 覇王断空拳!!! ……なっ!? そんな簡単に!? 」
「愛気竜流し……《受け愛》。無駄だよアインハルト? 私を前に物理攻撃は一切通用しない。さぁ〜お返しだよ? さようなら! 」
「ぐふっ!? 」
「アインハルトさん!? 」
「愛気竜流し……《竜力愛破(りゅうりょくあいは)》! 」
キャロさんはアインハルトさんの攻撃を何でもない拳であるかのように受け止めた。さらにあらかじめ触れていた手になんらかの力を込めるとその瞬間、アインハルトさんはぶっ飛び、暗い廊下の先へと飛んでいく。その姿が……見えなくなる所まで。
「ヴィヴィオ、死にたくなかったら手伝って! 」
「う、うん! 」
「次は誰の番? 」
「ふふん、油断したわねキャロ? ガリュー! ……なっ!? 嘘…………」
「油断? してないよそんなの。後ろにガリューが隠れていた事なんて最所からわかってた事だもん。と言うかガリュー……邪魔! 」
「!? 」
ルールーが驚き、その瞬間完全に戦意を消失した。一体何に驚いていたかと言えば、ガリューがキャロさんの後ろから攻撃を仕掛けたのだ。しかしキャロさんはこれを振り返らずに受け止め、そのまま開いている窓の外へと投げ飛ばす。キャロさん曰く、相手の重さは技術でさばけるとの事だ。
「そ、そんな……」
「次はヴィヴィオの番だね? ふふ、大丈夫、殺さないよ? ちょっと三途の川の手前まで行ってもらうだけだから」
「それ半分死んでますよ!? キャ、キャロさん勘弁して下さい!? わ、私に悪気は……ひっ!? 」
「ふふ……っ!? ル、ルーちゃん!? 離して!? 」
「ヴィヴィオ行きなさい! 早く!? 私がやられる前、うっ…………」
「ルールー!? 」
「はぁ……時間稼ぎにもならなかったね? さぁ〜ヴィヴィオ? 」
「あ、ああ……許して……誰か!!! 」
「……っ!? ちょっ、どうしてここにいるんですか!? 」
「あら? いちゃいけないの? 陸さんが来てるって言うから顔だけ見に来ようと思って来たんだけど……なんか面白い所に遭遇しちゃって」
キャロさんの制裁は私には来なかった。正確には乱入したギンガさんの手で止められたと言ったほうがいい。しかし私は今、パニック状態だ。ギンガさんに助けて貰ったがお礼を言う余裕がない。そもそもギンガさんが何故ここに来ているのか。2人の会話が耳に入って来ない私には分からなかった。
「ヴィヴィオ? 行っていいわよ? ここは私が何とかしてあげる」
「え……あ、はい! 」
私はギンガさんの好意に甘え走る。もはや何故こんな事になっているか考える事すらバカバカしい。私達は一体何をやっているのか。ここに冷静な私がいたら怒って貰いたい。できるわけはないが。
「なっ!? ギンガさん正気ですか!? 陸飛さんの部屋に行こうとしてるんですよ! 」
「ふふ、キャロ? もっと心を広く持ったら? いいじゃない、子供がお兄さんと寝たいと思ってるだけなんだから。子供の戯言よ? それに……噛み付いたら消せばいいのよ? あの子の存在ぐらい、この拳一つでしょ? ふふ、ふふふ」
「いや……1番ギンガさんが狭いと思いますよ? でも……そうですね。ふふふ」
私が走り去った後、そんな会話をしてした2人だがその会話は全部…………聞こえていた。
「怖い!? あの2人怖いよぉぉぉぉぉ!? 殺される!? この先絶対殺される!! なのはママ、フェイトママぁぁああああああ!!! お兄さぁぁぁあああああん!!! 」
一体どれだけ全速力で走ったのか、気がつけば私はお兄さんの部屋の前に来ていた。そしてお兄さんの寝ている部屋へと入る。だがそこにあった光景を見て、私は固まり恐怖した。何故ならそこにあったのは屍の山。1番下にシュテルさん、その上にユーリさん。さらに反対側では何故かパンツ一丁姿のエリオさん。
「こ、ここで一体な、何が……っ!? え……どうして……リンさん!? 」
「むにゃむにゃ〜ですです〜うるさいですですね? 何ですか? 今度はヴィヴィオが邪魔をしに来たですですか? 僕はもう眠いですですよ〜」
「り、リンさん? 何を……してるんですか? 」
「はへ? 何って、陸ちゃんと添い寝ですですよ? もう戻ってこないと思ってた大切な温もりが目の前に……だからもう離したくないですです〜」
そう言いながら寝ているお兄さんの腕を抱きしめると顔をスリスリし始める。今のリンさんは初めてぬいぐるみを与えられた子供のようだった。しかもリンさんの背丈は20歳を超えているにも関わらずかなり小さい。下手をすればキャロさんと同じかそれより低いだろう。だから今の光景を見るとより子供に見える。
「あ、あの……これはリンさんが? 」
「むにゃ……うるさいですですね? はぁ……ヴィヴィオ? おやすみですです」
「い、いや……そんな真顔で言われたら怖いん……ですが……その……た、助け……!? いやぁぁぁぁぁああああああああああぁぁぁぁ、うっ!? …………」
せっかく切り抜けたキャロさんと言う壁を超えた先に、本日1番のダークホースが姿を現した。勝てない。勝てるわけがない。ここにいる誰が目の前の化け物に勝てると言うのか。元管理局最強の空戦魔導師。お兄さんがいなくなった後、わずか1年たらずで犯罪者を1000人以上逮捕。なのはママによればお兄さんがいなくなった反動で、今まで見えなかった。リンさんの黒い部分が出てしまったのだという。そして逮捕した犯罪者のうち、500人余りが同じ組織の人間。そう、リンさんは……500と言う人間を相手に1人で無双。全員を病院送りにしたと言う伝説を残している。そんな功績からついた二つ名が……無情のものさし姫。普段のリンさんには絶対に似合わない、不名誉な二つ名である。
◇◆◇◆
「ギンガさん? せっかくですし……1本どうですか? 」
「え? 珍しくやる気じゃない。怪我しても知らないわよ? 」
「怪我をするのはギンガさんでは? 」
「…………」
「…………」
私とギンガさんは無言で構えを取る。私は久びさに肌で感じるギンガさんの威圧感に震えた。怖くてではない。私自身、ワクワクしている。だがそんな時だった、陸飛さんの部屋の方向からヴィヴィオの悲鳴が聞こえたのは。
「いやぁぁぁぁぁああああああああーー
「ギンガさん! 」
「ええ」
私達は悲鳴の聞こえた部屋へと走る。だが部屋に着くと不思議と静かだ。私は恐る恐るドアを開けた。するとそこにはシュテル、ユーリ、ヴィヴィオの死屍が積み上がっていた。しかしそれよりも今陸飛さんの隣で抱きついているリンさんの方が気になった。いや、何をしてやがるのかと露骨に狭くなる心を必死に広げようと頑張る。でもダメだ。私は陸飛さんの事になるとどうしても心を広く持つ事ができないらしい。
「り、リンさん? 何してるんですか? 私の陸飛さんですよ? 」
「むにゃ……何ですか〜ですです〜。いい加減にして下さいですですよ。僕は眠いんですです。そろそろ本気で怒りますですですよ? 」
「ぐっ……怒りたいのは、こっちですよ!!! 」
「あ、ギンガさん落ち着いて!? 」
陸飛さんと寝るのがヴィヴィオならまだしも、それがリンさんとなればギンガさん的には我慢のならない事らしい。よってギンガさんは止まらない。リンさんに向け全力で拳を放つ。しかしリンさんはゆらりとベッドの上で立ち上がり、袖から30センチのものさしを出すと、それをギンガさんの拳に向けて真横から振り抜いた。不思議な事に、ギンガさんの全力に近い拳をものさし1本で受け止め、2人の力は拮抗している……ように見えた。だがそれは間違いだった。
「極破瞬殺定技……86式、《fist break》」
「あ……ああ…………」
「何が……(指に力が……は、入らない…………)」
「ギンガ、その拳(たましい)……砕かせて貰いましたですですよ? これで残るは「うっ!? 」キャロだけですですね? 」
自分の手を見たまま呆然としているギンガさんをものさしで気絶させたリンさんは私の方へと向き直る。
「ギンガさんがこんなにあっさり……くっ……でも! 」
「? ……我流……ですですか? 凄いですですね? 構えだけでも分かりますですですよ? それはもう立派な技であると同時にこの世に2つとない流派、武技。これは相当な鍛錬をしたみたいですです。けど……僕には通用しませんですです。何故なら僕は……もう誰にも負けるわけにはいきませんですですから。それが例え身内であったとしてもですです…………極破瞬殺定技……1式 、《Time of cut measure》」
リンさんは構えた。明らかに通常の威力とは異なるであろう技の気配。となれば私も最高の技で持ってお相手をしなければ簡単に蹴散らされる。そう思った私は極みともいうべき技の体勢に入る。
「極破瞬殺定技……リンさん、それを極めるのにどれだけの時間を費やしたんでしょうね? きっと私とは比べものにならない時間の筈です。でも私は引きません! 陸飛さんを想う気持ちでは負けたくないから!! だから、私の全てを……この技に! 愛気竜流し……《究愛竜想(きゅうあいりゅうそう)」
「その構え……ならこちらもこの技を出した事を後悔なんてしませんですです。キャロになら、十分この技を放つ価値がありますですですよ! 」
「ありがとうございます。この技は2つある私の放てる中で最強の物。リンさん……陸飛さんは私の物です! 」
「そうかもしれませんですです。けど……僕のこのワガママは、誰かを蹴落としてでも、陸ちゃんは僕の物にしますですですよ!!! 」
「リンさん!!! 」
「キャロ!!! 」
「はぁぁぁぁあああああああ!!! 」
「でぇぇぇぇりゃぁぁあああ!!! 」
リンさんのものさしは真下から上に切り上げるように放たれ、私はそれを股の下で白刃取りするように受け止めた……筈だった。とらえた。確実に掴んだ筈だった。手ごたえもある。目視ですらそれを確認した。だが、気がつくとリンさんは私の後ろにいる。そして……私の服は下着ごと意識と一緒に真っ二つになった。
「無駄ですですキャロ。この技は……キャロの感じる時間という概念ごと切り裂く技のなのですです。だからさっきキャロがとらえた僕のものさしは、ただの幻覚ですです。でも……久びさに燃えましたですですよ。……ふぁ〜。もう眠いですです。ふふ〜陸ちゃ〜ん! 」
《短編・キャロ様劇場》
第4話 《八つ当たり》
合宿2日目の朝。エリオは生まれたままの姿でルーテシアに発見された。そしてその場にいた何人かの少女達と良からぬことをしたと勘違いされたエリオはルーテシアに右頬を思いっきり引っ叩かれてしまい、さらに残酷な言葉がエリオを襲う。
「エリオ……ぐすっ……ひぐっ……別れましょう。私達もうおしまいだわ……さようなら! 」
「ちょっ!? ルー待って!? え……キャ、キャロ? 」
ルーテシアを追いかけようと思ったエリオ。だがそれはキャロの前に崩れ落ちる。キャロは追いかけようと立ち上がる瞬間キャロに押し戻されたのだ。
「エリオ君? 裸で何やってるのかな? どうしてエリオ君がいるのにリンさんの侵入を許したの? 」
「い、いや僕も突然気絶させられて、痛っ!? え……何……するの? 痛!? いたたたた!? やめっ!? ぐぼっ!? ぼふっ!? 」
「泣いてる場合じゃないよ。反省しなきゃ! 全部エリオ君の所為だよ? ほら、反省するまで殴ってあげるから! 」
「キャ、キャロ!? 僕今ボロボロ!? あがっ!? ……ひっ!? 許しばっ!? へぶしっ!? すいませんすいません!? あぼっ!? 」
「「「あわわわわ…………」」」
キャロに馬乗りにされタコ殴りにされるエリオ。そのすぐ側ではシュテルとユーリ、ヴィヴィオが抱き合って怯えていた。そしてそんな中、ベッドの上ではリンが陸飛に抱きつき未だに気持ちよさそうに眠っている。言うなればカオスだろう。
「キャロ、ごふっ!? やめっあばっ!? はぁ……はぁ……ルーにフラれた……がっ!? 」
こうしてエリオは心も体もボロボロになってしまった。
to be continued…………
次回、エリオがトチ狂いますww
次回もよろしくお願いします。